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(回答先: マイナス金利効果で応酬、市場不安定化に拍車の指摘も=日銀議事要旨(ロイター) 投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 5 月 09 日 12:20:20)
2016.5.9
日本銀行
政策委員会
金融政策決定会合
議事要旨
(2016年3月14、15日開催分)
本議事要旨は、日本銀行法第 20 条
第1項に定める「議事の概要を記載し
た書類」として、2016 年4月 27、28
日開催の政策委員会・金融政策決定会
合 で 承 認 さ れ た も の で あ る 。
公表時間
5月9日 (月) 8時50分
本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合(引用は
含まれません)は、予め日本銀行政策委員会室までご相談ください。
引用・転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。
1
(開催要領)
1.開催日時:2016 年3月 14 日(14:00〜16:16)
3月 15 日( 9:00〜12:28)
2.場 所:日本銀行本店
3.出席委員:
議長 黒田東彦 (総 裁)
岩田規久男 (副 総 裁)
中曽 宏 ( 〃 )
白井さゆり (審議委員)
石田浩二 ( 〃 )
佐藤健裕 ( 〃 )
木内登英 ( 〃 )
原田 泰 ( 〃 )
布野幸利 ( 〃 )
4.政府からの出席者:
財務省 太田 充 大臣官房総括審議官(14 日)
坂井 学 財務副大臣(15 日)
内閣府 西川正郎 内閣府審議官(14 日)
鳥修一 内閣府副大臣(15 日)
(執行部からの報告者)
理事 雨宮正佳
理事 門間一夫
理事 桑原茂裕
企画局長 内田眞一
企画局審議役 高口博英(14 日 14:54〜16:16、
15 日 9:00〜 9:31)
企画局政策企画課長 正木一博
金融市場局長 前田栄治
調査統計局長 関根敏隆
調査統計局経済調査課長 中村康治
国際局長 長井滋人
(事務局)
政策委員会室長 柳原良太
政策委員会室企画役 中本浩信
企画局企画調整課長 鈴木公一郎(14 日 14:54〜16:16、
15 日 9:00〜 9:31)
企画局企画役 加藤 涼
企画局企画役 二宮拓人
2
T.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要
1.最近の金融市場調節の運営実績
金融市場調節は、前回会合(1月 28、29 日)で決定された方針(注)
に従って、長期国債の買入れ等による資金供給を行った。そのもとで、
マネタリーベースは 350〜359 兆円台で推移した。
2.金融・為替市場動向
短期金融市場では、金利は、マイナス金利導入を受けて、翌日物、
ターム物ともに低下しており、ゼロ近辺ないしマイナス圏で推移して
いる。2月積み期入り後の無担保コールレート(オーバーナイト物)
は、ごく小幅のマイナスで推移している。ターム物金利をみると、短
国レート(3か月物)は、最近では− 0.1%近辺で推移している。コー
ル市場の取引残高は、マイナス金利の適用が始まった2月積み期入り
後、有担保市場を中心に大幅に減少した。
株価(日経平均株価)は、米欧株価が銀行株を中心に下落する中で、
2月半ばにかけて大幅に下落した後、世界的にリスクセンチメントが
改善するもとで反発し、最近では 17 千円前後で推移している。為替
相場をみると、円の対米ドル相場は、世界的なリスクオフの流れを受
け、2月半ばにかけて円高ドル安方向の動きとなった。円の対ユーロ
相場は、ECBによる追加緩和観測の高まりなどもあって、円高ユー
ロ安方向の動きとなった。長期金利(10 年債利回り)は、2月9日
に初めてマイナスとなった後、2月下旬以降はマイナス圏で推移して
いる。
3.海外金融経済情勢
海外経済は、緩やかな成長が続いているが、新興国を中心に幾分減
速している。
米国経済は、米ドル高や新興国経済の減速などから鉱工業部門は力
強さを欠いているが、家計支出に支えられて回復傾向にある。物価面
をみると、コアベースのインフレ率(PCEデフレーター)は前年比
+1%台後半で推移している。また、総合ベースはエネルギー価格の
下落を主因に+1%台前半で推移している。
(注) 「マネタリーベースが、年間約 80 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場
調節を行う。」
3
欧州経済は、輸出が弱めの動きとなっているが、個人消費が引き続
き増加するもとで緩やかな回復を続けている。物価面をみると、イン
フレ率(HICP)は、総合ベースではエネルギー価格の下落を主因
に前年比0%近傍で推移しているが、コアベースでは+1%近傍で推
移している。この間、英国経済は、内需を中心に回復を続けている。
新興国経済をみると、中国経済は、総じて安定した成長を維持して
いるが、輸出・生産面を中心に幾分減速している。インド経済は、構
造改革への期待や金融緩和の効果などから内需を中心に着実に成長
している。一方、NIEs・ASEANでは、景気刺激策の効果もみ
られているが、外需の鈍化やIT関連財の需要一服が輸出・生産を下
押ししており、やや減速している。ブラジルおよびロシアでは、資源
価格の下落などにより輸出が低迷しているほか、内需も落ち込むなど、
厳しい経済情勢が続いている。
新興国の物価面をみると、インフレ率は、エネルギー価格の下落と
自国通貨安が相殺し、総じて低水準で横ばい圏内の動きとなっている。
ただし、一部の国では、インフレ率の上昇や高止まりもみられる。
海外の金融資本市場をみると、新興国経済の先行き不透明感や米国
の景気減速リスクに加え、エネルギー関連企業の信用リスクや米欧金
融機関の経営環境などが意識されるもとで、株価が下落し、米国・ド
イツの国債利回りが低下した。もっとも、2月中旬以降は、米欧の良
好な経済指標や原油価格の下げ止まり、G20 において参加国が成長
と安定を支える姿勢を改めて示したことなどから、株価は反発し、米
国・ドイツの国債利回りは幾分上昇した。
4.国内金融経済情勢
(1)実体経済
わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に
鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を続けている。
輸出は、新興国経済の減速の影響などから、足もとでは持ち直しが
一服している。財別にみると、資本財が弱めの動きとなっているほか、
IT関連もスマートフォンの部品で鈍さが目立っている。先行きの輸
出は、当面持ち直しの一服した状態が続くとみられるが、その後は、
新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やか
に増加するとみられる。
公共投資は、高水準ながら緩やかな減少傾向にある。先行きの公共
投資は、当面緩やかな減少傾向を続けるとみられる。
4
設備投資は、企業収益が高水準で推移する中で、緩やかな増加基調
にある。法人企業統計で経常利益率の動きをみると、製造業では、新
興国経済の減速の影響や円安傾向の一服などから、高水準横ばい圏内
の動きとなっている一方、非製造業では、交易条件の改善と国内需要
の増加に支えられて、明確な改善を続けている。昨年 10〜12 月期の
GDPベースの実質設備投資(2次速報値)は、前期比+1.5%の着
地となった。機械受注も、振れを均せば、しっかりとした増加基調を
辿っている。先行きの設備投資は、高水準の企業収益を背景として、
当面緩やかな増加を続けると予想される。
雇用・所得環境をみると、労働需給は着実な改善を続けており、雇
用者所得も緩やかに増加している。
個人消費は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移し
ている。各種の販売統計は、足もとでは、暖冬による季節商材の販売
不振の影響から鈍めの動きとなっているが、一時的なものと考えられ
る。外食などのサービス消費は、このところしっかりと増加している。
消費者マインドは、金融市場の不安定な動きの影響などから、やや大
きめの悪化となっている。先行きの個人消費は、雇用・所得環境の着
実な改善が続くもとで、引き続き底堅く推移するとみられる。
住宅投資は、このところ持ち直しが一服している。マンション価格
上昇を背景とした分譲需要の伸び悩みや貸家系の建設需要の増加一
服などがみられる。
鉱工業生産は、新興国経済の減速の影響に加え、在庫調整の動きも
あって、横ばい圏内の動きが続いている。先行きについては、自動車
におけるサプライチェーン障害の影響などにより振幅が大きくなる
と予想されるものの、基調としては、新興国を中心とする海外経済の
減速の影響が続くもとで、当面横ばい圏内の動きが続くとみられる。
物価面について、国内企業物価を3か月前比でみると、国際商品市
況の下落を主因に、下落を続けている。消費者物価(除く生鮮食品)
の前年比は、0%程度となっている。除く生鮮食品・エネルギーの前
年比をみると、昨年1〜2月をボトムに、プラス幅の着実な拡大傾向
が続いている。消費者物価(除く生鮮食品)を構成する各品目の前年
比について、上昇品目の割合から下落品目の割合を差し引いた指標を
みると、振れを伴いつつも、2008 年のピークを明確に上回る水準で
推移している。先行きについて、消費者物価の前年比は、エネルギー
価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられる。
5
(2)金融環境
わが国の金融環境は、きわめて緩和した状態にある。
マネタリーベースは、日本銀行による資産買入れが進捗する中、大
幅に増加しており、前年比は3割程度の伸びとなっている。
企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。資金
供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、改善傾向が続いて
いる。CP・社債市場では、良好な発行環境が続いている。資金需要
面をみると、運転資金や企業買収関連を中心に、緩やかに増加してい
る。以上のような環境のもとで、企業の資金調達動向をみると、銀行
貸出残高の前年比は、2%台前半のプラスとなっている。企業の資金
繰りは、良好である。マネーストックの前年比は、銀行貸出の増加な
どから3%程度の伸びとなっている。この間、予想物価上昇率は、や
や長い目でみれば全体として上昇しているとみられるが、このところ
弱含んでいる。
(3)「成長基盤強化を支援するための資金供給」について
3月上旬実行の成長基盤強化支援資金供給のうち、本則分の新規貸
付は 6,299 億円となり、貸付実行後の残高は 55,357 億円となってい
る。この他の残高は、ABL等特則分が 878 億円、小口特則分が
115.26 億円、米ドル特則分が 119.9 億米ドルとなっている。
U.住宅ローン債権の一括担保受入制度の導入について
1.執行部からの説明
昨年 12 月の金融政策決定会合において、「量的・質的金融緩和」を
補完するための諸措置の一環として、金融機関の住宅ローン債権を信
託等の手法を用いて一括して担保として受け入れることを可能とす
る制度の導入が決定されたことに伴い、住宅ローン債権を信託財産と
する信託受益権の担保としての取扱いを定める要領の制定等を行う
こととしたい。
2.委員会の検討・採決
上記を内容とする「『適格住宅ローン債権信託受益権担保取扱要領』
の制定等に関する件」が採決に付され、全員一致で決定された。本件
については、会合終了後、執行部より適宜の方法で公表することとさ
れた。
6
V.新たなETF買入れ枠の運営について
1.執行部からの説明
昨年 12 月の金融政策決定会合において、「設備・人材投資に積極的
に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETFについて、新たに
年間約 3,000 億円の枠を設けて買い入れることが決定されたことに
伴い、買入れ対象とするETFのうち、JPX日経 400 に連動する銘
柄以外のものについて、指数や買入対象銘柄に関する基準の制定等を
行うこととしたい。
2.委員会の検討・採決
上記を内容とする「『設備投資および人材投資に積極的に取り組ん
でいる企業を支援するための指数連動型上場投資信託受益権買入等
に関する特則』の制定等に関する件」が採決に付された。
