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スティグリッツ氏「消費増税すべきでない」 国際経済分析会合(日本経済新聞)
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/603.html
投稿者 烏滸の者 日時 2016 年 3 月 16 日 22:44:33: hk3SORw2nEVEw iUef9YLMjtI
 

スティグリッツ氏「消費増税すべきでない」 国際経済分析会合
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFK16H26_W6A310C1000000/
2016/3/16 9:51 (2016/3/16 11:58更新) 日本経済新聞 

 政府は16日午前、世界経済について有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」を初めて開いた。講師として招いたノーベル経済学賞の受賞者であるジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は、世界経済は難局にあり「2016年はより弱くなるだろう」との見解を示した。「現在のタイミングでは消費税を引き上げる時期ではない」とも述べ、来年4月の消費税率10%への引き上げを見送るよう提言した。

 菅義偉官房長官は16日午前の記者会見で「スティグリッツ氏から税制について、総需要を喚起するものではないとの観点から、消費税引き上げはいまのタイミングではないとの趣旨の発言があった」と説明した。

 分析会合の終了後、安倍晋三首相とスティグリッツ氏のほか、首相の経済政策のブレーンを務める浜田宏一、本田悦朗両内閣官房参与を交え意見交換した。スティグリッツ氏は首相官邸で記者団に「首相は(消費増税先送りを)恐らく、確実に検討するだろう」と述べた。

 首相は分析会合の冒頭で「伊勢志摩サミットの議長の責任を果たすため、世界の経済・金融情勢について率直な意見交換をしたい。アベノミクスに関しても、どしどし意見を頂きたい」とあいさつした。

 スティグリッツ氏は分析会合で「世界経済は低迷している」との認識を表明。「日銀の金融政策だけでは限界がある。次に財政政策をとることが重要だ」と強調し、政府に財政出動を促した。

 分析会合の座長には石原伸晃経済財政・再生相が就いた。林幹雄経済産業相や加藤勝信一億総活躍相、菅氏や日銀の黒田東彦総裁が出席。本田、浜田両氏も陪席した。

 分析会合は17日に米ハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授と元日銀副総裁で日本経済研究センターの岩田一政理事長を招く。22日にはノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン氏を呼ぶ。

 首相はこれまでの国会答弁で増税の是非について「世界経済の収縮が起こっているか、専門的見地から分析し判断していかねばならない」と発言している。首相周辺は「有識者が経済収縮のリスクを指摘するなら増税見送りの判断はありうる」と語る。

 サミットまで継続的に開く予定で、5月の大型連休に安倍首相が欧州を歴訪する際にも外遊先で現地の経済学者らを招いた分析会合を開く方向で調整している。  

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コメント
 
1. 2016年3月16日 23:04:23 : y7WgloD3Ew : MeEJB2Uo3kg[17]
日経新聞どうしたのだ、99%の側に立つステイグリッツなど出してきて。

どうやら景気の後退は貧乏人、生活者いじめだと認めざるを得なくなったか。しかし強欲経営者ばかりになった日本では無理だよ。


2. 2016年3月17日 00:49:15 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[299]

「増税10%見送りを」 米教授が見解

毎日新聞2016年3月16日 11時15分(最終更新 3月16日 14時40分) 

国際金融経済分析会合の冒頭、あいさつする安倍晋三首相(右)。左はジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授=首相官邸で2016年3月16日、森田剛史撮影 

 政府は16日午前、5月の主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)に向け、世界経済情勢について有識者と意見交換する「国際金融経済分析会合」の初会合を首相官邸で開いた。講師で招かれたノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は、日本は2017年4月の消費税率10%への引き上げを先送りすべきだとの見解を示した。

 安倍晋三首相は会合の冒頭で「G7議長国として各国首脳と議論し、世界経済の持続的な成長に向け明確なメッセージを発出したい」と意欲を示した。

 会合は冒頭以外、非公開で行われた。スティグリッツ氏は会合で「(世界経済は)16年はさらに弱体化する」と指摘し、「今のタイミングで消費税を上げるべきではない」と首相に提言した。また、「金融政策には限界があり、財政政策をとることが重要だ」と語り、財政出動が必要との認識を示した。

 スティグリッツ氏は会合後、首相と約45分間、個別に懇談した。消費増税延期を主張している本田悦朗、浜田宏一両内閣官房参与も同席した。会合設置については消費増税を再延期する布石との臆測も出ている。初回会合で著名な経済学者のスティグリッツ氏が先送りを提言したことは、消費増税を巡る政治判断にも影響しそうだ。

 分析会合には首相のほか、日銀の黒田東彦総裁、石原伸晃経済再生担当相らが出席した。第2回会合は17日に、デール・ジョルゲンソン米ハーバード大教授と、元日銀副総裁で日本経済研究センター理事長の岩田一政氏から見解を聞く。第3回会合は22日、ポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大教授を招く。伊勢志摩サミットまで5回程度開催する予定。【大久保渉】

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http://mainichi.jp/articles/20160316/k00/00e/020/207000c


 

主要企業ベア鈍化 世界経済減速 官製春闘に逆風

毎日新聞2016年3月16日 21時27分(最終更新 3月16日 22時31分)
 


労使交渉の回答状況をボードに書き込む金属労協の職員=東京都中央区で2016年3月16日午前11時26分、森田剛史撮影
 2016年春闘は16日、主要企業の集中回答日を迎えた。主要企業は3年連続で賃金を底上げするベースアップ(ベア)に踏み切るものの、引き上げ幅は前年割れが続出。政権が企業に賃上げを促す「官製春闘」は3巡目だが、円高や世界経済の減速が企業の体力をそいでおり、賃上げをテコに消費拡大を目指すアベノミクスには逆風となりそうだ。

【表で見る】2016年自動車企業のベアと一時金(ボーナス)
 「経営環境を考えると、1000円も出せない」「我々は製品の質向上に貢献してきた」。3月9日に行われたトヨタ自動車の3回目の労使交渉は、ベアの水準を巡り激論が交わされた。

 経営側が最初に打診した水準は、要求額の3分の1、前年実績の4分の1にとどまる。経営環境の悪化を踏まえて要求額を前年の半分に引き下げていた労組だが、これには「賃上げで経済の好循環を作るのも企業の社会的役割だ」と反発した。交渉は回答日前日までもつれた結果、経営側は「従業員の意欲に応える」として絞り出すように500円を積み増し、前年の半分の水準で妥結。豊田章男社長は「経営の潮目が変わった」と理解を求めた。

 昨年の春闘は円安・株高を背景に大幅なベアに沸いたが、今年は回答額を抑える大手企業が相次いだ。春闘相場をけん引するトヨタだけでなく、日立製作所など電機大手5社もベアは前年の半額の1500円で妥結。賃上げの勢いが緩んだのは、年初から経営環境が急変したためだ。中国経済の先行き懸念の強まりなどを背景に円高・株安が進行。経団連は1月に決めた春闘方針で「年収ベースでの賃上げ」を目標に設定した。賃金改善は業績に応じて一時金で対応する姿勢に傾斜し、「ベアも選択肢の一つ」としてきた昨年からトーンダウンさせた。

 そもそも過去2年のベアで、大手企業では賃上げの余力が乏しくなっていた。労組も「中国リスクが大きく先行きが見通せない」(有野正治・電機連合中央執行委員長)としてベアの要求水準を引き下げ、当初から大幅なベアは見込めない状況だった。トヨタは1月に労組が要求額を固め、2月から労使交渉に入ったが、労組首脳は「交渉に入ると、会社の姿勢が厳しくなった」と振り返る。

 ベアによる賃金改善の流れが止まり、消費者心理が悪化すれば、「賃上げ→個人消費拡大→デフレ脱却」というシナリオを描くアベノミクスには逆風だ。安倍晋三首相は2月以降、経団連の榊原定征会長と顔を合わせるたびに「賃上げをお願いしたい」と要請したが、日立製作所やパナソニックが業績を下方修正するなど、悪材料は増えるばかり。昨年までは政府に後押しされる形で大幅ベアに踏み切っていた企業も、「賃金水準は経営環境を踏まえて労使で決める」(自動車大手幹部)という原則論を持ち出し、慎重姿勢を強めた。

