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「強みのない銀行に残された時間は少ない」森金融庁長官の発言が意味すること 金融庁の本気に地銀業界は戦々恐々
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48871
2016年06月17日(金) 橋本卓典 経済の死角 現代ビジネス
『捨てられる銀行』(講談社現代新書)を世に送り出して1ヵ月。銀行、信金、信組など金融界、金融庁、或いは業界外の様々な方々から予想を超える反響をいただいた。
顧客本位とは名ばかりで、実は営業成績の数字づくりしか考えていないトップは「痛いところを突かれた」と見て見ぬふりをしているかもしれないが、地域金融への志を抱く金融マンが不条理な営業ノルマを課されながらも、現場を必死で支えていることが大変よく分かった。
今後、金融機関の融資のスタイルがどう変化していくか、いち早く見通す書。地域金融関係者、経営者へ戦略の転換を促している
「センセーショナルな題名だ」とのご批判もいただいたが、実は筆者としては「それどころか、もう少し強い表現でも良かったかもしれない」と悔悟の念を抱き始めている。
というのも、金融庁が、顧客を見ず、地方創生に貢献しない地方銀行のあぶり出しに本腰を入れるのが、いよいよ確実になってきたからだ。
■「残された時間は少ない」
森信親・金融庁長官は5月18日の全国地方銀行協会(地銀協)、19日の第二地方銀行協会の例会に出席し、顧客を見ない規模拡大の低金利貸出競争は限界であり、法人・個人の双方に対する顧客本位の密着営業「リレーションシップ・バンキング」を経営の根幹に据え、戦略的な経費節減に取り組むよう求めた。
森長官は発言の締めくくりに際し、何かを含むように一段と語気を強めた。
「地域金融機関が創意工夫して、環境変化への対応を積極的に進めており、これには私も大変勇気づけられる。こうした傾向はさらに加速すると予想される」
これは、一部の金融機関が営業ノルマを撤廃したり、本業支援に経営資源を傾注することで、顧客満足度を高めながら、利ざやが下げ止まっていることを念頭に置いた評価する発言だ。
そして、次の一言が例会に出席した地銀トップを震撼させた。
「裏返して言うと、従来型の銀行経営がより低収益化してくる中で、これといって強みのない銀行に残された時間は少なくなってきている。金融庁として将来を見据えた対応を行っていくつもりだ」
地銀業界では、金融庁がどのような監督行政を打ち出し、何を目指しているのか、戦々恐々となっている。
昨年7月、森信親氏が金融庁長官に就任してから金融庁が進めている地域金融の改革についての動き、森長官の真意、180度の転換の骨子などは『捨てられる銀行』を読んでいただくとして、ここでは『捨てられる銀行』以降の改革の進展についてレポートしておこう。
■新たな監督行政の骨格とは
現時点で筆者の取材で把握している「地域金融機関の新たな監督行政」の骨格は以下の通りだ。
@ 地方創生にどう貢献しているのかを測る金融仲介のベンチマーク(BM)の決定。
A 全国の財務局が昨年10月以降、銀行取引の実態をさぐるために実施してきた中小企業ヒアリングを継続する。
B 財務局は、地銀トップのヒアリングを実施し、BMによる取り組み状況の判定と企業ヒアリングで聞こえてきた取引実態を突きつけてゆく。
C BM判定、企業ヒアリング、トップヒアリングの結果が悪い地銀に対しては、金融庁が直接、検査監督で問題点を詰問していく。
金融庁内でもこれまでにない取り組みで試行錯誤するであろうが、新たな監督行政の終着点は、メガバンクのような単なる規模拡大と合理性追求の「再編」ではなさそうだ。
金融庁は地銀など地域金融機関に対しては、地方創生につながるビジネスモデルの転換を求めている。より重要なポイントは、同一地域で同じ低金利貸出競争に明け暮れている先行きのない泥沼経営からの脱却だ。
例えば、低金利で採算がとれない住宅ローンや個人向けビジネスから撤退し、小規模、零細企業に特化した法人営業戦略で利ざやを稼ぐ経営への転換を目指している銀行もある。
あるいは、同じ地域の法人営業でも、ある金融機関がリスク管理をしながら即決融資で利ざやを稼いだり、別の金融機関が事業再生に特化することで利ざやを稼ぐなどのカニバリズム(共食い)を回避する差別化戦略を実践しているところも出始めている。
逆にIT戦略とリテールに特化することで、収益を稼ぎ出す銀行もある。
実は大手地銀は、法人企業、地方公共団体から個人まであらゆる全方位サービスを手掛けなければならないために、上記のような手薄となっている領域が数多くあるのだ。
こうした大手地銀が手の回らない領域に特化した局所戦を仕掛けられることを大手地銀は最も恐れている。ここに金融庁は注目している。
こうした現実から逃げようとする地域金融機関は、ただでは済まない。場合によっては、経営手腕を問われ、トップ交代や外部の人を送り込まれる事態も想定される。甘っちょろい再編どころの話ではない。金融庁は本気だ。
■金融庁と財務局は変われるか
ただ、課題もある。2年目に入る森金融庁が目指す「新たな監督行政」の成否を占うのは、金融庁と一体で動かなければならない地方の財務局が、どこまで変われるかどうかにかかっている。
こう書くと物議を醸すだろうが、金融検査マニュアルそのものから生まれたといっても過言ではない金融庁、財務局は、「地銀のビジネスモデルをどう見たら良いか」がほとんど分かっていない。
地銀には、取引先の企業の事業内容や将来性を把握する「事業性評価」を求めておきながら、金融庁、財務局自身が地銀のビジネスモデル、事業の特性を理解できる人材がほとんどいないのだ。
例えば、顧客本位の理念を据え、地場の企業からの調達を維持しながら、戦略的に経費を落としていくノウハウやシステムメンテナンスの経費の管理、営業を活性化させながら効率的に経費を落としていくアイデア、どの事業にどれだけの経費をかけているかの管理などについて、議論を交わせる金融庁、財務局の人間はほんの一握りだ。
金融検査マニュアルと資産査定の文脈上でしか議論できない組織をつくってきたからだ。
「過去と決別せよ」と地銀に号令した森金融庁は、自ら自己改革に乗り出している。
広島銀行の幹部を地域金融の重要ポストに起用し、有識者でつくる検討会議を設けた。これまでは単なる金融庁からの「指示待ち」の組織だった財務局に、独自性を発揮するよう求めている。こうした機運を「新生金融庁」にまで昇華できるかが、最も重要な試金石となる。
「この1年でケリをつける」
森長官が発した指示は、金融庁内の幹部に相当な覚悟もって受け止められている。地銀業界の覚悟はどうか。
橋本卓典(はしもと たくのり) 共同通信経済部記者。1975年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2006年共同通信社入社。経済部記者として流通、証券、大手銀行、金融庁を担当。09年から2年間、広島支局にも勤務。金融を軸足に幅広い経済ニュースを追う。15年から2度目の金融庁担当で、地域金融を中心に取材。5月に初の著書『捨てられる銀行』(講談社現代新書)を上梓、発売1ヵ月で6刷、ベストセラーに。
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