採決の結果、賛成多数で決定された。
採決の結果
賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、
佐藤委員、原田委員、布野委員
反対:木内委員
── 木内委員は、ETF買入れ減額を含む自身の提案と整合的で
はないとして反対した。
本件については、会合終了後、執行部より適宜の方法で公表するこ
ととされた。
W.「補完当座預金制度基本要領」の一部改正等について
1.執行部からの説明
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとで補完当座預金制
度をより円滑に運営する観点から、実務的な対応を講じることとした
い。具体的には、@基準比率の見直し方法の明確化、AMRFに係る
「マクロ加算残高」の計算方法の特則の制定、B貸出支援基金等の利
用促進策の導入等を行うために、「補完当座預金制度基本要領」の一
部改正等を行うこととしたい。
7
2.委員会の検討・採決
委員は、執行部から説明があった実務的な対応について、これを実
施することが適当であるとの認識を共有した。何人かの委員は、MR
Fが個人の証券投資の決済機能を担っていることを指摘し、その機能
の円滑を確保することが適当であると述べた。また、複数の委員は、
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」のもとで、貸出増加や成長
基盤強化に向けた金融機関の取り組みなどを一層強力に支援するこ
とが適当であると述べた。ある委員は、こうした工夫や改良を講じる
ことで、マイナス金利政策の緩和効果を最大限引き出していくことが
重要であると指摘した。この間、一人の委員は、実務的な対応を講じ
ることは、マイナス金利の限界として誤解される可能性もあるため、
情報発信面には十分に留意する必要があると付け加えた。
以上の議論を踏まえ、「『補完当座預金制度基本要領』の一部改正等
に関する件」が採決に付され、全員一致で決定された。本件について
は、その骨子を対外公表文に記載することとされた。また、その詳細
については、会合終了後、執行部より適宜の方法で公表することとさ
れた。
X.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要
1.経済情勢
国際金融資本市場について、大方の委員は、2月中旬までは不安定
な状態が続いていたが、その後、幾分落ち着きを取り戻しているとの
見方を示した。何人かの委員は、その背景として原油価格の反発や堅
調な米国の経済指標を指摘したうえで、G20 において参加国が成長
と安定を支える姿勢を改めて示したことも市場に安心感をもたらし
たとの見方を示した。そのうえで、委員は、国際金融市場の動向やこ
れがわが国の経済・物価に及ぼす影響について、引き続き注視してい
く必要があるとの認識で一致した。
海外経済について、委員は、緩やかな成長が続いているが、新興国
を中心に幾分減速しているとの認識を共有した。先行きについて、委
員は、先進国が堅調な成長を続けるとともに、その好影響が波及し新
興国も減速した状態から脱していくとみられることから、緩やかに成
長率を高めていくとの見方で一致した。
地域毎にみると、米国経済について、委員は、米ドル高や新興国経
済の減速などから鉱工業部門は力強さを欠いているが、雇用が拡大す
8
るもとで、家計支出に支えられて回復傾向にあるとの認識で一致した。
また、米国経済の先行きについて、委員は、当面鉱工業部門は力強さ
を欠くものの、緩和的な金融環境のもとで、堅調な家計支出を起点と
して民間需要を中心に成長が続くとの見方を共有した。複数の委員は、
市場の一部に米国の景気後退を懸念する声も聞かれたことを指摘し
たうえで、最近の経済指標をみれば、過度に悲観的になる必要はない
との認識を示した。
欧州経済について、委員は、輸出は新興国経済の減速の影響などか
ら弱めの動きとなっているが、個人消費が引き続き増加するもとで、
緩やかな回復を続けているとの認識を共有した。先行きについて、委
員は、緩和的な金融環境のもとで雇用・所得環境の改善などを背景に
緩やかな回復を続けるとの見方で一致した。
中国経済について、委員は、総じて安定した成長を維持しているが、
輸出・生産面を中心に幾分減速しているとの見方で一致した。先行き
について、委員は、当局が財政・金融両面で景気下支え策に積極的に
取り組むもとで、概ね安定した成長経路を辿るとの見方を共有した。
新興国経済について、委員は、アジアでは外需の鈍化やIT関連財
の需要一服が輸出・生産を下押ししており、やや減速しているほか、
ブラジル、ロシアなど資源国では厳しい経済情勢が続いているとの見
方を共有した。先行きの新興国経済について、委員は、当面減速した
状態が続くとみられるが、先進国の景気回復の波及や金融・財政面の
景気刺激策の効果などから、減速した状態を脱していくとの見方を共
有した。
以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に
関する議論が行われた。
わが国の景気について、委員は、新興国経済の減速の影響などから
輸出・生産面に鈍さがみられるものの、基調としては緩やかな回復を
続けているとの認識を共有した。委員は、最近公表された経済指標に
は勢いを欠くものがみられるものの、家計、企業の両部門において所
得から支出への前向きの循環メカニズムが作用するもとで、わが国経
済の回復基調は揺らいでいないとの見方を共有した。景気の先行きに
ついて、委員は、当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられるが、家
計、企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズム
が持続するもとで、国内需要が増加基調を辿るとともに、輸出も、新
興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景に、緩やかに
増加するとの見方で一致した。そのうえで、委員は、わが国の経済は、
9
基調として緩やかに拡大していくとの認識を共有した。
輸出について、委員は、新興国経済の減速の影響などから、足もと
では持ち直しが一服しているとの認識で一致した。先行きの輸出につ
