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英『エコノミスト』誌は、2000年代以降も部数を伸ばし、いまでも大きな影響力を誇っている(写真:AP/アフロ))
英「エコノミスト」のアベノミクス評は激辛だ 円と日本経済の今後について厳しい評価
http://toyokeizai.net/articles/-/114344
2016年04月19日 東洋経済オンライン編集部
「アベノミクスが全面的な成功を収めるとはみていない」「マイナス金利を導入しても、金融機関による融資は増えない」
英『エコノミスト』誌とそのシンクタンク、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットは、アベノミクスと日本経済の今後について厳しい評価を下している。新著『通貨の未来 円・ドル・元』に記された見方だ。
■「解釈」と「予測」という点で実績
多くの雑誌が軒並み部数を激減させていくなか、インターネットが興隆する2000年以降も部数を伸ばし続けているのが、英『エコノミスト』誌だ。なんと同誌は、2000年に75万部だった部数を2015年には155万部にまで伸ばしている。その理由は、同誌がネットに代替できない「解釈」と「予測」という点で実績を残しているからである。
例えば、同誌は1962年に、「Consider Japan」という大特集を掲載している。誰もが日本など見向きもしなかった時代に、日本は戦後復興の過程を終え、世界の経済大国にのしあがっていくと予測したその記事は、世界の日本観を一変させるきっかけとなったものだ。
その後、英『エコノミスト』誌は、1965年、1967年、1981年と世界の主要プレイヤーとなる日本のことを大特集し、その世界経済に与える影響を分析した。
さて、『通貨の未来 円・ドル・元』ではどのように描かれているのだろうか。
この書籍は、基本的に、過去一年の英『エコノミスト』誌に掲載された、米国、中国そして日本にそれぞれの通貨に関する記事を集めている。ところが、ひとつ注記が必要だ。実は、「円」そのものの特集は過去1年間の中に1つもなかったのだ。
円と日本に対する『エコノミスト』誌の基本的な評価は、次の一文によくあらわれている。「1980年代には、日本がアメリカ経済の脅威になるかと思われた。日本はアジア諸国に対して『円』圏に加わるよう派手にはたらきかけたこともあった」(第一部第2章より)。
要するに、日本や円は、すでに「過去形」。ポンドと同様に、歴史の点描として記事の中に登場することはあるものの、「円」そのものの特集記事は、過去一年間の英『エコノミスト』誌には一本もなかったのである。
そこで、版元である文藝春秋社はひと手間を掛けた。「日本と円の未来」に関し、同誌のシンクタンクであるエコノミスト・インテリジェンス・ユニットに調査・執筆を依頼し、第四部「円の未来 黄昏の安定通貨」を独自に構成したのだ。
日本経済と円の未来について書き下ろした第四部の中身は、衆議院補選前の争点のひとつにもなっている「アベノミクス」の評価について紙幅を割くものになっている。
■英エコノミストの日本に対する評価は?
これが、実に厳しい内容だ。要点は次のようになる。
・アベノミクスは全体として、期待されたほどの効果を発揮していない。
・第一の矢である金融政策は、量的緩和の形で実行されたが、デフレ傾向からの脱却という目的はまだ達成できていない。円安基調で輸入品は割高になり、輸入に大きく依存している日本経済についてはそのダメージも見過ごせない(p218)
・マイナス金利の効果は疑問。日本で融資が増えていない最大の要因は、融資資金の供給不足ではなく、融資に対する需要不足(p199)
・ほとんどの日本国民は、日々の生活でアベノミクスの効果の恩恵をまったく感じていないと主張している(p219)
・こうした分析の結果、エコノミスト・インテリジェンス・ユニットは2016年〜20年の日本の経済成長率の予測を、年平均1.5パーセントから1パーセントに、消費者物価上昇率の予測を年平均1.7パーセントから1.1パーセントに引き下げた(p219)
・自民党は少なくとも2020年までは、衆参両院で3分の2以上の議席を確保できない可能性が高く、安倍首相が憲法改正を実現するのは難しい(p209)
ただし、円のみが問題なのではない。英『エコノミスト』誌は、ドルの力も相対的に弱まり、中国の元も、国内の政治的な不安定をもたらす、国内市場の完全自由化とトレードオフでなければ、国際通貨としての地位を確立することはできないと指摘している。
つまり、今の世界経済体制では、ドルも元も円も、基軸通貨たりえないということだ。「最後の貸し手」がいない体制になっているこの状態にこそ最大の危機があるというのが英『エコノミスト』誌の見方なのである。
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