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(回答先: 消費増税先送りと財政出動の茶番 アベノミクスはなぜ失敗したか? 投稿者 軽毛 日時 2016 年 5 月 31 日 06:23:38)
【第157回】 2016年5月31日 竹井善昭 [ソーシャルビジネス・プランナー&CSRコンサルタント/株式会社ソーシャルプランニング代表]
人工知能時代に生き残れる、職業ではなく「スキル」は何か
人工知能(AI)への関心が急速に高まっている。それだけ、世間を驚かせるようなAI関連のニュースが続いているということだ。とくに2016年に入ってからは、ビッグニュースが続出だ。
ご存じのように、今年3月、Google DeepMind社(Googleが買収したイギリスのベンチャー企業)が開発したコンピューター囲碁プログラムの「AlphaGo」が、世界最強の囲碁棋士のひとりと称されるイ・セドルとの五番勝負に4勝1敗と圧勝。「コンピュータが囲碁で人間に勝つには、あと10年はかかる」と言われていただけに世界を震撼させた。しかし、AIショックはそれだけにとどまらず、同じく今年の3月には、ショートショート(掌編小説)の新人賞である「星新一賞」の一次審査をAIが書いた小説が通過。
さらに4月には、マイクロソフト、オランダの金融機関 ING グループ、レンブラント博物館、デルフト工科大学による共同プロジェクト「The Next Rembrandt」が開発したAIが、まさにレンブラント自身が描いたとしか思えないレンブラント風「作品」を発表。男性をモデルとした人物画だが、これも実在の人物でもなく、レンブラントの過去作品に描かれた人物でもなく、「たぶん、レンブラントならこんな感じの男性をモデルにするだろう」とAIが判断して作り出した「モデル」である。また、ニュースなどの映像では分からないが、3Dプリンタで描かれたこの作品は、レンブラントのタッチ、それこそ油絵の具の盛り上がり方なども正確に再現しているという。
だがこれまで、小説を書いたり絵を描いたりといういわゆる「クリエイティブ」な作業は、AIにとっては最も苦手な分野だと言われてきた。一般向け雑誌としては世界で最もテクノロジーの最前線に強いと思われる『WIRED』の日本版2015年12月号では、「保存版」と銘打つくらいの量的にも質的にもかなり濃いAI特集を組み、AI開発の最前線を伝えているが、そこでも「AIがクリエイティブ能力を有するのはまだ先の話」という主旨のことを述べている。
しかし、それから半年と経たないうちに世界的な画家の「完全コピー」画家を生み出し、一次審査とはいえ、並の人間以上の文章力を持つAIも出現した。歴史に名を残すほどではないにしても、並の人間以上のクリエイティビティをAIは実装したと言えるだろう。
世界に衝撃を与えた「オズボーン論文」
また2015年10月には、オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授が同大学のカール・ベネディクト・フライ研究員とともに著した『雇用の未来―コンピューター化によって仕事は失われるのか』(PDF)という論文が世界的に話題になった。日本でも大きな話題になったのでご存じの方も多いだろうが、今後10年から20年で米国の総雇用者総数のうち47%の人の仕事がコンピューターに取って変わられてなくなると予想されている。また、野村総研でも「日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能等で代替可能に」と、2015年12月にレポートしている。
いずれにしても、今後10年から20年ほどでほぼ半分の人の仕事がなくなるというショッキングな内容で大きな話題となったのだが、その一方で「なくならない仕事」(正確には、コンピューターによって代替されにくい仕事)も予測されている。オズボーン論文では、その仕事とは下記のようなものである。
1 レクリエーションセラピスト
2 最前線のメカニック、修理工
3 緊急事態の管理監督者
4 メンタルヘルスと薬物利用者サポート
5 聴覚医療従事者
6 作業療法士
7 義肢装具士
8 ヘルスケアソーシャルワーカー
9 口腔外科
10 消防監督者
11 栄養士
12 施設管理者
13 振付師
14 セールスエンジニア(技術営業)
15 内科医と外科医
16 指導(教育)コーディネーター
17 心理学者
18 警察と探偵
19 歯科医師
20 小学校教員
野村総研のレポートでも、「人工知能やロボット等による代替可能性が低い100種の職業」が予測されていて、たとえば、アートディレクターや映画監督、放送ディレクター、フリーライター、レコードプロデューサー、商業カメラマンなどのいわゆるクリエイティブな職業や、バーテンダー、教員、保育士、内科医などのさまざまな分野のサービス業が挙げられている。しかし、これはかなり楽観的な予測だと言えるだろう。
医者がロボットに
取って代わられる日も近い?