 とはいえ、大手が軒並みベアを続け、底堅い業績を背景に一時金の満額回答が相次いだのは事実だ。日本総研の山田久調査部長は「労使の賃上げに対する本気度が問われていたが、ギリギリのところで賃上げの流れは維持された」と分析する。ただ、金融市場の動揺や世界経済の減速が続けば、この3年で築いた賃上げの流れは断ち切られかねない。石原伸晃・経済再生担当相は16日、「一時金は積み増されており、全体の流れは過去2年と変わらない」と述べたが、官製春闘の不発は政権の新たな懸念材料となった。【種市房子、竹地広憲】

大手と中小企業、格差是正が焦点

 今春闘の焦点の一つは、大手と中小企業、正規労働者と非正規労働者の賃金格差の是正だ。4月から本格化する中小企業の交渉の行方に注目が集まる。

 「結果をどう中小に波及させるか。春闘の評価はまだ早い」。鉄鋼や造船重機の労組でつくる基幹労連の工藤智司委員長は16日の会見で厳しい表情を見せた。

 今春闘は、労働側が賃上げの根拠とする物価上昇に弾みがつかず、大手企業の労組がベア要求額を前年より引き下げたことで、結果的に「(大手と中小の)格差を縮める好機になった」(自動車総連幹部)。自動車では、大手の労組が月額3000円のベアを要求したのに対して、車体・部品(3076円)や販売(3317円)など中小を含む労組は3000円を超える要求を掲げた。

 しかし、労使交渉の現実は厳しい。北関東の機械部品下請け会社の労働組合役員は「大手が大きなベアを獲得した際も、ベアどころか定期昇給を削られた。大手のベアが低額にとどまった状況では、より困難になる」と話す。中小企業は、円安で原材料費が上昇しているにもかかわらず、取引先の大企業との取引維持を優先して価格に転嫁できないケースも多い。労組は適正取引も求めており、この役員も「賃上げには原資が必要だ。上(大企業)から下(中小企業)へ流す水の量を増やしてくれれば」と期待をつなげる。

 一方、正社員と非正規社員の格差是正では、トヨタが期間労働者の日給を150円、パートは月給制で1900円、時給制なら10円の引き上げを回答した。正社員のベア1500円を上回る賃上げとなる。家具製造販売大手ニトリホールディングスは、パートやアルバイト従業員約1万8000人の時給を平均28.7円上げる。牛丼チェーン「すき家」を運営するゼンショーホールディングスも約10万人のパートやアルバイト従業員に対し、時給を平均2%引き上げる。春闘相場をけん引するトヨタなどの対応が、今後も続く春闘交渉にどれだけ影響を及ぼすか。それが賃上げの広がりを左右しそうだ。【東海林智、岡大介】
 
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http://mainichi.jp/articles/20160317/k00/00m/020/116000c

 

日銀が国債買い切っても負担なき財政再建はムリ
2016年3月16日(水)小黒一正

 「日銀が国債を全て買い切れば、「国民負担無し」で財政再建が終了する」といった主旨の言説がネット上で流布している。だが、これはウソで誤解である。以下、順番に説明しよう。
 第1の理由は、金融政策は資産の「等価交換」で、日銀が買い取る国債を支えているのは主に我々の預金だからだ。仮に日銀バランスシートの大部分を占める日銀保有の国債と日銀当座預金(準備)を互いに相殺すれば、我々の預金の一部が消滅する。この意味を理解するため、以下の簡易ケースで考察してみよう。
 現実の経済にはいくつもの異なる家計や企業、銀行などの金融機関が存在しているが、政府部門と日銀のほか、一つの民間銀行しか存在しないものとする。また当初、政府部門、日銀、民間銀行のバランスシートは以下の通りとする(注:簡略化するため、日銀が保有する国債以外の資産や自己資本のほか、民間銀行の自己資本などは無視する)。
図表1

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日銀が国債を償却すれば民間の預金が消滅する
 日銀バランシートの負債側にある「現金」は市中に流通している日銀券残高を意味し、「準備」は中央銀行が民間銀行から預かっている預金(=日銀当座預金)を意味する。
 このとき、金融政策で国債の買いオペレーション(以下、買いオペ)を行い、日銀が民間銀行から国債100を買い取ってみよう。果たして財政再建はできるだろうか。
 この政策は「国債と準備を等価交換」する措置であり、日銀は国債購入の対価として民間銀行の日銀当座預金を100増やす。つまり、日銀バランスシート上では資産側の国債が100増加、負債側の準備が100増加する。一方、民間銀行バランスシート上では資産側の準備が100増加、国債が100減少する。
 その結果、政府部門、日銀、民間銀行のバランスシートは以下の通りとなる。
図表2

図表1と異なる部分を、黄色と緑色でマークした。
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 図表2を基に、日銀が、バランスシートの大部分を占める国債と準備を互い相殺した時に何が起こるかを考える。まず、民間銀行のバランスシートを見てみよう。このバランスシートの資産側には準備350、国債300、貸出950がある。これらの合計1600を負債側の預金1600が支えている。つまり、負債側にある預金の一部(350)が資産側の準備350を支えている。
 次に、日銀のバランスシートを見てみよう。このバランスシートの負債側には現金100、政府預金50、準備350があり、それらの合計500が資産側の国債500を支えている。つまり、負債側の準備350が資産側にある国債の一部350を支えている。
 つまり、民間銀行バランスシートの負債側にある預金の一部(350)が、資産側の準備350を通じて、日銀のバランスシートの資産側にある国債の一部350を間接的に支えている構図になる。
 なお、日銀バランスシートの資産側で大部分を占める「国債」は「財務省に対する日銀の債権」、負債側で大部分を占める「準備」は「日銀に対する民間銀行の債権」(日銀から見ると負債)である。このため、財政再建のために、仮に日銀保有の国債の一部(350)と準備(350)を相殺すると、それは政府部門が準備350に100%課税するのと実質的に同等のものとなる。これは最終的に、民間銀行に預けている我々の預金の一部(350)が消滅することにつながる。
買いオペしても国債を引き受ける原資は増えない
 この問題を考える時、政府が発行する国債残高を賄っている原資は基本的に預金であり、金融政策はその原資を増やすものではないという事実も重要である。この事実は、日銀と民間銀行の統合バランシートを見ると簡単に理解できる。
 図表2の日銀バランスシートと民間銀行バランシートを統合し、資産側・負債側の両方に記載のある準備を形式的に相殺すると、以下の図表3となる。この統合バランシートは、負債側の現金100(=市中に流通している日銀券)、政府預金50、我々の預金1600が、政府が発行した国債残高800、企業などへの貸出950を支えていることを意味する。
 図表1における日銀と民間銀行のバランシートを統合しても、図表3と全く同じバランスシートが得られる。この事実は、政府が発行する国債残高を賄っている原資は基本的に預金であり、買いオペなどの金融政策はその原資を増やすものではないことを意味する。
図表3

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債務を長期から短期に切り替えても財政は再建できない
 第2の理由は、もし金利が正常化する中で、市場金利との比較で、「超過準備」の付利を適切な水準まで引き上げずに抑制する場合、政府部門と日銀の統合政府で見ると、それは預金課税を行っているのと実質的に同等なためである。また、「超過準備」の付利を適切な水準まで引き上げる場合、統合政府で見ると、「超過準備」は実質的に国債発行(短期国債の発行)と概ね同等になるためである。この意味について、順を追って説明しよう。
 理解を深めるため、図表1と図表2の各ケースについて、政府部門と日銀の統合政府バランスシートを考えてみよう。統合政府(政府部門+日銀)バランスシートの資産側と負債側の両方に記載がある政府預金や国債を相殺すると、各ケースにつき、以下の図表4が得られる。
図表4

