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(回答先: 留学する学生を助けるなら貧しい学生も助けてほしい ますます家計を苦しめる教育費、今こそ「給付型奨学金」の実施を 投稿者 軽毛 日時 2016 年 5 月 20 日 08:16:05)
生活保護のリアル〜私たちの明日は? みわよしこ
【第49回】 2016年5月20日 みわよしこ [フリーランス・ライター]
生活保護なら義援金は受け取れない、は本当か
熊本地震から1ヵ月が経過し、義援金・仮設住宅などの支援が本格化してきた。義援金を受け取り、生活再建に役立てることは、生活保護世帯にも可能なのだろうか?
熊本地震の被災者支援は
生活保護世帯も同様に受けられるのか?
全国から集められる義援金、生活保護世帯は受け取れないとの噂もあるが、実際はどうなのか?
2016年4月16日、熊本地震の本震が発生してから、1ヵ月以上が経過した。避難所生活を送る人々の人数は、4月17日には約18万4000人であったが、5月18日には9907人となり、初めて1万人を下回ったという(読売新聞記事:熊本の避難所の人数、初めて1万人下回る(2016年5月18日))。罹災証明の発行、仮設住宅の建設、義援金の配布など、生活再建に向けた支援も開始され、進行しつつある。
今回と次回は、被災した生活保護世帯・被災によって生活保護を利用することになった世帯に対する被災者支援について、厚労省方針・実際の運用・必要な手続き・新たに発生する問題を検討してみたい。
なお厚生労働省は、発災から約10日後の2016年4月27日、社会・援護局保護課保護係長事務連絡「平成28年熊本地震による被災者の生活保護の取扱いについて」を発行している。内容は、2011年3月から5月にかけ、東日本大震災に際して発行された厚生労働省社会・援護局保護課長通知3件に「準じて」、今回の熊本震災に関連する生活保護行政を取り扱うというものだ。ただし、一般市民が一読して誤解なく理解できる内容ではない。既に運用・報道などに混乱も見られているようだ。
このため生活保護問題対策全国会議は、「Q&A 震災と生活保護【2016年 熊本地震版】」を作成し、2016年5月18日に公開している。
今回は、震災被災者向け支援と生活保護の関係のうち、特に義援金について、弁護士の小久保哲郎氏(参照:http://diamond.jp/articles/-/28031)・倉持恵氏(参照:http://diamond.jp/articles/-/79717)、生活保護ケースワーカー業務に携わる一方で生活困窮者支援ボランティアを続けてきた觜本郁(はしもと・かおる)氏(NPO法人神戸の冬を支える会)に、制度と運用の両面からお話を伺った。
「生活保護なら義援金は受け取れない」「生活保護で義援金を受け取るには、条件があったり、受け取れる金額の上限があったりする」という世間の噂は、どこまで事実なのだろうか?
生活保護世帯も義援金を受け取れるが
「自立更生計画書」は必要
まず、生活保護制度の公式ルールブックである「生活保護手帳」を見てみよう。最新の2015年版を見てみると、「保護の実施要領 第8 収入の認定」に、「収入として認定しないものの取扱い」がある。収入として認定されると、生活保護利用者の手元には残らないことになる。もしも「生活保護世帯が義援金を受け取ったら収入認定される」のであれば、受け取っても意味はないということになる。
しかし、そこには、収入として認定しないものが17項目にあたって列挙されている。17項目のうち災害に関連するものは、
「ア 社会事業団体その他(地方公共団体及びその長を除く。)から被保護者に対して臨時的に恵与された慈善的性質を有する金銭であって、社会通念上収入として認めることが適当でないもの」
「オ 災害等によって損害を受けたことにより臨時的に受ける補償金、保険金または見舞金のうち当該被保護世帯の自立更生のために当てられる額」
の2項目だ(太字は筆者による)。この2項目のいずれかに該当すれば、義援金は収入認定されず、全額を生活保護世帯の生活再建に活用できることになる。
「本来、義援金や見舞金は、『ア』の方に該当するものですから、無条件で収入認定除外すべきであると考えています。阪神・淡路大震災の際、第1次義援金10万円はそのように取り扱われました」(觜本さん)
厚労省が用意している「自立更生計画書」のフォーマット。生活再建のために何にどの程度の費用が必要か、概算でも記入して提出することが、義援金・補償金などを受け取る生活保護世帯に求められる
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しかし東日本大震災以後は、「自立更生計画書」が必要になった。上記「オ」の方に該当するものと考えられるようになったのだ。生活保護世帯だからといって収入認定すれば、「被災者の方々のために」という志で集められた義援金を、国が吸い上げてしまうのと同じことになる。しかし「無条件でOK」ということにもしたくない……という厚労省の苦悩の表れだろうか?
