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三井物産・安永竜夫社長(ロイター/アフロ)
三井物産の凋落、巨額赤字の元凶・資源に拘泥…伊藤忠、商社トップ奪取で全社員に特別賞与
http://biz-journal.jp/2016/06/post_15500.html
2016.06.15 文=編集部 Business Journal
総合商社業界は、ここ数年大きく動いている。まず、各社が公表した2017年3月期の最終利益の見通しを見ていただきたい。達成の確率は、過去の実績などから独自に予測したものだ。
※以下、順位、企業名、税引後利益、達成の確率(%)、( )内の伸び率は16年3月期との比較
(1)伊藤忠商事、3500億円(45.6%増)、90
(2)三菱商事、2500億円(黒字転換)、90
(3)三井物産、2000億円(黒字転換)、50
(4)住友商事、1300億円(74.7%増)、30〜40
(5)丸紅、1300億円(約2倍)、50以下
(6)豊田通商、700(黒字転換)、85
(7)双日、400(9.5%増)、70
16年3月期決算で発表記者会見した伊藤忠商事の岡藤正広社長は、「勝負は今期(17年3月期)」と語り、連覇に強い意欲を示した。3月下旬、三菱商事、三井物産が赤字に転落することが判明した時点で、追加の減損処理を決めたのも連覇の確率を上げるためといっていい。
岡藤氏は「(会計の)ルールに従って損失を計上しているが、まだ使える家具を処分したような感じだ」と述べている。これは17年3月期に最終利益で首位を死守するための政治的な決断といえる。突発的な事件が起こらない限り、3000億円台の利益は確保できそうだ。3000億円であれば、前期比25%増となる。16年3月期は、当初見込み3300億円から2403億円にまで最終利益を落としているのだから、来期は楽に3000億円を達成できるだろう。問題は3500億円をクリアできるかどうかにかかってくる。
岡藤氏は「初めて総合商社で首位になった場合、全社員に臨時の賞与を支給する」と約束した。臨時に賞与が出るのは、12年3月期に純利益が3000億円の大台に乗って以来のことになる。利益首位になるのは歴史的快挙である。ただ、当初考えていた賞与(額)の半分程度の金額に抑えるという。半額にするのは「他商社が厳しい決算を強いられている中で、伊藤忠だけが浮かれているような印象を世間に与えるのはよろしくない」と判断したからだ。
■三菱は厳格な会計処理をしたため赤字転落
伊藤忠に首位の座を明け渡した三菱は、4月1日付で小林健氏から垣内威彦氏に社長が交代した。「社長交代を機にできるだけ膿を出す」と予測されていたが、予想以上に減損処理された数字は大きかった。4260億円の減損を計上、このうち資源関連は3850億円だった。三菱は発足以来、初の連結最終赤字(1493億円の赤字)に転落した。
「三菱の基準で資源を減損処理していれば、住友や丸紅も赤字に転落したのではないか」と指摘するアナリストがいる。もし、「住友、丸紅、さらには三井の減損の計上が過小」だったとすると、三井、住友、丸紅の17年3月期の利益の数字は下振れする可能性が高い。
殊に、住友グループ内で「(16年3月期決算で)赤字になればトップの交代は必至」といわれていた住友は、2年連続の赤字を回避するために「損失の計上を抑えた」(商社担当の有力アナリスト)との見方が根強くある。そのため、住友の利益見通しの達成確率を30〜40%と、かなり低く見積もった。
同様に丸紅は50%以下、三井も50%とした。三井社長の安永竜夫氏は「資源の権益について入れ替えるのではなく、優良なものがあれば補強していく」と資源への思い入れを残している。
一方、三菱の垣内氏は「3兆円の投融資残は増やさない。ポートフォリオは躊躇なく入れ替える」と厳しい姿勢を見せている。みずほ証券は6月3日付リポートで「(トップが)商社で初めて真の資本配分の適正化を指示した」と高く評価し、目標株価を2650円に引き上げた。ちなみに6月6日の終値は1916.5円となっている。
■三菱商事の新社長に期待
三菱の新社長、垣内氏は面構えがいい。「日経ビジネス」(日経BP/5月30日号)の編集長インタビューで1ページまるまる使った顔写真が載っているが、実物はもっと精悍だ。久しぶりに面白い経営者が出てきた。「日経ビジネス」では、「逆境の中で社長に就任した」ことを問われ、「誤解されてもいけませんが、ワクワクしています。どうせ逃げられないし、仕事をするなら困難が大きいほど、男冥利に尽きますね」と答えている。
