★阿修羅♪ > 経世済民106 > 604.html
 ★阿修羅♪  
▲コメTop ▼コメBtm 次へ 前へ
中国企業による東芝白物家電の買収に中国ネットは歓喜!=「日本企業は地に落ちた」「いつの日か中国企業がトヨタを買収する日が
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/604.html
投稿者 赤かぶ 日時 2016 年 3 月 16 日 23:05:10: igsppGRN/E9PQ kNSCqYLU
 

15日、中国メディアの環球網は東芝が白物家電事業を中国家電大手の美的集団に売却すると伝えた。これに対して中国のネットユーザーからさまざまコメントが寄せられた。資料写真。


中国企業による東芝白物家電の買収に中国ネットは歓喜!=「日本企業は地に落ちた」「いつの日か中国企業がトヨタを買収する日が来ることを願う」
http://www.recordchina.co.jp/a131190.html
2016年3月16日(水) 13時10分


2016年3月15日、中国メディアの環球網は日本メディアの報道を引用し、東芝が白物家電事業を中国家電大手の美的集団に売却すると伝えた。

記事によると、交渉はすでに最終段階に入っており、売却額は数百億円規模になるという。記事はまた、日本の三大巨頭である東芝、パナソニック、シャープは、いずれもかつての輝きを失っており、日本国内の家電市場は停滞状態に陥っているとも伝えた。

このニュースに対して中国のネットユーザーからさまざまなコメントが寄せられた。

「美的集団の台頭で日本企業は地に落ちたな」
「美的集団には家電業界で世界トップになってほしい」
「中国の自動車業界も家電のように台頭して中国から日本車を追い出してもらいたい」

「三菱重工を中国の三一重工が買収してほしい」
「いつの日か中国企業がトヨタを買収する日が来ることを願う」
「いつか中国が日本そのものを買収してほしい」

「このままいったら、日本の家電も買う気がしなくなるな」
「別に得意になるようなことでもない。日本の有名な家電企業は軍工業に移行している。買収ではなく破産に追い込むべきだ」

「レノボと同じでごみを拾ったんだな」
「こんなのに手を出すのは中国企業だけ。よその国は手を出さない」
「買収した会社は核心的な価値のない抜け殻だ。それを中国人は宝でも手に入れたかのように思っている」(翻訳・編集/山中)
 

  拍手はせず、拍手一覧を見る

コメント
 
1. 佐助[3445] jbKPlQ 2016年3月16日 23:38:30 : 9WzTFdu8Dw : EvnuAppFUfU[161]
確かに日本政府の失政で大企業は消失する運命にある,しかしエンジンレスに成功した巨大な産業が自動車だけでなく誕生する。

中国とインドと日本と南アフリカとロシアは、1933年のルーズベルトのように、民間のキンの売買と輸出を禁止し、国家だけが買上げる政策を採用すれば、キン保有で米国と欧州を越え、基軸通貨国になるチャンスはある。

商品の世界的優位性は、40年ごとの「ルールの破壊/創造」周期によって、後進国が先進国に追い付き追い抜くことによって誕生する。後進国はルールの破壊期に、伝統慣習を破壊する度合いが、先進国よりも広く深いため、新しい流行を積極的に受け入れるために、商品の世界的優位性を獲得する。

だから韓国をはじめ中国・東南アジア・インドの工業国と工業都市は、日欧米に追いつき追い越す。日本商品の世界的優位性は2040年まで継続するが、次々と後進工業国にイニシアチブを奪われる。しかし、米国のようにサービス産業の優位は維持できる。

「日本商品の世界的優位性の法則」が2040年まで継続する。
それは、日本が、外国への農漁業など食品の輸入依存度を、実質25%に以下にしてまで、工業製品を外国に輸出する国であること、そして、原材料の75%以上を外国に頼る輸入大国であることだ。そして円を新基軸通貨にすることを必然的にする。

一つはエンジンレス化の本命燃料電池と太陽電子電池はそうそうマネやコピーできない,この産業革命に成功すると2060年まで「日本商品の世界的優位性の法則」が継続する。

もう一つは産業革命を否定黙殺し紆余曲折があっても結局、欧米なみにキンを保有し、基軸通貨国リストにスベリ込むこととなる。このスベリ込みにより、ドル円ユーロ三極通貨による固定為替体制が安定する。

こうして、今回の世界信用収縮恐慌は収束し、日本は2007年の経済指数を回復することができる。この新しい機軸通貨体制により、戦争なしに世界信用収縮恐慌が収束されることを証明することができる。

中国とインドと南アフリカとロシアは、溜め込んだドル・ユーロ・円の基軸通貨と保有キンのバスケットのペッグ制によって、間接的に為替レートに、自国通貨を固定化することができる。そうして、その輸出大国を維持することが可能となる。だが、これらの国は、多民族国家&多部族国家であるために、経済常識やキンの価値観は分裂している。そのために、韓国国民が外貨危機の時、ギンを国家に拠出して助けたように、一致して行動することは困難である。


2. 2016年3月16日 23:57:55 : ULIdpbtF3o : himhqCUu29M[3]
そもそも生産の実体は何十年も前からあちらにあるわけで
単に工場の看板を取り替えるだけのことです

規制緩和しろ、規制緩和しろ、規制緩和しないなら本社を海外に移転するぞ!と
さかんに脅迫してた時期がありましたけど、意外な形で「本社の海外移転」が実現しましたね


3. 2016年3月17日 00:30:59 : jXbiWWJBCA : zikAgAsyVVk[298]

