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マクドナルドの店舗(撮影=編集部)
マックを蝕む借金膨張と資金流出…生き残りかけた新商品に捨て身の巨費投入
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15167.html
2016.05.20 文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント Business Journal
日本マクドナルドホールディングスは5月11日、2016年12月期第1四半期決算を発表した。それによると、売上高は前年同期比27.7%増の521億9900万円、本業のもうけを示す営業損益は1億5100万円の黒字だという。ちなみに、前年同期の営業損益は99億6200万円の赤字だった。営業損益が黒字となったのは、14年4〜6月期以来7四半期ぶりだ。純損益は、店舗改装費用などの計上により1億7600万円の赤字となった。
消費者から商品名を公募し決定した「北のいいとこ牛(ぎゅ)っとバーガー」などの販売が好調だったことが業績改善に結びついた。消費期限切れ肉使用や異物混入など、安全性が疑問視される事件が連発したことで大きく揺れていた同社だが、最終損益はいまだ赤字とはいえ、四半期の営業損益が黒字となったことに胸をなでおろしていることだろう。16年1月、2月、3月、4月は既存店の売上高、客数、客単価すべてにおいて前年同月比でプラスとなっており、復調の兆しが見えてきている。
「北のいいとこ牛(ぎゅ)っとバーガー」の後にも、続々と話題性のある新商品を投入している。「ビッグマック」の約2.8倍のビーフパティを使用し、大きさは1.3倍超となる「ギガ ビッグマック」を4月6日から期間限定、数量限定で発売した。これは横綱・白鵬関の「もっとビーフがあったらうれしい」という一言から開発された商品だ。
「ギガ ビッグマック」をマーケティングの視点から検討してみると、同商品は「ラテラル・マーケティング」という商品の差別化を図るためのマーケティング手法が用いられている。ラテラル・マーケティングは、現代マーケティングの第一人者として知られる経営学者のフィリップ・コトラーが提唱した考え方だ。
ラテラル・マーケティングには差別化を図るための6つの技法があり、そのうちのひとつに「強調する」というものがある。商品を構成する要素の一部または全部を「強調する」ことで、ほかにはない特長をつくり出す技法だ。例えば、行列ができる人気店として名高い「ラーメン二郎」が提供する、野菜が山盛りに盛られたラーメンは「強調する」という技法のわかりやすい例といえる。
「ギガ ビッグマック」は、まさにサイズを「強調する」ことで特長を出すことに成功したといえる。白鵬関が宣伝することで、サイズ感はさらに強調されている。消費者にインパクトを与えるには十分すぎる。
4月27日には「クラブハウスバーガー」を投入した。「ギガ ビッグマック」ほどではないがボリューム感があり、8種類の具材を使用した食べ応えのあるハンバーガーだ。ボリュームを「強調する」ことに加え、具材にバラエティーを持たせることで、普段とは一味違ったハンバーガーを提供している。新たな顧客層を獲得しようとしている意図がうかがえる。
「ギガ ビッグマック」や「クラブハウスバーガー」の販売動向の詳細は、今のところわかっていないが、白鵬関をテレビCMで起用するなど宣伝広告には相当力を入れており、販売の強化につなげようとしている。
マクドナルドは、失った顧客を取り戻すためにも話題性のある商品を開発していく必要がある。商品の販売において大きな生命線となる商品名を、自社で決定せず消費者に公募するという奇策を用いて「北のいいとこ牛(ぎゅ)っとバーガー」の発売に至った。公募するにあたって、その告知にも相当の資金を投入したとみられている。
「ギガ ビッグマック」の宣伝広告には白鵬関を起用しているが、これにも少なくない資金を投入している。「クラブハウスバーガー」は8種類の具材を使用しているが、厳選された具材を調達することは簡単なことではないはずだ。相当な資金と労力を要していることだろう。
こうした資金の投入は今のマクドナルドに必要ではあるが、一方で懸念すべきことがある。長期借入金(いわゆる借金)の増加と現金及び預金の減少だ。
長期借入金は14年12月期には5億円と僅少であったが、15年3月に220億円の借入れを取締役会決議し、15年1〜3月期の長期借入金は200億円となった。その後、15年4〜6月期は193億円、15年7〜9月期は187億円、15年12月期は181億円と減少傾向にあったが、16年1〜3月期は銀行からの借入れにより295億円にまで膨れ上がった。
一方で、現金及び預金は減少している。15年1〜3月期には305億円あったが、15年4〜6月期は252億円、15年7〜9月期は131億円、15年12月期は203億円、16年1〜3月期は155億円となっている。
16年1〜3月期に長期借入金が現金及び預金を上回り、その額は2倍近くにもなっている。借入れた資金を商品開発費や宣伝広告費、店舗改装費などに投資していると考えられる。しかし、いまだ最終損益が赤字のままなので、現金及び預金が減り続ける状態から抜け出せない。資金の流出が止まらない状況にある。
失った信頼を回復し、売り上げと利益を恒常的に確保できるようになるのが早いのか、それとも利益が確保できず借金が膨らみ、金融機関からの借入れがストップし、資金の流出に歯止めがかからず手持ちの資金が尽きるのが早いのか。消費者とマクドナルドの根くらべはまだ続きそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
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