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三菱UFJ銀の国債資格返上はそれほど大きな問題か
http://diamond.jp/articles/-/93116
2016年6月16日 高橋洋一 [嘉悦大学教授] ダイヤモンド・オンライン
■マスコミで大きく報じられた
三菱UFJ銀行の特別参加者返上
三菱東京UFJ銀行による国債市場特別参加者の返上について、大きく報道された。
もともと三菱UFJ銀行はマイナス金利に批判的なので、それがさらに憶測を呼んでいる。今月半ばには金融政策決定会合への牽制を行ったといううわさだ。4月14日、三菱UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長は都内で講演しているが、「マイナス金利下では国債に投資できない」との本音をにじませた発言をした。これを受けて、マイナス金利に弊害があるというマスコミ論調が多い。
中には、財務省が国債発行して、金融機関が引き受け、それを日銀が買い取るという『財務省・金融機関・日銀』の三角形が、「マイナス金利政策によって崩れた」という勇ましいモノもある。こうした見方は本当だろうか。
まず、国債市場特別参加者制度を紹介しよう。日本では、2004年10月以降、導入している。それ以前にも、特別参加者と称するものではないが、事実上同趣旨の制度は1990年頃から存在していた。
これらは、欧米主要国において、国債の安定消化促進、国債市場の流動性維持・向上などを図る仕組みとして導入されている「プライマリー・ディーラー(PD)制度」を参考としている。特別参加者は、一定の応札・落札義務があるが、そのかわりに財務省からの情報を直接とれるというメリットがある。現在、特別参加者は22社である。他方、国債に入札する社は246社である。
■大蔵省が金融機関を接待した当時
露骨な金融機関に辟易した筆者の体験
筆者は20年以上前に、今の「国債市場特別参加者制度」の前身の担当者をしていたことがある。当時は、大蔵省が主催するパーティーに特別参加者である金融機関の人を招待していた。金融機関が大蔵省を接待するのは当たり前の時代に、逆に大蔵省が金融機関を接待したということで話題になったものだ。
ところで、金融機関の人は商売に直結した情報を露骨に求める。筆者も、入札の足切り価格を発表前に教えくれと言われて、のけぞったことがある。
その情報は金融機関の商売にとってはきわめて重要だ。発表前に足切り価格がわかれば、自社で入札できた量がわかるだけではなく、ライバル他社の入札状況も推測できる。発表前に、ライバル他社の顧客にアタックして、ライバル他社より少しだけ有利な条件を提示してライバル他社を蹴落とすこともできるのだ。
もちろん、決して教えなかった。今ではそんな非常識なことはあり得ないだろう。また、筆者の現役時代に行われていたパーティも、国債市場特別参加者会合という「普通の会議」になったとされている。
■財務省がどう言っているかといえば
「他の金融機関が穴を埋める」
今は、金融機関と財務省の関係がどうなったのだろうか。国債入札という公平な制度であるにかかわらず、特別参加者がどのようなメリットがあるのか。
財務省のホームページ(http://www.mof.go.jp/jgbs/issuance_plan/pd/index.html)に特別参加者のメリットとして、「国債市場特別参加者会合に参加し、財務省と意見交換等を行うことができます」と書かれていることには苦笑いしてしまったが。
三菱UFJ銀行の特別参加者返上について、財務省がどう言っているかといえば、「銀行が1つ抜けても他の金融機関が穴を埋める」、UFJ幹部との面会に関しても「わざわざ会う必要があるのか」との声があった。銀行の判断に財務省が特に口出しする必要はない。
しかも、銀行グループの経営戦略としても、特別参加者になっているのは三菱東京UFJ銀行のほかにも、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、モルガン・スタンレーMUFG証券があるので、投資が中心の銀行があえて入ることもない。
