日銀総裁:「理論的な可能性としては余地ある」−マイナス0.5% (1) 2016/03/16 12:43 JST (ブルームバーグ):日本銀行の黒田東彦総裁は衆院財務金融委員会での半期報告で16日、現在0.1%のマイナス金利政策の0.5%近辺への引き下げについて「理論的な可能性としては余地ある」と述べた。 リーマンショックのようなことが起きたらマイナス金利が例えば0.5%近くまでいくことは否定しないかとの宮崎岳志議員(民主)の質問に黒田総裁は「理論的な可能性としては、そういった余地があることはその通りだ」と答弁した。同時に黒田総裁はマイナス金利の引き下げ幅は「理論的な余地は欧州を見ても相当ある」としながら「欧州を狙って何かやるわけでは全くない」とも述べた。 欧州中央銀行(ECB)は10日、マイナス金利を0.3%から0.4%に拡大した。日銀が1月末にマイナス金利の導入を決定した際に公表した資料では、スイスがマイナス0.75%、スウェーデンがマイナス1.1%、デンマークがマイナス0.65%など、大きめのマイナス金利が適用されている。 黒田総裁はこの日、日銀が導入したマイナス金利について「リスク顕在化を未然に防ぐ狙いだ」と述べた。効果実現には時間が必要としながら「必要に応じて躊躇(ちゅうちょ)なく追加緩和の用意ある」とも語った。政策維持を決めた15日の会合後の会見で黒田総裁は効果が分かるまで待たないといけないことでもないとして、必要なら追加緩和に踏み切る姿勢を明確にした。 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議について丸山穂高議員(おおさか維新)に問われ、マイナス金利について反論や意見全くなかった、参加者の理解を十分得られたと答弁した。自身の不動産購入については自家用以外の使用はないとして、現金での購入については「資金調達の仕方言うのは適切でない」と述べた。個人向け預金がマイナスになるとは考えていないとの考えも示した。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O43YBS6KLVRD01.html Business | 2016年 03月 16日 10:50 JST
増税の消費下押しが長引いた、物価2%目標遅れで=日銀副総裁 [東京 16日 ロイター] - 岩田規久男日銀副総裁は16日午前の衆院財務金融委員会に出席し、物価の2%目標達成が遅れていることについて、消費税率引き上げによる消費の下押しが予想よりも大きく長引いたことも一つの要因であるとの見方を示した。宮崎岳志委員(民維)の質問に答えた。 http://jp.reuters.com/article/cpi2percent-delay-idJPKCN0WI03P
スティグリッツ氏:消費増税でなく財政政策を−安倍首相に提言 (1) 2016/03/16 12:04 JST (ブルームバーグ):政府が16日午前に開いた国際金融経済分析会合の初会合にジョセフ・スティグリッツ・コロンビア大学教授が出席し、世界経済が低迷する中での消費増税は間違っているとして安倍晋三首相に再考を促した。会合終了後、同氏が官邸で記者団に対し明らかにした。 スティグリッツ氏は記者団に対し、会合では「今消費税を上げるのは間違った方向になるだろう」と述べた上で、これについて「考えなければならない」と安倍首相に伝えたという。同氏は「2、3年前は世界経済がここまで弱くなるとは誰も予想していなかった」と述べた。 また主要7カ国(G7)は需要刺激に向け協調すべきだと述べ、特に財政政策の重要性を指摘。日本についても「非常に力強い金融政策を講じて経済を刺激してきたが、限界に来た。焦点は財政政策だ」と述べた。 同会合は日本が議長国を務める5月の伊勢志摩サミットを控え、世界経済の情勢分析のために有識者を集めて意見交換を行うことを目的に開催。ノーベル経済学賞受賞者でもあるスティグリッツ氏は、1990年代後半のアジアと最近の欧州の危機時に財政を緊縮すべきではないと主張した。 来週はクルーグマン氏 石原伸晃経済再生相は会合後記者団に対し、22日に予定されている第3回会合にはニューヨーク市立大学のポール・クルーグマン教授を招くことを明らかにした。同じく同賞受賞者のクルーグマン氏は、2015年10月実施の予定だった消費増税の先送りを安倍首相が14年11月に判断した際に助言した経緯がある。 