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日本銀行(撮影=編集部)
黒田日銀の異次元金融緩和、失敗が決定的…景気悪化鮮明、低金利で国民を苦しめる
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14894.html
2016.04.28 文=鷲尾香一/ジャーナリスト Business Journal
黒田東彦・日本銀行総裁が就任から目指してきた金融政策による“インフレマインドの向上”という夢が終焉を迎えようとしている――。
日銀が自ら行っている「生活意識に関するアンケート」の3月調査結果が4月11日に発表され、1年後の物価が「上がる」との回答が減少、2013年3月調査以来の低水準に落ち込んだ。黒田総裁が就任後、まず最初に実施した金融政策「量的・質的金融緩和」は同年4月から始まったため、それ以前の水準に逆戻りしたことになる。つまり、「異次元緩和」「黒田バズーカ」などの異名をとった黒田総裁の金融緩和政策の結果は、“泡沫のごとく消え去った”といえる。
同アンケートは2月5日から3月3日の間に全国の20歳以上の個人に対して行われ、有効回答者数は2146人だった。1年後の物価が「上がる」との回答は75.7%(前回77.6%)に減少、さらに1年前の物価と比べて「上がった」は70.5%(同78.8%)とこちらも減少し、物価の上げ止まりを感じている人が多くなっている。
このアンケートは個人を対象にしたものだが、企業を対象とした日銀の「全国企業短期経済観測調査」、いわゆる「日銀短観」でも、企業の物価見通しは15年3月調査から16年3月調査まで物価の低下が続いている。今年1月29日に日銀は「マイナス金利政策」を決定したが、3月調査では1年後、3年後、5年後のいずれの物価見通しもマイナス金利政策導入前よりも低下している。
こうしたインフレに対する期待の剥落は、景況感に起因しているものと思われる。同アンケートでは、現在の景気水準について「良い」は9.0%(同12.7%)、「悪い」は50.5%(同44.2%)と圧倒的に景況感の悪化を感じている人が多くなっている。
これを景気が「良くなった」から「悪くなった」の回答を差し引いた景況感DIで見ると、1年前と比べた場合はマイナス22.5(同マイナス17.3)と悪化している。同様に1年後と現在を比べた場合はマイナス30.9(同マイナス19.9)と一段と景気が悪化すると見ている人が増加していることがわかる。
この景況感の悪化は、消費にも表れている。同アンケートによると、支出を1年前と比べると「増えた」は37.7%(前回42.3%)、「減った」は19.4%(同16.4%)と明らかに消費が減退している。1年後についても「減らす」は51.0%(同45.2%)と消費が一段と減退しそうな雰囲気をうかがわせる結果となっている。
■動かなかった実体経済
黒田総裁の目標は、異次元緩和といわれるほど強力な金融緩和政策を行うことで、金利を低金利に抑え込む。為替が円安に動くことで、製造業の為替差益が発生するとともに、円安による輸出競争力が付き、企業業績が良くなる。これを受け、賃金が増加し消費が活性化するという正の循環が起きる。その結果として、消費者物価が2%水準まで上昇することを狙っていた。
その前段階として、「脱デフレ経済」と強力な金融緩和をアピールすることで、国民が「景気は回復する。デフレ経済から脱却できる」というマインドを醸成することを狙った。
結果、一時は世の中の景況感は確かに明るくなった。しかし、原油価格の下落や中国の景気減速に対する懸念があったにしても、景気の実態や人々のマインドは黒田総裁の狙ったようには動かなかった。金融緩和だけでは、企業の設備投資や消費といった実体経済が動かないことははっきりしてしまったのだ。
むしろ、アンケート調査のなかでは、日銀のマイナス金利政策の影響を受け、「金利が低すぎる」という回答が65.1%(前回51.9%)にも増加し、国民が低金利に苦しむ姿が浮き彫りになってしまったのだ。
(文=鷲尾香一/ジャーナリスト)
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