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 図表4から読み取れる事実のうち、重要な視点は2つある。一つは、図表4の(1)・(2)のどちらのケースも、統合政府(政府部門+日銀)バランスシートの負債側にある「国債」と「準備」の合計650は、民間銀行バランスシートの資産側の「国債」と「準備」の合計650に一致し、その資産を支えているのは民間銀行バランスシートの負債側にある我々の「預金」1600であるという視点である。
 もう一つは、統合政府(政府部門+日銀)バランスシートの負債側にある「現金」「国債」「準備」のうち、現金の金利コストは「ゼロ」、国債の金利コストは「長期金利(例:10年国債の金利)」、準備の金利コストは「付利」であるという視点だ。
付利とは何か
 ところで、「付利」とは何か。付利とは、法定準備を除く日銀当座預金に付く金利をいう。念のために簡単に補足しておこう。まず、1957年の「準備預金制度に関する法律」に基づき、民間銀行は家計や企業から預かった預金の一定割合を日銀当座預金に積み立てる義務が課された。これを「法定準備」という。
 一方、超過準備とは「民間銀行等の金融機関が法定準備を超えて日銀当座預金に預けている余裕資金」をいう。2016年1月末時点の日銀当座預金は約260兆円、法定準備は約10兆円であるため、超過準備は約250兆円という異常な規模に到達している。
 本来、法定準備を含む日銀当座預金は無利子であるが、2008年11月以降、超過準備の全てに金利を付け(=付利)、0.1%の付利を設けた(注:付利は2008年11月から2009年4月までの時限措置のはずであったが、その後も延長)。
 当時、0.1%の付利を設けたのは、コール市場が機能不全に陥る可能性を懸念したからであろう。超過準備が異常な規模に膨張する中、超過準備に付利を設けない場合、「イールドカーブ*1の起点」に位置付けられる「無担保コールレート(翌日物)」(=民間銀行を含む金融機関同士で短期資金の貸借を行う「コール市場」での金利)などが金融政策当局の想定を超えて低下することが想定された。
*1:短期金利や長期金利といった期間別の利回り曲線を「イールドカーブ」(図表5参照)という。
 もっとも、デフレ下で名目金利が概ねゼロである状況では、国債の金利コスト(=長期金利)も、準備の金利コスト(=付利)も概ねゼロであるから、図表4の(1)ケースと(2)ケースにおける統合政府(政府部門+日銀)の負債コストは概ね同等となる。
 ところで、超過準備で付利を得る行為は、民間銀行などの金融機関から見る場合、短期国債や政府短期証券、コール市場で資金運用することで概ね代替できる。超過準備の「付利」は、短期国債の利回りやコールレートなどの「短期金利」と同水準で推移するからだ。
 このため、日銀が国債の買いオペで国債を買い取り、準備を民間銀行に提供する政策は、統合政府(政府部門+日銀)の負債コストの一部を「長期金利」から「短期金利」に切り換える操作を意味する。
図表5:日本国債のイールドカーブ(単位:%)

(出所)財務省
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 では、長短の金利を切り換えることで、負債コストを節減できるのか。答えは予測不能だが、市場がほぼ完全で裁定が機能しているならば、長短の金利切換えで負債コストを節減するのは難しいだろう。もし短期金利への切り換えで負債コストが確実に削減できるならば、そもそも長期国債の発行をやめ、国債発行を全て短期国債で発行すればよい。だが、そんな事が確実に予測できるはずがない。
マイナス金利政策は預金への課税と同じ
 ちなみに、もし金利が正常化する中で、「超過準備」の付利を市場金利との比較で適切な水準まで引き上げずに抑制する場合、政府部門と日銀の統合政府で見ると、それは預金に対して課税するのと実質的に同等となる。一方、「超過準備」の付利を適切な水準まで引き上げる場合、統合政府で見ると、「超過準備」を維持することは国債(短期国債)を発行することと概ね同等になる。
 これを理解するためにイールドカーブについて説明する。イールドカーブが形成される理由として、通常、「純粋期待仮説」「流動性プレミアム仮説」「市場分断仮説」の3つの仮説がある。
 「純粋期待仮説」は「長期金利は将来に予測される短期金利の平均の期待値で決まる」というもの。例えば、1年物・金利が2%、2年物・金利が3%であれば、1年後の1年物・金利は4%(=3%×2年−2%)になると市場は予測していると考える。理由は単純で、1年物・金利2%と1年後の1年物・金利4%で運用した金利収入の合計と、2年物・金利3%で2年間運用した金利収入の合計が一致するからである。
 「流動性プレミアム仮説」は、「金利の期間が長くなるにつれ、将来の金利変動で損失を被る不確実性があり、そのプレミアム分だけ、短期金利よりも長期金利の方が高くなる」というもの。「市場分断仮説」は「短期金利と長期金利は別々の市場でその間には裁定が機能しない」という説だ。取引コストの存在や諸規制のために、現実には資金の自由な移動が妨げられているのが理由である。
 これら3つのうち、実証分析などの結果、有力とされているのが「純粋期待仮説」である。
 以下では議論を分かりやすくするため、少し極論だが、短期金利は一定(例:3%)であるとしよう。その場合、「純粋期待仮説」に従えば、長期金利も一定(例:3%)になる。これは「イールドカーブ」がフラットの状況に相当する。また、貸出金利や預金金利の区別がなく、市場の名目金利が一つしかないものとする。
 ここで、国債の金利コスト(=長期金利)と準備の金利コスト(=付利)が大きく異なれば、図表4の (1)ケースと(2)ケースにおける統合政府(政府部門+日銀)の負債コストは大きく異なってくる。例えば、長期金利よりも付利をずっと低い状態に維持できれば、統合政府(政府部門+日銀)の負債コストは (1)ケースよりも(2)ケースの方が低くなり、負債コストを軽減できる。
 では、金利が正常化した場合に、長期金利よりも付利をずっと低い状態に維持すると、何が起こるだろうか。結論を先に述べると、民間銀行が保有する預金に対して統合政府(政府部門+日銀)が課税するのと同等になる。
 例えば市場の名目金利が3%に上昇していけば、市場の裁定が働き、長期金利(=10年国債の金利)や貸出金利も3%に上昇していく。このため付利も3%に引き上げる必要が出てくる。
 もし付利を3%に引き上げない場合、預金金利も3%を割ってしまう。図表4の(2)ケースで考えてみよう。長期金利(=国債の利回り)や貸出金利が3%で、もし付利がそれよりも低い1%であれば、民間銀行が得る金利収入は41(=350×1%+300×3%+950×3%)になる。
 民間銀行の利潤はゼロとして、この金利収入の全てを預金者に還元する場合、預金金利は2.56%(=41÷1600)と計算できる。付利が1%よりも低いゼロであれば、預金金利は2.34%になる。極論だが、マイナス金利政策(NIRP)で付利を▲15%にすれば、預金金利は▲0.93%にできる。
 なお、「純粋期待仮説」に従えば、この状況では裁定取引が可能なので民間銀行から預金が流出する可能性があり、市場金利の再調整が起こるはずである。一方、「市場分断仮説」がある程度成立すれば、預金金利を低めに抑制できるかもしれない。いずれにせよ、このような形で付利を市場の名目金利よりも引き下げて抑制する場合、預金金利が低下する。それは預金に対して課税するのと実質的に同等であることを意味する。
適切な付利は短期国債の発行と同じ
 これまでとは逆に、金利が正常化した場合、付利を適切な水準まで引き上げると何が起こるだろうか。この場合も、長期金利や短期金利、貸出金利や預金金利の区別がなく、市場の名目金利が一つしかないケースで考えると、物事が分かりやすくなる。
 例えば、長期金利(=国債の利回り)や貸出金利が3%のとき、付利を3%に引き上げる場合を考えてみよう。この場合、図表4の (1)・(2)のどちらのケースにおいても、統合政府(政府部門+日銀)バランスシートの負債側にある国債と準備のコストは同じ3%になる。
 厳密には、超過準備の付利は、短期国債の利回りやコールレートなどの「短期金利」と同水準となる。これは統合政府で見ると、「超過準備」を維持することは国債(短期国債)を発行するのと概ね同等になることを意味する。
「超過準備」を維持することは国債発行と同じ
 なお、日銀が付利を適切な水準まで引き上げない場合、民間銀行は余裕資金(=超過準備)を現金として取り崩して貸出や内外の投資に振り向ける可能性があるかもしれない。現時点で発生する確率は低いと考えるが、この点も重要なので順番に説明しよう。
 まず、既述の通り、付利を最初に導入した2008年11月以前、超過準備の金利コストはゼロだった。このため、長期金利よりも付利をずっと低い状態に維持することは可能に思えるかもしれない。だが、それは超過準備が現在よりも遥かに小さい規模だったときの議論で、現在は状況が本質的に異なる。それは、図表6から読み取れる。
 図表6には、1986年7月から2016年1月までの期間における「長期金利(=10年国債の金利)」や「コールレート」、「準備(=日銀当座預金)」「付利」「消費者物価総合指数(前年同月比)」の推移をプロットしている。
 このうち「準備(=日銀当座預金)」の規模は、図表6縦軸の右目盛で表している。、2008年11月以前はピーク時でも約30兆円に過ぎず、超過準備の付利はゼロでもかまわなかった。
 また2016年1月末時点で「準備(=日銀当座預金)」の規模は約260兆円(うち超過準備は約250兆円)に到達している。図表6から読み取れるように、コールレートは0.074%まで低下しており、これは2016年1月までの付利(0.1%)に近い値である。
図表6:10年国債の金利とコールレート等の推移