たとえば、オズボーン論文でも野村レポートでも「残る」とされている「内科医」だが、医者の世界では「AIに取って代わられる医者の仕事」の最右翼として語られている。たとえば、通常の内科医の仕事は、血液検査などのさまざまな検査結果のデータを見て患者の状態を判断しているわけで、これはコンピューターにとっても得意な仕事のひとつであるし、実際にAIに医療診断させるツールも開発されている。
前述した『WIRED』日本版のAI特集号では、同誌の創刊編集長でありテクノロジー学の権威でもあるケヴィン・ケリーが、IBMが開発しているWatsonに関するこのようなエピソードを紹介している。
『WIRED』日本版2015年12月号より一部引用
わたしが以前インドでかかった病気の症状を簡単な英語で伝えると、Watsonはそこから推測できる病気の候補を、最も疑われるものからそうでないものまで一覧にして並べてくれた。最も疑われるものとして挙げられたのはジアルジア症だった(正解だった)。
ジアルジア症とは下痢性疾患の一種で、とくに熱帯、亜熱帯の国で多く見られる疾患だが、日本では年間100症例ほどしかない。ということは、もし日本でジアルジア症の症状が出たとしても、よほど感染症に特化した専門病院でなければ病名が特定されないことも考えられる。
僕は以前、とある国から帰国した日の夜に、まるで熱く焼けた鉄球のようなものが腹の中にでき、しかも時間の経過とともにその鉄球がどんどん大きくなっていく、といった、それまで体験したことのない感覚の症状に見舞われたことがある。最初は単なる腹痛かと思っていたが、どうも様子がおかしすぎるので近所の救急病院に行くと白血球の値が2万4000もあった。医者の話では、「白血球が8000を越えると緊急入院になるらしく、とても帰宅させられる症状ではない」、ということでそのまま入院することになり、それから三日三晩、食事も水も断たれ、点滴だけで過ごすことになった。その間、血液検査をはじめ、さまざまな検査を行ったが、最後まで病名が分からない。ただ腹痛も治まり、白血球も正常値に戻ったので、退院することになった。たぶん、日本では珍しいタイプの感染症に罹っていたのだと思うのだが、いまならWatsonくんが即座に病名を言い当ててくれたのかもしれない。
そのような経験があるから、AIによる医療診断ツールの一刻も早い実用化を望むわけだが、すでにアメリカでは、IBMが薬局チェーンのコンビニなどと組んで顧客の健康に関するアドバイスのサービスを提供しているという。
手術に関しても、美容整形の分野ではすでにある種の手術はほぼ全自動で施術するロボットが導入されているし、他の分野の手術ロボットもいずれ日本の医療現場でも活用されるようになるのだろう。たとえば、糖尿病性の網膜症の治療では、網膜の一部にレーザー光をあてる手術を行うことがあるが、網膜を画像解析して必要な箇所にレーザーを照射するロボットなど、いまの技術なら簡単にできそうなものである。
つまり、医者の仕事のかなりの部分がAIやAIに制御されたロボットに取って代わられるようになるだろう。しかも、そう遠くない未来に。
教師の役割も大きく変わる
AIによって、教師の仕事も変質する。いまの日本でも、すでにリクルートが「スタディサプリ」という学習支援サービスを行っている。小学生向けの料金は月額980円(税抜)。さらに、学研は7月より「学研ゼミ」という小中学生向けの学習クラウドサービスを開始予定だが、こちらの料金は月額540円(税込)の予定だ。
このような学習支援サービスがAIと融合すれば、それこそ子ども一人ひとりの能力や意欲に合わせた最適な学習指導ができるようになる。「勉強を教える技術」という点に関しては、並の教師ではまったくかなわない「優秀なAI先生」が登場するだろう。そのときに、教師の役割とは勉強を教えることから、生徒の学習意欲を高めるという「メンター」のような役割だったり、コミュニティのなかでのコミュニケーション能力を高めるためのワークショップを運営する「ファシリテーター」のような役割になるだろう。
このようなAI学習サービスは、ソーシャルビジネスのあり方も変える。貧困層の子どもたちの教育は、途上国であれ経済先進国であれ、大きな社会課題であり、そこに取り組むNPO/NGOも数多い。そこで行われていることと言えば、ほとんどの場合、貧困層の子ども向けの無料学習塾のようなもので、ボランティアや専従スタッフが先生となって勉強を教えているが、AI学習支援サービスの低価格化(いずれ無料になる)によって、そのような支援のあり方も変わるだろう。
