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約4ヵ月ぶりの海外投資家「買い越し」、ついに日本株復活のサインか
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48552
2016年04月27日(水) 磯山 友幸「経済ニュースの裏側」 現代ビジネス
■5ヵ月ぶりの「買い越し」
株式市場で年初から売り越しを続けてきた海外投資家が、買い越しに転じた。4月4日から8日の週の買い越しは326億円と、金額こそ小さかったものの昨年最終週以来14週ぶり。続く11日から15日の週は3848億円の買い越しと久しぶりにまとまった買い越し額となった。
日本の株式市場に大きな影響力を持つ海外投資家が買いに転じたことで、日経平均株価は8日の1万5471円を底に上昇、4月25日の取引時間中には1万7613円を付けた。
昨年秋以降、積極的に日本株を買ってきたのは「信託銀行」部門。背後にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などの公的資金による買いが入っているのではないか、と見られてきたことがある。その一方で海外投資家は売り越しを続け、年初からの売り越し額は5兆円を超えていた。
アベノミクスが本格的に始まった2013年には、海外投資家は15兆円を買い越していたが、年明けからの巨額の売りに、「海外投資家はアベノミクスを見限った」という見方まで出ていた。
海外投資家の買い越し額が信託銀行を上回ったのは昨年11月中旬以来5カ月ぶり。3848億円という買い越し規模は、昨年5月末の3970億円以来である。中国・上海株暴落の影響で日経平均株価が大きく下げる前で、日経平均株価は2万円を超えていた。週刊誌に「日経平均4万円」という見出しが躍るなど、強気が支配していた頃である。それ以来、久方ぶりに大量に買い越したのである。
では、これをきっかけに海外投資家は本格的に買い姿勢を強めてくるのだろうか。あるいは、出遅れ感が目立っている日本株への「打診買い」の域を出ないのか。
実は、国内の個人投資家の見方は冷めている。同じ11日から15日の週に3465億円も売り越したのである。年明けの大幅な株価下落局面や、2月に日経平均株価が1万5000円を割り込んだ過程で、個人投資家は積極的に買い越してきた。1万6000円台に戻してきたことで、利益確定や、「やれやれの売り」を出したということだろう。
■明るい材料がないわけではない
足元の国内景気は芳しくない。
日本百貨店協会が4月19日に発表した3月の全国百貨店売上高は、前年同月比2.9%のマイナスとなった。これまで好調な伸びを続けてきたハンドバッグなどの「身の回り品」や、時計・宝石といった「美術・宝飾・貴金属」部門が軒並みマイナスとなった。国内消費は一段と厳しさを増しているのである。
ここ数年、百貨店の売り上げに大きく貢献してきた訪日外国人による「爆買い」も頭打ちが鮮明になってきた。免税手続きをした物品全体の売上高は前年同月比13%増と、伸びが続いたものの、伸び率は目に見えて鈍化した。また、化粧品や食料品を除いた「一般物品」の免税売り上げは前年同月比で7.6%減少した。
頼みの外国人観光客の消費も伸びが鈍化してきたことで、国内の消費は一段と厳しさを増している。円安によって輸入食材の物価が上昇しているほか、外食産業の値上げなどで、家計が圧迫され、消費者の財布のひもが締っているのである。2014年4月の消費増税の影響は消えるどころか、ジワジワと大きくなっている。
一方で、景気の先行きに明るさがないわけではない。雇用情勢はひっ迫し、人手不足が一段と深刻化している。都心部の深夜営業の飲食店などでは時給を上げてもアルバイトが雇えなくなっている。人手不足による人件費の上昇が徐々にだが始まっている。
安倍晋三首相が言うように企業収益の好調が賃金の上昇につながれば、それが消費の拡大に結びついて「経済の好循環」が起きる。雇用者数の増加は続いており、今後も人手不足感が強まれば、賃金上昇が起きてくる可能性はある。
海外投資家が今後、本格的に買い進んでくるかどうかは、安倍内閣の目先の経済政策にかかっている。これだけ消費が落ち込んでいる中で、消費税率を10%に引き上げれば、日本経済は底が抜けかねない。2月頃から、「消費増税再延期」の観測が強まっているが、これは株価の下落を懸念した首相官邸周辺が流したものだったが、すでに株式市場では再延期が既定路線として織り込まれている。
■しばらく「買い越し」の可能性も
5月末の伊勢志摩サミット前後には本格的な経済大綱が打ち出される可能性が強いが、その際に消費増税の再延期が盛り込まれていなければ、株式市場には失望売りが広がる可能性が大きい。
さらに、27日から始まった日本銀行の政策決定会合でも追加の政策が打ち出されることが不可欠だ。海外投資家が打診買いを入れているのは、日本銀行が2月に導入したマイナス金利政策を、この決定会合でさらに一歩進めると読んでいるからだ。どんな追加策が打ち出されるかで、海外投資家の投資態度に大きく影響することになる。
日銀が本腰を入れてマイナス金利政策を取る姿勢を見せれば、海外投資家の日本株買いが継続する可能性が高いが、もし何も打ち出さなければ、再び売り越しに転じても不思議ではない。
熊本震災への対応で補正予算を組む素地もできている。7月には参議院議員選挙も控えており、この5月に安倍内閣が打ち出す「次の一手」が相場に大きな影響を与えることになる。
消費増税再延期とマイナス金利政策の本格化に財政出動が加われば、海外投資家がしばらく買い越し姿勢を強める可能性も出てきそうだ。
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