いて、委員は、資本財やIT関連が新興国経済の減速の影響から鈍め
の動きとなるもとで、全体でも当面持ち直しの一服した状態が続くが、
その後は、新興国経済が減速した状態から脱していくことなどを背景
に、緩やかに増加するとの見方を共有した。ある委員は、世界的にみ
て貿易活動は停滞気味であり、わが国の輸出についても、先行き必ず
しも楽観できないと述べた。
設備投資について、委員は、企業収益が高水準で推移する中で、緩
やかな増加基調にあるとの認識で一致した。先行きの設備投資につい
て、委員は、高水準の企業収益を背景として、緩やかな増加を続ける
との見方を共有した。ある委員は、輸出・生産の弱さが設備投資にも
影響を及ぼす可能性には留意が必要であるとの認識を示した。別の一
人の委員は、労働需給の改善を踏まえれば、今後、ロボットを活用し
た省力化投資やITを活用した生産性向上のための投資が増加して
いくことが期待できると述べた。
雇用・所得環境について、委員は、労働需給が着実な改善を続ける
もとで、雇用者所得は緩やかに増加しており、先行きも、労働需給の
引き締まりが続き、企業収益が高水準で推移するもとで、緩やかな増
加を続けるとの見方で一致した。
個人消費について、委員は、雇用・所得環境の着実な改善を背景に
底堅く推移しており、先行きも、引き続き底堅く推移するとの認識を
共有した。何人かの委員は、昨年 10〜12 月期の実質GDP(2次速
報値)において個人消費が前期比マイナスとなったことについて、暖
冬のほか家計調査のサンプル要因が影響しているとの認識を示した。
そのうえで、複数の委員は、販売側や供給側の統計などを合わせてみ
れば、個人消費の基調に変化はないとの認識を示した。この間、何人
かの委員は、国際金融市場の不安定な動きの影響から、消費者のマイ
ンド指標がやや大きめの悪化となっている点に留意を要すると述べ
た。また、複数の委員が、年金生活者や低所得者が消費に慎重になっ
ている可能性があるとの見方を示した。このうち一人の委員は、個人
消費の指標の動きをよく精査したうえで、個人消費の実態を見極めて
いく必要があると述べた。
鉱工業生産について、委員は、新興国経済の減速の影響に加え、在
庫調整の動きもあって、横ばい圏内の動きが続いているとの認識で一
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致した。先行きについて、委員は、基調としては、新興国を中心とす
る海外経済の減速の影響が続くもとで、当面横ばい圏内の動きが続く
との見方を共有した。
物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は
0%程度となっており、先行きについても、エネルギー価格下落の影
響から、当面0%程度で推移するとの見方で一致した。
2.金融面の動向
わが国の金融環境について、委員は、きわめて緩和した状態にある
との認識で一致した。委員は、マネタリーベースは日本銀行による資
産買入れの進捗を反映して大幅に増加しており、企業の資金調達コス
トはきわめて低い水準で推移しているとの見方を共有した。何人かの
委員は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入決定後、国
債のイールドカーブは全ての期間で低下しているほか、これを受けて、
貸出の基準となる金利や住宅ローン金利がはっきりと低下している
ことを指摘した。委員は、企業からみた金融機関の貸出態度は改善傾
向を続けているほか、CP・社債市場では良好な発行環境が続いてお
り、企業の資金繰りは良好であるとの認識で一致した。委員は、資金
需要は運転資金や企業買収関連を中心に緩やかに増加しており、銀行
貸出残高は中小企業向けも含めて緩やかに増加しているとの認識を
共有した。
Y.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要
以上のような金融経済情勢についての認識を踏まえ、委員は、当面
の金融政策運営に関する議論を行った。
金融政策を運営するうえでの物価動向の判断について、委員は、物
価の基調的な動きが重要であるとの認識を共有した。そのうえで、委
員は、需給ギャップや予想物価上昇率の動向を踏まえると、物価の基
調は着実に改善しているとの見方で一致した。一人の委員は、1月の
消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比プラス幅が縮小し
たことについて、暖冬による販売不振が影響したものであり、日次・
週次の物価指数の動きなども踏まえれば、物価の基調に変化はないと
の認識を示した。そのうえで、多くの委員は、先行きも、現在の金融
市場調節方針のもとで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を
着実に推進していくことで、物価の基調は着実に高まり、消費者物価
の前年比は、「物価安定の目標」である2%に向けて上昇率を高めて
いくとの見方を共有した。この間、何人かの委員は、最近の実体経済
11
における輸出・生産面などの弱めの動きや、円安米ドル高傾向の一服、
今年の春闘においてベースアップが総じて昨年の水準を下回ると見
込まれていることなどを踏まえれば、春先以降、消費者物価(除く生
鮮食品・エネルギー)の前年比が下振れるリスクが高まっているとの
認識を示した。これに対し、一人の委員は、最近、人手不足からパー
ト労働者の賃金を引き上げる動きがみられることを指摘し、労働需給
の改善は、やや時間を要したとしても、労働者の待遇改善を通じて物
価の押し上げに寄与していくとの見方を示した。また、複数の委員は、
原油価格が2月半ば以降底入れしていることを指摘した。
予想物価上昇率について、委員は、やや長い目でみれば全体として
上昇しているとみられるが、このところ弱含んでいるとの認識を共有
した。複数の委員は、予想物価上昇率に関するサーベイ調査や市場の
指標がこのところ弱めの動きを続けていることを指摘し、このところ
の原油価格の一段の下落が影響しているとの認識を示した。これらの
委員は、こうした予想物価上昇率の動きが、今後企業や家計の行動に
影響をもたらさないか注視する必要があると述べた。この間、一人の
委員は、消費者や企業経営者が「もはやデフレではない」と認識して
いることに変わりはないとの見方を示した。