(出所)財務省・日銀・総務省データから筆者作成
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 さらに、現在は家計や企業に対する貸出が伸びず、名目金利が概ねゼロに張り付いているために、余裕資金(=超過準備)を振り向ける適切な資金運用先が十分に確保できない状況にある。このため、付利が低水準でも、それで金利収入を得ることができるので、民間銀行は余裕資金を超過準備に積み立てている。
 だが、家計や企業に対する貸出需要が拡大してくる状況を含め、資金の貸借市場の需給が変化し、金利が正常化した場合、この構図は大きく変わってしまう。例えば、名目金利が3%に到達したとしよう。このとき、超過準備の付利を0.1%といった低い水準に維持する場合、民間銀行は余裕資金である超過準備を現金として取り崩し、それを貸出や他の金融資産の投資に回す可能性がある。
 日本銀行法第46条第2項に基づき、現金である日銀券には「強制通用力」が認められているからである。一般的に、強制通用力を認められた貨幣による決済を、受け取る側は拒否することができない。このような状況の中、日銀が超過準備の規模を長期的に維持するには、付利を適切な水準まで引き上げる必要がある。
 少し極論だが、既述のように、長期金利や短期金利の区別がなく、市場の名目金利が一つしかないケースを考えてみよう。例えば名目金利が3%に上昇していけば、市場の裁定機能が働き、長期金利(=10年国債の金利)も3%に上昇していくので、付利も3%に引き上げる必要が出てくる。
 このとき、図表1や図表2の日銀バランスシートで何が起こるだろうか。日銀バランスシートの資産側にある国債の利回りは、金利が低いときに買い取った国債であるため、その利回り(=クーポン)は金利3%よりも低い。そのような状況で、負債側の準備を維持するために、日銀が付利を3%に引き上げると、日銀バランシートは逆鞘に陥り、日銀の収支は悪化する。最悪のケースでは日銀の自己資本を食いつぶす。
 このため、日銀の独立性を図る観点から損失補填規程が禁止されている新日銀法を改正し、政府部門は財政赤字にもかかわらず、日銀に財政的な支援(=日銀の損失補填)を行う必要性が出てくる可能性がある。だが、それは一時的な問題で、長期的には大きな問題ではない。
 日銀が保有する国債には償還年限(平均償還年限=7〜12年)があるため、十分時間が経つと、満期に至った国債が日銀のバランスシートから落ちていく。このような状況の中、日銀バランスシートの規模を維持するためには、政府部門が新たに発行した国債を引き受けた民間銀行から、国債の買いオペレーションを通じて日銀が買い取る必要がある。この結果、十分な時間が経ち、日銀が保有する国債の「入れ換え」が終了すると、国債の利回り(=クーポン)は付利と同じ3%になり、逆鞘は解消する。
 では、何が問題なのか。それは、図表4の統合政府(政府部門+日銀)で見れば、問題の本質が理解できるはずだ。図表4の(1)ケースと(2)ケースのどちらでも、準備の9割以上を占める超過準備の付利が長期金利と概ね同じとなれば、「超過準備」を維持することは国債を発行しているのと実質的に何も変わらない。
 もっとも、厳密には短期金利と長期金利の区別はあるので、金利が正常化した場合、長期金利よりも付利を若干低い水準に維持できる可能性もある。だが、資金の貸借市場の需給が需要増に傾くと、短期金利の下限であるコールレートも長期金利と同様の水準まで上昇する。これは、図表6における1986年から1995年頃の長期金利やコールレートの推移を見れば一目瞭然だ。この時、超過準備の規模を長期的に維持するためには、最低、コールレートの水準近くまで付利を引き上げる必要がある。
 また、既述の繰り返しだが、日銀が保有する国債は償還年限があるため、十分時間が経ち、何もしないと、国債は日銀バランスシートから落ちていく。その際、資金の貸借市場の需給関係が需要増に傾き、金利が正常化する中で、日銀が超過準備の規模維持のために必要な国債の買いオペレーションを実施しても、政府部門が国債発行計画で発行した新たな国債の利回り(=長期金利)と比較して、超過準備の付利が適切な水準まで引き上げられず、付利が見劣りする場合、民間銀行は政府部門から引き受けた新たな国債を保有し続け、日銀の買いオペレーションには応じない可能性もある。これを回避するためにも、付利を適切な水準まで引き上げる必要がある。
 以上の内容が理解できれば、「日銀が国債を全て買い切れば、国民負担無しに財政再建が終了する」旨の言説がウソで誤解であることが、改めて分かるはずである。
図表7

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 例えば図表2で、国債の買いオペを行い、日銀が民間銀行から国債300を買い取り、政府部門が発行する全ての国債を日銀が買い切るケースを考えてみよう。この場合、図表4の導出と同様、統合政府バランスシートの資産側と負債側の両方に記載がある政府預金50や国債800を相殺すると、統合政府と民間銀行のバランスシートは図表7になる。
 この図表の場合でも、金利が正常化した場合、日銀が超過準備の規模を長期的に維持するには、付利を適切な水準まで引き上げる必要がある。超過準備の付利が長期金利と概ね同じとなれば、「超過準備」は実質的な国債発行と概ね同等になる。一方、もし付利を適切な水準まで引き上げない場合、それは預金課税と実質的に同等になる。すなわち、「日銀が国債を全て買い切れば、国民負担無しで財政再建は終了する」旨の言説はウソで誤解である。



子供たちにツケを残さないために、いまの僕たちにできること
 この連載コラムは、拙書『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアムシリーズ)をふまえて、 財政・社会保障の再生や今後の成長戦略のあり方について考察していきます。国債の増発によって社会保障費を賄う現状は、ツケを私たちの子供たちに 回しているだけです。子供や孫たちに過剰な負担をかけないためにはどうするべきか? 財政の持続可能性のみでなく、財政負担の世代間公平も視点に入れて分析します。
 また、子供や孫たちに成長の糧を残すためにはどうすべきか、も議論します。
 楽しみにしてください。もちろん、皆様のご意見・ご感想も大歓迎です。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/216138/031400009/?ST=print 

 

生産回帰より高付加価値戦略が正解な米国
iPhoneの裏にある刻印がすべてを語る
2016年3月16日(水)牧野 直哉

 熱気を帯びるアメリカ大統領選挙。共和党は不動産王のドナルド・トランプ氏、民主党は前国務長官のヒラリー・クリントン氏が、指名獲得に有利と言われている。両党の大統領候補者は、7月後半に予定されている全国大会の代議員投票によって最終的に決定される。日本でも予備選の結果が連日報道され注目度が高い。今回、サプライチェーンにまつわる発言から、両候補の主張する政策が未来のサプライチェーンに与える影響を読み解いてみたい。
米国企業を敵に回すトランプ氏
 米国経済の活力の源とされてきた移民に対するトランプ氏の辛辣な発言は、米国内のみならず世界のメディアで物議を醸し批判の的だ。しかし、移民によって米国民の仕事が奪われているだけではなく、テロの危険も増しているとする主張は、中間所得者や無党派層から支持を得ている。
 この主張はサプライチェーンにも派生し、グローバルに事業展開する米国企業に遠慮しない、国内雇用を創出する「生産回帰」を意図した発言となっている。これまでに名前のあがった企業は、米アップル、米フォード・モーターと、米国経済をけん引する新旧の主役達だ。企業がみずからの成長戦略を描き、サプライチェーンの最適地としてメキシコや中国で生産しても、米国内の雇用創出には結び付かないと主張し、現在までのところ有権者に受け入れられている。
明確な立場を示さないクリントン氏
 一方のクリントン氏。これまでトランプ氏のアップルやフォードに対する主張を明確には否定していない。この対応は、トランプ氏の主な支持層である無党派層への注意深い意識に加えて、オバマ政権の国務長官時代に掲げた政策が影響している。