一掃できるのか?中国でうごめく「ゾンビ」過剰設備の削減に着手するも抜本的な改革には至らず
2016.3.17(木) 柯 隆
中国で全人代開幕、李首相が汚染対策重視を明言
全人代が開催される北京の人民大会堂(資料写真)。(c)AFP/FRED DUFOUR〔AFPBB News〕
 中国で年に一度の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開かれた。

 今年の全人代の中心課題は経済改革と景気対策である。李克強首相は政府活動報告のなかでゾンビ企業を整理、統合するとの決意を表明した。

 中原地方と呼ばれる河南省と山西省は、歴史的に炭鉱が密集する地方である。昨今の石炭の需要減少と価格低下によってこれらの炭鉱の多くは経営を続けられなくなった。また地方政府は不動産バブルに便乗して各地に小さな製鉄所を設立したが、鉄鋼価格の急落を受けて経営難に陥っている。こうした炭鉱や製鉄所は経営的には存続が難しいが、大量の雇用と生産設備を抱えているため閉鎖することができない。

 2016年の全人代の目玉の1つは、こうしたゾンビ企業の整理、統合である。中国政府が過剰設備の削減に本気で取り組むことを決意したのだ。政府は、鉄鋼と石炭関連のゾンビ企業の閉鎖によって失業すると見られる約180万人の手当として1000億元(約1兆7500億円)を用意すると表明した。

なぜゾンビ企業が生まれたのか

 では、これで過剰設備の問題が解決するのだろうか。答えはノーである。

 そもそもなぜゾンビ企業が表れたのだろうか。

 通常、企業は市場の需給関係を見て投資と生産を調整する。もしも市場メカニズムのシグナルを読み間違えて赤字に転落し、経営を続けられなくなれば、裁判所に破たん申請を行う。一方、中小の国有企業は本当は経営を続けられないにもかかわらず、政府に“輸血”されることで生きながらえ、ゾンビとなった。要するにゾンビ企業は、政府、とりわけ地方政府が主導して作り出したものである。

 ここで、新たな問題が出てくる。政府は1000億元の資金を用意し、ゾンビ企業の閉鎖が社会不安を引き起こさないように手当している。しかし政府は、ゾンビ企業の閉鎖によって失業する人だけではなく、すべての失業者を救済すべきではないのか。

 現在、農村から2億人ぐらいの農民が沿海部を中心に出稼ぎに出ている。だが、沿海部で稼働していたアパレル、シューズ、玩具などの低付加価値製造業の工場は相次いで中国を離れ、ベトナムなど人件費の安い国に移転している。それに伴い1000万人以上の出稼ぎ労働者が失業しているといわれている。だが、これらの失業者は救済されていない。

 実は政府にとって、出稼ぎ労働者よりも炭鉱労働者や製鉄所の従業員の方が「やっかい」な相手である。

 一般的に出稼ぎ労働者は忍耐力が強く、不利な立場に置かれても反発しない。また、都市部に親戚や友人がいないので、徒党を組んで企業に歯向かうこともない。

 それに対して、炭鉱労働者や製鉄所の従業員はその街で育ってきたため、自分の権利を守る意識が強い。親戚や友人も多い。1人の労働者には20〜30人の親戚、友人がいることだろう。もしもこれらの労働者や従業員が抗議活動を繰り出した場合、その波及効果は20倍以上になる。だからこそ政府はゾンビ企業の整理には気を遣い、手当をしようとする。

過剰設備は政府の失敗によるもの

 中国の製造業の設備の稼働状況を見ると、重厚長大産業のほとんどは軒並み40%以上の過剰設備が生じている。自動車産業の場合は約50%の設備が遊んでいるといわれている。

 中国では政府がトップダウンで過剰設備の削減に乗り出そうとしている。だが、政府が過剰設備の削減に取り組んでも、経済は回復しにくい。

 そもそも過剰設備を作り出したのは国有企業の非効率な投資だった。政府が恣意的に市場介入を行ったから、需要と供給が均衡水準から大きくかい離し、過剰設備が生まれているのだ。政府の保護を受ける国有企業は市場メカニズムのシグナルを無視して投資の拡大を続けてきた。

 過剰設備が生まれる背景の1つに、2009年に発動された4兆元(当時の為替レートでは約56兆円)の財政出動がある。ゾンビ企業も過剰設備も、市場の失敗ではなく政府の失敗によるものである。

 過剰設備を削減する最善な方法は、政府のトップダウンではなく、市場メカニズムが機能する市場環境を整備し、企業が自ら過剰設備の削減に取り組むことだ。過剰設備を削減するかどうかは政府の指令に基づくものではなく、あくまでも企業の自主判断によるものでなければならない。

ゾンビでない国有企業は温存するのか

 今年の全人代で、李克強首相は政府活動報告の冒頭で「構造改革が着実に進展している」と豪語した。だが、中国経済の実態をいくら検証しても、構造改革が着実に進展しているという結論にはたどりつかない。習近平政権が誕生して3年経ってようやくゾンビ企業の処理に乗り出そうとしているのでは、 "Too late" (遅すぎる)と言わざるを得ない。