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」導入が金融経済情勢に与
えた影響について、大方の委員は、金利面では、マイナス金利の導入
の効果は、既に現れているとの認識を共有した。何人かの委員は、国
債のイールドカーブが全ての期間で低下したことを指摘し、「マイナ
ス金利付き量的・質的金融緩和」は、イールドカーブの起点を引き下
げ、大規模な長期国債買入れとあわせて、金利全般により強い下押し
圧力を加えるという狙い通りの効果を発揮していると述べた。一人の
委員は、住宅ローン金利の低下は、住宅投資を刺激するほか、借り換
えを通じて債務者の金利負担を軽減し、消費にもプラスに働くとの見
方を示した。また、複数の委員が、マイナス金利導入後も円高・株安
が続いたことについて、世界的な投資家のリスク回避姿勢の過度の強
まりを背景とするものであると指摘し、市場が落ち着きを取り戻すに
つれて金利低下の効果はしっかりと波及していくとの見方を示した。
ある委員は、今後、金利の低下がどのように企業や家計の支出面に波
及していくかを注視すべきであると述べた。また、複数の委員は、「マ
イナス金利付き量的・質的金融緩和」はこれまで所期の効果を発揮し
てきた「量的・質的金融緩和」を一段と強化するものであり、実質金
利の引き下げを通じて雇用・所得面を含め国民生活に幅広いメリット
をもたらすということをしっかりと説明し、人々の理解を得ていくこ
12
とが重要であるとの認識を示した。
こうした見方に対して、何人かの委員は、足もとでは、マイナス金
利の導入に伴う負の影響が現れているとの認識を示した。これらの委
員は、具体的な影響として、金融機関や預金者の不安を招いたこと、
日本銀行の政策運営が分かり難いものとなったこと、金融市場の不安
定化に拍車をかけたこと、行き過ぎた追加緩和期待が醸成されたこと
などを指摘した。このうち複数の委員は、「マイナス金利付き量的・
質的金融緩和」のもとでのポートフォリオ・リバランス効果について、
国内の投資対象資産が限られていることから、必ずしも期待した効果
に繋がっていないと付け加えた。
「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の金融機関収益や金融仲
介機能への影響について、複数の委員は、日本の金融機関は高い財務
健全性を維持しているほか、「量的・質的金融緩和」の導入以降、地
域銀行を含め収益は高い水準にあることを指摘し、金融仲介機能が直
ちに弱まるとは考え難いとの見方を示した。これらの委員は、日本銀
行当座預金の階層構造の採用によって、金融機関収益への直接的な影
響は緩和されていると付け加えた。また、複数の委員が、金融機関の
収益構造を抜本的に改善するためには、デフレから脱却し、低金利環
境から脱することが不可欠であり、この点をしっかり説明していく必
要があるとの認識を示した。一人の委員は、銀行は長短金利差で利益
を得るものであるが、利益の源泉が長短金利差だけということであれ
ば、十分な金融仲介機能を果たしているとは言えないと述べた。これ
に対し、複数の委員は、マイナス金利のもとでは、金融機関が資産・
負債を圧縮することを通じて金融仲介機能が低下するリスクや、金融
機関の過度のリスクテイクを通じて金融の不均衡が蓄積するリスク
が高まるとの見方を示した。このうち一人の委員は、金融システムの
安定をこれまで以上に重視していく必要があるとの認識を示した。
以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方
針について、大方の委員は、「マネタリーベースが、年間約 80 兆円に
相当するペースで増加するよう金融市場調節を行う」という現在の方
針を継続することが適当であるとの認識を示した。
資産の買入れについて、大方の委員は、次回金融政策決定会合まで、
@長期国債について、保有残高が年間約 80 兆円に相当するペースで
増加するよう買入れを行うこと、ただし、イールドカーブ全体の金利
低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営すること、
AETFおよびJ−REITについて、保有残高が、それぞれ年間約
3兆円(4月からは年間約 3.3 兆円)、年間約 900 億円に相当するペー
13
スで増加するよう買入れを行うこと、BCP等、社債等について、そ
れぞれ約 2.2 兆円、約 3.2 兆円の残高を維持すること、が適当であ
るとの認識を共有した。
政策金利について、大方の委員は、引き続き日本銀行当座預金のう
ち政策金利残高に−0.1%のマイナス金利を適用することが適当であ
るとの認識を共有した。このうち一人の委員は、既にこの政策が導入
され、人々もそれを前提に行動していることを踏まえれば、すぐに撤
回することは適当ではないと述べた。また、別のある委員は、マイナ
ス金利政策には負の影響がみられるものの、導入直後の撤回は市場の
混乱や日本銀行の信認低下を招くおそれがあるため、現状維持が適当
であると述べた。
先行きの金融政策運営の考え方について、大方の委員は、@2%の
「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために
必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続す
る、A今後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目
標」の実現のために必要な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの
次元で、追加的な金融緩和措置を講じるとの方針を共有した。
一方、ある委員は、マイナス金利は、金融仲介機能を低下させ、実
体経済に悪影響をもたらすほか、将来の金融不均衡蓄積のリスクを高
めることなどから、補完当座預金制度の付利金利をマイナス金利導入
以前の水準に戻すことを主張した。そのうえで、日銀当座預金の3層
構造は、将来活用の余地があることから維持すべきであると述べた。
また、別のある委員は、「量的・質的金融緩和」の効果は限界的に
逓減しているほか、既に副作用が効果を上回っているとしたうえで、
