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http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48505
沸いていた湾岸エリアのタワーマンション市況も、様相が一変してきた〔PHOTO〕gettyimages
「住宅投資をする人に有利」「かなり早い時期にプラスの影響が出る」—マイナス金利で不動産バブルを煽る黒田総裁の言い分を真に受ければ、確実にバカを見る。不動産崩壊はもう始まっていた。
バブル再来はありえない
「マイナス金利政策によって、不動産市場が活性化していくと期待する声が多く聞かれます。日本銀行の黒田東彦総裁も、『家計の住宅投資にプラスの影響が出る』などと前向きに語っている。
しかし、こうした楽観論を鵜呑みにするのは危険です。多面的に分析してみると、実はマイナス金利政策は不動産市場への悪影響、言い方を換えれば、『副作用』をもたらす可能性が高いからです」
みずほ証券上級研究員の石澤卓志氏は言う。
日銀によるマイナス金利政策が始まってから約2ヵ月。
マイナス金利政策によって不動産市場が活性化するという威勢のいい声は各所から聞こえてくる。「好機到来」といった惹句が躍る不動産広告もよく見かける。
これからは不動産が上がって、国民の景況感が良くなり、それが好況を生み出す—。'80年代のバブル経済の再来を指摘するような専門家も出てきて、「にわかには信じられないが、そうなれば嬉しい」と期待する向きも少なくはないだろう。
しかし、そんな楽観は危険。マイナス金利はむしろ「副作用」が大きくて、今後はリスクが顕在化してくることに注意したほうがいいという。
石澤氏が続ける。
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「マイナス金利政策でまず期待されているのは、低金利でデベロッパーやREIT(不動産投資信託)などの収益が向上するため、不動産市況が活性化するというもの。ですが、これはほとんど期待できないシナリオです。
というのも、マイナス金利以前から長く低金利が続いていたので、デベロッパーなどの借入金利はすでに低水準。さらなる下げ余地は少ない。REITにしても、東京証券取引所に上場する53法人の平均借入金利は0・98%。有利子負債の平均残存年数も3・9年なので、仮に借り換えが起きるとしても、金利が短期間に一気に下がる可能性は低い」
銀行から低金利で借金をした不動産業者による開発ラッシュがこれから始まり、不動産業界は大盛況へ……という夢物語は、まったく起きそうにないというわけだ。
悪夢のシナリオ
株価は如実に物語る。
たとえば、三菱地所の株価は、年始には2500円以上あったのに、直近では2000円割れ。外資系証券の「空売り銘柄リスト」を見ても、ミサワホームなど不動産関連株が目につくようになってきた。一部の投資家がマイナス金利政策の副作用に気付き、不動産株の「買い」どころか、「売り」を仕掛けている。
「不動産価格はざっくり言えば、『不動産賃貸事業の純収益÷期待利回り』で算出できるので、マイナス金利で分母が小さくなると、理論上は価格が上がる。しかし、大都市圏ではすでに大幅な地価上昇が続いていて、このペースが続けばバブル化しかねない。
そうした中で投資資金がストップするような事態が起きれば、今度は急激な地価下落に転じる危険性がある。都心部への投資比率が大きい大手不動産は、大きな打撃を受ける可能性がある」(前出・石澤氏)
つまり、マイナス金利がバブル崩壊を招き、不動産業者の経営を直撃する。投資家たちは、そんな悪夢のシナリオを意識し始めているのである。
しかし、住宅ローン市場は盛り上がっているではないか。銀行のローン窓口には客が殺到していると聞いているが……。
もちろん、マイナス金利政策の導入以降、住宅ローン市場が盛り上がっているのは事実である。テレビのワイドショーでも、窓口に押し寄せる人たちの姿が映し出されている。
が、こうした動きが市場全体の活性化につながっているかといえば、答えはNO。「むしろ、業界を疲弊させている」とオラガ総研代表の牧野知弘氏は指摘する。
「銀行のローン窓口に殺到している人のほとんどは、新規借り入れではなくて、借り換えのお客です。これまで借りていたローンを別の銀行で借り換えているだけなので、市場全体のパイは膨れ上がっていない。むしろ、銀行からすればもともと薄かった利幅が、マイナス金利でさらに下がり、金融機関の経営には悪影響が出ている」
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海外投資家はもう逃げた
業界内でいま話題になっているのは、メガバンクの「反乱」である。
実は4月から住宅ローン金利が、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行で0・1%、みずほ銀行やりそな銀行は0・05%引き上げられている。
