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中国、野望頓挫か…海外企業「爆買い」失速、悲願の半導体量産が大金積んでも失敗
http://biz-journal.jp/2016/04/post_14777.html
2016.04.20 文=湯之上隆/微細加工研究所所長 Business Journal
表1
■紫光集団は世界3位を目指す
昨年来、中国が世界の半導体企業を“爆買い”している(表1)。これは、中国が世界の約30%の半導体を消費しているにもかかわらず、自給率がたった12.8%しかないため、習近平国家主席が設立した「中国IC産業ファンド」(15兆円規模)を資金源として、中国企業が国家政策の一環として世界半導体企業を買い漁っているからである。
特に、その中心になっている紫光集団による爆買いは凄まじい。同社の趙偉国董事長は、2015年12月21日付日経新聞電子版のインタビューで次のように答えている。
「今後5年間で3000億元(約5.6兆円)を投じ、インテルとサムスン電子に次ぐ世界シェア3位を目指す」
「私(紫光集団)が半導体を強化する目的は三つある。(1)精華大で無線通信技術を学び、ITに興味があること、(2)中国の半導体が非常に弱いこと、(3)中国の投資家が半導体に熱中していることである」
「まずスマホ用プロセッサ、次にデジタル家電用SoC、そしてメモリに力を入れる。買収は、知的財産を合法的に、手っ取り早く手に入れる方法である」
このままの勢いで爆買いが進めば、本当に世界3位の半導体メーカーになってしまうかもしれない。その勢いは恐ろしいほどであると思っていたら、爆買いが頓挫し始めた。理由は何であろうか――。
■中国の爆買いに待ったがかかる
紫光集団は昨年、約38億ドルを投じてHDDメーカーの米ウェスタンデジタル(WD)に15%出資することで合意していた。ところが、WDは米政府や企業の情報システム構築にかかわっているため、米国企業のM&Aを審査する対米外国投資委員会(CFIUS)が調査に入ることになったという。その結果として、紫光集団はWDへの出資を断念したらしい。
WDは、東芝と共同でNANDフラッシュメモリを開発・生産している米サンディスクを買収した。そのため、紫光集団がWDの筆頭株主になれば、東芝とサンディスクが共同開発したNANDの技術を入手できるはずだった。しかし、WDへの出資が見送られたため、NANDの技術は手に入らなくなった。
また紫光集団は昨年、半導体メモリ第3位の米マイクロン・テクノロジーに230億ドルの買収を持ちかけていた。この大型買収は世間の耳目を集めたが、当初から米規制当局による審査が問題になるだろうと見られていた。その結果、両社ともに正式発表はしていないが、マイクロンは買収提案を断ったと思われる。
マイクロンと同時並行で紫光集団は、韓国のメモリ大手SK Hynixにも買収提案を行っていたようだが、こちらも断られたとみられている。
以上の結果、紫光集団、つまり中国が大金を積んででも手に入れたかったDRAMとNANDの技術は、入手困難となった。
さらに紫光集団は、台湾のTSMCおよびメディアテックに25%株式取得を提案した。TSMCは製造を専門とするファンドリーメーカーで、その規模は世界最大である。また、メディアテックはスマホ用プロセッサを設計するファブレス(工場を持たない事業者)で、中国のスマホ市場でトップシェアを獲得している。
これに対して、TSMCの張忠謀(モリス・チャン)董事長は、「適正価格であればTSMCの株式を買ってもらって構わない」というような発言をしていた。ところが、台湾の総統選で中国と距離を置く民進党が政権に復帰したため、紫光集団による台湾半導体メーカーの株式取得には待ったがかけられた。
このように、米国や台湾政府が障壁となって、中国による半導体企業爆買いには、暗雲が立ち込め始めてきた。
しかし、中国はこんなことでは諦めず、次の手を打ってきた。
■サイノキングテクノロジーによるDRAM立ち上げ
本連載前回記事「世界の工場・中国、なぜ技術者が育たない?判断要する開発やチームワークが無理、サボる」で詳述したとおり、元エルピーダメモリ社長の坂本幸雄氏がDRAM設計開発会社、サイノキングテクノロジーを設立した。同社は中国安徽省合肥市の地方政府が進める約8000億円をかけた先端半導体工場プロジェクトに中核企業として参画する。その際、同社が最先端メモリを設計し、生産技術を供与する。そして、中国合肥市の工場でDRAMを量産するという青写真である。坂本氏と中国の構想では、「日本人と台湾人が技術を開発し、中国が投資をしてDRAMを量産する」ことになる。この構想は悪くない。