そもそも、経済合理的に考えれば、国債はマイナス金利なので、銀行の投資対象にならないからだ。銀行は民間企業に融資をして利ざやを稼いでナンボである。銀行が国債に投資して儲かるという事態はデフレだから起こることであり、それ自体がおかしいこと。デフレだが、そこから脱却しつつある中で、本来の民間企業の融資へ向かう兆候だとみれば、いい話だ。マスコミがこうした当然の話を大事件かのように報じるところが、日本のマスコミのクオリティともいえる。
■本来は良い兆候であるはずの話を
大事件かのように扱うマスコミ
国債利回りがマイナスになっているのは、日銀のマイナス金利が一因となっているが、そもそも、国の財政状況は、世間で言われる1000兆円の借金ではなく、日銀も含めて政府の連結バランスシート(経済学で言うところの、統合政府ベース)をみれば、実質的に100兆円を超えた程度しかない(2016年4月7日付け本コラム「増税にこだわる財政学者はどこが間違っているのか」http://diamond.jp/articles/-/89216)。この状況では、財政破綻論者の言う国債暴落は起こらず、逆に国債暴騰、つまりマイナス金利ももっともだ。
三菱UFJ銀行の特別参加者返上を問題視するマスコミは、ほぼすべて日本の財政状況が悪いと思い込んでいる。そのために、たった一つの銀行が特別参加者(しかもこれは入札参加者ではない!)を返上したことを大騒ぎするのだ。
しかも、マスコミは、金融機関の言うとおりに、マイナス金利は日本経済に悪影響と思い込んでいる。確かに、マイナス金利は金融機関経営には「マイナス」だが、むしろ、日本経済には「プラス」である。このあたりの事情は、2016年2月25日付け本コラム「マイナス金利は心配無用 国民も政府もメリットのほうが大きい」(http://diamond.jp/articles/-/86888)をご覧いただきたい。マスコミは、金融機関の片棒を担いでいるので、ここ数年間の金融機関収益が大きいことには決して言及しないはずだ。
■マイナス金利の誤解の「家元」は
日銀内にいる民間金融機関の応援者
実は、日銀内にも、金融機関の応援者がいる。2月11日付け本コラム「ぬるま湯の銀行を締め上げるマイナス金利は正しい」(http://diamond.jp/articles/-/86118)に書いたが、民間金融機関出身者で、マイナス金利に反対した人たちだ。
この人たちの言動は、おそろしく間違っている。これらの間違いをマスコミはそのまま報じているので、いわばマイナス金利の誤解の「家元」に相当する。
例えば、日本銀行政策委員会の佐藤健裕審議委員の発言であるが、「私は、マネタリーベース目標及び資産買入れ目標を段階的に減額、すなわちテーパリングする際であれば、マイナス金利を導入する ことに意味があると考え、1月の金融政策決定会合でその旨を反対理由に挙げた」(https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2016/data/ko160602a1.pdf)となっている。
つまり、日銀による金融緩和の出口では、マイナス金利にするとベースマネーの量が減るから、マイナス金利は出口のときに使うべきというわけだ。
■基本的な誤りがある
日銀の審議委員
需要と供給は基本であるが、佐藤審議委員はここが理解できていない。これでは、大学初年級の経済学も落第してしまう。
佐藤審議委員は、マイナス金利になると銀行がマネーベースを減らすということを言いたいのだろう。つまり、「ベースマネーの需要が減る」というわけだ。確かに、需要が減れば(需要曲線が左にシフト)、金利が下がる。
しかし、日銀審議委員として、ベースマネーを減らすと言えば、「ベースマネーの日銀による供給を減らす」ということになってしまう。そのとき金利は上がるので、マイナス金利など不可能だ。無理にマイナス金利にしようとすれば、マネタリーベースの供給を猛烈に増やすしかない。
出口になっているということは、インフレになっていて、金融緩和をやめようとするときなのに、佐藤審議委員のやり方ではインフレに油を注ぐことになる。佐藤審議委員は、需要と供給を混同しているのだ。
マスコミも、こうした日銀審議委員の基本的な誤りを報道すればいいものを、間違った人を家元にして、間違いの再生産をしているばかりなので、困ったものだ。
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