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大塚家具有明本社(「Wikipedia」より/Ryoma35988)
大塚家具、赤字転落でも「戦略なき経営者」久美子社長と元会長の実父は1億円の収入
http://biz-journal.jp/2016/06/post_15485.html
2016.06.15 文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント Business Journal
大塚家具は2016年12月期業績予想の下方修正を発表した。営業利益は前期実績が4億円の黒字で、16年12月期の従来予想ではそれを上回る5億円だったが、今回一転して15億円強の赤字に修正した。これはリーマンショックの影響で14億円の営業赤字に陥った09年12月期をも超える赤字幅である。最終損益も6年ぶりの赤字に転落すると修正された。本稿では以下の2点について検証する。
(1)一転しての赤字予想となった原因は何か。
(2)大塚久美子社長の実父で前会長でもあった大塚勝久氏が昨年創業した匠大塚社が、大塚家具のビジネスを奪ったのか。
■赤字転落の原因は売上高の急落である
赤字転落の原因は売上高の急落である。トップが落ちればボトムは大きく損なわれる。今回の修正発表では、今期の売上高は前期比42億円減の538億円と、マイナス7%強の落ち込みを予想している。過去15年間で最低になる売上見込みだ。この数字だけを見ると、昨年の株主総会で公然と対立して実父の元会長を追放してまで得た経営権を、久美子社長は生かしきれなかったと指摘されても仕方がない。
今期の通期売上を下方修正したが、「これで終わるのか」という不安は残る。というのは、年が明けてからの月次の売上傾向がジリ貧で始末が悪いのだ。1月から既存店の減少傾向が続いており、引越しシーズンだった稼ぎ時の3月には前年同月期比11.8%減となってしまった。あわてて5月は「大感謝会」と銘打った集客策を実施したものの、今年は不発に終わり、同46.2%減とほぼ半減した。
■「売れないポジション」へ自らシフト
家具業界での勝ち組はニトリとイケアの低価格路線と、カッシーナ・イクスシーの高級路線である。大塚家具では勝久氏が高級路線を選択して、順調に成長した。しかし、富裕層は無限に存在しない。その証拠にカッシーナ・イクスシーの年商は100億円強で、店舗数は大都市に4つにとどめている。大塚家具は現在17店舗だが、高級路線としては成長限界にきていて過大な店舗数だ。一方、ニトリは391店を展開している(5月末現在)。
久美子社長の経営で、大塚家具は低迷している。戦略的には勝久氏の高級路線を否定して中級路線に打って出ようとしていると理解できるが、それが徹底しないか、消費者にうまく訴求できていない。パブリシティ的には昨年の経営権争奪合戦からこれ以上ない注目と露出があるが、それを生かす知恵が足りない。つまり戦略がなく、的が外れている。
2009年3月の株主総会で久美子氏は社長に就任したが、その年の年商は580億円だった。今回の売上下方修正に至るまで久美子社長の経営の下、大塚家具が600億円以上の年商を記録したことは一度もない。ちなみに同社の最高年間売上は03年の730億円だった。勝久氏が14年に久美子社長を更迭したのも理由のないことではなかったし、会社のトップもボトムも何年も低迷させている経営者はその資質を問われる。
■匠大塚の脅威は始まっていない
大塚家具の経営権争いで一敗地にまみれた勝久氏は、匠大塚を昨年7月に創業した。大塚家具の元社員が50名以上も転職しているという。匠大塚での新事業開始の資金として勝久氏が大塚家具の株を一部売却したこと、久美子氏側の資産管理会社となったききょう企画との裁判で15億円を勝ち取ったことが報じられた。
しかし、大塚家具の今回の業績下方修正には、匠大塚の影響はまったく勘案する必要はない。匠大塚は4月22日に東京・日本橋デザインオフィスを第1号店として開店したが、これは設計者やデザイナーなどの業界プロを相手にした特殊な形態の店舗だ。B-to-CならぬB-to-P(Professional)というもので、大塚家具の顧客層とまったくぶつからない。
それよりも、埼玉県・春日部本店の6月オープンが発表されているので、こちらのほうが大塚家具にとってはよほど脅威だろう。というのは、この新店舗は床面積1.5万坪ほどもあり、駅を挟んだ大塚家具の店舗の3倍にもなるという。大塚家具春日部ショールームは喉に匕首を突きつけられたような気分だろう。
■経営ごっこと株式ゲーム
経営者は結局、業績によって評価される。株主総会で支持を集められるか、ガバナンスでどう優位に立てるか。そんなことが過ぎてしまえば、成長と利益両面の冷徹な数字が突きつけられる。経営権の争奪合戦とそれに続いた久美子社長の戦略取り回しによって、大塚家具の企業価値は損なわれてきたと私は見る。
しかし、そんななかで利を得た人たちがいる。大塚家具の株価推移を見てみると興味深い。父娘の経営権争いが勃発する15年春までは1000円前後で推移していた同社の株価は、父娘の対決となった株主総会の頃に2500円に急騰し、久美子社長が「お詫びセール」を展開した4月、5月は2000円ほどで推移した。父娘対決で久美子社長側について大いにこの祭りを煽ったともいえる海外ファンドは、その持ち株をこの時期に売り抜けたと見られる。というのは、財務省への大株主報告から外れたからだ。
そして、今回の下方修正を受けて、株価はまた1000円に近づいてきた。つまり、何年も掛けて久美子社長がようやく手に入れた経営権も、株価的にはむなしい推移というほかはない。
また、株主総会における支援獲得争いで久美子社長は一株当たり80円の配当を公約した(勝久氏は120円)。会社は赤字でも配当資産があれば配当していいので、赤字見込み修正となってもそれは実行される。
大塚家具の筆頭株主はききょう企画で189万株、個人株主では勝久氏と妻の千代子氏が合わせて223万株。ききょう企画の代表取締役は久美子氏だ。わかりやすくいえば、久美子氏側には1億5000万円、勝久氏側には1億8000万円ほどのキャッシュがこの赤字会社から渡されるということだ。私が株主なら、久美子社長が退陣しても惜しむことはないだろう。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)
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