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留学する学生を助けるなら貧しい学生も助けてほしい
ますます家計を苦しめる教育費、今こそ「給付型奨学金」の実施を
2016.5.20(金) 小原 篤次
安倍首相は厳しい状況にある学生に「しっかり手をさしのべる」としているが・・・(写真はイメージ)
今年になって「給付型奨学金」(返済の必要がない奨学金)をめぐる議論が活発である。安倍晋三首相は3月29日の記者会見で、首相は「本当に厳しい状況にある子どもたちには、給付型の支援によって、しっかり手を差し伸べる」と述べ、国として給付型奨学金を創設する方針を表明した。
主要政党は6月の参議院選挙は、選挙権年齢を20歳から18歳まで引き下げた初めての選挙となるだけに、相前後して奨学金問題を政策課題として掲げている。
かし報道によると、政府の「ニッポン1億総活躍プラン」では、大学生らを対象に給付型奨学金の創設について「検討」の表現にとどめる方針とされる。
そこで今回は、国立大学を中心とする授業料が増大して家計や学生にとって大きな負担となっている実態などを確認しながら、給付型奨学金の必要性を説明していきたい。
大学進学費用がますます負担に
マクロ統計でみると、大学をはじめとする教育費の高騰は、日本の物価を下支えしている。
日本銀行の量的緩和にもかかわらず安定的な物価上昇の道筋は見えないが、過去、確実に上昇してきたのが国立大学をはじめとする大学授業料である。
1975年を基準に、この40年間で国立大学の入学金および4年間の授業料は12.5倍、私立大学は4.5倍にのぼる。この間、消費者物価指数の上昇は3.2倍にとどまっている。
国立大学の4年間の授業料および納付金の上昇に伴い、「日本学生支援機構」(旧日本育英会)の奨学金を借りる大学生の割合(奨学金受給率)も上昇している。さらに2004年度以降、国立大学が独立行政法人化され、運営費交付金が減額すると同時に、奨学金受給率も上昇傾向にあった(図1)。
財政赤字で大学予算が抑制・減額され、その負担が家計や大学生に回っていく構造は明らかである。国の債務軽減のため、若者に債務が転化されたと言えるだろう。金融手法で表現すれば、債務のスワップとなった。
図1 国立大学の授業料・納付金、運営交付金、奨学金受給率の推移
(出所:文部科学省、日本学生支援機構資料より筆者作成)
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しかも地方の家計ではさらに大学進学の費用の負担が強まっている。
周知のように、東京など大都市圏と地方では収入や資産に格差がある。賃金水準では東京を100とすると、鹿児島県(62.4)、 青森県(61.5)、宮崎県(61.4)、長崎県(61.1)、沖縄県(57.2)となっている(2014年、厚生労働省「毎月勤労統計調査」)。他方、国立大学の受験料や授業料などは全国一律である。つまり、東京と地方では、賃金格差が存在するにもかかわらず、東京大学も長崎大学や琉球大学など地方大学も同じ費用負担を求められるのだ。
その結果、国立大学に進学しても相対的に地方の負担が重く、大学進学率にも影響を与えている。実際に2015年3月卒業者で、大学進学率は東京都の66.8%に対して、北海道(42.4%)、鹿児島県(42.2%)、鳥取県(42.0%)、長崎県(41.3%)、沖縄県(39.8%)などと、20%以上のギャップが存在する。
日本学生支援機構の奨学金は「教育ローン」
日本学生支援機構の「奨学金」には、現在、給付型はない。あるのは無利子型と有利子型の貸与型で、いずれも学生本人が卒業の半年後、返済を開始しなければならない。学校教員や研究者になっても免除制度は廃止されている。
返済義務があるという点では、奨学金というより教育ローンの一種として位置付けられよう。
民間金融機関の教育ローンは、保護者が債務者として返済していく。貸出対象者は一定以上の収入基準が必要である。これに対して、日本学生支援機構の「奨学金」の対象者は、保護者が一定以下の収入基準となっている。保護者の家計状況を考慮し、在学中の返済を免除している点では確かに「奨学金」の性格がある。