 ゾンビ企業の処理が順調に進むかどうかも不透明である。そもそもどの会社がゾンビかという判断を、誰が下すのだろうか。政府が、ゾンビかそうでないかを選別するならば、地方政府おおよびゾンビ企業と中央政府の間で、必ず駆け引きが始まることになる。

 地方政府とゾンビ企業は中央政府から補助金を引き出すために、失業者の人数を水増しして報告するだろう。閉鎖が決まったゾンビ企業が看板を取り換えて再び開業される可能性もある。結局のところ、中央政府のトップダウンで過剰設備が削減できたとしても、市場の需給がリバランスする可能性は低い。

 また、今回の政府活動報告では、ゾンビではない国有企業をどのように改革するかが一切言及されていない。

 現在、市場を独占する国有企業の膨張によって民営企業が圧迫されている。大型国有企業を資産で評価すると世界のトップ企業と肩を並べられるが、ROE(収益率)を見ると競争力が強いとはいえない。大型国有企業がゾンビになる前に一刻も早く民営化して、国有資産を有効利用すべきである。

 大胆に改革しなければ、一握りの巨大国有企業が市場を独占支配する国有財閥に変身する可能性が高い。そうなれば、中国経済はますます活性化しにくく停滞することになるだろう。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46354

中国の経済政策が直面する2つのリスク要因
全人代で提示された成長率目標達成に関する懸念材料
2016.3.17(木) 瀬口 清之
「軍事闘争」へ備え=中国首相
中国・北京の人民大会堂で開幕した全国人民代表大会(全人代)に出席し、演壇に立って拍手する李克強首相(2016年3月5日撮影)〔AFPBB News〕
1.全人代で示された今年の経済成長率目標

 全人代が開幕した3月5日、李克強総理が政府活動報告の中で今年の政策運営目標を発表した。特に注目を集めたのが、今年の実質GDP(国内総生産)成長率目標を6.5〜7%としたことである。

 今年は第13次5か年計画の初年度に当たる。この5か年計画の成長率目標を6.5%以上としたことから、初年度の今年からその目標を下回るわけにはいかないというのが、今年の成長率目標の背景にある判断だったものと推察される。

 しかし、1月下旬に筆者が北京で現地の信頼できる経済専門家と意見交換を行ったときに得た情報では、今年の成長率が7%に達する可能性を指摘した人は誰一人としていなかったほか、6.5%に到達することすら容易ではないという指摘が少なくなかった。

 昨年の成長率は6.9%だったが、これは昨年前半の大幅な株高に伴って株式市場の取引量が急増し、それが金融分野の手数料収入などの拡大に大きく貢献したため、金融分野の成長率に対する寄与度は0.3〜0.4%に達したと見られている。

 株価は6月中旬以降急落し、株式売買高は第4四半期以降、低水準で推移している。したがって、今年は昨年に比べて金融分野の成長率に対する寄与度が大幅に低下するため、その要因だけで今年の成長率は昨年に比べて0.3〜0.4%低下する。

 他の条件が変わらなければ、今年の成長率は6.5〜6.6%にまで低下し、政府の成長率目標の下限に達する。

 加えて、政府活動報告の中で、今年の重点政策として、石炭、鉄鋼を中心とする過剰設備の削減が強調されている。これには非効率な経営が原因で事実上倒産状態にもかかわらず金融機関の支援によって生き延びているいわゆる「ゾンビ企業」を市場から退出させる措置も含んでいる。

 この政策に対しては、工場の操業停止、企業の倒産等による失業増大、税収減少を懸念する地方政府と、貸出債権の不良債権化を懸念する金融機関がいずれも抵抗している。中央政府はその抵抗を押し切って、このリストラ策を強力に推進しようとしている。

 中央政府の目標通りに過剰設備の削減やゾンビ企業の市場からの退出が進めば、失業率が増大し、消費にもある程度マイナス効果が及び、成長率の押し下げ圧力が生じる。その点を考慮すれば、投資と消費の両面で昨年に比べて成長率への寄与度が低下する可能性が高く、政府目標の6.5%の達成は難しくなるのは明らかである。

 そこで、政府活動報告の中では、財政・金融政策の両面から景気下支え策を実施し、成長率の引き上げを図ろうとしている。

 具体的には、鉄道、高速道路、発電所、送電網などのインフラ建設を拡大するとしている。こうしたマクロ政策面からの成長率押し上げ策により、何とか6.5%の政府目標の達成を図ろうとしている。

2.構造改革推進へのマイナス効果の懸念

 政府活動報告では、今年の中国の経済政策運営上の重要課題は過剰設備の削減と過剰不動産在庫の処理、それをサポートする貸し出しの抑制であると述べられている。これらの構造改革を今年中に大胆に実施することができれば、13次5か年計画の展望は明るくなる。

 逆に、このリストラを先送りすれば、その処理がますます難しくなり、中国経済は不良債権の重い負担に苦しみ続けることになる。

 したがって、本来、今年は成長率にこだわらず、構造調整を徹底的に断行するのがベストである。しかし、来年は第19回党大会が予定されており、習近平主席の後任人事にも影響する重要な人事が決まる可能性がある年である。

 このため、今年についてはその人事に悪影響を及ぼすような低い成長率になることは好ましくないとの判断が働いていると考えられる。こうした政治的な背景により今年の成長率目標は自然体の着地に比べて、多少無理をして引き上げられたと見られている。

 この政治面への配慮が、地方政府において非効率な投資の拡大を容認するリスクを伴う可能性があることから、構造改革の徹底的な推進にマイナスの効果をもたらすことが懸念される。

