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アテネのギリシャ国立銀行の扉に手をつきうなだれる年金生活者(2015年7月7日撮影、資料写真)。(c)AFP/ANGELOS TZORTZINIS〔AFPBB News〕
企業を悩ます「人生100年」時代 退職したくてもできない高齢労働者、雇用主や政府との戦いに
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47078
2016.6.14 Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年6月9日付)
英国では、100歳の誕生日を迎えると女王陛下からメッセージが届くことになっている。10年前には1人のアシスタントがその発送を担当していたが、今日では7人の人手が要る。
日本では、100歳になると銀の杯がもらえる。1963年には153人がこれを受け取ったが、2014年にはその数が2万9350人に達した。日本政府は昨年、この贈り物を見直していることを明らかにした。
リンダ・グラットン氏とアンドリュー・スコット氏が刺激的な近著『The 100-Year Life(100年生きる時代)』で指摘しているように、100歳の人は珍しい存在ではなくなりつつある。
裕福な国に今日生まれた子供は、50%を超える確率で105歳まで生きる。今日60歳を超えている人も、かなりの確率で90歳代になるまで生きられる。
本書には、60歳代の人々がフリーランスとしてさまざまな仕事を掛け持ちしたり、地域の活動に加わったり、違う世代の友人を作ったりして人生の残りの3分の1を送るにはどうすればよいかという、楽しいアイデアがたくさん詰まっている。
同時に、そうした人生を将来送ることができるのは恐らく裕福でかなり教育のある人々だけであることを、グラットン氏とスコット氏は明確にしている。
そのほかの人々は一生懸命お金を貯めなければならない。両氏によれば、今日の若者が給料の11%を貯蓄に回す場合――相当高いハードルだ――、引退後にまずまずの所得を得るためには85歳まで働かなければならないという。
哲学者のトマス・ホッブズは1651年に、人生は「不快で残酷で短い」と書き記した。グラットン氏とスコット氏は、多数の人々の人生は「不快で残酷で長い」ものになると言う。
そのうえで両氏は、高齢化する従業員がより幸福な人生を送れるように企業が支援する際にはどんなことができるのか、実践的で優れた提案を行っている。例えば、従業員がフルタイム勤務と短時間勤務とを容易に切り替えられるようにし、すべての年代の従業員が子供や孫――あるいは、長寿のこの時代には、ひ孫――と過ごす時間を増やせる柔軟な仕組みを作るべきだという。
企業は「年齢不可知論者」になり、従業員の年齢は考慮せずに誰がどの仕事に向いているかを見ればいい、というわけだ。
創造性に富んだ楽観的なシナリオだが、これが実行されるケースは非常に少ないだろうと筆者には思われてならない。企業という組織は際だって保守的なところだからだ。
企業は何十年も前から、出産して復帰した女性従業員には創造的な仕事をあまり任せていない。子供が生まれたので自分も育児休暇を取りたいという父親の希望に抵抗しているところも多い。
若いうちはしっかり働かせ、50代後半や60代前半になったら追い出す――。これが昔から普通に行われてきたやり方だ。賃金は勤続年数とともに上昇するため、高齢の従業員は給与が高額になる。若手社員の昇進の妨げにもなる。
最近までは、最終給与に基づいて年金額が決まる仕組みのために、喜んで退職する人も多かった。役員たちは、そんな年金制度を維持するゆとりはもうなくなったと散々文句を言ったが、波風を立てずに退職するよう従業員を説得することで会社に貢献した。
しかし、最終給与に基づく年金制度はなくなりつつある。復活することはもうないだろう。そして、それがどんな結果をもたらすかを理解している企業はほとんどないように見受けられる。
以前なら説得に応じて退職したかもしれない従業員たちも、今後は退職を渋るようになるだろう*1。一生働き続けたいからではない。ほかに選択肢がないからだ。
貯蓄や個人年金だけでは、とても暮らしていけないのだ。
多くの人は70代や80代までフルタイムで働き続けなければならない。いろいろな仕事を掛け持ちする、学校に入り直す、よく晴れた夏の日に地域のイベントに参加するといった人生を手にすることはできない。
高齢化社会で若い新入社員は減っていくのだから、企業には高齢の従業員が必要になると主張する向きもあるかもしれない。だが、多くの職種がコンピューター・プログラムやロボットに取って代わられていくため、従業員を辞めさせたいという気持ちは今後強くなるだろう。
だが、人生がまだ30年残っている従業員たちが、その間に使えるお金がいかに少ないかを知れば、おとなしく会社を辞めようとは思わない。
今日の50代や60代の働き手は手ごわいグループであり、人口に占める比率も大きい。政治に対する意識が高くデモも盛んだった時代に育った世代であるうえに、今では年齢による雇用差別を禁止する法律も彼らの味方になる。もし企業が退職を強要すれば、彼らは政権の頭を悩ませる存在になるだろう。もともと数が多いうえに、投票率も若い世代をはるかに上回るからだ。
彼らが安心して老後を過ごせる水準まで国の年金を引き上げることは、政府としてはできない相談だ。
グラットン氏とスコット氏が書いているように、100年の人生は多くの面でありがたいことだ。だが、大半の人にとって、100年生きる資金の工面は難しくなる。そのため、高齢の従業員は雇用主や政府と対立することになるだろう。大規模な戦いが始まるのだ。だが、企業や政府の責任者には、その覚悟ができている人はほとんどいないように思われる。
*1=英国では定年制が5年前に廃止されており、希望すれば会社に残ることができる。
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