http://www.asyura2.com/16/hasan107/msg/240.html
Tweet |
2016年04月02日 (土) 午前0:00〜[NHK総合]
時論公論 「日本経済 好循環の転換点か?」
今井 純子 解説委員
日銀の短観で、企業の景気認識が悪化していることがわかりました。これまで、安倍政権の経済政策で、最も恩恵を受け、経済のよい循環をつくりだす「起点」として期待されていたのが、企業でした。
その起点が、崩れ始めたということは、アベノミクスの先行きに赤信号がともる懸念がでてきたことを示しているように思います。では、好循環を取り戻すには何が必要なのか。簡単ではありませんが、消費を取り巻く不安を取り除く対策が、長期的な視点から見て、一番求められているのではないかと思います。こういった点をポイントに、見て行きたいと思います。
【好調だった企業 局面が変化】
(短観の内容・現状)
まず、短観の内容です。グラフは、景気が「よい」と答えた企業の割合から、「悪い」と答えた企業の割合を引いた指数の推移です。
今回、3月の調査で、「大企業の製造業」は、プラス6ポイント。前回12月と比べて、6ポイント悪化しました。半年ぶりの悪化です。
また、「大企業の非製造業」は、プラス22ポイントと、3ポイント悪化しました。一年6カ月ぶりの悪化です。
(短観の内容・3か月先)
そして、この先。3カ月先の景気についても、ともに、さらに、悪化するという見通しです。安倍政権の発足後、企業の景気認識は、高い水準を維持していましたが、明らかに、局面が変わり、悪化の方向に向かっているようです。
(背景は?)
背景にあるのは、企業を取り巻く環境の変化です。
▼ 国内の消費は低迷が続いていますし、
▼ 中国をはじめ、新興国の経済が減速していることで、輸出も伸び悩んでいます。
▼ そこに、今年に入って、円高が進んだことで、自動車など海外で活動している企業は、ドルで上げた利益を円に換算した額が、急激に目減りしています。
(減益へ)
短観で示された、企業の利益の予想を見てみると、3月までの一年間は、全体で、かろうじて、増益で、過去最高益を更新した見通しです。しかし、4月からの今年度は、減益に転じるという、見通しになりました。実際、減益になると、2011年度以来、5年ぶりのことです。
【アベノミクス振り出しに】
(好循環の起点として期待されていた企業)
安倍政権が発足して、日銀が異次元の金融緩和に踏み切って、まもなく3年です。
「経済再生」そして「デフレ脱却」という目標はどうなったのか、見てみると、GDPは、去年10月から12月は、マイナスに陥りました。この1年で見ても、プラスとマイナスを交互に繰り返しています。また、物価も、前の年と比べて、ゼロ%。前の年と同じ水準です。数字を見る限り、目標からは、ほど遠く、3年たって、振り出しに戻った形です。ただ、これまでは、大企業が好調でしたので、そこを起点として、まだ、賃金や投資が増え、経済の好循環が実現できると、いう期待が残っていました。
(好循環に赤信号)
それが、その大企業に、陰りがみられるようになったのです。今年の春闘では、賃金の引き上げ幅が去年を下回る見通しです。また、設備投資も、短観の今年度の計画では、大企業全体で、横ばいといった状態です。ここで、今後、本当に企業の業績が悪化して、賃金引上げや投資が一段と引き締まるようなことになれば、頼みの綱が切れて、アベノミクスの先行きに、赤信号がともりかねない。日本経済は、そのような転換点に差し掛かっているようです。振り出しに戻った形の今、この3年間の政策の何がうまくいかなかったのか、検証して、総括することが必要な時にきているように思います。
【新たな経済対策、消費増税先送りが焦点に】
では、その上で、この先どうしたらいいのでしょうか。
日銀については、国債を買い増すにしても、マイナス金利の幅を広げるにしても、もう限界近くに来ているという見方が、経済の専門家の間からはでています。
そこで、今、景気の刺激策として注目されているのが、新たな経済対策と消費増税の先送りです。
(新たな経済対策)
まず、新たな経済対策については、安倍総理大臣が今週、公明党の山口代表との会談で、夏の参議院選挙までに、取りまとめに入ることを検討する考えを示しました。この中味については、購入した額を上回る買い物ができるプレミアム付きの商品券や旅行券を発行するといった案も、出ています。
(消費増税の延期)
一方、来年4月に予定されている10%への消費増税を再び先送りする可能性について、安倍総理は、繰り返し「リーマンショック、あるいは、東日本大震災のような事態が起きない限り、予定通り引き上げる」と説明しています。
ですが、「経済が失速しては、元も子もなくなる」というように、微妙に発言を修正しているのではないかと、受け止められる発言もしています。
さらに、5月に予定されている伊勢志摩サミットに向けて、世界経済の安定に向けた議論をリードするためと言いながら、消費増税に慎重な経済学者を招いた「国際金融経済分析会合」を開いていることから、消費増税を先送りするための布石ではないかという見方も消えていません。
【低迷している個人消費への効果は?】
新たな経済対策と、消費増税の先送り。ともに狙いは、個人消費を喚起するところにあります。外需に頼れないのなら、消費をなんとかするしかない、という考えです。
(現金・預金が増えているのに、個人消費は低迷)
実際、個人消費の動向を示すグラフを見てみると、消費は、消費増税の後に落ち込んだあと、低い水準で低迷し続けています。
ところが、家計が抱える現金・預金は、去年12月の時点で902兆円。一年前より、12兆円増えて、過去最高の水準です。生活が楽なわけではない。そういう中でも、おカネを使わずに、ためている家庭が増えていることがうかがえます。
(人口減少や将来への不安が消費低迷の要因では?)
おカネがあるのに、消費が増えないことについては、「度重なる経済対策や8%への消費増税で、多くの人がクルマや家電製品を前倒しで買った影響ではないか」とか、「賃金の伸びが低い」からではないか。といった様々な理由が指摘されています。ただ、消費の低迷が長引いていることを考えると、それだけでなく、やはり、人口が減っている中、社会保障を含め将来に不安を感じて、おカネを使わない若い人が増えていることも、背景にあるのではないかと感じざるをえません。
そうだとすると、今ここで、商品券などを配っても、消費が本格的に増えるのかは疑問ですし、消費増税の先送りで、かえって将来の社会保障への不安が増すことにならないかも、心配です。
【まとめ】
消費を取り巻く不安を解消して、安心して消費を増やせるようにするには、従来の延長線上のような対策を繰り返しても、効果は限定的ではないでしょうか。簡単ではありませんが、少子化対策や社会保障制度の見直しといった、根本的な対策に本気で乗り出すこと。それが、遠回りに見えても、一番の消費対策。経済の好循環につながる道となるのではないでしょうか。
(今井 純子 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/241458.html
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民107掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。