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(回答先: カーテン屋と老舗旅館、矜持の行方 遙なるコンシェルジュ「男の悩み 女の嘆き」 減ずれば鈍す。しかし嘆かず進むべし 投稿者 軽毛 日時 2016 年 5 月 13 日 13:52:37)
最後に「すごい」って言われたのはいつですか?
ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」
ミドルが職場で孤独になっていく理由
2016年5月13日(金)
山本 直人
「予定通り」の脇道コースに入って
Wさんが勤めていた大手の流通企業は、全国の四方八方にネットワークを張り巡らせている。関連企業も多いので、ずっと本社に残る人は少ない。むしろ、多くの企業からなる複合体のような会社だ。
だから40代半ばを過ぎた頃に、子会社出向への内示をもらっても驚くことはなかった。物流会社の支社長というのは、ある意味「予定通り」のコースだったからである。
Wさんにとっての“全盛”時代は、30代半ばに購買を担当していた頃だった、と自分でも思っている。当時は衣料分野でも結構な売り上げがあって、Wさんも新分野に切り込んでいった。自分なりに本を読んだり勉強もしていたと思うし、仲間内から羨ましがられたこともあった。
しかし、衣料分野は専門店の攻勢で段々と劣勢になる。気が付くと、同僚も徐々に減っていく中、今回の出向辞令を受けた。
出向する人には、 “改革”に燃えて乗り込んでいく人たちもいる。ただし往々にして、不完全燃焼に終わることも多い。Wさんも、最初は様子見をしながら段々と手を打てばいいだろうと思っていた。
出向先の支社は、それなりに機能していた。巨大グループを支えているのだから、それは当然のことでもある。ただし、もっとできることはあるはずなのに、メンバーは毎日決まったことをこなすだけだった。
「たまには、読書会とかしてみたらどうだろう」
そんな思い付きを古参の課長に話してみたこともあったが、「なるほど、そういうのいいですねえ」と、軽くいなされてしまった。
どこか歯がゆさを感じつつ、Wさんもまた日常業務を淡々とこなすようになっていった。物流の仕事なので天候異変や事故などのトラブルには気を遣うし、本社からのコストダウンの指示には頭を悩ます。
それでも全体的には平穏で、だからこそ、物足りなさもあり、エネルギーを持てあますこともあった。
「管理組合」で頑張ってみたけれど
ちょうどその頃、マンションの管理組合の理事が交代することになった。Wさんにもお鉢が回ってきたのだが、これを機会にちょっと入れ込んでみようかという気になった。
というのも、築15年を過ぎてきて今後の補修など課題が山積みなのだ。駐車場にも空きが出てきて、収入も減少傾向にある。まさにコストダウンが求められる状況で、かつて購買で活躍していたWさんは色々とアイデアを話した。
理事長は既にリタイアしたZさんだ。うんうん、と聞き上手ではあるが早々にことを動かすタイプではない。業者についても相見積もりをとってはどうか?というWさんの提案に対しても、慎重だ。他の理事も似たような感じである。
ある日の理事会の後、WさんはZさんに声を掛けられた。「時間があったら、お茶でもいかがです?あるいはビールでも」
まだ夜の9時前だったので、Zさんの自宅でビールを飲みながらのよもやま話になった。Zさんは自分の現役時代の話をしてくれるのだが、嫌味にならずなかなか面白い。業界が全く異なるだけに、あっという間に時間が経つ。
「ところで…」とZさんが切り出した。「理事の仕事なんていうのも、面倒なことばかりなんだけど」と身近な話である。
「まあ、誰も誉めてはくれないんだよね」
「はぁ、そういうものですかね……」 「ただ、たまに『ありがとう』と言ってくれる人がいてね。ちょっとした苦情への対応だったり、小さなルール作りだったりするんだけど」
無言で頷くWさんにZさんが言った。
「若い時は人から『すごい!』って言われるのが嬉しかったけど、そういう機会はどんどん減るもんだよ。でも、『ありがとう』って言われることは意外とあるもんなんよね」
Wさんはハッとした。そして、後になってから何度も「あの一言が転機だったと語っている」
「賞賛」は難しくても、「感謝」されることはある
なぜ、この一言がWさんの転機になったのか?それは人間の根本的な欲求と深く結びついている。Wさんにとって最も乗っていた30代の頃は「すごいですね」と言われることが、モチベーションにつながっていた。こういう心理を「賞賛欲」という。仕事の達成への執念が強い人は、こうした欲求に支えられていることが多い。
一方で、「ありがとう」と言われることに強い喜びを見出す人もいる。これは「感謝欲」という心理が関わっている。