「マイナス金利が始まったことで、金融機関はローンの『格安過当競争』に追い込まれ、収益が悪化していた。金融機関からすれば、日銀のせいでこんな目にあったと怒り狂っていた。
にもかかわらず、黒田総裁が今後もマイナス金利政策を拡大する可能性があるとの意向を示したので、金融機関はいよいよ堪忍袋の緒が切れた。メガバンクが日銀に反乱を起こすべく、金利を引き上げたのではないかと話題になっている」(全国紙金融担当)
マイナス金利の副作用がどれだけのものか、おわかり頂けただろう。
そもそも、日本の不動産市況は前述したようにバブルの真っ最中であり、この熱狂もいつか必ず弾ける。事態は着々と「その日」に向けて歩みを進めているわけで、小手先の金融政策でこの大きな流れは変えられないというのが専門家たちの共通見解なのである。
「不動産価格はすでに昨夏頃に一旦ピークをつけた可能性が高い」と、ニッセイ基礎研究所主任研究員の増宮守氏は言う。
「'15年の日本国内の不動産取引額は、4年ぶりに縮小した。特に、ここ数年活発だった海外資金による日本の国内不動産の取得額が、'15年下期は前年同期比で5割にも満たない水準に激減したのが大きい。
われわれが不動産分野の実務家・専門家を対象に実施したアンケートでは、『東京の不動産価格のピークはいつごろと考えるか』について、すでにピークとする回答が3割近くに達している。『不動産投資市場全体の6ヵ月後の景況見通し』についての回答を見ても、'08年度以来初めて悲観が楽観を上回った」
日本の不動産バブルを牽引してきた海外マネーが「半減」するほどに冷え込んできたのだから、ただ事ではない。実際、すでに足元の現場では不動産の崩壊現象が起こっている。元大京取締役で不動産ジャーナリストの大越武氏は、「湾岸エリアの高級タワーマンションに買い手がつかなくなってきた」と言う。
「タワマンは投機目的の外国人投資家が主な買い手でしたが、ここへきて一気に引いてしまっている。すでに買っていた投資家も、とにかく早く処分したほうがいいと必死に売りに走っている。
実需ではなく投機目的で買われた物件ほど、価格が落ち始めた時にストンと下がっていくとわかっているからです。もう不動産バブルは崩壊寸前。以前は東京五輪の1~2年前に不動産のピークが来ると言われていたが、前倒しして来てしまった」
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杉並、世田谷でも危険
メガバンクも怒り出した〔PHOTO〕gettyimages
不動産経済研究所の統計によれば、首都圏のマンションの発売戸数は4ヵ月連続で減少。
マンションの月間契約率は今年1月と3月、景況感の目安とされる70%を下回る水準にまで急落下している。榊マンション市場研究所代表の榊淳司氏も言う。
「渋谷区広尾でも、新築分譲時の中心価格帯が約1億1000万円だった超高級マンションで売りが殺到している。値崩れする前に手放してしまおうという人が急増しているわけです。
しかし、すでに買い手がつかない状況になっている。内見に来る人も、『もっと値下げしてくれないと買えない』と強気の交渉を仕掛けている。今後はこうした中古物件の供給が過剰になっていって、売れ残りが大量に出てくるでしょう」
マンションだけではない。住宅地でも地価下落が始まった。
「3月に発表された国土交通省の公示地価では、全国平均の地価が8年ぶりに上昇したと騒がれましたが、これは三大都市圏や地方中核都市、それも商業エリアが中心で上がったにすぎません。住宅地の地価は47都道府県のうち約7割で下落。東京圏でも住宅地の上昇地点は一昨年、昨年、そして今年と年々減ってきている。神奈川でも横須賀、平塚あたりで価格下落の幅が大きくなってきた」(不動産コンサルタントの平野雅之氏)
不動産は「二極化」が言われてきたが、勝ち組の一極がどんどん負け組のほうへと転じている形である。
「価格下落の波は地方から郊外、そして都心部へと向かっている」(前出・牧野氏)
前出・増宮氏も言う。
「すでに杉並や世田谷などの高級住宅街でも、駅から5分圏内と、10分、20分圏内といったエリアで格差が広がってきた。これから懸念されるのは、大手町や丸の内といった東京の中心エリアです。オフィス空室率は非常に低い水準にあるが、これは古いビルの取り壊しなどの影響が大きく、実需はさほど盛り上がっていない。
そこへきて今回のマイナス金利でオフィス街の『大口借り主』である金融機関の収益が低下してくれば、この先、賃料の値下げ交渉ラッシュが起きかねない。丸の内や大手町で値下げマインドが広まると、その動きが東京全体に波及していく」
マイナス金利なのに不動産はどんどん下がり始めた。この流れはもう止められない。
「週刊現代」2016年4月30日号より
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