会合の冒頭、安倍首相は世界市場は中国景気の減速や原油価格の下落によって大きく変動しているとし、サミットでは「世界経済の持続的な力強い成長に向けて明確なメッセージを発出したい」とあいさつ。スティグリッツ氏に対し、「アベノミクスについても忌憚(きたん)のない意見をいただきたい」と求めていた。 石原再生相は会合後の記者会見で、スティグリッツ氏は会合で、各国が経済政策を見直すに当たってアベノミクスが良い手本になりなることを期待している、率先して協調できるようなことをやってほしいと発言したことも明らかにした。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O43TFU6JTSEO01.html Business | 2016年 03月 16日 11:04 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 世界経済分析で初会合、米教授「増税すべきでない」 首相に進言 [東京 16日 ロイター] - 政府は16日、首相官邸で第1回の国際金融経済分析会合を開いた。会合に招かれたノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は、会合後に記者団の取材に応じ、「消費税率の引き上げは、日本経済を誤った方向に導く」とした上で、増税はすべきでないと首相に伝えたことを明らかにした。 会合は、5月の主要7カ国(G7)サミットに向け、足元で不透明感が漂う世界経済について有識者から意見を聞く場で、具体的な政策は決めない方向だが、政府・与党内では議論の結果が来年4月の消費増税判断に影響するのではないかとの見方も出ていた。 スティグリッツ氏は消費増税に否定的な見方を示し、「日本は財政刺激策に焦点をあてるべき」と、財政の緊縮的な考えからの脱却が必要と強調した。 2回目の会合は17日に開かれ、米ハーバード大学のデール・ジョルゲンソン教授と日本経済研究センターの岩田一政理事長から意見を聞く方針。3回目は22日に開催し、米プリンストン大学のポール・クルーグマン教授を招く。 *写真を差し替えて再送します。 (梅川崇 編集:田中志保) http://jp.reuters.com/article/abe-idJPKCN0WH2ZZ 共和党からウォール街へ、「われわれに頼るな」 By AARON BACK 2016 年 3 月 16 日 13:09 JST 米国の政治に関しては、米大手銀行は息つく暇もないほど注視する必要がある。 これまでウォール街のバンカーは、政治家一般、特に左派に属する政治家から袋叩き的な非難の的となる役割には慣れっこになっている。しかし、15日の共和党大物議員の発言は、右派からの何らかの支援を頼りにできるとは決して思えない内容だった。 米下院金融サービス委員会のジェブ・ヘンサーリング委員長(共和、テキサス州)の米国銀行協会の総会での発言は、世界金融危機後の銀行規制がどうあるべきかについての共和党の最新の見解にかかる前兆となった。同委員長は、この規制案が小規模で地域に根付いた銀行を保護し、大手銀行のシェア増大を非難するものであることを慎重に示した。さらに、「単純だが高い自己資本比率の達成の引き換えに広範な規制の免除」を付与するという同氏の実際の提案がウォール街で歓迎されることはなさそうだ。 JPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカなど主要行はドッド・フランク法(米金融規制改革法)を順守した業務慣行やバランスシートの導入に長年の月日と数十億ドルもの資金を投入してきた。各行やその株主は、最初からすべてやり直すのには全く気が進まないことだろう。交渉の一環で自己資本をさらに積み増すことを迫られるのは特に嫌がるはずだ。このためにすでに圧縮されているリターンがさらに削られる可能性がある。 銀行株にとって最も望ましいシナリオは規制の安定性が保たれることであろう。しかし、この熱を帯びた選挙年の環境では、これは望み薄といえよう。