ただし、返済義務は学生本人に課されているものの、高校生は未成年者である。奨学金を利用するか否かは、高校教員のアドバイスの影響を受けがちである。また、親の収入や貯蓄にかかわらず、子どもが大学進学できるのは一見メリットに見えるものの、子どもの将来の返済能力には不確実性を伴う。景気や雇用情勢の変動など、個人の努力で補えない要因もある。
また、学生は大学卒業後に高収入の大企業に就職することが保障されているわけではない。大学新卒の就職率には非正規社員も相当、含まれる。
毎月、10万円を日本学生支援機構から借りれば、4年間で500万円近い借金額になる。返済が遅れれば、クレジットカードや住宅ローンなど他の金融取引にも影響する。将来の返済能力を考慮せず、数百万円単位のローン契約を組む点で、サブ・プライムローン的な要素も含まれた金融取引だと言っても過言ではない。
以上のように現在の奨学金制度は、学生が将来、長期かつ継続的に高い収入が得られることが前提となっている。この金融取引が成立するためには、若者の給与が将来確実に伸びること、少なくとも返済に苦労しないことが前提となるべきだろう。
「受益者負担の原則」からの根強い反論
OECD統計の国際比較を見ても、日本の教育機関に対する支出の私費負担割合は韓国や米国などとともに上位にある。家計や大学生の負担の重さが確認できる。
一方、大学への補助や給付型奨学金に対する批判もある。特に、公共サービスへの投資は受益者が負担すべきだとする「受益者負担の原則」からの反論が根強い。学生が負担するのは当然だというわけだ。
また、大学の費用を投資に見立てて、投資リターンは個人の利益と論じる向きがある。確かに労働政策研究・研修機構によると、2013年、大学・大学院卒の生涯賃金(男性平均3億1270万円)は高校卒より7300万円高い。
ただし、周知のように、企業の規模や地域によって給与水準は異なる。高卒でも従業員数1000人以上の大企業と、生涯賃金は2億9180万円で、大学・大学院卒の99人未満の企業と比べると、高卒が大卒の生涯賃金を4870万円上回っている。100人以上かつ1000人未満の大卒の生涯賃金とほぼ変わらない。
このように企業の規模によって賃金格差が存在する。そもそもすべての大学生が、賃金水準の高い大企業に就職されるわけではない。1990年代半ばから2000年代にかけてのデフレ経済で、大卒就職率も低下し、大学を卒業しても安定した職業を得られなかった学生への対応も忘れてはいけない。
景気後退などで雇用悪化の環境で、高校生が大学に進学するのは、社会安定に貢献する政策となることにも留意すべきだ。
海外留学を支援する給付型奨学金
実は、すでに国は給付型の奨学金制度を実施している。それは2013年10月から開始された「トビタテ!留学JAPAN」(海外留学用の給付型奨学金)である。
http://jbpress.ismedia.jp/mwimgs/2/8/400/img_289c904616e617e1a0fdf0f8768f4c9678170.jpg
この制度は「官民協働で『グローバル人材育成コミュティ』を形成し、将来世界で活躍できるグローバル人材をオールジャパンで育成する」という留学促進キャンペーンである。年間1000名の学生を留学に送り出すことを目標に、半年ごとに募集している。大学生は海外留学の目的や活動内容を含む申請書を提出し、面接を受けて給付を受ける。
海外留学を支援する給付型奨学金の創設が可能であれば、国内大学向けに給付型の奨学金を創設できない理由を探すのは難しい。もし財政赤字を抱えた政府の対応に時間がかかるのであれば、大学・企業・地方自治体が連携して、小規模であっても早急に支援体制の充実を図るべきである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46857
- 生活保護なら義援金は受け取れない、は本当か 生活保護のリアル〜私たちの明日は? みわよしこ 軽毛 2016/5/20 08:48:44
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