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(回答先: 消費増税は本当に延期すべきなのか マイナス金利の効果発現を、いつまで待つか 投稿者 軽毛 日時 2016 年 5 月 31 日 05:56:34)
【第115回】 2016年5月31日 森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
消費増税先送りと財政出動の茶番
アベノミクスはなぜ失敗したか?
茶番の消費増税延期と財政出動
アベノミクスはなぜ失敗したか?
安倍総理は、消費増税の先送りを決断したようだ。それだけならまだしも、財政出動という小泉内閣以降葬られてきた政策を復活する。これ以上の茶番劇は見当たらない Photo:首相官邸HP
安倍総理は、消費増税の2年半後(2019年10月)への先送りを決断したようだ。理由は「世界経済の危機リスクが迫っている」からだという。
最も財政再建の必要な国が、客観的事実とは異なる認識の下で、消費増税を先送りし、それだけならまだしも、財政出動という小泉内閣以降葬られてきた政策を復活する。全てサミットの議論のせいにしてのことだ。これ以上の茶番劇は見当たらない。
2015年度の経済成長は実質0.8%、16年1-3月期の成長は年率1.7%と、わが国はほぼ潜在成長力並みの経済成長を達成してきた。世界経済についても、原油価格の動きや米国経済の動向を見ても、とても危機前夜とは思えない。
それにもかかわらず「消費増税の先送りプラス財政出動」というのは、「消費増税のできる経済環境を整える」はずのアベノミクスが失敗したことを、自ら認めたということと判断せざるを得ない。安倍政権に必要なことは、なぜアベノミクスが失敗したのか、リフレ派の政策をもう一度見直し反省をした上で、次の手を考えることではないか。
この原因解明への真摯な対応は見られず、反省がないまま、さらなる金融政策と財政追加という旧来の政策に戻ることこそ、本当の経済リスクを引き起こすだろう。
筆者は、アベノミクスの失敗の要因をひとことで言えば、「金融政策や財政政策が時間を稼いでいる間に、経済の実力を向上させる政策が行われなかったこと」に尽きると考えている。2012年12月から始まったアベノミクスだが、最初の1年は異次元の金融緩和の効果により円安が起き輸出企業の企業収益が改善、それが株高につながり資産効果も生じ、折からの訪日観光客の増大も加わり、長年デフレ下にあったわが国経済・社会の景色を一変させた。このことは評価したい。
しかし問題は、異次元の金融政策や財政政策が時間を稼ぐ間に、第3の矢である成長政策、つまり供給側の改革が行われなかったことだ。わが国が潜在成長力並みの成長(実力通りの成長)を遂げているにもかかわらず、消費の伸び悩みなどからくる経済の停滞感が生じているのはなぜなのか、それに対する処方箋が、さらなる金融政策の深堀りと財政需要の追加でいいのだろうか、という点こそが問われなければならない。
わが国の経済停滞の原因は、構造的な問題である。高齢化の進展による労働人口の減少、経済基盤が確立せず結婚や子づくりに踏み出せない非正規雇用者などの若者の増加、経済の先行きに確信が持てず設備投資や賃金引き上げを行わない企業経営、といった課題は、2年前に行われた消費増税とは直接関係はないものである。
経済停滞の原因は構造的問題
究極の構造改革は税と社会保障改革
筆者は、税・社会保障改革こそが究極の構造改革(供給側の改革)であるという観点から、安倍政権下でのこの分野における3年間の不作為に焦点を当ててみたい。
まず、女性労働力の活用という面で現実に目を向けるなら、「103万円の壁」の要因となっている配偶者控除の抜本的改革と、「130万円の壁」となっている社会保険料負担の問題の2つを突破することが、最大の課題だ。
図表1を見ていただきたい。妻の所得(給与収入)に応じた世帯所得(可処分所得)の関係を見た内閣府の資料である。103万円のところと130万円のところに大きな段差が見てとれる。これが女性労働(パート)の障害になっている最大原因であり、ここに対して政策を行うことこそが構造改革である。
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配偶者控除の問題は、すでに2年前の政府税制調査会で3つの選択肢が出されている。その後2度の税制改正のチャンスがあったにもかかわらず、何も行われていない。その間、トヨタなど民間のごく一部では、103万円に連動している配偶者手当をやめて、子どもの人数に比例する子ども手当に組み替えるなど、前向きな動きも見られるが、大半の企業では依然として同じ状態だ。「130万円の壁」に至っては、これを打開するという名目で企業への補助金が補正予算で行われているが、個人に配らなければ意味はない。
この逆転現象をなくすには、イギリスやオランダなどが採用している勤労税額控除を社会保険料にも適用し、所得が増えても世帯の負担が増加しないような制度をつくることである。
もう1つは所得・資産格差の拡大への対応である。
余裕のある層(高額の金融資産を持つ富裕高齢層)に負担増を求め、それを余裕のない層、具体的には非正規雇用者、子育て中の勤労世帯、女性労働の中核をなすパートなどの負担軽減につなげていく改革だ。
余裕のある個人や企業により多くの負担を求め、負担に耐えられない企業・個人の負担は軽減していく。これにより、全体として人々や企業の活動・勤労意欲を引き出すことにより、経済・社会に大きな変化が起きる。これが供給側の構造改革だ。
場当たり的に金をばら撒く
ポピュリズムから脱却せよ
安倍政権の特色は、国民に苦い薬を飲ませる政策はいかなる意味でも避ける、というものだ。場当たり的に政策メニューを増やし、金をばら撒く(財政出動)という単発的な政策を行ってきたが、効果が現れていないのは前述のとおりである。まさにポピュリズム政権である。
連載第111回で見たように、アベノミクスの結果、わが国の中間層はやせ細った。中間層の分裂・二極化は社会にボディーブローのように大きな変化をもたらす。そのことは、米国の大統領選挙を見れば明らかだ。
サミットで合意された政策でわが国に必要なことは、財政政策ではなく構造改革だ。
http://diamond.jp/articles/-/92158
- 人工知能時代に生き残れる、職業ではなく「スキル」は何か 軽毛 2016/5/31 06:31:55
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