米社債市場、ECB追加緩和が思わぬ援軍に ニューヨーク証券取引所(3月2日) By MIKE BIRD 2016 年 3 月 16 日 12:19 JST 欧州中央銀行(ECB)は10日、ユーロ圏経済の押し上げに不可欠な追加緩和策を発表したが、意図せずして米国債券市場の一角に恩恵をもたらす可能性がある。 ECBは年内に月額800億ユーロ(約10兆円)の債券買い入れ策の一環として、投資適格級のユーロ建て社債の購入を始める方針だ。その効果を市場全体に行き渡らせ、中小企業がこれまでよりも簡単かつ低コストで資金を調達できるようにする狙いがある。 同様の効果が米国債券市場にも広がりそうだ。ECBのユーロ建て社債への需要は、その価格の上昇、つまり利回りの低下を招く。そうなれば、より高い利回りを求める投資家は同じ会社のドル建て社債に向かう可能性がある。 広告 バンクオブアメリカ・メリルリンチのクレジットストラテジスト、ユーリー・シュチュチノフ氏は最近の顧客向けメールで、ECBはユーロ圏に「定着」した企業の投資適格社債のみを購入する方針のため、約6820億ドル(約77兆円)相当のユーロ建てシニア債がECBの購入可能対象になると予想した。 各社の社債残高【(緑)ドル建て、(赤)ユーロ建て、単位:10億ドル】 ENLARGE 各社の社債残高【(緑)ドル建て、(赤)ユーロ建て、単位:10億ドル】 だが、こうした適格債券の発行企業は2580億ドル分のドル建て社債も発行済みだ。 シュチュチノフ氏は、これら企業のユーロ建ておよびドル建て社債の利回りはこれまで事実上連動していたため、ECBがユーロ建て社債にかける圧力はドル建て社債にも影響を及ぼすだろうと指摘している。 金融政策は世界全体で見ればゼロサムゲームで、ある国の緩和策が他の国々の悪材料になる、という見方が一般的だ。ECBの追加緩和の効果が米社債市場に波及しそうだということは、そうした見方は常に正しいわけではないようだ。 関連記事 ユーロがECBとFRBの板挟みになっている理由 ECBの政策総動員、効果が疑問視される理由とは http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NB936_bondbo_M_20160315091022.jpg ユーロがECBとFRBの板挟みになっている理由 16日のイエレンFRB議長の発言が注目されている
By RICHARD BARLEY 2016 年 3 月 16 日 04:53 JST 通貨戦争の勢力図が変わった。欧州中央銀行(ECB)が前線から外れ、標的を為替レートからクレジット市場へ変えた。その結果、ユーロの強気派と弱気派がいずれもいら立つことになるのかもしれない。 ECBの路線変更により、米連邦準備制度理事会(FRB)がユーロ・ドル相場により大きな影響力を持つようになる。米国債市場は金利の上昇を再び織り込み始めている。FRBのイエレン議長が16日の記者会見でどう発言するか、高い注目が集まるだろう。だが利上げの道は依然として長いでこぼこ道だ。2年物米国債利回りの一段高にもかかわらず、ユーロはこれまで通りの1.10ドルを中心としたレンジで推移している。 例えFRBが市場予想より力強く利上げに自信を表明しても、ドルが著しく上昇すれば、市場は追加利上げの実施に確信を持てなくなるかもしれない。米国企業や世界経済の成長への影響がまた懸念され、米国の利上げ進行も、ユーロ高もそろって阻まれる可能性がある。 広告 ECBが金融緩和を続け、買い入れ対象を社債に加えたことは確かだ。しかし、その影響はむしろ為替市場以外で目立っている。通信大手ドイツテレコムは今週の起債で180億ユーロ(約2兆3000億円)もの応札があり、利回りの低下につながった。米国と欧州の金融政策はまだ乖離(かいり)しているが、その形は変わったのだ。 ECBはユーロ安に頼るのをやめたものの、だからと言ってユーロの大幅高を容認するつもりもないだろう。そうなればユーロ圏の直面する逆風を単に強めることになるからだ。ドラギ総裁は先週、さらなる利下げの可能性を排除したように見えたが、状況が変化し得ると付け加えていた。 要するに、ユーロはどっちつかずの状況にある。ここからドルとのパリティ(等価)が実現する公算は小さい半面、大幅な上昇もなさそうだ。 http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NB968_yellen_M_20160315103817.jpg 今週のFOMC、5つの注目点 By HARRIET TORRY 2016 年 3 月 16 日 08:15 JST 米連邦準備制度理事会(FRB)は15-16日開く連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置くとみられているが、どのような景気判断を下すかで今後の政策軌道に対する予想が形成される。米東部時間16日午後2時(日本時間17日午前3時)に政策声明と経済・金利見通しを発表し、同2時30分(同3時30分)からイエレン議長が記者会見を行う。