 こうした政治的な配慮による経済政策運営上の妥協策は民主主義政治体制の国では選挙対策として日常茶飯事であることを考慮すれば、政権運営上当然の配慮とも言える。

 ただし、日本の1990年代を振り返ると、そうした政治的配慮の結果として、必要な構造改革が長期にわたって先送りされ続け、日本経済の長期停滞を招いた。中国がその轍を踏まないことを期待したい。

3.今年の経済政策運営上のリスク要因

 以上の政策運営目標などを踏まえて今年の中国経済を展望してみたい。

 昨年の第1四半期は地方財政支出の急落を背景にブレーキがかかったが、今年はそうした要因が存在しないと考えられることから、第1四半期の成長率はやや高めの6%台後半に達すると予想される。

 しかし、昨年の第2四半期は、株価の急騰に伴って金融取引が急増し、成長率を大幅に押し上げた(ある専門家は寄与度が0.6%に達したと指摘している)が、今年は金融面の押し上げ効果がなく、その反動が生じることから、第2四半期は6%台前半に低下すると思われる。

 その後第3、第4四半期は景気刺激策としての財政出動が増加し、徐々に成長率が高まっていき、通年ではなんとか6.5%に到達させて着地するのではないかとみている。

 投資は、非効率な投資を削減して経済構造の筋肉質化を目指す、習近平政権の基本方針である「新常態」(=ニューノーマル)の政策運営に沿って、今年も伸び率が鈍化し続ける一方、消費も上述のように若干伸びが鈍化する可能性がある。

 ただ、この2つのコンポーネントについては、緩やかな減速傾向を保持しながら比較的安定した推移を辿ることが予想される。それに加えて、雇用と物価が安定的に推移しているほか、財政金融両面の景気刺激策発動余地も大きいため、今年の中国経済が大幅に減速する可能性はほとんどない。

 ただし、輸出は予想外に下振れする可能性がある。ドルベースの輸出前年比は、1月がマイナス11.2%、2月が同25.4%と2か月連続で大幅なマイナスを示した。この主な要因は2014年半ばから2015年3月にかけての急速な人民元高(実質実効レートベースで15%の元高となった)とその後の横ばいの推移が続いていることにある。

 もし輸出がこのまま大幅なマイナスを続けると、6.5%という目標成長率の達成はかなり難しくなる。のみならず、人民元の売り圧力が高まり、外貨準備の急速な減少が続き、人民元レートが一段と不安定化する。

 そうならないようにするには、なるべく早い時期に現在の人民元高を修正するために大幅な元安に踏み切るしかない。

 これは新興国などにマイナスのインパクトを与えることが避けられないため、為替操作の仕方については日米欧の通貨当局と緊密な連携を取り、国際金融市場への影響を最小限にとどめるように配慮しながら実施することが必要である。

 以上のように。今年の中国経済は基本的には安定的に推移すると考えられるが、2つのリスク要因がある。

 第1に、経済成長率の政府目標が高めにセットされたこと、第2に、輸出の伸びが大幅なマイナス傾向を示していることから人民元レートを早めに大幅な元安へと誘導する必要が生じる可能性があることである。

 今後この2つのリスク要因に対して、中国政府が政策運営上いかに対処していくかという視点から、中国経済の推移を注視していきたい。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46355
 


 

「中国に立ち向かう役は日本にやらせよう」

結局は、中国に連れ戻される韓国

2016年3月17日(木)鈴置 高史


韓国へのTHAAD配備を巡り、米中の駆け引きが続く(提供:U.S. Department of Defense, Missile Defense Agency/ロイター/アフロ)
(前回から読む)

 「やっぱり、中国の言うことを聞こう」――。韓国人が弱気になってきた。中国から激しく脅されたうえ、米国からは見捨てられる気配を感じ取ったからだ。

腰が引けていた韓国

前回の「朴槿恵外交は「暴走」から「迷走」へ」の結論は「韓国が米国側に戻ると見るのは、まだ早い」でした。

鈴置:北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射した2月7日、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の在韓米軍への配備について、韓国は米国の要求を正式にのみました。

 配備は中国が強く反対していたので、韓国の「離米従中」が止まったかに見えました。日本でそう言って回る韓国人もいます。

 でもよく観察すると、韓国の中国に対する姿勢は及び腰でした。配備容認を明らかにした記者会見でも、韓国国防部は「米国に強要され仕方なく認めた」というニュアンスを必死で醸し出していたのです。

 もちろん、中国の目を意識してのことです(「『THAADは核攻撃』の対象と韓国を脅す中国」)。

 そこで「本気で米国側に戻るつもりはないな」と読んだのです。実際、THAAD配備容認から1カ月も経たないうちに韓国では「配備の容認により中国を敵に回した朴槿恵(パク・クンヘ)」への批判が高まりました。

「国を滅ぼす朴槿恵」

 当然と言うべきか、真っ先に批判したのは左派系紙のハンギョレでした。ことに激しい表現で目を引いたのが、オ・テギュ論説委員室長のコラム「国を滅ぼす朴槿恵外交の3大失策」(2月29日、日本語版)です。

 3つの外交失策として挙げたのは日本に完敗した「慰安婦合意」、開城工業団地閉鎖による南北関係の断絶、そして3つの中でも「痛恨の失策」である、THAAD配備容認による中国との関係悪化――です。それに関する部分が以下です。