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 オバマ大統領の就任は、リーマンショックの衝撃が色濃く残る2009年初頭。就任して2年後には米国内への生産回帰に取り組む姿勢を強く打ちだした。輸出を5倍増やすと高らかに目標を掲げ、TPP(環太平洋経済連携協定)にも参加を表明した。上記5つの要素に加え、リーマンショックの後遺症に苦しむ中で景気刺激策を金融業に対して注入できないとの政治的な思惑、為替のドル安傾向などが加わり、米国への生産回帰が実現する気運が高まった。
 そんな中の2011年8月、ボストン コンサルティング グループが衝撃的なレポートを発表した。「Made in America, Again」と題され、当時日本でも、この内容が多方面で引用された。レポートでは、次の2つの点が強調された。
・中国の賃金上昇、米国の生産性向上、ドル安などにより、北米市場向け製品のうち多くは、米国で生産した場合と中国で生産した場合とのコストの差が今後5年以内にほぼなくなる見込み
・米国南部と中国揚子江デルタ地域の賃金を、生産性を加味した上で比較すると、2010年には中国揚子江デルタ地域の賃金は米国南部の41%だったが、2015年には61%へ上昇
 しかし2016年となった現在まで、米国への生産回帰が進んだのは、オバマ大統領が明確な政策を打ちだした2011年のみ。以降、生産回帰は進んではいない。正しくは次の2つの理由によって「生産回帰できなかった」のが現実だ。
戻せず再構築を迫られたサプライチェーン
 生産が海外へ流出すると、雇用やサプライヤーといったリソースなど鎖のようにつながっていたサプライチェーンが失われる。携帯電話や自動車といった上流の生産を戻したいと考えても、サプライチェーンを構成する要素であるサプライヤーが、生産の海外流出とともに米国内から消えたのだ。結果的に、元々生産していた状態を取り戻せずに、新たに社内外のリソースを構築しなければならなかった。労働者も生きてゆくためには他に働き口を求めていたので、過去の生産にまつわるノウハウの蓄積が生かせなかった。新たに雇用した従業員は、改めてトレーニングが必要だった。サプライヤーは失われた生産を穴埋めすべく、製品の転換や、顧客業態を変更して生き残りを計った。
 こういった生産の海外流出後の生き残りを懸けた取り組みによって、かつての購入取引を復活させようとしても思う通りに進まず、新しいサプライヤーを開拓し取引を開始したケースが多かった。生産回帰は、生産の海外移転によって失われた売り上げが回復した側面のみで、生産の実態は、新たな生産の立ちあげと変わらなかったのだ。
 新たに生産を立ちあげられればまだ良い。iPhoneの背面に刻印されている「Designed by Apple in California Assembled in China」は米国製造業の海外進出方法を象徴している。製品開発は米国で行って、製造は中国の製造委託先で行うビジネスモデルだ。iPhoneは最新モデルの6Sまでこのビジネスモデルで生産し全世界に供給している。新たな機種の登場により、追加や変更されているのは機能面だけではなく、生産技術の面でもさまざまなノウハウを中国側で蓄積している。
 そういった海外にあるノウハウは簡単に移管できない。仮に移管できるとしても、米国と中国の人件費の差は引き続き大きい。また米国における製造受託メーカーの多くは、試作品や多品種少量品、ハイエンド品が対象だ。海外で生産している製品を米国生産したくても、生産を受けられるメーカーが米国に存在しないのだ。
生産回帰は2011年のみ
 こういった傾向は、米ATカーニーが発表している「生産回帰指数(Reshoring Index)」にも表れている。先述したように、オバマ大統領が生産回帰、そして製造業の輸出振興を訴えた2011年こそ国内生産の増加傾向が見られるが、2012年以降は一貫して輸入の占める比率が増加している。
 これまでの米国における生産回帰の取り組みと結果から判断すると、トランプ氏の主張である米国内に生産を戻すのは事実上不可能だ。ただ、世界の消費者が、米国で生産した価格の高いiPhoneを購入するのであれば話は別だ。iPhone6の製造に要する人件費は、中国では1台当たり4米ドルと言われている。一方で、米国のサンフランシスコと中国の広州の人件費は、一般ワーカーレベルで、それぞれ月額3370米ドルと462米ドル。実に約7.3倍もの差がある。これを単純に当てはめると、米国ではiPhone1台当たりの人件費が29.2米ドルとなる計算だ。
 関連する製造ノウハウの移管に要するコストや時間を考え合わせると、トランプ氏の主張に答える形でアップルがiPhoneの生産を米国内に戻す事態は考えられない。他の米国企業も同じ判断をするはずだ。オバマ大統領の主張を受け入れず、生産回帰が実現しなかったように、トランプ氏が大統領となっても、米国内で再び生産が行われる可能性は極めて少ない。
 クリントン氏も、TPPに反対を主張し、トランプ氏が受け入れられている点を意識した発言を行っている。オバマ大統領の政権内で主張した生産回帰と輸出拡大が、思うように進まない可能性を見据え、今後現実的な主張を行う余地を残している。
 ビジネスマンとして成功を収めたトランプ氏が、経済的合理性を兼ねそなえた生産回帰の難しさを理解していないはずはない。しかし、これまでの発言内容の転換は、熱狂的な中間所得者と無党派層を基盤とする支持者を失う結果につながる。米国企業のサプライチェーン的視点でみれば、民主党のクリントン氏を支持すべきだ。
 このまま虚像の生産回帰を追い続け、トランプ氏が大統領の座を射止めるのか。しかし、トランプ氏の主張は、iPhoneの背面に刻印されている「Designed by Apple in California Assembled in China」にある高付加価値の仕事を米国内で行って発展した企業からすれば、まさに正反対の主張に映るであろう。トランプ氏が今の主張を続けられるのか。クリントン氏が現実的な主張を始め有権者に受け入れられるのかどうか。各党の候補者指名から目が離せない。



目覚めよサプライチェーン
自動車業界では、トヨタ自動車、本田技研工業、日産自動車。電機メーカーでは、ソニー、パナソニック、シャープ、東芝、三菱電機、日立製作所。これら企業が「The 日系企業」であり、「The ものづくり」の代表だった。それが、現在では、アップルやサムスン、フォックスコンなどが、ネオ製造業として台頭している。また、P&G、ウォルマート、ジョンソン・アンド・ジョンソンが製造業以上にすぐれたサプライチェーンを構築したり、IBM、ヒューレット・パッカードがBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)を開始したりと、これまでのパラダイムを外れた事象が次々と出てきている。海外での先端の、「ものづくり」、「サプライチェーン」、そして製造業の将来はどう報じられているのか。本コラムでは、海外のニュースを紹介する。そして、著者が主領域とする調達・購買・サプライチェーン領域の知識も織り込みながら、日本メーカーへのヒントをお渡しする。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/258308/031400021/?ST=print 

邦銀・生保の海外投融資に逆風、マイナス金利でドル調達コスト急上昇
2016/03/17 00:01 JST 

    (ブルームバーグ):日本銀行のマイナス金利政策で、円資金を元手にドル資金を調達するコストが急上昇している。国内融資の収益が低迷し運用難の中、銀行や生命保険会社などが注力してきたドル建て融資や外債投資には逆風となる可能性がある。
みずほ証券によると海外貸し出しのためのドル資金調達には、外国為替市場で円を売ってドルを買う取引よりも、金利部分を交換するベーシススワップ取引が使われることが多い。ドル調達コストを示すベーシススワップのスプレッドは、1年物が日銀がマイナス金利導入を発表した前日(1月28日)の52.6 ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)から16日には58bpまで拡大。5年物は先週、過去最大の102.5bpに達し、16日は98bp
安倍晋三政権下の日銀の異次元緩和で国内貸し出し利ざやは低迷し続けており、国内銀行はより高い金利を求めて、海外融資を拡大。国際決済銀行(BIS)によると、邦銀の海外債権残高は昨年9月末時点で3兆5617億ドル(約402兆円)と3年前より3650億ドル増えている。さらに今年1月には日銀がマイナス金利政策に踏み切ったのを受けて、日米の金利差拡大を見込んでドル調達需要が増加、ベーシススワップ取引のコストは一段と拡大した。
みずほ証券の大橋英敏チーフクレジットストラテジストは、ベーシススワップの拡大はマイナス金利の影響があるとした上で、「ものすごく重要な問題だ。このままスプレッドが拡大すれば、海外融資や外債投資を減らすか地域の分散といった工夫が必要になる」と指摘する。中でも「困る割合が高いのは地域金融機関と保険会社だ」と言う。ドイツ証券の山田能伸アナリストは、外債などで資金調達できる「3メガバンクには影響は基本的に出ない」としている。
ユーロに分散投資も
欧州中央銀行(ECB)が10日、追加金融緩和に踏み切ったこともあり、ユーロ円のベーシススワップはドル円よりも低く、5年物でドル円の半分以下となる45bp(16日現在)にとどまっている。
みずほ証の大橋氏は、ユーロの方が調達コストが低いことから、ユーロ建て資産に資金を「振り向けて行くといった工夫が必要になる」と話す。スプレッドの乗っている欧州圏の銀行社債などは「引き続き投資対象になる」との見方を示した。大橋氏は、「欧州では金利低下も期待されている」とし、これから数カ月は国内投資家からの資金が欧州債市場に入っていくとみている。
外債投資
ドイツ証の山田氏は、ドル調達コスト上昇の影響を大きく受けるのは「海外貸し出しよりもむしろ外債投資」といい、「生命保険などの機関投資家が外債投資しようとする時にコストが上がると問題になる」と説明した。
生命保険協会によると、債券を含む国内生保の外国証券資産は、15年末時点で76.7兆円と前年比4%増加しているのに対し、国内の国債や社債、地方債はいずれも前年から減少している。
東海東京調査センターの摩嶋竜生アナリストは、保険会社にとって「海外投資の運用利回りが落ちるのは痛い」ため、各社は利回りの影響を受ける貯蓄性商品の販売停止という形で対応していると指摘した。一方、死亡率の低下で保障型の保険商品は好調なため「収益ドライバーを大きく損なうわけではない」と話した。富国生命保険保険は、マイナス金利発表後に一時払い終身保険の一部を休止した。
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3V2LA6TTDS201.html