どの欲求がいいのか?というわけではない。ただし、「すごい!」と言われることと、「ありがとう」と言われることはどちらが多いだろうか?多くの人は後者だと思うのではないだろうか。
「すごい」と言われるためには、ある分野において卓越した能力が必要だ。一方で、「ありがとう」という言葉は日常においても飛び交っている。つまり、人が一生のうちに「すごい」と言われて、誉められる期間は意外と短い。学生時代にスポーツで活躍したり、仕事の第一線にいる時くらいなのだ。
だから賞賛欲が強く、かつそれが満たされていた人ほどミドルになってから心の持ちように苦労することがある。第一線から外れていく中で、心が燻ってうまく適応できない。段々と敬遠されていくので、やがて孤独になっていく。
実は、Wさんにもその可能性はあった。しかし、Zさんの一言で心持ちを変えることができたのだ。
「すごい」と言われなくてもいい。小さなことでも「ありがとう」って言われればいいじゃないか。そして、お互いに感謝を交換するという行為は職場を離れてもずっと続くはずなのだから。
Wさんはそこに気づいたのである。
「ありがとう」を探して、職場が変わった。
ちょうどWさんの職場では、定期的な個人面談の時期になっていた。いわゆる「目標共有」と言われるものだ。型どおりに流すこともできるのだが、今回は社員それぞれの要望を改めて聞いてみることにした。
すぐに、不満をぶつけてくるような者はいなかったが、それなりの声を拾っていくことはできた。そして、中身を整理してからWさんは驚いた。
いわゆる、仕事に直結するような話が殆どないのだ。職場の電子レンジが古いとか、エアコンの温度設定が合わないとか、トイレを洗浄機能つきにしてほしい…などなど。
仕事自体に不満がないというよりも、関心自体が薄くなっているんじゃないか?だからといって、職場環境の改善だけでいいのだろうか?彼らが求めていることは何なんだろう?
いろいろと考えているうちに、情報端末が相当古くなっていることに気づいた。そのために事務所にいる時間が長くなったり、休日なのに出て来なくてはならないこともある。
刷新のためにはコストもかかるが、Wさんはヒヤリングして熱心に調べた。提案書を作って、子会社の経営会議に持っていくと賛同の声も多い。最終的には本社でも議題になったが、結果的には「次の課題」となってしまった。
それでも、職場には変化が起きた。Wさんの懸命な動きが、周りに伝わったのだろう。みんなが自主的にコストダウンに取り組み、いくつかの備品を刷新することはできた。
そのうちに部下から食事の誘いも受けるようになった。かつて本社で働いた頃の話に耳を傾けるものも出てくる。帰る間際はこう言われた。
「いろいろお話を聞かせてもらってありがとうございました」
「すごいですね」とは言われなかったが、Wさんはしっかりと感謝の気持ちを受け止めた。
後に、Wさんは本社の総務部門に戻ることになる。この企業では、珍しいカムバックだった。幾つかの提案を通じて、改めて購買の仕事をすることになったのだ。
賞賛から感謝へ。Zさんからもらった一言は、想像もつかないほどの転機につながったのである。
■今回の棚卸し
自分自身の「欲求」を見直すことは、ミドルの転機にはとても大切になってくる。もし満たされていないとすれば、自分の欲求を満たすだけの能力が不足している可能性もある。
「賞賛」を受け続けられる人はごくごく一部だ。Wさんのように、「どうすれば自分は満足できるか」を見直すことも大切になってくるだろう。
■ちょっとしたお薦め
人は誰だって、「自分はこうしたい」といういろんな欲求を持っていて、だからこそさまざまな進歩がある。一方で「人のため」と頭ではわかっていても、なかなかどうしていいかわからないものだ。
読んだ方も多いだろうが、ディケンズの「クリスマス・キャロル」は大人になって、たくさんの経験をしてから読むと、改めてその奥深さと温かみに気づく。ちょっと季節外れだけれど、再読をお薦めしたい。
このコラムについて
ここでひと息 ミドル世代の「キャリアのY字路」
50歳前後は「人生のY字路」である。このくらいの歳になれば、会社における自分の将来については、大方見当がついてくる。場合によっては、どこかで自分のキャリアに見切りをつけなければならない。でも、自分なりのプライドはそれなりにあったりする。ややこしい…。Y字路を迎えたミドルのキャリアとの付き合い方に、正解はない。読者の皆さんと、あれやこれやと考えたい。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/032500025/050600004/
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