以下に5つの注目点をまとめる。 1.リスクバランス FRBは通常、経済が予想を下回って推移すると懸念しているか、予想を上回る可能性があるかを明らかにする。だが、1月のFOMC政策声明ではこのリスクバランスの評価を排除し、次回の金利変更時期をめぐる不確実性を示唆した。FRB当局者はここ数週間、経済見通しに対するリスクについてさまざまな見解を示している。経済成長と雇用は底堅く推移している様子だが、一部の当局者は確信を持っていないようだ。ブレイナードFRB理事は先週、政策担当者は「米労働市場と消費の強さを当然と思うべきではない」と注意を促した。 2.インフレ期待 インフレ率はFRB目標の2%を4年近く下回っているが、良い兆候もいくつかみられている。ニューヨーク連銀が14日公表した2月の消費者調査では、1年先の期待インフレ率が2.7%と1月の2.4%から上昇した。また、FRBがインフレ指標として好む個人消費支出(PCE)価格指数は1月に前年同月比で1.3%上昇し、変動の大きい食料品とエネルギー品目を除くコアPCE価格指数も同1.7%上昇した。ただ、他のインフレ期待指標は弱いままだ。FRBが軟調なインフレ期待に関する懸念の高まりについて言及するかどうかが注目される。 3.ドットチャート FRBの次回利上げ時期を探るため、FRB当局者のフェデラルファンド(FF)金利見通しを示す「ドットチャート」に注目が集まりそうだ。昨年12月のFOMCでは0.25%の利上げを2016年中に4回行う見通しが示されていた。市場はこれを疑問視しており、ウォール・ストリート・ジャーナルが64人のエコノミストを対象に実施した最近調査では、年内利上げは2回のみと予想されていることが明らかになった。12月時点の3回から下方修正された格好だ。現在は圧倒的多数のエコノミストが次回利上げは6月と予想している。 4.海外の不確実性 国際商品(コモディティー)価格は低水準にとどまり、海外経済も低調なため、欧州と日本の中銀はマイナス金利を導入した。海外の動向は米国経済に関するFRBの見通しに影響を及ぼすだろうか。注目されるのは、FOMC政策声明の第2段落に盛り込まれるリスク要因と最新の経済見通しだ。以前に予想した安定成長と緩やかなインフレ上昇が今後も続くと当局者がみているか手掛かりが得られるかもしれない。 5. 慎重なコミュニケーション イエレン議長は記者会見であらゆる選択肢を残しておく可能性が高い。FRBは経済指標が改善すれば4月か6月にも利上げを行える状態にしておきたいと考える一方、今後の政策軌道を約束することは避けるだろう。イエレン議長は中国の景気減速を発端とする不安定な時期を経て、足元では米経済指標が改善していることを強調するとみられるほか、低インフレに対する懸念を示す可能性もある。イエレン議長は先月の議会証言で、12月のFOMC以来「たくさんのことが起こった」と述べた。 関連記事 米FRB特集 今週のFOMC、政策据え置きに反対票の可能性も FRBのドットチャート、信頼しすぎは禁物 http://jp.wsj.com/articles/SB12798596211232484180504581601630302142092?mod=wsj_nview_latest FX Forum | 2016年 03月 16日 08:27 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:マイナス金利の代替策はあるか=河野龍太郎氏 河野龍太郎 河野龍太郎BNPパリバ証券 経済調査本部長 [東京 15日] - マイナス金利政策に対する評判がすこぶる悪い。事前に予想されていたことではあるが、一部とはいえ、超過準備へのマイナス金利適用が金融機関の業績に悪影響をもたらすからである。
もちろん日銀からすれば、金融機関の業績へは最大限、配慮したつもりだろう。付利金利に世界初の三階層方式を導入し、マイナス金利の適用範囲を相当に狭めた。だが、きめ細かい配慮を行ったために、カーニー英中銀(BOE)総裁からは、通貨安を狙った政策として批判される始末である。日本において、効果が検証される前の段階で、これほど内外から批判を受けた政策変更も近年珍しい。 それゆえ、近い将来、日銀が追加緩和を余儀なくされることがあっても、マイナス金利政策は採用されないという見方が少なくない。しかし、マイナス金利の他に日銀が取り得る政策は存在するのだろうか。 <ETF・REIT購入増額の問題点> これまで日銀の追加緩和を歓迎してきた日本株の関係者ですら、これ以上のマイナス金利は懲り懲りだという。それは、アベノミクスの成果の1つとなるはずだった「ゆうちょ上場」に大きな汚点を残したからだ。 マイナス金利がその業績に悪影響をもたらすと懸念され、一時、株価は大きく下落し、取得者は甚大なダメージを受けた。安倍政権の意向に沿って、株価対策として金融緩和を検討するのなら、マイナス金利ではなく、上場投資信託(ETF)の購入を大幅に増額すべきという意見も根強い。ただ、大幅なETF購入増額は需給を歪めるということだけでなく、日銀が取り得るリスク量を考えると、容易ではない。 不動産投資信託(REIT)の購入増額についても、大きな問題をはらむ。資産効果で総需要が刺激されるという見方もあるが、現実にはマクロ経済の規模が全く拡大していないため、収益建物が生み出すインカムもあまり改善していない。一方で資産価格ばかりが上昇するため、利回りが低下する。狙った通りの政策効果とも言えるが、その結果、経済実勢からは正当化できない割高な物件も増えている。 そのことは、巡り巡って、住宅投資にも悪影響をもたらす可能性がある。マクロ経済の改善が限られているため、雇用者所得の改善が限定的となるのはやむを得ないが、価格だけが上昇すると住宅取得が難しくなる。「量的・質的金融緩和(QQE)」導入後、住宅金利は低下し、今回のマイナス金利政策の導入後さらに低下したが、住宅価格ばかりが上昇すれば、そのこと自体が住宅投資を阻害することになりかねない。 このように、強い政治的要請がなければ、副作用が大きいため、ETFやREITの大幅な購入増額の可能性は高くはないと思われる。むしろ、内外からの批判の高まりとは裏腹に、マイナス金利政策が長期国債や超長期国債の利回りの比較的大幅な低下につながっているため、日銀はマイナス金利政策の効果に自信を深めていると見られる。 <通貨安の効果はグローバルではゼロサム> 従来のQQEの下では、起点となる短期金利がゼロないしスモールプラスであったため、日銀が長期国債の購入を大幅に増やして初めて、長期金利を低下させることができた。しかし、マイナス金利政策では、起点の短期金利がマイナスの領域に入っているため、国債の大量の買い増しがなくても、イールドカーブを下方にシフトさせることができる。 現段階では、システム上の問題もあり、オーバーナイト金利が付利に比べると、十分に下がっていないが、金融機関がマイナス金利の世界に慣れてくれば、オーバーナイト金利にも一段の低下圧力がかかると見られる。 このため、将来、国際金融市場の混乱で円高が急激に進んだ場合、黒田日銀総裁は、内外の批判にもかかわらず、躊躇(ちゅうちょ)なく付利金利をマイナスの領域の中で一段と引き下げると見られる。 円レートは依然、1973年以来の超割安水準にあるため、国際金融市場の動揺が再燃すれば、急激な円高圧力が生じるだろう。人民元の切り下げ観測の再燃や、米大統領選挙を前にした米国の為替政策修正が、円高進展の引き金になりかねない。排外主義政策を掲げるトランプ氏の優勢が伝えられれば、そのこと自体が、他候補の為替政策のスタンスにも影響し、円高圧力を生む。 米中のいずれの問題も日本が直接解決できない問題であるため、対症療法に過ぎないが、円高圧力を吸収するには、理屈上、金利を低下させることが有効だ。もちろん円高への対応策として、財務省による円売り介入もあり得るが、実質為替レートが歴史的な超円安水準にあることを考えると、各国から理解を得ることはまず不可能である。マイナス金利幅の拡大による円高阻止策であれば、国内投資の刺激などの言い訳が可能だろう。年央までに20ベーシスポイント(bp)の付利引き下げを予想している。 ただ、日銀がマイナス金利を追求したからといって、円高が必ず阻止できるかは全くの別の問題だ。なぜなら、国際金融市場が混乱すれば、その時は日本を含む多くの国が金融緩和による通貨安で国内への悪影響の波及を遮断しようとするためである。今や各国とも長期金利が相当に低下しているため、金融緩和の主たる効果は、中央銀行が公式に認めようと認めまいと、自国通貨安によるものとなっているが、通貨安の効果はグローバルではゼロサムである。もちろん、そうした環境においては、多少でも円高や株安を抑えることができれば、効果は十分と考えるべきかもしれない。 念のために言っておくと、筆者は、米国をはじめとする先進各国の中央銀行による極端な金融緩和が生み出した新興国・資源バブルが崩壊し、国際金融市場が混乱したのだと考えている。