THAADに対する中国の猛反発に「国連制裁とは関係のない純粋な安保次元の決定」という論理を(韓国政府は)展開した。だが、米中が制裁を議論する過程で駆け引きの材料になった痕跡が歴然としている。
THAAD配備カードが、中国が強力な制裁案を受け入れるテコとして作用したことは認めるとしても、中国の感情を傷つけるだけ傷つけておき、韓国の境遇を「鶏を追いかけた犬、屋根を見つめる」(一生懸命やったことが虚しく終わるという意味)にした判断ミスは重い。
経済人に圧力

要は、朴槿恵大統領は中国を敵に回してしまった、との批判ですね。

鈴置:その通りです。これに続いて、対中関係の悪化を問題視したのが中央日報でした。保守系紙の中では最も中国に近いと見なされる新聞です。ハンギョレと比べれば、かなり大人しい表現でしたが。

 3月4日の社説「THAAD外交、安保と国益のための最適な戦略の模索を」(韓国語版)のポイントを翻訳します。3月5日の日本語版でも読めます。

(3月4日に)韓米はTHAAD配備のための合同実務協議団を発足させた。問題は中国の激しい反発をどう乗り越えるかだ。中国はTHAAD配備阻止に向け、総力で外交戦に取り組んでいる。
最近、訪韓した中国の武大偉・朝鮮半島問題特別代表は数人の経済人にも会った。それだけで韓国への大きな圧力となる。中国でビジネスをする経済人が、THAAD反対論を聞かされただけでどれだけの負担になるか、容易に想像できる。
THAADの必要性に最も早く言及したケリ―(John Kerry)米国務長官も「(配備に)汲々とはしない」と言い出している。配備に関し、考慮すべき点が増えたとの意味だろう。
我々こそ熟慮が必要だ。米中の競争と葛藤の状況を細かく研究し、その隙間でどんな選択をするのが安保と国益を守る最も良い方法なのか、長期的視点で精巧に戦略を描かねばならぬ。
 はっきりと書いていませんが、中央日報の言いたいのはこういうことでしょう。

北朝鮮の核・ミサイル実験に驚いてTHAAD配備を認めてしまい、中国との関係が一気に悪化した。だが、米中は「THAAD」を取引のカードとし、我々の知らぬところで談合し始めたようだ。
THAAD配備問題はいつの間にか雲散霧消するかもしれない。配備を認め続けると、米国からはさほど評価されない一方、中国からは憎まれる可能性が高い。
中国の脅迫で下がった韓国株

中国からの経済的な圧迫も気にしているようですね。

鈴置:中央日報はサムスングループの創業者である李秉普iイ・ビョンチョル)氏が作った新聞です。一般紙ながら、経済界の利益には関心が深いのです。

 実害も出ています。「中国大使の“脅迫”で株価が下がった」事件が発生しました。韓国経済新聞が「中国消費関連株、韓中外交摩擦が『飛び火』」(2月25日、韓国語版)で報じました。

 企業名の前には業種を示すなど、韓国の産業に疎い読者にも理解しやすい形で翻訳しました。この記事は中央日報の日本語版にも翻訳、掲載されています。

昨年、証券市場を牽引した中国消費関連株がTHAAD配備問題で揺れている。
2月24日、化粧品メーカーのアモーレ・パシフィックは前日比1.80%安で引けた。2月に入り14.23%下落した。中国に工場を持つ化粧品の受託開発・製造会社、コスマックスも前日比0.41%安で引け、月初と比べ55.19%の値下がりとなった。
この日は化粧品・家庭用品のLG生活健康(マイナス2.35%)、製菓のオリオン(マイナス0.54%)、ホテル新羅(マイナス4.40%)などの中国関連株も一斉に下げた。
中国景気の減速に加え、THAAD配備に絡む韓中外交摩擦への懸念が高まったからだ。前日の取引終了後の邱国洪・駐韓中国大使の発言が影響した。
袁世凱に擬せられた中国大使

中国大使に脅された、と韓国人が悲鳴を上げた事件でしたね。

鈴置:2月23日に邱国洪・駐韓大使がTHAAD配備に関連し「中国の安全保障上の利益が毀損されれば、両国(中韓)関係は避けようもなく被害を受けるだろう」と語ったことで、韓国はちょっとした騒ぎになりました(「『中国大使に脅された』とうろたえる韓国人」参照)。

 邱国洪・駐韓大使は、朝鮮朝末期に清朝から事実上の「朝鮮総督」として派遣された袁世凱に例えられるほど、韓国人の怒りの対象となりました。

 朝鮮日報の金基哲(キム・ギチョル)文化部長は「130年前の袁世凱を思い出した理由」(3月12日、韓国語版)なんて見出しの記事を書いて、「中国の圧政」に抗議したのです。

 発言1つで韓国株まで下げて見せるのですから、駐韓中国大使は今や、袁世凱以上の権力を持つのかもしれません。当時の朝鮮朝に株式市場はありませんでしたから、比べようはありませんが。

 2月28日から5日間も韓国に滞在した武大偉・特別代表は、駐日大使(2001−2004年)を務めた外交官です。その前には駐韓大使(1998−2001年)でしたから、言わば里帰りです。旧知の経済人に会ったほか、多くのメディアの個別のインタビューも受けました。

