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軽視できないパナマ文書、世界中で政治経済不安定化も
http://diamond.jp/articles/-/89838
2016年4月19日 真壁昭夫 [信州大学教授] ダイヤモンド・オンライン
■政治家や著名人の名前が続々 解明が進むにつれ事態は次第に深刻化
“パナマ文書”が世界中に大きな波紋を投げかけている。パナマ文書とは、パナマにある法律事務所であるモサック・フォンセカから流出した機密文書だ。モサック・フォンセカとは耳慣れない響きだが、ユルゲン・モサックとラモン・フォンセカ・モーラの二人が作った法律事務所だ。
この法律事務所は、裁判に係る手続きを行う一般的な事務所とは主要業務が大きく異なる。世界のお金持ちが、節税のために租税回避地(英領バージン諸島などの“タックスヘイブン”)に、実体のない登記だけのペーパー・カンパニーを設立するなどの業務が中心だ。
その顧客の中には英国のキャメロン首相や中国の習近平主席ら政治家の親族、アラブの富豪、サッカー選手のメッシやジャッキー・チェンら広範囲の有名人が含まれている。
そのパナマ文書は、匿名の人物によってまず南ドイツ新聞に持ち込まれ、その後、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に渡って分析が進められた。記載されているのは世界の著名人の節税に関する微妙な内容であるだけに、様々な機密事項が含まれている。
文書の中に名前が記載されていたアイスランドの首相が既に辞任に追い込まれ、中国ではパナマ文書の報道は厳しい感性下に置かれるなど、パナマ文書は各国に大きな影響を与え始めている。それに対して欧州を中心に各国は調査を開始、OECD(経済協力開発機構)も緊急会合を開くなど、事態は次第に深刻化の様相を呈している。
今後、パナマ文書の解明が進むにつれて、各国の政治が不安定になり経済運営への懸念が高まることも考えられる。歴史上最大の機密文書の漏えいといわれるパナマ文書の波紋を軽視すべきではない。
■本来なら税金逃れを取り締まるべき 政治家側の人間の関与がポイント
基本的に、タックスヘイブンの地域や国では、一般的な法人税や所得税はほとんどないに等しい。何故、そんなことをするのかというと、税金を安くすることで、節税をしたい企業や個人が当該地にやってくる可能性を高めるためだ。
節税を目的として人がやってくると、その為の宿泊施設や必要な事務所などの需要が発生する。宿泊料や手数料が落ちることで、雇用が生まれ人々の生活を成り立たせる経済活動が生まれる。
そうしたタックスヘイブンは世界中に約40以上あると言われているが、交通や通信施設などのインフラを考えると、実際によく利用されている場所としては、英国領ケイマン諸島やバージン諸島などが有力だ。
元々、タックスヘイブンは、英国のロンドンの金融街であるシティが金融特区として、特別の地位を与えられていたことに由来すると言われている。そのため、英国領の小さな島などにそのシステムが残っている。
問題の法律事務所があるパナマは、船舶の税制に関して有利な条件が設定してあるため、世界中の多くの船がパナマ船籍になっている。また、パナマ船籍にすることで、乗組員の制約も緩くなっている。
今回のパナマ文書に関してはタックスヘイブンに、登記だけで実体のないペーパーカンパニーを設立し、そこで収益が上がった形にして税金を軽減するケースが多いという。
そうした節税自体は、現在の法律では違法ではないのだが、節税の規模がかなり大きくなったことに加えて、節税を行う主体が、英国のキャメロン首相や中国の主要政治家の親族のように、本来、税金逃れを取り締まるべき政治家の関係者などだったことが見逃せないポイントだ。
■難しい「節税」と「脱税」の区別 庶民の間で高まる不公平感は問題
誰だって、税金を払うことには多少なりとも抵抗があるだろう。有力政治家や著名スポーツ選手など多額の収入を手にする人たちにとって、税金の支払いを軽減したいというインセンティブは強いはずだ。
タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立して、それを使えば合法的に税金負担を軽減できるとなれば、多くの富裕層がその手段を取ることは自然な成り行きだろう。実際、パナマ文書の公表が進むと、さらに多くの人が文書に登場することだろう。
ここに問題が二つある。一つは、節税と脱税の区別が難しいことだ。元々、納税者側と徴税側では、税金算定の基準などについては議論が分かれる部分があった。
今回のパナマ文書では、多くのケースが現行法では許容される範囲内と見られる。しかし、世界中で活動を行う多国籍企業が増えると、実際に、どの国、どの地域で収益が上がっているかを厳密に判別することは至難の業と言わざるを得ない。
納税側から見れば、できるだけ税率の低い国で収益計上を行い、税金負担を軽減する行動を取るだろう。そのため、今までにも、世界有数の大手企業が税率の低い国に本社を移転させるなどのことがあった。それに対して、税務当局との軋轢が生じたり、世論から批判を受けたケースは多い。
もう一つの問題は、納税者の間で不公平が生じることだ。われわれ庶民は、ほとんど選択の余地なく粛々と税金を支払っている。一方、一部の高額所得者は、タックスヘイブンのペーパーカンパニーなどを使って節税する選択肢を持っている。それはいかにも不公平だ。
本来、税負担は社会全般にわたって公平であるべきだ。公平が維持されていると思うからこそ、社会の納税意識を保つことができる。それができないと、近代国家の税負担の倫理観が崩れてしまう。それでは、国を維持することさえ難しくなる。
■世界的な合意は容易ではないが 税の国際協調体制を構築すべき時だ
パナマ文書で最も注目されるのは、国民に対して納税義務を課す政治家が、自らの利益を守るために租税を回避したとの批判が高まっていることだ。タックスヘイブンの投資会社を通して自国の銀行の債券に投資したアイスランドのグンロイグソン首相は辞任に追い込まれた。
また、6月23日に重要な国民投票を控えた英国のキャメロン首相は、亡父がパナマに設定した信託(ファンド)の権益を一時期保有し、2010年に売却して利益を得たことを認めた。
中国共産党の現職およびかつての指導部の親族らの名前もパナマ文書に挙がっている。習近平国家主席の義兄をはじめ、中央政治局常務委員会(共産党の最高意思決定機関)の序列上位に位置する人物の親族等がオフショア金融取引を行っていたようだ。もし国の最高意思決定機関の親族が資産隠しを行っていたとなれば、批判は大きく高まるだろう。
また、ロシアではプーチン大統領の友人の名前がパナマ文書に記載されていた。そのほか、ウクライナのポロシェンコ大統領、サウジアラビアのサルマン国王等の名前も記載されている。これでは、国のリーダーたる政治家と国民の信頼関係は崩れかねない。
そうした事態の発生を防ぐためにも、今回、パナマ文書を精緻に解明し、それを明確に公表することが必要だ。それと同時に、今後、税金の抜け駆けを監視・取り締まる世界的なシステムを作ることが必要だ。
各国の事情が異なっていることもあり、世界的に合意を取り付けることは容易なことではないだろう。しかし、そうした監視制度がないと、一部の金持ちはさらに金持ちになり、一般庶民は厳しい状況に押し込められたままだ。
そろそろ、そうした状況を変えるべき時が来ている。今回、匿名で当該情報をリークした人は、不公平な状況に義憤を感じたのだろう。その人の意思に応えるためにも、OECDなどが中心になって国際的な協調体制を作るべきだ。
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