http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/808.html
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マイナス金利と言っても、マイナス支払い利息(受取利息)は2万円しかないから、債券の発行手数料などを考慮するとトータルではプラスの費用が発生するので儲けになるわけではない。
(マイナス金利がさらに進めば、トータルの費用がマイナス(利得)になることも)
記事のように企業が発行する債券(借り入れ)がマイナス金利になっているのは、直接の融資(金銭消費貸借)ではなく、日銀に売却できるCP発行のかたちをとっているからである。
図にあるように、CPの購入で発生する“損失”は日銀にCPを売却することで打ち消し“利益”まで得られる“保障”があるかことで成立している取引である。
日銀に保有CPを売却する術をもたない一般投資家は、マイナス金利の債券を買うとそのまま損失になる。(銀行への転売で損失を減らしたりなくしたりすることは可能)
それゆえ、日銀がマイナス金利ではCPや社債を買わないという対応をすれば、この仕組みは成立しない。
マイナス金利導入政策の浸透で生じた金融事象ではなく、日銀が、“損失”を被っても銀行などに利益を供与する取引を行う意志をもっていることで起きている金融事象である。
※関連記事
「CP利回り、国債以下に マイナス金利で官民逆転:CPを高値で買ってマイナス金利導入で苦しむ銀行を支援する日銀」
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/716.html
「日銀オペに惑う社債市場 マイナス利回りでも売買成立 買い入れ対象巡り不安定:日銀は銀行を支援するという視点が重要」
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/773.html
社債やCPがマイナス金利で発行できるようになると、設備投資・不動産開発・企業買収などで必要な資金の借り入れはぐんと有利になるが、それがすぐさま低迷している製造業の設備投資拡大につながるとは言えない。
(借り入れで)設備の更新を考えている企業の負担は確実に軽くなるにしても、更新時期以外での設備新鋭化投資や追加的設備投資は、他で資金を使うより収益率が上昇する見込みがなければ実施されないからである。
利払いがマイナスなので借りた元本の返済額は若干減ることになるが、返済はしなければならない。膨大なお金が機械設備になっているので、その機械設備を使って利益を上げなければ返済はできない。
100億円の機械設備が実質90億円で購入できるほどのマイナス金利(マイナス10%)になれば設備投資誘発効果も出てくると思うが、今回の0.1ベイシスポイントはともかく、1ベイシスポイントや10ベイシスポイントになっても、国内外の需要低迷を乗り越えて設備投資を行うほどのインパクトはないだろう。
日銀が損失をかぶることを前提としたCPや社債さらには既発国債のマイナス金利状況は異様だと言えるだろう。
このような状況は、実質的に、日銀がマイナス金利で銀行に貸し出しを行っていることを意味する。銀行がそのお金を使わずに日銀当座預金に積み増すことで“利益”を得ようとする動きを押しとどめるために「マイナス金利の一部導入」を決めたかたちになっている。
それはともかく、CPや社債がマイナス金利で発行できるなら、どの企業のそれらより信用が高い国債の新規発行もマイナス金利になるはずである。
日銀がより大きなマイナス金利で買い入れることが明確になれば新発国債がマイナス金利になる可能性もあるが、現在のところ、マイナス金利は既発国債にとどまっている。
政府がマイナス金利で国債を発行すると“財政の持続性(負担減)”に大きく資する。
30兆円の国債を発行すると、たとえば300億円(マイナス0.1%の場合)のマイナス利息(利益)を得られる。
30兆円の国債を発行すると、これまでは150億円といった利払いをしなければならなかったのだから、往復で450億円ほどの利益になる。
ツケは日銀に回るが、すでに、銀行などのツケを過分に払ってクリアしている状況が生まれている。
民間部門の借り入れに拡大したマイナス金利だが、優良企業はマイナス金利の恩恵にあずかることができても、信用力が劣り日銀の買い入れ対象にならない中小企業は蚊帳の外に置かれる。
企業部門の資金偏在を考えれば、中小企業の資金手当てがスムーズかつ有利にできる状況をつくり出さなければならない。
記事のような話なら、内部留保を蓄えている企業がそれを温存したまま現状維持(国内ベースで)のための資金調達をマイナス金利で行えたり、銀行がマイナス金利の導入でうかつに日増えさせない日銀当座預金よりも断然有利な資金運用を見い出しただけに近いものになってしまう。
現在そしてこれからの日本にとって必要なのは製造業の設備投資増大である。現状の生産性がそのまま維持されるだけでは、国際競争力も長寿命社会対応力も失われていくことになる。
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企業、調達金利マイナス 三井住友リース、CPで初 −0.001%で
民間企業が初めてマイナス金利で資金調達する。三井住友ファイナンス&リース(F&L)が満期まで6カ月の債券を年マイナス0.001%で50億円発行する。日銀が2月に導入したマイナス金利政策の影響で様々な金利が大きく下がったため。企業がお金をもらって借金するという異例の事態で他の企業にも広がる可能性がある。
三井住友F&Lが発行するのはコマーシャルペーパー(CP)と呼ばれる短期社債。借り手は本来利子を支払うが、今回は50億円を借りた上で2万円あまりの利息を受け取ることになる。国債ではすでにマイナス金利での発行があったが、民間企業にも及んできた。23日に金利などの発行条件を決め、月内に発行する。
背景にあるのは日銀が2月に始めたマイナス金利政策だ。政策が始まってから様々な金利が大きく下がり、いまでは国債の大半はマイナス金利になっている。金利がプラスの債券が急減しており、民間企業が借りる金利にも強い低下圧力がかかっている。
さらに日銀は金融緩和の一環でCPそのものを買い入れている。2兆円強の保有残高を維持するため、どんなに低い金利でも買い入れる方針だ。市場に流通するCPが減っている影響もあって、17日には平均の購入金利がマイナス0.194%と過去最低を更新し、国債の金利も下回った。
投資家がマイナス金利のCPを買って満期まで持てば確実に損する。だが、満期までに発行金利よりも低い金利(高い価格)で日銀に売れば利益を得られる。今回マイナス金利のCPが発行されるのも、こうした転売をねらった需要が多かったとみられる。
日銀の黒田東彦総裁は「必要ならさらに金利を下げる」と話している。CPやより期間の長い融資や社債も金利は下がりやすくなっており、今後、民間企業でもマイナス金利の発行が広がる可能性もある。
先週までは決済を担う証券保管振替機構(ほふり)のシステム対応が追いつかず、0%ちょうどでのCPの発行が多かったが、今週から発行が可能となった。
[日経新聞3月24日夕刊P.1]
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