福島県で、原発事故による避難事例も含め、被災した生活保護世帯多数を支援してきた倉持さんは、
「東日本大震災では、義援金も、東京電力の賠償金などの補償金も、生活保護世帯では『自立更生計画書』の提出が必要でした。ただ、厚労省の用意したフォーマットに『避難費用 ○万円』『進学費用 ○万円』のように、ざっくりと記載されたご家庭も多かったようです」
という。いきなりの地震・津波・原発事故、そして避難を余儀なくされる状況の中で、「何に何円必要」と細かく考える余裕は、生活保護の利用の有無にかかわらず、誰にもなかったであろう。
生活保護世帯の場合
受け取れる義援金等に上限はあるのか?
ここで気になるのは金額だ。生活保護世帯の場合、実質的に受け取ることのできる義援金等の金額に、上限はあるのだろうか?
「東日本大震災の際、福島県内の被災世帯に支給された一次義援金は40万円でした。『40〜50万円程度は包括計上(ほぼ、「とりあえず受け取れて自由に使える」)が許される』という理解でよいのではないかと思います」(倉持さん)
注意が必要なのは、「包括計上できる金額」が受け取れる金額の上限というわけではない点だ。
「福島県内では、その後、避難地域以外でも東電が賠償金を支払いました。大人一人8万円、18歳以下と妊婦は一人40万円(避難していればさらに追加が20万円)です。生活保護世帯では、自立更生計画書の提出が求められたので、各世帯が提出しています」(倉持さん)
それ以前は、どうだったのだろうか?
「阪神淡路大震災では、全壊の場合、第1次義援金(10万円)、県市見舞金(7万円)、第3次義援金(15万円)、住宅義援金(30万円)、被災者自立支援金(37万5000円〜120万円)などで、合計130〜180万円を受け取ることができました。収入認定されたという例は、ありませんでした」(觜本さん)
第1次義援金以外は、自立更生計画書の提出が必要だったということだが、生活保護世帯が受け取れる義援金・見舞金・補償金の金額に関する上限は、基本的に「ない」と考えてよさそうだ。これらは「災害により困難を抱えた」ことに対する給付である。災害による困難は生活保護利用であろうがなかろうが同様であることを考えれば当然であろう。生活保護を利用していた場合、災害以前の生活が「最低限度」であり、災害によって「最低限度以下」となっているのであるから、私としては「むしろ生活保護利用世帯に対する割り増しも考えられてよいところではないか」と思う。
なお、避難所にいて受け取った炊き出し・救援物資などの現物は、収入認定されないこととなっている。冒頭で紹介した厚労省の事務連絡「平成28年熊本地震による被災者の生活保護の取扱いについて」の4ページに添付された「東北地方太平洋沖地震による被災者の生活保護の取扱いについて(その2)」を見ると、避難所にいることを理由とした生活費(生活扶助)の減額はなく、自分の住まいで生活している場合と同額とされている。やや分かりにくいのだが、「避難所で提供されている食事や物資は、保護費以外の特別な収入とはみなさない」ということである。
被災によって生活保護が必要になった場合
義援金が足かせになることも
災害以前から生活保護を利用しており、被災によってさらなる困難を抱えた場合には、生活保護に加え、義援金・補償金も利用しながら生活を再建していくことになる。
では、被災以前は生活保護を必要としていなかった場合には、どうなるのだろうか? そもそも、避難生活中に生活保護を申請することは可能なのだろうか?