 邱国洪・駐韓大使のような威嚇的な発言はしなかったようで、韓国紙の反応も悪くなかった。現職大使が「悪い警官」、元の大使が「良い警官」の役割を分担し、韓国人を脅したり、すかしたりしている感じです。

一時は強気を見せた東亜日報も……

ほかのメディアは「THAADで悪化した中国との関係」をどう評しているのですか。

鈴置:多くの新聞が懸念し始めました。中でも、東亜日報の変節が興味深いのです。

 東亜日報はTHAAD配備のための米韓合同実務協議団が発足した翌日の3月5日の社説「北の核先制攻撃の脅威……THAAD含む緊急対応が必要だ」(3月5日、韓国語版)で、諸手を上げて賛成しました。

 日本語版でも「金正恩氏の核恐喝にTHAAD含む対応が必要だ」(3月5日)で読めます。中国に対しても、以下のように強気でした。韓国語版を翻訳します。

中国が頑なに反対したため、韓米の実務団発足に関する協議がしばらく停滞した。THAADが困ると言うのなら、中国は金正恩を説得するなり、圧迫するなりして核を放棄させれば済むことだ。
 中国の顔色をうかがう中央日報と比べ、気合いが入っているなあと感心したのですが、それは4日後に裏切られてしまいました。

 社説「独自制裁に出た韓国、米中の水面下の駆け引きに不覚を取ってはならない」(3月9日、日本語版)で、東亜日報は大きく軌道修正したからです。ポイントは以下です。

米中の本心を見落とし不覚

米国務省のカービー(John Kirby)報道官は3月7日「米国は6カ国協議の再開を望み、完全かつ検証可能な非核化を望む」と強調した。THAAD配備に関しても「韓国との協議の必要がなくなる可能性もある」と述べた。
米中が安保理決議と配備の保留を巡って、ある種の戦略的駆け引きをしており、非核化会談再開の方向へ局面転換を模索しているようだ。中国の「非核化・平和協定の並行」提案に米国は以前と異なって柔軟だ。
制裁と圧迫だけで金正恩第1書記に核とミサイルを放棄させられるかは不確実だ。特に、北朝鮮政策の目標を金正恩政権の交代と崩壊、統一まで見通す圧迫に置くのかについては、韓米間に意見の相違があり得る。
米中の本心を看破できず不覚を取ることがないよう、出口戦略も考慮し戦略、戦術的柔軟性を発揮しなければならない。
 東亜日報も米中の談合に警戒してはいたのです(「朴槿恵外交は『暴走』から『迷走』へ」参照)。

 でも、3月4日にTHAAD配備に向け実務協議が始まったので、米韓の結束は固いと読み誤り、翌日の社説で中国に「俺の後ろには米国がいるぞ」と凄んでみせてしまったと思われます。

 そこに3月7日のカービー報道官の発言。「米国がスクラムを組んでいるのは自分ではなく、中国だった」と気がついて、慌てて論調を変えたのでしょう。

韓国人の本音

最大手紙の朝鮮日報は「THAAD」に関し、何か意見を表明しているのですか。

鈴置:3月5日の社説「準備せずに『統一の夢』は実現できない」でチラリと触れました。

民族と国の運命を決める「北の核」の解決は、我々独自の意思だけでは限界があると痛感する。結局、国連が前に出ねばならず、米国と中国の取引を通じ、対北制裁とTHAAD配備問題が処理される過程を見守らねばならないのだ。
 現状認識を述べただけです。この問題で韓国が具体的にどう動くべきだとは主張してはいません。でも、同紙のシニア記者は署名記事で「米中間の立ち位置」に関し言及し始めました。

 3月9日、鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員が「活火山の火口役は避けるべきだ」(韓国語版)を書きました。韓国人の本音を吐露した記事なので、長くなりますがポイントを翻訳します。

ずる賢さが必要だ

韓国にとって米国は「血盟」だ。3万6574人の米軍将兵が朝鮮半島で命を落とした。北朝鮮との軍備競争を避け、繁栄を享受できるのも在韓米軍のおかげだ。借りを返すにはほど遠い。とはいえ、いざこざの身代わりまで買って出ることはできない。
同盟の限界はどこにあるのだろうか。韓米同盟の本質から明確にすべきだ。米国が、中ロを相手にする際に「パートナー」と規定している国は日本だ。韓国は北朝鮮を抑える「地域パートナー」との立場を越えたことはない。従って、アジアで米中間のいざこざの身代わりを進んで買って出る資格と責任は、日本にある。
3月8日、韓国政府が北朝鮮制裁を発表した。開城工業団地の稼働中止を含め、取り得る圧迫手段はすべて動員した。残るはしっかりと履行することだけだ。
同時に、韓国政府の対策の中に、過剰反応な部分がないかもチェックしなければならない。表に出さず静かにやるべき重要な課題も選別し、推し進めなければならない。
指導者には、時としてずる賢さも必要になる。それでこそ「活火山の火口」役を避けることができる。
 米韓同盟を「対北朝鮮用」に明確に限定すればよい、との主張です。THAAD問題を期に韓国は中国からの圧迫と、米国から見捨てられる危険性に同時にさらされました。

 いずれからも逃れるには同盟の範囲を限って「中国を敵にしない」と宣言するしかない、との論理です。これは朴槿恵政権が当初から目指していたことです。米中間で迷走を始めた政権に、原点回帰を訴えているとも言えます。