 
トランプ氏、党大会で候補選出阻止されれば「暴動起きる」と警告
2016/03/17 00:02 JST
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    (ブルームバーグ):2016年の米大統領選挙で共和党からの候補者指名を目指すドナルド・トランプ氏は16日、次回の討論会に参加しないと述べた。同氏はまた、代議員獲得数でトップとなっても党大会で同氏の候補者選出が党指導部によって阻止されるようなことがあれば、「暴動」が起きるだろうと警告した。
15日の予備選・党員集会でトランプ氏は3州を制したものの、ミズーリ州では小幅なリードにとどまり、オハイオ州では敗北を喫した。代議員数獲得でトップになっても、過半数となる1237人に満たない場合、最終決着は7月の党大会に持ち越される可能性がある。
「党大会の開催前に勝利すると思う。しかしそうならない場合、例えば20人足りない、あるいは100人足りない、もしくは1100人獲得したが他の候補が500人、400人の場合は断トツでリードしていることになるが、自動的に勝利したとは言えないということらしい」とトランプ氏はCNNに対して発言。「そうなれば暴動が起きるだろう」と続けた。
同氏は暴動について、「私が導くわけではないが、悪いことは起きる」と述べ、そうなれば同氏の支持者の「参政権が奪い取られることになる」と付け加えた。
21日にソルトレークシティーでフォックス・ニュースが主催する討論会について、「討論は十分にした」とし、「事前に知らされていなかった。参加はしない」と述べた。
原題:Trump Says He’ll Skip Debate, Warns of Possible Convention Riots(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O44XPISYF01S01.html

「トランプ」よりも「共和党」を守る可能性も

党保守本流が推した若手ルビオはついに撤退

2016年3月17日(木)高濱 賛

大票田フロリダをはじめとする5州で同時に予備選が行われた「ミニ・スーパー・チューズデー」(3月15日)でもトランプ旋風は収まりませんでしたね。

高濱:共和党の候補は5州で367人の代議員数を争いました。これは指名に必要な1237人の約30%に当たります。

 ドナルド・トランプ氏は5戦で3勝1敗(ミズーリ州は16日東部時間午前3時現在で互角)。「勝者総取り方式」をとっているフロリダでは99人を一気に獲得しました。これでトランプ氏が予備選で獲得した代議員数は16日東部時間午前3時現在、621人となり、指名に必要な1237人にあと616人となりました。
("live March 15 Election Results," Lily Mihalik, Los Angeles Times, 3/16/2016)


フロリダ州で勝利を手にし、記者会見に臨んだトランプ氏(写真:ロイター/アフロ)
 共和党保守本流が推してきたマルコ・ルビオ上院議員は必勝を期した地元フロリダでも27%しか得票できず。ミズーリ、ノースカロライナ、オハイオ、イリノイでは、ジョン・ケーシック・オハイオ州知事にも敗れてしまいました。ケーシック氏はもう一人の穏健派で共和党保守本流が推している人物です。ルビオ氏は開票と同時に、予備選から撤退することを表明しました。

 ケーシック氏は地元オハイオで初勝利しました。同州も「勝者総取り方式」を適用しているので代議員66人がすべて同氏の手に入りました。「これで選挙資金が入ってくる。次は(手ごたえを感じている)ペンシルベニア(4月28日)での勝利を目指す」とインタビューに答えています。

 超保守派のテッド・クルーズ上院議員は事前の調査ではミズーリ(代議員数52人)、ノースカロライナ(同72人)、イリノイ(69人)でトランプ氏に迫る勢いでしたが、16日東部時間午前3時現在、互角のミズーリを除いてはトランプ氏の軍門に下りました。しかしクルーズ氏が「ストップ・ザ・トランプ」を実現できる事実上唯一の対抗馬であることに変わりはありません。

トランプに不利に働く「指名推薦人」制度

 共和党保守本流は今後どのように対応するのか。それを占ううえで、重要なのが「Emdorsement Primary」(指名推薦人)の動向です。

 これまで紹介した獲得代議員は、一般党員による投票で選ばれた代議員です。ところが、前回お話しした通り、共和党にも「特別代議員」がいます。共和党では「指名推薦人」と呼ばれます。彼らは予備選での投票結果とは関係なく、自分が推薦する候補者に党大会で一票を投ずることができるのです。指名推薦人になるのは党所属の上下両院議員、州知事たちです。

 ニューヨーク・タイムズの選挙予測・分析サイト、「FiveThirtyEight」は候補ごとの「指名推薦人」獲得状況をポイント制で評価して紹介しています。他の代議員に対する影響力か強い上院議員は1人5ポイント、下院議員は1人1ポイント、知事は1人10ポイントで計算します。

 ミニ・スーパー・チューズデー直前までの結果は以下のようでした。
 ルビオ上院議員     168ポイント
 クルーズ上院議員    50ポイント
 ケーシック知事     32ポイント
 トランプ氏       29ポイント

 予備選では快進撃を続けるトランプ氏も、獲得した指名推薦人は上院議員が1人、下院議員が4人、知事が2人に留まっています。

 この調査ではルビオ氏がダントツでした。2位はクルーズ氏、3位はケーシック氏。トランプ氏は最下位なのです。

 ところがルビオ氏が撤退して以後、以下のように変わりました。
 クルーズ上院議員    52ポイント
 ケーシック知事     32ポイント
 トランプ氏       29ポイント

 ルビオ氏を推薦していた指名推薦人はなくなり、そのうちの2人がクルーズ氏に回ったようです。ケーシック、トランプ両氏を支持する推薦人の数はまだ変わっていません。
("The Endorsment Primary," Aaron Bycoffe, FiveThirtyEight, 3/15/2016)

依然として指名に影響力を持つ党エリートたち

なぜ、「指名推薦人」のポイントを獲得することが重要なのでしょうか。

高濱:民主、共和の両党とも、大統領候補を指名するプロセスで上下両院議員や知事が強い影響力を持ってきました。一般党員による予備選や党員集会での投票が党外やメディアでも注目されるようになり、一定の力を持ち始めたのは60年代に入ってからのことです。80年以降、党エリートたちの影響力は弱まりましたが、それでも党エリートたちの指名権限は強く、今回も予備選が始まる前から非公開の会合などで特定の候補を推薦する動きがありました。

 党大会までに指名争いの決着がつかなかった場合、党大会が開かれている最中に、党エリートたちが舞台裏で密談して一人の候補に絞り込むわけです。ここでは一般党員はいかんともすることができません。メディアはこれを「Smoke-filled room machinations」(タバコの煙が立ち込める密室での謀議)などと呼んでいます。
("The Party Decides." Marty Cohen, David Karol, University of Chicago Press, 2008)

トランプよりも「共和党ブランド」を守る?

