http://www.asyura2.com/16/hasan109/msg/405.html
Tweet |
世界はデータで見れば明らかに良い方向へ向かっている
http://diamond.jp/articles/-/92345
2016年6月3日 出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長兼CEO] ダイヤモンド・オンライン
G7伊勢志摩サミットは無事に全ての日程を終えた。三重県生まれの身としては、何だかとてもうれしいし、また誇りにも思う。最後に行われたオバマ大統領の広島でのスピーチも胸を打つすばらしいものだった。ところで、サミットでは、低成長のリスクや拡大した地政学的な紛争、テロ及び難民問題などが話し合われたという。いずれも決して明るい話題ではない。私たちの世界は悪い方向に向かっているのだろうか。否、決してそうではない。世界は具体的なデータを見ると明らかに良い方向に向かっているのだ。
■G7やG20は国連を中核とした
正規の世界システムのバイパス
ところでG7とは何だろう。一言で言えば、アメリカ、EU、日本といういわゆる自由主義諸国の経済3極の首脳会議といっていいだろう。しかし、新興国の台頭によりG7の世界のGDPに占めるシェアが過半を割り込んだので、現在では別名、金融サミットとも呼ばれるG20(有力20ヵ国が参加。20ヵ国合計で世界のGDPの90%ほどを占める)が、金融や世界経済に関する司令塔の役割を担っている。
ただG7やG20は、全世界を網羅している訳ではないので、国際連合や国際通貨基金(IMF)、世界銀行など現在の世界を動かしている正規の世界システムの、いわばバイパスを担う役割を果たしているのだと考えていいだろう。現に、G7伊勢志摩首脳宣言では、国連の2030アジェンダや昨年採択された気候変動に関するパリ協定(COP21)など、正規の世界システムが定めた目標を尊重する姿勢を明らかにしている。
■世界経済に低成長のリスクは?
IMFの最新データを見る
世界経済は低成長のリスクに晒されていると言われるが、まず最初にIMFの最新(2016年4月)の世界経済の見通しをチェックしておこう。
2017年の日本がマイナス成長になっているのは消費税の引き上げを見込んでいるからだが、消費税を考慮に入れなくても、この3年間、世界の中では日本の成長率が突出して低いことが明らかである。これは、おそらく人口の減少に加えて、生産性の向上(≒働き方の改革)が実現していないことが主因であろう。
世界経済は2016年が3.2%、2017年が3.5%伸びると予測されている。これがどの程度低成長のリスクに晒されているのか、ここは識者によって意見の分かれるところであろう。ちなみに世界の実質GDP成長率のトレンドラインを見ると、1970年の3%強から2005年前後に4%を少し超えたと言われていることを付言しておこう。
■国連サミットで採択された
2030アジェンダとは何か
G7の首脳宣言でもコメントされた2030アジェンダとは何か。これは2001年に国連で策定された「ミレニアム開発目標」(MDGs:Millennium Development Goals)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された2016年から2030年までの「持続可能な開発目標」(SDGs: Sustainable Development Goals)のことである。貧困を撲滅し、持続可能な世界を実現するために17のゴール・169のターゲットが掲げられているが、MDGsからSDGsに至るプロセスで世界がどのように変化したのかを概観しておこう(数値は2016年5月9日付朝日新聞朝刊による)。
(1)1日1.25ドル未満で生活する極度の貧困層は、1990年の19.26億人から(世界の人口が90年の53億人から2015年の73億人へと増えているにもかかわらず)2015年には8.36億人へと半減以下に減少した(割合で述べれば36%から11%への減少)。アジェンダではマイクロファイナンスなどの提供を通じて2030年には0人という目標を掲げている。貧困こそが社会の不安定の根本原因であることを考慮すると、この4半世紀で最貧困層を半減させたことは偉大な成果と言っていいだろう。世界は明らかに良い方向に向かっているのだ。
(2)5才未満児の死亡率は出生1000人あたり90人(1990年)だったものが、2015年には43人へとこれも半減した。アジェンダではワクチン接種の普及や改良などで2030年には25人以下を目指している。
(3)若者(15〜24才)の識字率は1990年の83%から2015年には91%まで上昇したが、アジェンダではスマホ等の活用によるSMS(ショートメッセージサービス)教育を普及させることにより2030年には100%を達成したいとしている。
(4)安全な飲料水を得られない人は1990年の12億人が、2015年には6億人へとこれも半減した(割合は23%から8%へと低下)。これをアジェンダでは汚れた水をきれいな水に変える濾過ボトルの活用等により2030年には0人にしたいと目論んでいる。
(5)栄養不良人口は、1990〜92年の10.11億人が、2014〜16年には7.95億人へと減少する見込みである(割合は19%から11%へと低下)。アジェンダでは難民への効率的な食糧支給等により、これも0人を目標としている。
(6)女性に平等なリーダーシップの機会を与えるべく、アジェンダでは各国の下院の女性議員の割合を2030年には男女イコールを目指している。1995年には11.3%だった女性議員の割合は2015年には22.1%まで上昇しているが(ただし日本は11.6%で大きく遅れをとっている)、この目標を達成するためにはクォータ制など思い切った施策を行う必要があろう。
(7)電力を利用できない人は1990年には20億人を数えたが、2015年には11億人以上と、これもほぼ半減近くまで減少した(割合は38%から15%へと低下)。アジェンダではすべての人に現代的エネルギーへのアクセスをということでこれも0人という目標を置いている。小水力発電や太陽光発電を貧困地域に普及させることがカギとなるだろう。
以上、世界が確実に良い方向に向かっていることを述べてきたが、もちろん良いことばかりではない。テロによる犠牲者数は2005年の1万4482人から2014年の3万2727人へと2倍強増加しているし(米国国務省HPより。なお、イラク、ナイジェリア、アフガニスタン、パキスタン、シリアの上位5ヵ国で約80%を占めている)、難民等の数は2004年の2170万人から2014年には6040万人へとほぼ3倍増を示している(外務省HP)。難民の約半分が18才未満の子どもであることを知ると本当に心が痛む。難民の発生国は内戦の続くシリアとアフガニスタンが群を抜き、続いてソマリア、スーダン、南スーダンの順となっている。また、エイズ関連の死者数も1990年の32万人が2014年の120万人へと急増している。
しかし、国連を中心に地道な取り組みが奏功して、全体としてみれば私たちの世界は確実に良い方向に向かっているのだという大きな流れを見誤るべきではないだろう。
(文中、意見に係る部分は、筆者の個人的見解である)
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民109掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。