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[ポジション]日銀オペに惑う社債市場
マイナス利回りでも売買成立 買い入れ対象巡り不安定
「日銀の買い入れオペ(公開市場操作)」を巡る思惑が、社債市場を振り回している。日銀の社債買い入れの対象になりそうと市場が判断した銘柄は利回りがマイナスまで低下(価格は上昇)するケースが相次いでいる。本来、発行企業の信用力を表す社債利回りが、金融政策に左右される異常事態だ。
「売りに出ているのを知っていたら、何が何でも買ったのに」。ある国内運用機関のファンドマネジャーは18日、悔しそうに話した。日本証券業協会のデータで、前日に残存約3年の三井物産債の取引があったのが分かったからだ。取引が成立した利回りはマイナス0.008%程度。満期まで持つと金利をもらっても損をする高値だ。
にもかかわらず、この投資家が三井物産債を欲しがったのはなぜか。「商社は日銀が買い入れオペでほぼ確実に買ってくれる銘柄」と見ているからだ。社債をマイナス利回りで買っても、日銀がもっと高い価格で買い取ってくれるとの思惑が広がっている。
日銀は金融緩和の一環として、社債の買い入れオペを月1回実施している。マイナス金利政策を導入した影響で、社債を買い入れる際の利回りも急低下し、2月のオペでは平均落札利回りがマイナス0.031%となった。今月22日のオペは買い入れ規模が大きく、「平均落札利回りのマイナス幅は一段と大きくなる」(みずほ証券の大橋英敏氏)とみられている。
だが、すべての社債が日銀の買い入れ対象になるわけでもない。詳細は明らかではないが、日銀は格付けや流通状況でふるいにかけた上、社債の保有上限を個別の企業ごとに「1000億円または発行残高の25%」と定めている。償還や新規発行の影響もあり、どの銘柄が買い入れ対象になるかはオペごとに異なってくる。また、対象銘柄はオペの直前になるまで分からない。
これが社債市場の動きも不安定にしている。「ブラザー工業債が象徴的」とある社債投資家は話す。「オペの対象になりそう」との思惑から、昨年11月発行の3年債の流通利回りは2月に気配値で一時マイナス0.01%となった。ところが実際にはオペの対象には入らなかったもようで、反動から上昇。国債利回りの変動もあるが、企業の信用力は変わらないのに、利回りは乱高下した。
年限別の利回りには「逆転現象」が起きている。今月に入ってダブルA格(格付投資情報センター)の期間2年の社債の流通利回りが、期間1年の社債の流通利回りを下回った。日銀の買い入れ対象は「1年以上3年以下」であるため、2年の社債の方がオペにらみの需要が強いのが一因とみられる。
個別企業の信用力や残存期間を無視する形で利回りが変動する今の社債市場。ニッセイ基礎研究所の徳島勝幸氏は「誰も真剣に企業の信用リスクを判断しなくなった証拠」と指摘する。
ある国内証券のベテラン社債担当者がつぶやいた「こんな市場になってむなしいよ」という言葉が印象的だった。
(松本裕子)
[日経新聞3月19日朝刊P.19]
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