党エリートたちは徹底的にトランプ氏を嫌っていますが、このままいくと、トランプ氏を指名することが一般党員の投票で決まってしまうのではないですか。共和党保守本流はどうしようとしているのですか。

高濱:二つのシナリオが考えられます。

 一つは、トランプ氏の動向にかかわらず、ケーシックとクルーズの両氏らに撤退させず、党大会が開かれる7月18日まで頑張ってもらうという手です。そして党大会の場で指名に関する党規約を修正してしまう。

そんなことをしたら、「非民主的だ」との理由で一般の米国民の顰蹙を買って、本選挙で民主党候補に負けてしまうのではないでしょうか。

高濱:その公算は大です。しかし、今回は大統領選に負けても、共和党のブランドを守ることの方が長期的には大事と思っている党エリートがいるようです。

 もう一つのシナリオは、目下、第2位のクルーズ氏に一本化することです。ケーシック氏には途中で降りてもらう。そして、クルーズ氏には3月22日のアリゾナ(代議員数58人)、ユタ(同40人)の予備選で圧勝してもらう。

 党保守主流系の「スーパーPAC」は今回のフロリダ州予備選だけで1億5700万ドルを使って、テレビやラジオ、インターネットで「反トランプ」広告を流しました。しかし望む結果は得られませんでした。こうした反トランプ・キャンペーンは今後も続くようです。
("Why this day changes everything for GOP," Buck Sexron, CNN, 3/15/2016)

護衛にかかるコストは史上最高

トランプ氏の発言に猛反対する非共和党員が演説会場に押し寄せて抗議する動きが出ていますね。こうした動きは今後の予備選に影響は与えるのでしょうか。

高濱:オバマ大統領は15日、トランプ氏が行く先々で抗議デモに遭い、抗議する市民と支持者とのいざこざが常態化していることを憂慮し、「トランプ氏のレトリックは下品であり、国を分裂させる以外のなにものでもない」と厳しく批判しています。こうした混乱を招いているのはトランプ氏にあるという見方です。

 米国土安全保障省は、トランプ氏をはじめとするすべての候補者の身辺を警護するため護衛官を派遣しています。今年の警護費用は米大統領選挙史上最高額と言われており、同省は米議会に追加予算を要求しています。予備選が進む中でこれから候補者に何が起こるかわかりません。ある新聞記者は「これもトランプという候補者が出現し、怒りと対立を増幅させているからだ」とコメントしています。

このコラムについて
アメリカ現代政治研究所

米国の力が相対的に低下している。
2013年9月には、化学兵器を使用したシリアに対する軍事介入の方針を転換。
オバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と自ら語るようになった 。
2013年10月には、APECへの出席を見送らざるを得なくなった 。
こうした事態を招いた背景には、財政赤字の拡大、財政赤字を巡る与野党間の攻防がある。

米国のこうした変化は、日本にとって重要な影響を及ぼす。
尖閣諸島や歴史認識を巡って対中関係が悪化している。
日本にとって、米国の後ろ盾は欠かせない。

現在は、これまでに増して米国政治の動向を注視する必要がある。
米国に拠点を置いて20年のベテラン・ジャーナリスト、高濱賛氏が米国政治の最新の動きを追う。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/261004/031600012/?ST=print

 

主流派が党大会に仕込む“トランプ抹殺”の策略

2016年3月17日(木)篠原 匡

 今回の米大統領選において、「3・15」はスーパーチューズデーとして知られる「3・1」以上に重要な一日だった。

 米大統領選における共和党の指名候補として着々と代議員数を積み上げている億万長者の不動産王、ドナルド・トランプ氏。3月14日時点で獲得した代議員は全体の20%に満たないが、15日以降、得票率トップの候補がすべての代議員を得る「勝者総取り方式」の州やそれに準ずる州が相次ぐため、これまでのペースで勝利を重ねれば7月の党大会までに過半数を超えることは確実だ。


共和党の指名レースでトップを走るドナルド・トランプ氏。オハイオ州は落としたが、フロリダ州はしっかりとキープした(写真:AP/アフロ)
 一方、トランプ氏の指名を是が非でも避けたい共和党主流派にしてみれば、勝者総取り方式の州で対抗馬が勝利しない限り、トランプ氏の過半数獲得を防ぐ手立てはない。それだけに、フロリダ州(代議員数99人)やオハイオ州(同66人)など代議員の数が多い州で勝者総取り方式の予備選が開かれる「3・15」は、共和党主流派にとって剣が峰の一戦に位置づけられた。

 結果はどうだったかと言えば、オハイオ州知事ジョン・ケーシック氏がオハイオ州でトランプ氏に勝利し66人の代議員を獲得した半面、マルコ・ルビオ上院議員は地元フロリダで敗北、トランプ氏に99人の総取りを許した。


オハイオ州知事のジョン・ケーシック氏は地元での人気を生かして勝利を収めた(写真:AP/アフロ)
 ケーシック氏はこれまでの獲得代議員数では最下位だが、2014年に州知事に再選された際に88郡中86郡で勝利を収めたように地元では抜群の人気を誇る。加えて、保守穏健的な立ち位置や、州知事や下院議員、州議会議員を40年近く務めた経験は共和党主流派にとって理想的なキャリアだ。予備選では低空飛行を続けていたが、オハイオ州の勝利でトランプ氏に対する対抗馬として生き残った。

自身のホームグラウンドであえなく敗退

 一方、主流派の期待を集めたルビオ氏は地元フロリダ州での敗北で「終戦」を迎えた。

 上院議員に当選した2010年以降、大統領選を見据えて若きリーダーというブランドを築き上げたルビオ氏。特に、予備選が始まってからはトランプ氏の独走を止める唯一の存在として共和党主流派の期待を一身に集めた。だが、ディベートで経験不足を露呈した上に、自ら中傷合戦を仕掛けてトランプ氏に叩きのめされるなど最後は自滅した感が強い。全国での遊説を重視して地元フロリダ州を軽視したツケだが、自身のホームグラウンドで政治的に引導を渡された恥辱は想像するに余りある。


一時は主流派の期待を集めたマルコ・ルビオ上院議員だが、地元での敗北で引導を渡された格好(写真:AP/アフロ)
 最終的に、トランプ氏はオハイオ州でこそ敗北したが、同日予備選が開催されたイリノイ州、ノースカロライナ州、米自治領北マリアナ諸島で勝利、代議員数を積み増した(3月16日午前4時時点)。それでもオハイオ州での勝利を阻止し、トランプ氏の過半数阻止に希望をつないだという意味では、主流派も首の皮一枚でつながっている。

 なぜ共和党主流派がそこまで過半数阻止に血道を上げるのか。それは過半数を阻止しなければ、予備選におけるトランプ氏の勝利を“無効”にする奥の手が使えないからだ。

 トランプ氏が7月18日から開催される共和党の全国党大会までに過半数を獲得すれば、トランプ氏は自動的に共和党の大統領候補に指名される。「(誰がなっても支持するという)私の立場は変わっていない」とポール・ライアン下院議長(共和党主流派)が明言しているように、指名獲得や党大会のルールを変えない限り、過半数に達したトランプ氏の指名を阻止することはできない。

 ただ、過半数に満たなければ様々な“策略”が可能になる。

「トランプ氏の成功を骨抜きにする準備している」

 7月の党大会で、大半の代議員は予備選や党員集会の結果に応じて割り当てられた候補者に投票しなければならない。例えば、トランプ氏が1000人の代議員を獲得していたとすれば、その1000人は党大会でトランプ氏に投票する。ただ、この縛りがあるのは1回目の投票だけという州が多く、そういう州の代議員は2回目以降、自由に候補者を選ぶことができるようになる。

 また、誰が州の代議員を決めるのかというところもポイントだ。オハイオ州のように予備選の勝者が代議員のリストを作成する州がある一方で、トランプ氏が50人の代議員を総取りしたサウスカロライナ州は既に代議員が決まっており、名簿づくりにトランプ氏が関与する余地がない。


フロリダ州に反トランプのテレビCMを大量投下したが、トランプ氏を止めることはできなかった。上はいかにトランプ氏が大統領としての品位に欠けるかを表現したCM。放送禁止用語の連続でピー音しか聞こえない
 同様に、党の州組織は主流派が強く、代議員選出プロセスで影響力を行使することが可能だ。「事実、各州の共和党のリーダーは、代議員の選定を通して予備選におけるトランプ氏の成功を骨抜きにする準備を始めている」。最先端のIT(情報技術)やデータ解析、行動心理学などが活用されている選挙の裏側を描いた『The Victory Lab』の著者でコラムニストのサーシャ・イッセンバーグ氏はこう指摘する。

