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日本、債務がGDPの4倍で財政破綻か…銀行預金が無価値化、ビットコインが資産防衛手段
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15161.html
2016.05.20 文=小黒一正/法政大学経済学部教授 Business Journal
経済学では、将来の債務残高(対GDP)の先行きを評価する重要かつ有名な命題がある。それは「ドーマーの命題」と呼ばれるもので、詳しい説明や式の証明は省略するが、名目GDP成長率がプラスの値nで、一定に維持する財政赤字(対GDP)をqとすると、債務残高(対GDP)の収束値は初期時点の債務残高(対GDP)には依存せず、以下の値となる。
・債務残高(対GDP)の収束値=q/n
たとえば、上記の※式において、財政赤字(対GDP)が3%(q=0.03)かつ、名目GDP成長率が2%(n=0.02)のとき、債務残高(対GDP)の収束値は150%(q/n=1.5)となる。
では、少子高齢化や人口減少が進む現実の日本経済において、この「ドーマーの命題」を適用すると、将来の債務残高(対GDP)の行き先をどう評価できるだろうか。2000年代の名目GDP成長率は概ねゼロ、また、内閣府の中長期試算(2016年1月公表)では、楽観的なシナリオである「経済再生ケース」でも、23年度の財政収支(対GDP)はマイナス4.4%となっている。
このため、かなり甘く見積もって、財政赤字(対GDP)を4%(q=0.04)かつ、名目GDP成長率を1%(n=0.01)と評価しても、債務残高(対GDP)の収束値は400%(q/n=4)となってしまう。そもそも、債務がGDPの4倍に膨らめば財政が持続不可能に陥るのは明らかであるが、その前に財政破綻する可能性のほうが高いと思われる。
他方、「日本銀行が国債を買えば財政破綻を回避できるのではないか」という意見もあるが、数カ月前の「日経ビジネスオンライン」の連載コラムでも説明した通り、日銀が国債を買い切っても、国民負担なき財政再建は不可能である。
この関連で、「国債をすべて購入してインフレが起きないなら、毎年発行される国債を購入して、さらには減税して国債を発行し、それを購入することも可能で、無税国家になれる。そんなことはあり得ない。これは矛盾だから、必ずその前にインフレになる」という「バーナンキの背理法」があるが、バーナンキの背理法は、最終的に発生するインフレが制御可能であることは何も保証しない。最悪のケースでは、財政インフレが発生し、日本円が毀損する結果、我々が銀行に預けている預金などが実質的に無価値になる可能性もある。
■資産防衛の「ノアの箱舟」
このような状況のなか、将来財政破綻で日本円が毀損する場合、ビットコイン等の仮想通貨は、取引の決済手段や資産防衛に利用できるかもしれない。実際、政情不安で通貨危機に陥ったウクライナや、高インフレのアルゼンチンやブラジルなどでは、ビットコイン特需が起こっており、ビットコイン業界の成長に一役買っている。
また、財政危機に陥ったギリシャでは一時、自国通貨を銀行から引き出せなくなったが、その際、保有するビットコインを現金に変換することで危機を乗り切った者もいるという報道もある(15年6月17日付ロイター)。また、ギリシャのユーロ離脱が騒がれた時期では、仮想通貨のビットコインが一時7%上昇し、「ギリシャのユーロ離脱に対する懸念から、投機筋や同国預金者から買いが入っている」旨の報道もあった(同)。
日本でも、金融庁が利用者保護やマネーロンダリング・テロ資金対策といった観点から、ビットコイン等の「仮想通貨」の法的な定義を定め、それらを「貨幣の機能」を持つものと初めて認定する資金決済法等の改正案を今国会に提出している(注:正式名称は「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」3月4日国会提出)。
もし、この法案が今国会で成立すれば、取引の決済手段として、ビットコイン等の仮想通貨が法的に位置づけられ、将来それは日本が財政危機に陥ったとき、資産防衛の「ノアの箱舟」になる可能性を秘めていると思われる。そのとき、取引の決済手段の主役は、ビットコイン等の仮想通貨になっているかもしれない。
(文=小黒一正/法政大学経済学部教授)
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