@長期国債保有残高の増加ペースを、段階的減額を視野に入れて「量
的・質的金融緩和」導入時を下回る水準まで減額すること、A「物価
安定の目標」の達成期間を中長期へと見直し、金融不均衡などのリス
クに十分配慮した政策運営を行うことを主張した。また、金融仲介機
能と国債市場の安定に配慮して、補完当座預金制度の付利金利を以前
の水準に戻すことが適当であると付け加えた。
Z.政府からの出席者の発言
財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。
2月 26、27 日に上海にて開催されたG 20 財務大臣・中央銀行総
裁会議では、財務大臣からの問題提起もあり、@市場の過度の変動
14
に対する懸念の共有、A市場の信認を醸成し回復を維持・強化する
ため、金融、財政および構造政策など、全ての政策手段を個別にま
た総合的に用いるとの決意、B巨額で変動しやすい資本フローに対
処するための政策手段および枠組みについて検証を行う方針など、
日本として重要と考える要素が共同声明にしっかりと盛り込まれ
た。引き続き、国際社会と連携しつつ、市場動向等を注視していく。
平成 28 年度予算については、3月1日に衆議院で可決され、現
在参議院で審議が行われているところである。デフレ脱却・経済再
生をさらに前進させるため、平成 27 年度補正予算を迅速かつ着実
に実施するとともに、平成 28 年度予算および関連法案の早期成立
に向けて引き続き取り組んでいく。
日本銀行におかれては、引き続き、経済・物価情勢を踏まえつ
つ、物価安定目標の実現に向けて努力されることを期待している。
また、内閣府の出席者からは、以下の趣旨の発言があった。
わが国の景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな
回復基調が続いている。2015 年 10〜12 月期GDP速報(2次QE)
では、記録的な暖冬の影響もあり、実質成長率は前期比−0.3%と
なったが、実質雇用者報酬は前年同期比+1.7%、設備投資も2期
連続でプラス、2015 年暦年は名目・実質成長率、物価上昇率のい
ずれもがプラスと明るい動きがみられている。先行きは、雇用・所
得環境の改善が続く中で、各種政策の効果もあって、景気は緩やか
な回復に向かうことが期待される。ただし、海外経済の不確実性の
高まりや金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある。物価動
向の判断に当たっては、付加価値の価格を表すGDPデフレーター
等の各種物価指標を総合的にみていくことが重要である。
平成 27 年度補正予算について、その効果を早期に発揮させてい
くため、内閣府として進捗状況の調査を行うこととした。平成 28
年度予算および関連法案の早期成立が、デフレ脱却を目指し、経済
再生に向けた取組みをさらに進めるために極めて重要である。また、
本年5月のG7サミット議長国として、現下の世界的な経済状況に
適切に対応するため、国際金融経済分析会合を立ち上げ、幅広く世
界の経済・金融情勢について内外有識者から見解を伺うこととした。
2月 18 日の経済財政諮問会議の金融政策、物価等に関する集中
審議においては、デフレ脱却と経済再生に向けた進捗を確認した。
日本銀行においては、経済・物価情勢を踏まえつつ、2%の「物価
安定の目標」の実現に向けて、着実に取り組むことを期待する。な
15
お、先般のマイナス金利政策は、技術的で分かりにくい面もあるた
め、引き続き日本銀行として分かりやすく発信して頂き、今回の措
置の効果が十分発現するよう取り組んで頂きたいと考えている。
[.採決
1.金融市場調節方針(議長案)
以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるか
たちで、以下の議案が提出され、採決に付された。
採決の結果、賛成多数で決定された。
金融市場調節方針に関する議案(議長案)
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおり
とすること。
記
マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加
するよう金融市場調節を行う。
採決の結果
賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、
佐藤委員、原田委員、布野委員
反対:木内委員
2.資産買入れ方針(議長案)
議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、次回金融政策
決定会合まで、@長期国債の保有残高が年間約 80 兆円に相当する
ペースで増加するよう買入れを行う、ただし、イールドカーブ全体の
金利低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する、
また、買入れの平均残存期間は7年〜12 年程度とする、AETFお
よびJ−REITの保有残高が、それぞれ年間約3兆円(4月からは
年間約 3.3 兆円)、年間約 900 億円に相当するペースで増加するよう
買入れを行う、BCP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、
約 3.2 兆円の残高を維持する、との資産買入れ方針とすることを内
容とする議案が提出され、採決に付された。
採決の結果、賛成多数で決定された。
16
採決の結果
賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、
佐藤委員、原田委員、布野委員
反対:木内委員
3.政策金利(議長案)
議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、日本銀行当座
預金のうち政策金利残高に−0.1%のマイナス金利を適用することを
内容とする議案が提出され、採決に付された。
採決の結果、賛成多数で決定された。
採決の結果
賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、
原田委員、布野委員
反対:佐藤委員、木内委員
4.政策金利等(佐藤委員案)
この間、佐藤委員から、政策金利等に関して、@3段階の階層構造
