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ワタミ店舗(撮影=編集部)
ワタミ、「全従業員に対する過重労働再発防止策」制定でブラック企業&経営危機脱出へ
http://biz-journal.jp/2016/06/post_15528.html
2016.06.18 文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表 Business Journal
ブラック企業とのレッテルを貼られてしまったワタミは昨年、大きな経営危機に直面しました。そのワタミの2015年度の業績は、売上高が1282億円、営業利益が2億9000万円の赤字、経常利益が11億3200万円の赤字でした。ただし、介護事業を売却し151億円の特別利益を計上したので、最終利益に当たる当期純利益は78億5300万円の黒字となりました。
■注目すべきワタミの再建の成否
ワタミの再建の成否は、注目すべき事柄です。
15年12月、ワタミの過労自死事件の損害賠償請求訴訟が、和解により終結しました。その内容は、賠償金の支払いに加えて、過重労働の再発防止策の策定が約束されるというものでした。この点が重要です。原告である故・森美菜さんの両親は、たんに賠償金の支払いを要求したのではなく、自分たちの娘のような犠牲者が二度と生じないよう、ワタミに対して「全従業員に対する過重労働再発防止策を制定」することを要求し、これをワタミが受け入れました。
つまり、たんなる賠償金の授受にとどまらず、原告は被告であるワタミに対して、従業員に過重労働を課すというブラック企業であることをやめるよう求め、ワタミがこれを約束したのです。ということは、この先のワタミは、旧来の考え方を大きく改めたうえで、いわゆる「ホワイト路線」に大きく舵を切ったということを意味します。
この「ホワイト化」に取り組むワタミの企業努力が成功するか否かは、外食産業全体に及ぼす影響が大きく、注目されるところです。
■飲食店経営は楽ではない
そもそも外食産業というのは、ブラック化しやすい産業です。なぜなら飲食店の経営は、いわゆるサラリーマンではなく、個人事業主の人並み外れた経営努力が必要とされる業界だからです。
たとえば、埼玉県志木市の「麺家うえだ」店主・上田美小枝さんは、お店の営業時間は11時半から16時までの4時間半ですが、営業終了後は毎日必ず店内をくまなく掃除し、その後、仕込みに入ります。営業時間の短さは仕込みに圧倒的に時間が掛かるためであり、仕込みが終わるのは翌日の明け方です。その上田さんは定休日の月曜日以外は店に寝泊まりをしているそうです。平均睡眠時間は3時間で、家に帰るのはシャワーを浴びるためだけの1時間半のみだそうです。
この「うえだ」はたいそうな人気店で繁盛していますが、これは上田さんが上司から命令されて仕事を行っているのではなく、事業主である上田さんの情熱と根性で成り立っているビジネスです。もし企業が自社の従業員に対して上田さんのように働くことを要求したら、それは明らかに過重労働であって、その企業はブラック企業です。
しかしながら、個人が営む飲食店のなかには、上田さんのように明白に過重労働に該当するような仕事ぶりの人が少なくありません。彼らは自分の意思で、体を張って飲食店経営をしています。外食産業の企業は、そのような強力な競争相手と戦っています。これが、飲食店経営の現実です。
しかし、だからといって従業員に過重な労働を課して、使い捨てにするような雇用は許されません。この重大な課題に取り組む象徴的な企業が現在のワタミです。そのため、新しいスタートラインに立ったワタミの経営の成否は、大いに注目されるのです。
■ワタミのセグメント情報から見えること
ワタミの事業は、「国内外食」「宅食」「介護」「海外外食」「環境」「農業」の6種類の事業からなります(「介護」は15年12月に売却)。その事業ごとの業績は、以下のとおりでした。
(出典:15年3月期 決算短信より)
このなかで、質量ともにもっとも大きな比重を占めているのは「国外外食」であり、ワタミはその国内外食で15億3500万円もの赤字を産んでしまいました。当然のことながら、これを黒字化しないことにはワタミの再生はあり得ません。
■過去数年間における国内外食の業績の推移
以下に掲げる表とグラフは、過去6年間におけるワタミの国内外食の四半期別利益データです。
(過年度の有価証券報告書および直近の決算短信にもとづき筆者が計算・作成)
このデータには、はっきりとした特徴があります。12年7〜9月頃から、はっきりとした業績の低落傾向がみえます。そして、13年からは年間を通じて赤字経営を余儀なくされています。12年、ワタミは、有識者やジャーナリストなどで運営され一般の人々が投票する「ブラック企業大賞」の市民賞を受賞し、13年には大賞を受賞しています。つまり、ブラック企業としての評判とともに、会社経営が傾いてしまったことが一目瞭然です。
つぎに、10年を除いて季節ごとの業績をみてみると、10〜12月の業績がもっとも良好です。赤字経営に突入した13年度においても、10〜12月は1億6500万円の黒字になっています。また、最大の赤字を出した14年度においても、10〜12月の赤字が最も小さく(3億5100万円)なっています。これは、国内外食では忘年会シーズンもある12月が一番の稼ぎ時だということを示すものです。
■再出発した後はどうなったか
ワタミは前述の訴訟において、15年12月に和解しました。これに前後して、介護事業を損保ジャパン日本興亜ホールディングスに210億円で売却しました。したがって、ワタミは16年1〜3月期において、新しいスタートラインに立ったといえます。この時期の国内外食のセグメント利益は1100万円の黒字です。1〜3月期の国内外食では、13年度が18億4100万円の赤字、14年度が9億9400万円の赤字だったので、15年度は3期ぶりの黒字という結果となりました。もちろん、その成果は微々たるものであり、この先も余談の許さない経営が続くでしょう。
しかしながら、訴訟の和解を機に、ワタミは復活の足掛かりをつかんだ可能性があります。なにより、この時期に赤字をストップさせたことは有意義でした。
この先、ワタミが「ホワイト企業」となって再生に成功することは、社会的には外食産業におけるブラック企業を排除する働きをします。そのような点で、筆者はこれからのワタミの経営には注目すべきこと大であると断言したいと思います。
(文=前川修満/公認会計士・税理士、アスト税理士法人代表)
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