三菱のドラスティックな決算は、小林健会長(前社長)と話し合いながら垣内氏が進めたが、実際に辣腕を振るったのは増一行常務兼CFO(最高財務瀬金車)だ。社内で“カミソリ増”と呼ばれている。増氏が策定した中期経営計画が「出色のでき」(三菱の役員OB)と評判だ。
三菱の17年3月期からの3カ年計画は、食品原料など非資源分野の強化が柱だ。投資は3年間で2兆円。1兆5000億円を非資源に投入する。3カ年計画の最終年度となる19年3月期の連結純利益は、ほぼ非資源のみで3000億円を稼ぐ。資源から得る利益は全体の1割以下の200億円とみている。資源価格が上向けば資源で1000億円(4ケタ)の利益が見えてくるかもしれない。原油価格20ドル台でリスク資産を見直しているから、直近で1バレル50ドル台に一時戻ったこともあって、資源価格が上向けば戻り益も期待できる。三菱の内部資料によると、20年の最終利益は6500億円(非資源3500億円、資源で3000億円)となっている。
つまり、ロケットのスタート台を極力下げた三菱は17年3月期を助走期間として、18年3月期にV字回復を目指すことになる。17年3月期は伊藤忠の連覇の確率が高いとみられているが、18年3月期には「商社2強」である伊藤忠と三菱の激しいトップ争いが演じられることになるだろう。
伊藤忠の18年3月期決算で下振れがあるとすれば、ネックとなる可能性があるのは資本・業務提携している中国中信(CITIC)とタイの華僑財閥チャロン・ポカパン(CP)グループだろう。「CPの資金繰りがこの頃、今まで以上に悪化している」との懸念がつきまとう。上昇気流に乗る三菱と下向きの懸念がある伊藤忠の利益が18年3月期にクロスする可能性はゼロではない。
岡藤氏と小林氏は、日清食品ホールディングス(HD)の社外取締役に就いている。これからは小林氏に代わって垣内氏が務めるとみられ、日清食品HDの取締役会で2人は顔合わせをするだろう。岡藤氏は小林氏には余裕をもって接していたが、垣内氏に対してはどうだろうか。ちなみに垣内氏は岡藤氏より6歳も若い。
■三井物産の業績の急回復は望み薄
三井は17年3月期の最終利益の7割、1400億円を食料分野や新興国のインフラ(社会資本)整備などの非資源で稼ぐとしているが、「資源商社の雄」といわれる三井の構造改革は一朝一夕には進まない。安永氏が「資源ビジネスに未練を残している」(関係者)限り、三井の業績の急反発は難しくなる。
安永氏は巨額赤字に転落しても、役員報酬の返上など責任の所在を明確にはしていない。権力を飯島彰己会長が握っており、「損失の元凶となる資源の権益を買ったのが、当の飯島氏が社長の時代のことだから、責任を明確にできないのだろう」といった厳しい指摘が社内外にある。三菱は3月24日に巨額減損を発表した時点で、全執行役員の夏の賞与をゼロに決定している。
商社業界の最新情報も紹介したい。三井は日本マクドナルドホールディングスの買収を諦めていない。
4月22日付ロイターは「英プライベート・エクイティファンドのペルミラが、あきんどスシローのIPO(新規上場)の準備を開始し、引き受け会社(幹事証券会社)の選定に入った」と報じた。ペルミラは12年9月にあきんどスシローを、国内再生ファンドのユニゾン・キャピタルから10億ドル(当時の為替レートで約786億円)で買収した。「当時の企業価値は約800億円だったが、現在は企業規模の拡大とともに約1500億円に上昇しているという。12年当時、スシローの店舗数は335だったが、現在は400を超える」(ロイター通信)。大枚をはたいてスシローを買ったペルミラが、スシローの再上場の際に、高値での売却を狙っているのはいうまでもない。
ペルミラは1985年の設立。運用総額は250億ユーロ(約3兆円)に上る。食の川上から川下に至るフードチェーンを重要な投資のテーマとしており、外食産業に狙いを定めている。米マクドナルドが手放そうとしている日本マクドナルドホールディングスの株式の取得を検討しているとの観測がファストフード業界を駆けめぐっている。
三井がペルミラと組んでマクドナルドをM&A(合併・買収)することになるかもしれない。そうでもしない限り、三井が非資源をテコに浮上することは考え難い。
(文=編集部)
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