 仮にトランプ氏が党大会までに過半数に到達しなければ、決選投票を繰り返す中で主流派が推す候補、例えばケーシック氏が過半数を得る場面が訪れるかもしれない。あるいは、2回目以降は予備選を戦わなかった人間も参加できるようになるため、待望論の強いライアン下院議長が名乗りを上げるというシナリオも囁かれる。

 そうなった時に、指名候補者争いの先頭を走り続けたトランプ氏とその支持者がおとなしく引き下がるかどうかは現時点では分からない。ただ過半数に達していないとはいえ、それに近い数字を得ているであろう候補者をある種の謀議で抹消すれば、共和党も無傷では済まないだろう。ワシントンに対する国民の怒りが深いだけになおさらだ。

11月にトランプ、ヒラリーが消える恐れも

 鉄板と思われていたヒラリー・クリントン前国務長官は、格差解消と政治革命を掲げるバーニー・サンダース上院議員の粘り腰の前に苦戦している。しかも、国務長官時代に機密情報を私的メールサーバーで管理していた問題がいまだ尾を引いており、FBI(米連邦捜査局)に起訴される可能性も残る。現在、トップを走る2人が秋には姿を消しているという事態もジョークではない。

 混沌としている各党の候補者選び。まだまだ波乱が起きそうだ。

このコラムについて
ニュースを斬る

日々、生み出される膨大なニュース。その本質と意味するところは何か。そこから何を学び取るべきなのか――。本コラムでは、日経ビジネス編集部が選んだ注目のニュースを、その道のプロフェッショナルである執筆陣が独自の視点で鋭く解説。ニュースの裏側に潜む意外な事実、一歩踏み込んだ読み筋を引き出します。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/031600284/?ST=print


 
経済危機に苦しむブラジルの通貨が買われる理由
政変への期待が買い材料、反騰はいつまで続くのか?
2016.3.17(木) Financial Times
(英フィナンシャル・タイムズ紙?2016年3月15日付)

ブラジルで「歴史的」反大統領デモ、全土で300万人参加
ブラジルの首都ブラジリアで、ジルマ・ルセフ大統領の退陣を求めてエスプラナーダ・ドス・ミニステリオスに集結した人々(2016年3月13日撮影)。(c)AFP/ANDRESSA ANHOLETE〔AFPBB News〕
?深刻な景気後退、格付け機関による格下げ、加速度的に増える失業、多額の財政赤字、政治的な混乱――。ブラジルが抱える問題のリストは長く、一見すると解決不可能だ。

?では、投資家はなぜ、ブラジルの通貨レアルを好んでいるのだろうか?

?表面上は、ブラジルの苦境は2015年と同じくらいひどく見える。昨年はレアルが対ドルで3割強も急落し、9月に1ドル=4.25レアルの最安値をつけた。

?2016年に入ってから最初の3週間も悲観的な見方がブラジルを覆い、レアルは5%以上下落した。

?ところが、レアルは過去1カ月間で10.8%上昇、1ドル=3.60レアル前後で推移しており、新興国市場の通貨の世界でベストパフォーマーの地位を得ている。

?暗いニュースが日々出てくることを考えると、ブラジル経済の行方を予想することは危険な作業だが、大方の為替ストラテジストはレアルが安定したとの見方に至っている。

?何が通貨高をもたらしたのか。米国経済に対する不安と、米連邦準備理事会(FRB)が予想していたよりも緩やかな利上げサイクルの見通しが、複数の新興国通貨に活気を与えた。ブラジルを含む多くの新興国で国際収支の見通しが改善したことも刺激になった。たとえその引き金が輸出の増加ではなく輸入の急減だったとしても、だ。

?コメルツ銀行の新興国部門のトップ、ピーター・キンセラ氏は「比較的良好な環境が見て取れる」と言う。

?コモディティー(商品)価格が底打ちした兆候が増えていることも、ブラジル通貨を安定させる助けになった。

前大統領拘束のインパクト

?しかし、この数週間のレアル反騰の大きなきっかけは、政治の世界から来ている。ルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ前大統領の身柄拘束と、それが弟子のジルマ・ルセフ現大統領に与える影響が、投資家の間で、政変に対する障害が予想より早く克服されるとの期待感を高めたからだ。

?この事態に反応し、レアルは3.3%高騰し、債券と株式も跳ね上がった。日曜(3月13日)の反政府デモに先駆け、レアルは昨年8月以来の高値をつけた。

?サンパウロの証券会社コレパルティのトップ、ジェファーソン・ルイス・ルジク氏は言う。

「現政府とジルマ(・ルセフ)大統領にとって不利になることはすべて、レアルにとって好材料だ・・・信頼性の高い新たな政府が誕生する可能性が高まるからだ」

?もちろん、それが実現せず、政治的な麻痺状態が続いたら、レアルの反騰は尻すぼみになる可能性が高い。

?サンパウロの証券会社クリアのアナリスト、フェルナンド・ゴエス氏いわく、今のところ、市場は大統領の弾劾か政権交代の可能性を織り込んでいる。

「理論上は、1ドル=3.5〜3.6レアルが私のターゲットだ。それより大きく上昇する可能性があるとは思えない」とゴエス氏は言う。「何も起きなければ1ドル=4レアルに逆戻りするかもしれないが、政治的な爆発が起きる可能性は日増しに高まっているように見える」。

?たとえ劇的な政変が起きたとしても、レアルに一時的な猶予しか与えてくれない。どんな新政府も、同じ高インフレと失業、景気低迷と向き合わなければならないからだ、とルジク氏は言う。

長続きはしないとの見方も

?一方、ラボバンクのクリスチャン・ローレンス氏は、大統領弾劾はブラジルの問題の万能薬にはならないと指摘。レアルが新興国の上昇相場の波に乗ってきたことを考えると、「最近の楽観論が急激に薄れ、年初に見たような動きに戻る可能性がある」と言う。

?もし2016年が現在の為替水準で終わりを迎えたら、ブラジル中央銀行にとっては都合がいいかもしれない。大方の向きは、中銀が現在の水準に満足しており、過度に上昇したら介入すると見ている。レアルが下落したらインフレに圧力がかかる一方、上昇したら輸出業者に打撃を与えるからだ。

?新興国の上げ相場を持続させるのは難しいとキンセラ氏は言う。よくても、向こう数カ月は、2016年の年初に恐れられたほど深刻ではないにせよ、さらなるレアル安にバイアスがかかる。

?もっと弱気なのは、RBCキャピタル・マーケッツの新興国部門を率いるダニエル・テネンガウザー氏だ。ブラジリアでの政治的な腕相撲の終結は希望的観測であり、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は今なお悲惨で、最も抵抗が小さい道筋は、インフレの高進と長期化をもたらす紙幣の印刷だという。

?そうなれば、通貨は1ドル=4.30レアルに向けて反落し、「その後、5レアルを超えた水準で年末を迎えるだろう」とテネンガウザー氏は言う。言い換えると、このレアルの反騰相場がリアルであることには疑問があるということだ。

By Roger Blitz in London and Samantha Pearson in Sao Paulo

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46365


3. 2016年3月17日 01:24:39 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[300]

>>02 国債の買いオペを行い、日銀が民間銀行から国債300を買い取り、政府部門が発行する全ての国債を日銀が買い切るケース
>金利が正常化した場合、日銀が超過準備の規模を長期的に維持するには、付利を適切な水準まで引き上げる必要がある。超過準備の付利が長期金利と概ね同じとなれば、「超過準備」は実質的な国債発行と概ね同等になる。
>もし付利を適切な水準まで引き上げない場合、それは預金課税と実質的に同等になる。すなわち、「日銀が国債を全て買い切れば、国民負担無しで財政再建は終了する」旨の言説はウソで誤解

ここを補足すると、
QEとマイナス金利などによる金融緩和政策(金融抑圧)は、まさに国債保有者(主に富裕層)への実質預金課税(国民負担)により、財政再建を行っていることを意味している

当然、高齢富裕層を中心とした消費や投資行動に対して抑制効果をもつので、規制緩和や構造改革などの経済成長政策なしでは、デフレ脱却を長期的に可能にするかは、非常に疑問ということになる。

国内の改革政策加速の困難と、世界経済の状況を考えれば、当面、消費税の増税を先延ばし、拡張的な財政状況を実現することは、短期的には合理的な政策であると言えよう。


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