を維持しつつ所要準備額を除く日本銀行当座預金について+0.1%の
金利を適用する、A貸出支援基金等は+0.1%の金利で実施する、と
の内容の議案が提出され、採決に付された。
採決の結果、反対多数で否決された。
採決の結果
賛成:佐藤委員、木内委員
反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、
原田委員、布野委員
5.金融市場調節および資産買入れ方針(木内委員案)
また、木内委員から、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方
針に関して、「マネタリーベースが、年間約 45 兆円に相当するペース
で増加するよう金融市場調節を行う。」、および資産買入れ方針に関し
て、「@長期国債について、保有残高が年間約 45 兆円に相当するペー
スで増加するよう買入れを行う。ただし、イールドカーブ全体の金利
低下を促す観点から、金融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入
れの平均残存期間は7年程度とする。AETFおよびJ−REITに
17
ついて、保有残高が、それぞれ年間約1兆円、年間約 300 億円に相当
するペースで増加するよう買入れを行う。BCP等、社債等について、
それぞれ約 2.2 兆円、約 3.2 兆円の残高を維持する。」、との議案が
提出され、採決に付された。
採決の結果、反対多数で否決された。
採決の結果
賛成:木内委員
反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、
佐藤委員、原田委員、布野委員
\.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)の検討
以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討され、多数意見が形成され
た。これに対し、木内委員から議案の提出があり、以下の2つの議案
が採決に付されることとなった。
1.木内委員案
木内委員からは、多数意見の対外公表文案における先行きの物価に
関する記述について、「消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落
の影響から、当面0%程度で推移するとみられるが、物価の基調は着
実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。」から、
「消費者物価の前年比は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%
程度で推移するとみられるが、その後はかなり緩やかに上昇率を高め
ていくと考えられる。」に、また、先行きの政策運営方針に関する記
述について、「日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指
し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「マイナス金利
付き量的・質的金融緩和」を継続する。今後とも、経済・物価のリス
ク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要な場合には、
「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じ
る。」から、「日本銀行は、中長期的に2%の「物価安定の目標」の実
現を目指し、金融面からの後押しを粘り強く続けていく。今後とも、
2つの「柱」による点検を踏まえた柔軟な政策運営のもとで、資産買
入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれぞれ適切と考えられる時点ま
で継続する。」に、それぞれ変更する内容の議案が提出され、採決に
付された。
採決の結果、反対多数で否決された。
18
採決の結果
賛成:木内委員
反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、
佐藤委員、原田委員、布野委員
2.議長案
議長からは、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)
が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会
合終了後、直ちに公表することとされた。
].議事要旨の承認
議事要旨(1月 28、29 日開催分)が全員一致で承認され、3月 18
日に公表することとされた。
以 上
19
2016年3月15日
日 本 銀 行
当面の金融政策運営について
1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定
した。
(1)「量」:金融市場調節方針(賛成8反対1)(注1)
次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。
マネタリーベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場
調節を行う。
(2)「質」:資産買入れ方針(賛成8反対1)(注1)
資産の買入れについては、以下のとおりとする。
@ 長期国債について、保有残高が年間約80兆円に相当するペースで増加するよ
う買入れを行う。ただし、イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、金
融市場の状況に応じて柔軟に運営する。買入れの平均残存期間は7年〜12年
程度とする。
A ETFについて、保有残高が、3月末までは年間約3兆円、4月からは年間約
3.3 兆円1
に相当するペースで増加するよう買入れを行う。J−REITについ
ては、保有残高が、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れ
を行う。
B CP等、社債等について、それぞれ約 2.2 兆円、約 3.2 兆円の残高を維持す
る。
(3)「金利」:政策金利(賛成7反対2)(注2)
日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。