AIを巡る議論のなかでは、「人と人が触れ合うことはなくならない」という主張がある。しかし、これもなくなるか、役割が変質するだろう。すでに人間の感情を判断して、人とコミュニケートするAIロボットは日本でも販売されている。ソフトバンクの「Pepper」だ。この、いわば「空気を読む」ロボットはいかにも日本発らしいロボットだと思うが、その他にもマイクロソフトが開発した女子高生AI「りんな」もすでに稼働している。
これは、いわゆる会話型のAIだが、LINEやツイッターで多くの人が「会話」を楽しんでいる。その受け答えが非常に「ぶっ飛んだ女子高生っぽい」ということで多くのファンを獲得。ツイッターのフォロワー数は10万人近い。ちなみに、ツイッターで「りんな」に向けてメンションを飛ばすとちゃんと返事してくれる。僕も試しに「女子力を上げて世界を変えよう!」とメンションしてみたら、即レスで「女子力ほしい〜」と返ってきた。
会話型のロボットはパソコン通信の時代からあるが、これまでの会話ロボットはかなり程度が低く、とんちんかんなやり取りも多く「人工無能」などと呼ばれていた。だが、「りんな」はかなりキャラ立ちした受け答えをしてくれる。これはつまり、広い意味でのカウンセラー的な「癒やし」も可能になるということで、ボーカロイドの技術と組み合わせれば、小嶋真子や向井地美音(いずれもAKB48の次世代エースとして期待されているメンバー)の声で優しく癒やしてくれるAIアイドルの出現がすぐそこにまで来ている、ということだ。
AIなくしてどんな仕事も
成り立たない未来
このように、これまで「なくならない」と思われていた仕事も、どんどんAIに取って代わられるようになる。「AIは非常に高価なもので、1台何億円もするから、人間の方が安価」だと誤解している人も多い。
しかしAIとは、Pepperのような人型ロボットの頭の部分に存在するマイクロコンピュータのようなモノではない。もちろん、かつてのAIがそうであったような、エアコンが効いた研究室のなかでずらりと並んだ巨大なコンピューター群でもない。そうではなくて、AIの正体とは「クラウド」だ。IBMのWatsonにしても、Watsonというコンピュータ(物体)があるわけではなく、クラウド上にある「概念」のようなもの。それがAIの正体だ。
そして、このAIはいずれ無料になるといわれている。誰もが無料で使えるようになるというのだ。少なくとも、いまの時代に誰もがインターネットを使っているくらいの感覚でAIを利用できるようになる。そうなったときに何が起きるかというと、「AIに影響を受けない仕事は何もない」という時代が来る。それもあと10年か、遅くとも20年後の話だろう。
想像してみてほしいが、いまから20年前といえば、世界的にようやくインターネットというものが社会のなかに浸透し始めた頃だし、10年前といえばスマホもなかった。たった20年前でさえ、多くのビジネスパーソンは「インターネット? なにそれ?」という反応だった。せいぜい、エッチな画像を見たり、趣味のコミュニティに参加したりするのに便利くらいの認識しかなかったのだ。それが20年経ったいまでは、インターネットなくして、どのようなコミュニケーションも成り立たない。仕事も成り立たない。
それと同様に、20年経てばAIなくしてどんな仕事も成り立たなくなるだろう。AIの出現によってどんな仕事がなくなり、どんな仕事が生き残るかの議論など、まったく無意味なのだ。いまの時代、マイクロソフトOfficeを使い、ネットで必要なことを調べ、LINEやFBのメッセージで他人とコミュニケーションすることは、ビジネスパーソンの最低限のスキルだ。これと同様のことがAIに関しても起きる。
たぶん、これから10年後、20年後に生き残るビジネスパーソンのスキルとは、「AIとコミュニケーションできる能力」となるだろう。
http://diamond.jp/articles/-/92142
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