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東京電力本社(左)、東京ガス本社(いずれも「Wikipedia」より)
東京電力、東京ガスへの逆襲を始動…東ガス、東電からの顧客奪取が早くも急失速
http://biz-journal.jp/2016/05/post_15148.html
2016.05.19 文=編集部 Business Journal
4月から電力小売りの全面自由化がスタートし、東京電力ホールディングスと東京ガス(東京瓦斯)の“仁義なき戦い”の第1ラウンドが始まった。
東電の本丸の首都圏に殴り込みをかけた東ガスは、2016年度中に家庭用電力販売で40万件の顧客獲得を目指すとぶち上げた。
東ガスは年明けから首都圏でガスとセットにした家庭用電力販売の申し込みを開始。電力自由化が始まる直前の3月中旬から契約件数を伸ばしてきた。3月14日に11万件と10万件の大台を突破。完全自由化開始後の4月4日には24万件と、20万件台に載せた。
東ガスは15年末に他社に先駆けて電気料金メニューを発表し、2月には追加値下げを実施。割安感を前面に打ち出したことが奏功したようだ。すでにガスを契約しているという安心感があり、都市ガスとのセット割で多くのユーザーを獲得した。まずは順調に滑り出したといっていいだろう。
懸念材料があるとすれば、4月25日時点の契約件数が28万件と、契約件数の伸びが鈍化していることだ。今後はグループのガス器具販売店の営業網を活用することで顧客増を狙う。
東ガスは20年までに家庭用で100万件の契約を獲得し、「新電力でのトップを目指す」(広瀬道明社長)と息巻いている。東電から顧客をどの程度奪えるか、注目を集めている。
経済産業省の認可法人、電力広域的運営推進機関がまとめた電力契約の切り替え件数は、4月末時点で81万9500件。全国世帯数に占める割合は1.3%にとどまる。切り替えが集中したのは大都市で、首都圏が51万8100件、関西圏が18万2700件となっており、合わせて全国の86%を占めている。新電力では東ガスの契約件数がもっとも多かった。
東電の管内には2700万世帯が集中しており、2兆5000億円規模の家庭電力市場だ。東ガスなどの新電力や、関西電力など他地域の電力会社が首都圏に一斉に進出し、草刈場となっている。
迎え撃つ東電は、既存の顧客の囲い込みに奔走中。グループ会社の東京電力エナジーパートナーが、使用量の多い家庭向けに最大5%安くする新料金メニューを導入。100万世帯に新メニューを契約してもらうという目標を掲げた。電力の小売りが解禁になった時点で、新しい申し込みは約30万件に上り、流出件数を大幅に上回ったと胸を張る。それでも、最大で2割程度は他社に奪われると試算している。
17年4月のガス小売り全面自由化では、東電が逆襲に転じ、攻守所を変えることになる。東電が東ガスの牙城に攻め込む番となり、電力とガスのセット割を武器とするのは想像に難くない。東ガスは、東電の参入で「2〜3割の顧客を奪われるだろう」(広瀬社長)と、強く警戒している。
東電がガス市場に参入する前の1年間に、東ガスが電力とガスのセット割でどれだけ顧客をキープできるかの体力勝負となる。電力自由化をめぐるバトルは、電力+ガスの完全自由化をにらんだ前哨戦にすぎない。
■東ガスと関電が提携
東電は、管内2700万世帯の2割にあたる500万世帯は新電力などの新規参入組に流れると試算している。そこでガス事業への進出と、営業地域以外で電力を販売することで巻き返しを図る。
ガスが自由化になると、東ガスは一転して守勢に立たされる。管内の1100万世帯のうちの2〜3割、つまり200万世帯から300万世帯は、電力とガスのセット割に乗り出す東電に奪われるという厳しい予測を立てている。
東ガスが東電から奪うのは100万世帯、奪われるのは2〜300万世帯。単純比較すると、東ガスの分が悪い。東電から奪取する世帯の目標を上積みし、一方で東電に流れるガス需要家の数をいかに少なくするかにかかっている。攻めと守りの両面作戦を徹底しなければ勝ち目はない。
決め手となるのは営業力だ。東ガスの営業部隊の主力は、関東に200以上あるグループのガス器具販売店である。東ガス陣営で最も顧客を獲得したのはガス器具販売店だったが、これは営業力の賜だ。
東電の営業部隊は、実はソフトバンクである。ソフトバンクは東京電力エナジーパートナーと組んで、東電管内だけでなく中部電力や関西電力の管内でも電力を販売してきた。スマートフォン(スマホ)や固定電話と電力をセットで契約すると、通信料を月に300円割り引いている。3〜4人世帯で月の支出が5%ほど減るという。
東電に攻め込まれた中部電力はNTTドコモ、関西電力はKDDI(au)と提携。通信と電力のセット販売を展開している。17年4月のガス小売り自由化後は、電力、ガス、通信の3点セットがセールスポイントとなる。
東ガスと関電は4月、液化天然ガス(LNG)の相互融通とLNG火力発電所の運転・保守について業務提携した。これは関電の首都圏進出の布石である。電力とガスの小売りの全面自由化を見据えて東ガスと連携を深める。
エネルギー業界の首脳は関電と東ガスが資本提携してグループを組み、東電に対抗する狙いがあると指摘する。東電vs.東ガス+関電となれば、勢力が均衡する。
電力・ガスの大再編時代の幕がいよいよ上がった。
(文=編集部)
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