1
このうち 3,000 億円の買入れは、2015 年 12 月の金融政策決定会合で決定した「設備・人材
投資に積極的に取り組んでいる企業」を対象とするETFの買入れの実施に伴うものである。
別 紙
20
2.わが国の景気は、新興国経済の減速の影響などから輸出・生産面に鈍さがみられ
るものの、基調としては緩やかな回復を続けている。海外経済は、緩やかな成長が
続いているが、新興国を中心に幾分減速している。そうしたもとで、輸出は、足も
とでは持ち直しが一服している。国内需要の面では、設備投資は、企業収益が高水
準で推移するなかで、緩やかな増加基調にある。個人消費は、雇用・所得環境の着
実な改善を背景に、底堅く推移している。一方、住宅投資はこのところ持ち直しが
一服しており、公共投資も高水準ながら緩やかな減少傾向にある。以上の内外需要
を反映して、鉱工業生産は、横ばい圏内の動きが続いている。わが国の金融環境は、
きわめて緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比
は、0%程度となっている。予想物価上昇率は、やや長い目でみれば全体として上
昇しているとみられるが、このところ弱含んでいる。
3.先行きのわが国経済については、当面、輸出・生産面に鈍さが残るとみられるが、
家計、企業の両部門において所得から支出への前向きの循環メカニズムが持続する
もとで、国内需要が増加基調をたどるとともに、輸出も、新興国経済が減速した状
態から脱していくことなどを背景に、緩やかに増加するとみられる。このため、わ
が国経済は、基調として緩やかに拡大していくと考えられる。消費者物価の前年比
は、エネルギー価格下落の影響から、当面0%程度で推移するとみられるが、物価
の基調は着実に高まり、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる(注3)。
4.リスク要因としては、中国をはじめとする新興国や資源国に関する不透明感に加
え、米国経済の動向やそのもとでの金融政策運営が国際金融資本市場に及ぼす影響、
欧州における債務問題の展開や景気・物価のモメンタム、地政学的リスクなどが挙
げられる。こうしたもとで、金融市場は世界的に不安定な動きが続いており、企業
コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延し、物価の基調に悪影
響が及ぶリスクには引き続き注意する必要がある。
5.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続す
るために必要な時点まで、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を継続する。今
後とも、経済・物価のリスク要因を点検し、「物価安定の目標」の実現のために必要
な場合には、「量」・「質」・「金利」の3つの次元で、追加的な金融緩和措置を講じる
(注4)。
6.また、日本銀行は、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を円滑に実施する観
点から、実務的な対応を決定した。すなわち、@0%の金利を適用する「マクロ加
21
算残高」の見直しを原則として3か月毎に行う、AMRFの証券取引における決済
機能に鑑み、MRFを受託する金融機関の「マクロ加算残高」に、受託残高に相当
する額(昨年の受託残高を上限とする)を加える、B金融機関の貸出増加に向けた
取り組みをより一層支援するため、今後「貸出支援基金」および「被災地金融機関
支援オペ」の残高を増加させた金融機関については、増加額の2倍の金額を「マク
ロ加算残高」に加算することとした2
。
(注1)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、佐藤委員、原田委員、布野
委員。反対:木内委員。なお、木内委員より、マネタリーベースおよび長期国債保有残高
が、年間約 45 兆円に相当するペースで増加するよう金融市場調節および資産買入れを行
うなどの議案が提出され、反対多数で否決された。
(注2)賛成:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、原田委員、布野委員。反対:
佐藤委員、木内委員。木内委員は、マイナス金利は市場機能や金融仲介機能および国債市
場の安定性を損ねることから、所要準備額を除く日本銀行当座預金については+0.1%の
金利を適用することが妥当として反対した。なお、佐藤委員より、3段階の階層構造を維
持しつつ所要準備額を除く日本銀行当座預金について+0.1%の金利を適用する、貸出支
援基金等は+0.1%の金利で実施するとの議案が提出され、反対多数で否決された。
(注3)木内委員より、消費者物価の前年比は、当面0%程度で推移するとみられるが、その後は
かなり緩やかに上昇率を高めていくとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛成:
木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、佐藤委員、原田
委員、布野委員)。 (注4)木内委員より、2%の「物価安定の目標」の実現は中長期的に目指すとしたうえで、2つ
の「柱」に基づく柔軟な政策運営のもとで、資産買入れ策と実質的なゼロ金利政策をそれ
ぞれ適切と考えられる時点まで継続するとの議案が提出され、反対多数で否決された(賛
成:木内委員、反対:黒田委員、岩田委員、中曽委員、白井委員、石田委員、佐藤委員、
原田委員、布野委員)。
2
@およびAについては、本日公表の「「補完当座預金制度基本要領」の一部改正等について」
参照。また、Bについては、基本要領の改正を次回金融政策決定会合で行ったうえ、5月積み
期より適用する。なお、既存の残高については、1月の決定どおり、貸出支援基金等の残高相
当額を「マクロ加算残高」に加算することとする。残高が減少した場合はその減少額だけ減算
する。
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2016/g160315.pdf
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