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老後資金づくりに大切なのは支出のコントロール(写真はイメージ、提供:アフロ)
老後生活は支出コントロールが肝心 無駄なリフォーム、買い物を防ぐには?
https://thepage.jp/detail/20160602-00000008-wordleaf
2016.06.05 10:00 THE PAGE
老後資金を作るのはお金を稼いだり、貯めたりすることだけではありません。支出をコントロールするということも極めて重要なことです。支出を抑制する最大のポイントは、保険やローン、家賃といった固定費を減らすことであることは言うまでもありません。しかしながら、スポットで大きな買い物をする場合もおおいに気を付けるべきことがたくさんあります。
■誰もが陥りがちなわなに注意!
具体的には家のリフォームの場合、勧められるままにおこなうのではなく、複数の業者から見積もりをとって判断することが大切だということはよく言われることです。これは全くその通りで、いわば市場価格を調査しておかないと吹っかけられてしまいかねないからです。また金銭的な面だけではなく、もし悪質な業者であれば施工内容も不安ですから、その評判を聞いたり、実績を調べたりすることも必要です。
ところが仮に業者の選定が上手くいった場合でもその後、実際にリフォームを始めると予算をオーバーしてしまうことがしばしば起こります。この理由はなぜなのでしょうか?
これは人間が誰しも陥りがちな心理的なわなに原因があります。例えば、よくありがちなのが、リフォームをやっていくうちに「せっかくだから、ここも直そうか」とか、「ついでにここもやっておこう」と安易に直す箇所を増やしてしまうことです。こういう気持ちになるのは2つの心理的な要因があります。一つ目の要因は「リファレンス・ポイント(参照点)」と言われるものです。
例えば、リフォームを進めていくうちに「内装を変えたのですから、こんなドアに取り換えた方が全体によくマッチしますよ」といった具合に当初は予定していなかった部分を施工業者が提案してくることがあります。仮にリフォーム全体の予算が300万円で、提案された新し新しいドアの取り換えに3万円かかるとします。全体の金額が300万円ですからそこに新たに3万円が上乗せされてもその割合はせいぜい1%程度。これならたいしたことはないかな?と感じてしまい、「せっかくの機会だからついでに」と、つい追加してしまうのです。ところがこういった案件がいくつも重なった場合、当初の予算を2割も3割もオーバーしてしまうということが起こりがちです。
さらに困ったことに、リフォームで部屋が新しくきれいになると、家具もつい新しいものにしたくなってしまうという気持ちが起こることです。心理学では「ディドロ効果」と言って、新しいものやよいものを買うと、それに合わせてまわりの物も新しい良いものに統一したくなるという心理をいいます。例えば女性が新しい高価なドレスを買うと、それに合わせてアクセサリーも高価なものを身に着けたくなります。男性が新しい車を買い替えると、キーケースとか、カーアクセサリーについても新しいもので揃えたくなるのと同じ気持ちです。このようにしてリフォームを進めていく内にあそこもここもということになりがちなのです。
リフォームを考える上で大切なことは「よいかどうか」ではなくて、それが「必要かどうか」で考えることです。我が家ではリフォームにあたっては、どこを優先するか、どこを手直しすることが必要かということを妻と徹底的に検討しました。その結果、明確に優先順位が決まり、予算もオーバーすることはありませんでした。
■無駄遣いを防ぐキーワードは「それが必要かどうか」
そんな検討の中で、リフォームを機に子どもたちが独立して使われていなかった2階の部屋を書斎にしようと決めました。私が退職して起業した後は書籍やコラム原稿など、家で執筆する仕事が中心となってきたからです。私のところは娘2人でしたから、子ども部屋はいかにも女の子らしい、花柄の壁紙の部屋です。そんな部屋をリフォームするにあたっては、「どんな書斎にしようか」と夢が膨らみました。「机はマホガニー? 壁紙は英国調のシックなのがいいな」などと勝手に妄想を膨らませていましたが、妻からの冷静なひと言「別に変える必要はないでしょう。変えたからと言って良い原稿が書けるの? ずっとパソコン相手に原稿書いてるんだから壁紙変えたって同じでしょ」と言われて、ふと我に返りました。くやしいけどその通りです。豊富に予算があればそれもいいでしょうが、限られた予算でやるためには、優先順位が大切で、その時に最も大切なキーワードは「それが必要かどうか」ということです。
ただ、これはリフォームだけに限りません。お金を使うとき、ものを買うとき、それが高額であるほど、“よいかどうか”で決めるべきではありません。よいかどうかで考えたらそれは、よいに決まってます。大切なことは、「なぜ、それを買う必要があるのか」、「それが本当に必要なのかどうか」を考えることです。
いくらお金を稼いだり貯めたりしても、出るほうをきちんとチェックしていかなければ何にもなりません。老後資金の作り方は“出ずるを制す”方から始めていったほうがよさそうです。
(経済コラムニスト・大江英樹)
日本証券アナリスト協会検定会員、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、行動経済学会会員。著書に『定年楽園』『その損の9割は避けれる』(三笠書房)『老後貧乏は避けられる』(文化出版局)『はじめての確定拠出年金投資』(東洋経済新報社、6月10日に発行予定)がある。
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