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[創論]混迷する世界経済の行方は
米資産運用大手ジャナス ポートフォリオ・マネジャー ビル・グロス氏/中国中信(CITIC)董事長 常振明氏
フォームの終わり
安倍晋三首相が消費増税を再延期する理由にも用いた世界経済の変調。下振れや悪化のリスクはどの程度か。先行きをどう見るか。「債券王」の異名を持つ米資産運用会社ジャナス・キャピタル・グループのビル・グロス氏と、中国や世界でビジネスに取り組む中国・国有複合企業最大手、中国中信集団(CITIC)の常振明・董事長に聞いた。
■生産性、世界的に伸びず 米資産運用大手ジャナス ポートフォリオ・マネジャー ビル・グロス氏
――最近、主要国の長期的な低成長を予想して話題になりました。
「米国は今年、3%の成長が可能という人も多いが、私はせいぜい2%と見ている。同じくユーロ圏は2%ではなく1%にとどまるだろうし、日本はプラスになれば御の字だ。最も深刻な要因は、労働生産性の伸びが長期的に低下していることだ。米国でいえば、10年以上前は年2〜3%で伸びていたが、最近はほぼ横ばいにとどまっている」
「世界中の企業が生産性を高めるための投資をためらっているからだ。米企業は今、空前の規模の現金を抱えている。ところが経営者はこの資金を使って自社株を買うだけだ。工場、設備、そしてイノベーションへの投資が決定的に不足している」
「企業が投資をしないのは需要がおぼつかないからだ。お客が製品やサービスを買ってくれなければ、経営者はリスクを取って投資をするわけにいかない。そして、お客が買ってくれない理由は高齢化だ。米国で第2次世界大戦後に生まれた大量のベビーブーマーが引退している。これまでの消費で多額の負債を抱えていることもあり、新たな大型消費には慎重だ。高齢化は欧州や日本でも進んでいる」
――そのような状況で6月、米連邦準備理事会(FRB)は利上げができますか。
「利上げの確率は25%にとどまると読んでいる。イエレン議長はもともと金融引き締めに消極的な『ハト派』だ。米国内だけでなく、新興国への打撃にも神経をとがらせるだろう。新興国はドル建ての債務を多く抱えている。利上げでドルが上昇すれば、債務の返済が重荷になる」
「私は米国が量的金融緩和を復活させる可能性が50%の確率であると見ている。量的緩和を実施している他の主要な中央銀行もこの政策を長く続けるだろう。世界の需要不足は構造的だ」
「低金利、さらには欧州や日本が導入したマイナス金利の負の側面を中央銀行が理解しつつある。銀行も保険も年金基金も、利ざやの縮小や運用難で打撃を受けている。これらの社会的な機能が行き詰まれば資本主義は回らない。利下げに限界がある以上、唯一残る手は量的緩和だ。副作用があるのは事実だが、『毒性』は比較的弱い」
――市場関係者は中国経済の減速が世界景気の重荷になるのではと気にしています。
「投資主導から消費主導への移行は可能だと思うが、消費に火が付くまでには時間がかかる。結局景気の失速を避けるために、投資を続けていくのだろう。その結果、かつての日本のように、行き先の無い橋のような非生産的な建造物が生まれないか。私は中国が世界景気を支え続けるとは思っていない」
「中国は社会保障制度を充実させる必要がある。今は老後を心配して貯金をしている人々が、安心して消費できるように。だが、制度を作るには何年もかかる。これらの構造的な問題に気づいているのはほかならぬ中国の人々だ。大量の中国マネーが米国にもカナダにも逃避している」
「情報開示の不足もあり、中国経済の実態はわかりにくい。だからこそ、企業の倒産動向には注目している。借りたお金が返せなくなるのは、経営者による当初の見込みほど経済が成長していない証拠でもあるからだ。政府からの支援があるとしても、いずれ限界が来るだろう」
――日本の「アベノミクス」に対して冷ややかな声が広がっています。
「目的は果たしていないかもしれないが、第1の矢である金融政策、第2の矢である財政政策はそれぞれ方向を間違っていなかった。やらなかったら深刻な景気後退に陥っていただろう。ただ、構造改革という第3の矢はまだ放たれたように見えない」
「消費税増税の再延期は正しいと思う。世界では、消費者心理を刺激して需要を喚起するために、大量の資金を供給する『ヘリコプター・マネー』すら活発に議論されている。増税は逆に、マネーを掃除機で吸い取るようなものだ。少なくとも、今の局面で取るべき政策ではない」
「日本経済が再起動するには円安が欠かせない。問題は、どのようにして実現するかだ。円安は米国が望んでおらず、日本との利害の衝突もここにきて表面化した。爆弾のない戦争のようなもので、投資家がもっとも嫌う不確実性だ。政策を協調する道を探ってもらいたい」
Bill Gross 米ピムコを世界的な運用会社に育てた。14年に移籍したジャナスには第一生命保険も出資。72歳。
◇ ◇
■中国の企業淘汰に時間 中国中信(CITIC)董事長 常振明氏
――中国経済の先行きに世界が注目しています。