「阪神・淡路大震災の際は、避難所での生活保護は認めないという取り扱いがなされ、『生活に困窮している人がいたら保護しなくてはならない』という原則とのダブルスタンダード状態になっていました。東日本大震災では、この点が3つの通知(厚労省事務連絡『平成28年熊本地震による被災者の生活保護の取扱いについて』に添付)によって改善され、避難所にいる状態でも生活保護の利用を開始できたはずなのですが、認められなかった事例が多いようです」(觜本さん)
「厚労省の通知にもかかわらず、実際には避難所での生活保護適用等の実例は、なかなかありません。現実上のハードルは、未だ高いということですね」(小久保さん)
申請すれば、既に受け取った義援金・補償金などの手持ち金が問題になる。生活保護費のうち生活費分(熊本市では41歳単身者で7万2450円)を超える現金・預金があるのなら、福祉事務所の窓口では「そのお金がなくなりそうになったら、また相談に来てくださいね」という対応をすることが多いであろう。
「厚労省は通知で、災害時に柔軟な適用を求めています。保護開始時の所持金認定の取り扱いでも、柔軟に運用すれば、災害によって受け取った義援金など、まとまった金額を持ったままで保護を開始することは可能と思われます。しかし、実際の場面ではハードルが高くなっているようで、何らかの形で認めたという事例は聞いていません」(觜本さん)
保護開始時に認める手持ち金を増額することは、長年にわたり、厚労省等の専門家委員会も検討し、提言してきた。就労可能な年齢層の生活保護からの早期脱却・抱えている生活上の困難を「こじらせ」ないためにも有効と考えられているが、未だ実現されていない。
「生活保護なのに焼け太り」は
現実にありうるのか?
ツイッターなどのネット世論では、
「生活保護の人たちは、住宅扶助を受けてアパートに住んでいたわけなので、アパートが被害を受けて住めなくなったからといって、余分に費用がかかるわけではない。また、負傷したり病気に罹ったりしても、医療費は無料。義援金などの支援は必要ないはず」
という意見も見受けられる。しかし、繰り返すが、生活保護を利用している人々は、もともと「最低限度」の、薄氷を踏むような生活をしているのである。災害によって被災し、あるいは避難生活をしている場合には、最低限度以下、足元の薄氷も割れてしまった生活になっているのだ。
義援金・賠償金によって、災害以前より状況を改善できた事例は、あっても極めて少ない。間違っても「ボロアパートに住んでいた人が、タワーマンションに」というようなことはありえない。
東日本大震災の際、東京電力からも賠償金を受け取った福島県内の生活保護世帯でも、事情は同様だった。倉持さんは、
「東電の賠償金を使って子どもの大学進学を実現させた生活保護世帯があった、という話を聞いたことはあります。けれども、その一家は本当にラッキーだったのでしょう。
東日本大震災の時、福島では特に、みんな『いつ原発が爆発するのか、また避難しなければならないのではないか』とビクビクしていました。しかも、生活保護世帯はほとんど車を持っておらず、貯蓄もないので、『いざ避難』という時に、避難の手段がありませんでした。
生活保護世帯にとっての震災時の義援金は、傷ついた被災者の不安を軽減させる拠り所でした。使えなくなった生活用品を買い直したり、進学や資格の取得にお金を使ったりすることを考えられるようになったのは、余震が減って、原発も一応安定してきて、生活が落ち着いていく中でのことだっただろうと思います。
熊本でも、余震が非常に多いと報道されています。被災した方々のお気持ちは、あまり変わらないのではないでしょうか?」(倉持さん)
と語る。
次回も引き続き、震災と生活保護の問題を考えたい。生活保護のもとで生活再建を行う際、何が可能で、どのような限界や制約があるのだろうか?
http://diamond.jp/articles/-/91562
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