 なお「過剰反応をチェック」とは、THAAD配備容認の見直しを含め、対中関係の改善に動こう――ということと思われます。「表に出さず処理する課題」とは、核武装の準備を密かに進めよう、との意味に受け取れます。

「やっつけられる日本」を見たい

「中国に立ち向かう役割は日本にやらせよう」とも言っていますね。

鈴置:自分が中国に敵対しないだけではなく、日本を中国に敵対させる。そうすれば、より確実に中国との良好な関係を維持できる――との計算です。

 国際政治の常道として、隣国が強力になり脅威を感じた際に採る道は2つあります。強大な隣国に立ち向かうか、あるいはその侵略の方向を自分以外の国に向けさせるかです。

 ナチス・ドイツが台頭した時、フランスとソ連はお互いをドイツと仲違いさせようとしました。ドイツの自分への怒りを逸らそうとしたのです(「コリア・アズ・No.1」参照)。鮮于鉦・論説委員はまさに、この手を使おう、と言っているのです。

 感情的にも「日本をして中国に立ち向かわせる」作戦は、韓国人にとって心躍るものがあります。要は「中国が日本を攻撃するのを高みから見物しよう」ということですから。

 尖閣で中国が日本を圧迫するニュースを報じる時の韓国メディアは、実に楽しそうです。憎い日本がやっつけられるのを見るのは、韓国人にとって最高のショーなのです。それが将来、どんな不幸となって自分にやってこようと、です(「『尖閣で中国完勝』と読んだ韓国の誤算」参照)。

ずうずうしい韓国に嫌気する米国

結局、韓国の新聞は左派系紙から保守系紙まで、米中等距離外交への回帰を訴え始めた、ということですね。

鈴置:その通りです。

等距離外交はそんなに上手くいくものでしょうか。

鈴置:難しいと思います。「等距離」を語るのは簡単ですが、よほどハラを据えないと――中国に立ち向かう覚悟を固めないと、どんどん「怖い中国」の言いなりになってしまいます。過去3年間の朴槿恵外交がまさにそれを証明しています。

 そのうえ、米国から見捨てられる可能性も出てきました。中国に立ち向かわない韓国の面倒を、米国は見なくなるでしょう。もう米国は「困った人がいたら助けに行く世界の警察官」ではないのです。

 ことに韓国に対しては、米国のアジア専門家の多くが嫌気しています。65年前に一度、わが身を犠牲にして助けたら「血盟の関係だ」と勝手に言い出してすがりついてくる。最近に至っては、米国を裏切りながら「助けてくれて当然だ」と色々と要求してくるのです。

 鮮于鉦・論説委員の記事への読者の書き込みにも「卓説だ」との評価がある一方で、観念論だとの趣旨の批判が多々ありました。

 例えば、米中が南シナ海で対立した際「米国との同盟は北朝鮮専用ですから私は関係ありません」と言い張って米中間で中立を維持できるのか、との指摘です。そんな虫のいいことを言えば、米国から見捨てられるだろう、と懸念を表明した人もいました。

「足抜け」が始まる

今後、米国はどう動くと思いますか。

鈴置:韓国を助けないどころか「米韓同盟の希薄化」カードを少しずつ切っていく可能性が高い。その見返りに、中国に「北朝鮮の核」を抑制させる作戦です(「朝鮮半島を巡る米中のカード」参照)。

朝鮮半島を巡る米中のカード
米国 中国
THAAD配備留保 従来より強い対北朝鮮制裁容認
米韓合同軍事演習の中断と一部制裁の解除 北朝鮮の核・ミサイル実験の中断
米朝平和協定(不可侵協定)の締結
 ・米朝国交正常化
 ・在韓米地上軍撤収
 ・在韓米軍撤収
 ・米韓同盟廃棄 北朝鮮の核兵器廃棄
 ・核弾頭の増産中断
 ・弾頭再突入技術の開発中断
 ・弾頭小型化技術の開発中断
 ・保有核兵器の全廃
「朝鮮半島の非核化・中立化」の制度的保障
注)左右の項目は必ずしも連動しない
 米国は、面倒な朝鮮半島から足抜けしていく方向にあります。もちろん一気に米韓同盟の破棄までは行きません。でも、中国と駆け引きを繰り返しながら「半島離れ」を進めていくでしょう。

 東亜日報の3月9日の「不覚をとるな」と訴えた社説。あれは「今から米国の足抜けが始まる」との悲鳴だったのです。

(次回に続く)

大好評シリーズ第7弾! 「核武装」で軋む朝鮮半島を見通す
Amazon【韓国・北朝鮮の地理・地域研究】ランキング1位獲得!
『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』

2015年9月3日、朴槿恵大統領は中国・天安門の壇上にいた。米国の反対を振り切り、抗日戦勝70周年記念式典に出席した。
10月16日、オバマ大統領は、南シナ海の軍事基地化を進める中国をともに非難するよう朴大統領に求め、南シナ海に駆逐艦を送った。が、韓国は対中批判を避け、洞ヶ峠を決め込んだ。韓国は中国の「尻馬」にしがみつき、生きることを決意したのだ。
そんな中で浮上した「核武装」論。北朝鮮の核保有に備えつつ、米国の傘に頼れなくなる現実が、彼らを追い立てる。
静かに軋み始めた朝鮮半島を眼前に、日本はどうすべきか。目まぐるしい世界の構造変化を見据え、針路を定める時を迎えた。
『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』に続く待望のシリーズ第7弾。12月15日発行。