「地域や業種によって差が大きく、中国経済を一言で言い表すのは難しい。当社のビジネスを通して見ても、大都市である深圳の景気は非常にいいが、東北地方からは成長に向けての厳しい現実が伝わってくる」
「地域ごとに産業の基盤が異なるからでもある。重工業を基礎にしている地域は厳しい。東北地方への逆風も、この地域に集まっている冶金や石油化学などの伝統的な重工業が受注を非常に減らしているからだ。製品がだぶついている。政府が投資主導から消費主導への移行を軸にした構造改革を打ち出しているのもこのためだ」
――政府は経営不振の「ゾンビ企業」を淘汰する方針も鮮明にしましたが、副作用もありそうです。
「活力や競争力を失っている企業は市場メカニズムを使って退場を促さないと生産の過剰は収まらない。ただ、この問題はすぐに解消することはできない。失業が増え、社会問題に発展しかねないからだ。時間をかけて、段階的に進むことになるだろう」
――春以降、政府がインフラ投資を増やしているのは、このような改革に伴う衝撃を吸収するためですか。
「そうだと思う」
――伝統的な産業は今後どうなっていくのですか。
「生き残るには、数量を増やす経営から質を追う経営に変わらなければならない。当社でいえば、重機部門の受注は全体で見ると確かに減っている。しかし鉱山での安全な操業に用いる新しい特殊ロボットの受注は増えている」
「言い換えれば、旧来の伝統的な産業でも新しい技術を用いれば再生できる。当社も伝統的な事業を多く経営しているが、そのような事業でイノベーションを起こしていきたい。インターネットの活用がカギを握るだろう」
――中国の景気減速は世界的な資源価格の下落をもたらし、資源の輸出国にも打撃を与えています。
「経営者として注意深く観察している。中国の需要が減少するという不安とドル高(によるドル建て価格の低下)が、資源価格が低迷した原因だと考えている。ただ、銅、アルミニウム、鉄鉱石などは将来的に価格が回復していくと予想している」
「中国は大きい国だ。国内でのインフラ建設の需要は引き続き強い。空港の数1つ取っても、中国は米国に大きく見劣りしている。建設には資源が必要だ。他の新興国も注目に値する。インドの人口は10億人を上回り、東南アジアも、合計で6億人の人口を抱える。中国と同じようにインフラの需要が根強い」
「供給を見ると、中国国内での資源開発は今後はあまり増えないだろう。(人件費の高騰などで)開発コストが上昇して採算が合わなくなっているからだ。中国は資源の海外依存度を高め、国際価格を押し上げるだろう」
――米連邦準備理事会(FRB)が昨年末に利上げを開始しました。利上げのペースをどう見ていますか。
「慎重に進めざるをえないと思う。米国は11月に大統領選挙を控えている。利上げで景気の足を引っ張って、選挙期間中に物議をかもしたくないだろう。実体経済を見ても、米景気は悪いとはいえないが、まだ回復途上だ。世界の投資家は、中国の不良債権問題などにも疑心暗鬼になっている。このように市場心理が萎縮している中で利上げをするのは簡単ではない」
――世界経済についてはどう考えますか。
「分極化ともいえる不安定な状況だ。米国はまずまずだが欧州景気は停滞している。日本も成長のスピードが非常に遅く、それほど良い方向に向かっていない。新興国には資源価格の下落で傷ついているところも多い」
「さほど良くないといえる世界景気だが、それは世界でビジネスを展開している当社にとっての経営環境でもある。当社は多くの業種を手掛けているが、これからは合理化を進めていくつもりだ」
「業界のリーダーになれる業種は今まで通り続けていく。しかし、そうでない業種は逆に経験豊富な業界のリーダーと手を組んで、弱点を補完していきたい。中国国内はもちろん海外でもこの方針だ。伊藤忠商事、タイのチャロン・ポカパン(CP)グループとの提携もその結果であり、いくつかの協力案件の検討が進んでいる」
Chang Zhenming 日本通で、1980年代には大和証券などで半年間の研修も受けた。囲碁はプロ級の腕前を誇る。59歳。
◇ ◇
〈聞き手から〉「新たな常識」模索続く
「常識では考えにくいことが起きている」。世界経済の現状認識について、グロス氏は繰り返し強調した。世界的に生産性の低迷が長引いていることや、日欧で異例のマイナス金利の導入が進んだことなどだ。長引くリーマン危機の影響に加え、先進国で高齢化が現実の問題になってきたことなどが原因に浮かぶ。
中国の苦境もリーマン危機を抜きに語れない。巨費を投じた危機後の景気対策が、過剰設備となってのしかかる。投資主導から消費主導への構造改革を時間をかけて進める点、改革に伴う悪影響は政府がインフラ投資で吸収する点で2人の見方は一致する。
だが、結果の予想は異なる。インフラ需要が多いという常氏に対し、グロス氏は無駄な投資が繰り返されると恐れる。その先にあるのは銀行の不良債権の増加をはじめとする「日本化」への懸念だ。
世界経済は「ニューノーマル(新たな常識)」の模索が続く。政策当局者も投資家も試行錯誤を繰り返すだろう。
(編集委員 梶原誠)
[日経新聞6月5日朝刊P.9]
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