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[大機小機]主役を降りられない中央銀行
金融政策を議論する会合の時期がそろい、日米欧の中央銀行は常に比べられる存在になった。2016年は市場を手なずけてきた名手たちの守勢が目立つ。
黒田東彦日銀総裁はマイナス金利政策への疑念を払拭しようと反論に躍起。ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁はマイナス金利の限界を明言して失望を買った。イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は市場混乱の発端となった利上げのペース減速を示唆した。
彼らのいら立ちを映す一言がある。ドラギ氏を補佐するコンスタンシオECB副総裁はこうコメントした。「物価上昇を取り戻すには真に使える政策の総動員による成長の底上げが急務だ。金融政策でないなら、他に何があるのか」
マイナス金利は日欧が陥った低インフレの克服が目的だ。短期から長期まで実質金利を幅広く下げ、経済の体温を上げる。だが効果が表れるまでの間、金融機関は運用難に苦しみかねない。経済効果は極力大きく、金融機関への悪影響は極力小さく。そんな矛盾の構図を市場は見透かす。
不協和音も聞かれる。イングランド銀行のカーニー総裁は日欧のマイナス金利の競演を念頭に「ゼロサムゲームの懸念」を口にした。ユーロ圏からの円安誘導批判に日本の当局は立腹の様子だが、欧州の日本に対する視線は厳しい。
中央銀行の大胆な緩和策は金融危機の進行を止め、市場を安心させてきた。ここへ来て、その道具箱の中身は明らかに乏しくなっている。米コロンビア大のスティグリッツ教授など多くの識者が金融政策の限界を指摘する。
上海で議論した主要20カ国・地域(G20)の財務相は世界経済の腰折れ阻止へ財政出動などの政策総動員を声明で申し合わせた。とはいえ、その中身は全くの各国任せ。中期にわたって経済を底上げする政府の行動が欠かせないのに、どこも中央銀行が稼いでくれた時間を空費している。
政治は動けない。米国は大統領選挙、欧州は難民流入への対応と、欧州連合(EU)離脱を問う英国の国民投票。日銀のマイナス金利で借り入れの負担が軽くなった日本は来春の消費増税の延期という「思考停止」になびきはじめた。
連戦で疲労感のにじむ中央銀行だが、主役を降りられる日は遠い。
(仙境)
[日経新聞3月19日朝刊P.19]
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