このコラムについて
早読み 深読み 朝鮮半島

朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は日本経済新聞の編集委員。朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いでしょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーしたがる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。

 


結婚は習近平みたいな人と! 高まる個人崇拝

2016年3月17日(木)The Economist


 昨年、中国の第13次5カ年計画をポップなリズムで紹介するアニメ動画が登場した。制作を依頼したのは恐らく中国政府だろう。中国経済のロードマップを英語圏の人々に知らしめることが目的だ。この動画に登場するキャラクターは、カントリー調のメロディーに乗って「ヘイ、中国では5年ごとに新経済開発計画が作られるんだぜ」と歌う。


全人代に出席したチベットの代表。習近平国家主席が映っているバッジを胸に付けている(写真:ロイター/アフロ)
 別の動画もある。中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)で同計画の承認に向けて準備が進むなか、計画を起草した習近平国家主席への忠誠を国民の間に一層浸透させることを狙ったものだ。

 中国の官製メディアは習国家主席のことをしばしば「習おじさん」と呼ぶ。この動画もそうした作品の1つだ。「結婚するなら習おじさんのような人としなさい。何事にも迅速で決断力に富み、誠実な習おじさんのような人と」と、女性が中国流を強調する抑揚をつけ力強く歌い上げる。中国を世に知らしめたい人々に好まれる作風だ。

ポップカルチャーを利用して習近平を礼賛

 中国ではポップカルチャーを利用して習国家主席の人となりとその業績を崇めることが、ますます一般的になっている。直近のこのヒット動画は習氏の「勇敢さ」と「不屈の精神」を称え、腐敗との戦いを賞賛する。曰く、「彼はハエでもトラでも、妖怪でも狂人でも、すべてやっつける」。歌と同時に動画が流れる。昨年、抗日戦争・反ファシズム戦争勝利70年記念式典で行われた軍事パレードの光景だ。膝を伸ばしたまま足を高く上げて行進する兵士や弾道ミサイルの車列が登場する。

 習氏は2012年に国家主席に就任して以降、中国共産党と毛沢東主義の伝統を忠実に擁護する者としてのイメージを作り上げてきた。個人崇拝が高まりつつある徴がそこかしこに見られる。

 例えば、全人代に出席したチベット自治区代表団は、習国家主席を描いたバッジを胸に付けていた。このような形で指導者を崇拝することは1970年代には廃れていた。「習近平:叡智とビジョン(Wit and Vision)」というタイトルの新刊本(黄色の大型本)が、もうすぐ書店に並ぶ。

 習国家主席が昨年米国を訪問した時、共産党最大の機関紙「人民日報」は1本の動画をリリースした。その中では、中国に留学している外国人学生たちが、がっちりした体型の習氏を「超カリスマ」「すごくキュート」と呼んでいる。将来の結婚相手は習氏に似た人がいいと言う学生すらいた。

「習おじさんは彭ママを愛している」

 毛沢東が存命だったならば、さぞかし喜んだことだろう。人々は今も国中の公園で、毛沢東時代の賛歌に合わせて歌ったり踊ったりしている。習国家主席はかくも深く根付いた文化を蘇らせ、作り変えようとしている。習国家主席を称える歌はまた、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の賛歌とも似通っている(ある作品は「酔っ払いにならないプーチンみたいな男がいいわ」と続く)。

 「習おじさんは彭ママを愛している」という歌は、妻である彭麗媛 氏に「おとぎ話」のような恋をしている「男らしい」習氏を賛美する。「習おじさん対恐れおののく腐敗官僚」という、反腐敗運動を取り上げたいかにもなタイトルのヒット曲もある。別の京劇スタイルの動画は、習国家主席が2013年に北京の肉饅頭レストランを訪れた際のエピソードを紹介している。「出稼ぎ農民工 に何が必要かを常に気にかけてくれる。レイオフされた労働者のことを常に考えている」と褒めそやす歌もある。

 一部には、習国家主席のファンが自発的に作った作品もあるだろう。だが同氏のメッセージを浸透させたり、同氏の印象をより良いものしたりする目的で、政府関係者の依頼を受けて作成されたものもある。これらは芸術とメディアを政治目的で利用するものだ(ちなみに昨年、中国共産党はIn3という3人のラップ・グループによる17の楽曲を禁止した。これらの楽曲の歌詞は、医療費の高騰や北京の交通渋滞、国家資金を遊興費に充てる官僚を激しく非難するものだった)。習国家主席は中国国民に、同氏と完全に同調するよう指導したいと考えていることだろう。

© 2016 The Economist Newspaper Limited.
Mar. 12th 2016 | From the print edition, All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、日経ビジネスがライセンス契約に基づき翻訳したものです。英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。

このコラムについて
The Economist

Economistは約400万人の読者が購読する週刊誌です。
世界中で起こる出来事に対する洞察力ある分析と論説に定評があります。
記事は、「地域」ごとのニュースのほか、「科学・技術」「本・芸術」などで構成されています。
このコラムではEconomistから厳選した記事を選び日本語でお届けします。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/031500068/?ST=print


  拍手はせず、拍手一覧を見る

フォローアップ:


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法

▲上へ      ★阿修羅♪ > 経世済民106掲示板 次へ  前へ

★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/ since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
 
▲上へ       
★阿修羅♪  
経世済民106掲示板  
次へ