しかし、問題がある。坂本氏によれば、「サイノキングは日本と台湾で計約二百数十名の技術者を採用し、このメンバーの経験と技術力を核として、17年中には日本、台湾、中国で計1000人規模の技術者を有するメモリ開発会社にする計画である」という。
第1の問題は、日本と台湾でこれだけの人数の技術者を集めることができるかということである。
第2の問題は、第1の問題が解決できたとしても、誰が、中国で建設された工場でDRAMを量産するのかということである。
坂本氏は「日本、台湾、中国で計1000人規模の技術者」を集め、中国人技術者に量産工場の立ち上げやDRAM量産を任せる計画なのかもしれない。しかし、数百人規模のチームワークが必要なプロセス開発や量産立ち上げは、中国人には無理だと考えられる。
しかし、賽は投げられた。目論み通りDRAM生産が軌道に乗るとは思えないが、技術者の募集と量産工場建設は進み始めているようだ。
■中国XMCが3次元NAND工場建設へ
米国の半導体情報サイト「EE Times」によれば、中国のファンドリーXMC(Wuhan Xinxin Semiconductor Manufacturing)が今年3月末、3次元NANDフラッシュメモリの新工場の建設に着手すると発表した(3月28日)。同社は現在、NOR型フラッシュメモリを製造中で、ウエハ生産能力は月産約2万枚であると報道されているが、真偽は不明である。
さらに電子デバイス産業新聞によれば、「XMCが3次元NANDの試作に成功しており」(4月17日)、18年に3次元NANDの量産開始を目指し、総額2.7兆円を投じて月産20万枚のウエハを生産する計画であるという。
ここでも、サイノキングと同様に問題が2つある。
第1の問題は、XMCがどこから3次元NANDの技術を入手したのかということである。電子デバイス新聞は、「XMCが3次元NANDの試作に成功」と書いているが、真に受けるのは難しい。
なぜなら、現在NANDのプレーヤーは4社あるが、各社におけるNANDに占める3次元NANDの割合は、サムスン電子(40.8%)、SK Hynix(3.3%)、東芝・サンディスク(5.4%)、マイクロン・インテル(17.6%)となっている(前出EE Times記事より)。
13年7月に量産を宣言した東芝ですら、いまだに5.4%しか3次元NANDをつくることができていない。それほど、3次元NANDの製造は難しいのである。それゆえ、中国のファンドリーのXMCがいきなり自力で「3次元NANDの試作に成功」するとは考えにくい。
他方、調査会社DIGITIMES Researchの14年10月13日付レポートには、「米スパンション(Spansion)が3次元 NANDフラッシュメモリ技術をファンドリーの中国XMCに提供する」との記載があったが、これも疑わしい。
というのは、スパンションとは1993年に富士通と米AMDによる合弁会社として設立され、主としてNORフラッシュメモリの開発と生産を行っていた。しかし、NANDには実績がない。そして、業績不振により10年にスパンションは倒産している。そのような会社が、果たして5年程度で3次元NANDの開発を完成することができるのだろうか。
第2の問題は、サイノキングと同様に中国に建設された月産20万枚の量産工場で、一体誰が3次元NANDを量産するのかということだ。もし中国人技術者を当てにしているのなら失敗する公算が高い。
■中国半導体産業の今後
中国は2000年に国策でファンドリーSMICを設立した。しかし、中国人技術者が育たず定着しなかったため、長期間にわたって赤字続きであった。
この状況を打開するために、習近平国家主席が「中国IC産業ファンド」を設立し、海外の半導体企業を技術者ごと買収するという手段に出た。これはある程度の成果は出たが、米国や台湾政府の審査が障害となって、その爆買いに待ったがかかった。
すると今度は、日本や米国の半導体企業や経営者を利用して、中国国内に半導体工場を立ち上げる計画を打ち出した。それがサイノキングであり、XMCである。しかし、技術者をどこから調達するのか、肝心の技術をどこから持ってくるのかという大きな問題がある。これらの問題を解決しない限り、中国でDRAMや3次元NANDの量産は成功しないだろう。
ではなぜ、中国はここまでして半導体(特にメモリ)技術を手に入れたいのか。それは、軍事技術と宇宙産業で米国を凌駕したいという野望があるからだという。恐らく、習近平国家主席が断念しない限り、あるいは中国が経済破綻しない限り、半導体技術入手のための戦略が次々と打ち出されてくるのだろう。
(文=湯之上隆/微細加工研究所所長)
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