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米首都ワシントンで開かれた20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の会場に到着した麻生太郎財務相(2016年4月15日撮影)。(c)AFP〔AFPBB News〕
「通貨戦争」で苦境に立たされる日本 米国が監視リスト指定で介入をけん制
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46817
2016.5.12 Financial Times :JBpress
(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年5月4日付)
時代とは、かくも変わるものなのか。米国は2009年に金融の量的緩和(QE)に乗り出した際、競争的な通貨切り下げに訴えるのかと非難された。ところが今日では立場が逆になり、米国がほかの国々を非難している。
米財務省が4月29日、今年2月に発効した「2015年貿易円滑化及び権利行使に関する法律」の新しい規定にのっとり、為替操作国になり得る存在として中国、日本、韓国、台湾およびドイツを槍玉に挙げたのだ。
この5カ国・地域は、財務省が米連邦議会に提出した報告書の監視リストに載っており、3つの基準のうち2つを満たしたとされている。
基準が3つとも満たされれば、詳細な分析や2国間の取り組みの強化が行われ、それでも安すぎる為替レートや貿易黒字への対策が講じられなければ是正措置が発動される仕組みだ。
具体的には、(1)対米貿易黒字が200億ドルを超えていること、(2)経常黒字の国内総生産(GDP)比が3%を超えていること、そして(3)外国為替市場への1年間の介入額がGDPの2%相当額を超えていることが基準として示されている。
米国の動きは、今日のいわゆる通貨戦争の熱気を高めるものだ。中国と日本では、過去の忌まわしい思い出もよみがえってくるに違いない。
中国は1930年代に銀本位制からの離脱を余儀なくされた。米財務省が、当時苦境にあった米国内の銀生産者を支援しようと銀の価格を操作して引き上げたことから中国の通貨が高騰し、銀との連動を断念せざるを得なくなったのだ。中国が不換紙幣を導入すると、史上最大級のハイパーインフレが発生してしまい、その後の体制変革と共産党支配の下地を作ることとなった。
為替にまつわる外圧に屈した日本の経験は、中国ほど劇的ではなかったが痛みを伴うものだった。1985年のプラザ合意は、日本円、ドイツマルク、フランスフランおよび英ポンドの4通貨に対して過大評価されていた米ドルを安くすることを目指していた。
この薬は効きすぎた。円高に伴った金利の低下には、日本経済の巨大なバブルを膨らませる効果があったからだ。バブルは1990年に崩壊し、この国がいまだに抜け出せない低迷の時代の幕開けとなった。
今回の通貨戦争で不思議なのは、槍玉に挙げられた中国の通貨が過大評価されていると言えることだ。また日本の最近の経験からうかがえるように、競争的な通貨安誘導で成果を上げるのは非常に難しい場合がある。日銀が今年1月にマイナス金利の導入を発表したとき、円が示した反応は上昇することだった。そして日銀が4月末に追加金融緩和を望んでいた市場の期待を裏切ったときにも、市場では円高がさらに進んだ。
今年に入って日本円が上昇している理由の1つは、2月と3月に市場が荒れ、日本円が資金の避難先になったことだ。となると、興味深い疑問が浮かんでくる。4月に入って投資家がリスクを取る意欲を取り戻し、市場も安定したにもかかわらず円高が続いたのはなぜなのか、という疑問だ。
日本円を調達通貨とするキャリートレードの巻き戻しがこれに関係していることは間違いない。またJPモルガン(東京)は、日本企業がこれまで外国に蓄積してきた留保利益が50兆円に達し、これを円に換え始めていると試算している。
さらに、足元の円相場は1970年代に見られたように、拡大する経常黒字によって押し上げられているとの説明も当てはまりそうだ。JPモルガンの予測によれば、2016年の日本の経常黒字は21兆6000億円――対GDP比で4%――に達するという。
ユーロ圏の金利や通貨ユーロを直接コントロールすることができず、それゆえにGDP比8.6%もの経常黒字を出してもおとがめを受けずに済むドイツとは違い、日本には隠れる場所がない。
アベノミクスにおいて円安は経済に大きなインパクトをもたらした唯一の要素だっただけに、今年に入ってからの頑固な円高は、深刻な懸念材料であるに違いない。しかも、米財務省の3つ目の基準で容認されている為替介入の規模は10兆円にすぎない。日本の経常黒字の大きさを考えれば、この額ではバズーカどころか豆鉄砲にしかならない。
米財務省の報告書が議会に提出された週末に、日本の麻生太郎財務相は、ドル円相場が秩序立ったものだという米財務省の見方には同意できないと明言し、米国の計画が為替介入を制限することはないと示唆した。従って、両国の間には今後摩擦が生じる恐れがある。
だが、「戦争」は無意味だと言えよう。というのは、1930年代には多くの国々が、近隣窮乏化策だとされる通商政策を介して諸外国と協調することなく通貨膨張を推進したが、経済学者のバリー・アイケングリーン氏とジェフリー・サックス氏が1980年代半ばの論文で示したように、これは世界全体のマネーサプライを増やした結果、害を及ぼさなかったからだ。
当時と今日とが違うのは、日本が気づいたように、通貨膨張はマイナス金利をもってしても成し遂げるのが難しくなりつつあるということだ。
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