その市場混乱に対して、自国通貨高を回避するために日銀や欧州中銀(ECB)がマイナス金利を追求することは、単に通貨安戦争を激化させるだけで、結局、自国通貨安の効果を誰も得られず、むしろ各国とも金融機関の体力を低下させるだけに終わる恐れがある。 しかし、任命権者からデフレ脱却の使命を与えられている中央銀行総裁からすれば、他国が緩和する中で、何もせず自国通貨高を甘受することはできない。任命権者が国際的に協調して方針を変えなければ、与えられた任務を達成すべく中央銀行総裁は通貨安戦争に突き進むしかないのだろうか。 <「ヘリコプターマネー」は主流になるか> では、量的ターゲットやマイナス金利政策のほかに、新たな金融政策のイノベーションは存在しないのか。理屈上、考えられる政策は2つあるが、いずれも政府主導となる。そうした意味では、金融政策はやはり限界に近づいている。また、そのいずれも効果は大きいが、資源配分を歪める恐れがあり、副作用も小さくはない。 1つ目はヘリコプターマネーだ。日銀ファイナンスによって、政府が歳出拡大や減税を行う。支出が増え、マネーが増えるのはあくまで政府の支出増によるもので、日銀の金融政策は財政に従属することとなる。 安倍政権はスタート直後、12年度補正予算で国内総生産(GDP)比2%の大規模財政を編成し、同時に日銀がQQEで大量の長期国債の購入を決定。これが13年度の比較的高い成長につながった。すでに日本の政策当局者はヘリコプターマネーに手を染めているとも言える。 4月にも政府が16年度補正予算を決定すると見られるが、その後の景気動向次第では消費増税の先送りやさらなる追加財政が決定される可能性がある。日銀はすでに16年度の当初予算における国債発行額の36兆円を上回る80兆円の国債購入を予定しているため、政府が追加財政を決めさえすれば、事実上のヘリコプターマネー政策が進められることになる。 近年、ヘリコプターマネーを各国政策当局者が意識するようになったのは、先進国の成長率が低迷し、グローバルで長期停滞論が台頭していることと、そうした中で政策金利がゼロ制約に達し、金融政策の限界が強く意識されているためだ。マクロ経済の需給を均衡させる自然利子率がゼロないしマイナスの領域に入ったため、もはや金融政策では対応できないと考える人が増え、追加財政が主となるヘリコプターマネーを主張する人が増えているのである。 近い将来、各国とも長期停滞論が覆るような高いマクロパフォーマンスを達成できる状況にはならないと思われるが、日銀が三階層方式によるマイナス金利を発明したこともあり、理屈上はマイナス金利の余地が広がった。仮にヘリコプターマネーが各国で広く主張されるようになるとすれば、それは量的ターゲットやマイナス金利の限界が強く意識される時だろう。金融機関の収益悪化で金融システムへの悪影響が強く懸念されるまで引き下げられるか、あるいは、それ以前の段階で、マイナス金利の追求は不毛な通貨安戦争に過ぎないという認識が各国の政策当局者の間で広がり、引き下げが止められるのだろう。 前者のケースについては、日本では超金融緩和政策の長期化・固定化でイールドカーブがすでに著しくフラットニングしているため、日本のマイナス金利政策は比較的早期に限界に達するのかもしれない。 ちなみに、正しい政策は、構造改革によって自然利子率そのものを引き上げることで金融政策の有効性を回復させることだと筆者自身は考えている。しかし、構造改革は掛け声ばかりで、これまでと同様、簡単には実行に移されそうにはない。メインシナリオに据えているわけではないが、いずれヘリコプターマネーが主流となる日が訪れるのだろうか。 <「協調の失敗」による縮小均衡、金融資本主義の罠> もう1つの政策は、賃金決定への政府介入によるインフレ醸成だ。すでに安倍政権は14年以降、財界に対し、春闘におけるベア引き上げを要請してきた。その結果、14年のベアは0.4%、15年は0.6%と2年連続で上昇している。輸出企業が円安で儲かっても、グローバル競争を大義名分に、これまで賃金が抑えられ、それが経済の多数を占めるサービスセクターの価格上昇を抑制していることが正しく認識されたのである。 儲かった企業がきちんと賃上げに踏み切るという社会規範、社会慣行が定着しなければ、インフレ醸成は難しい。政府介入を嫌う人も少なくないが、通常の財・サービスと異なり、賃金決定は社会の規範や慣行が大きく影響する。資源配分をある程度歪めるのは確かだが、過度な引き上げにならなければ、政府が民間企業に設備投資の増額を求めることとは異なり、必ずしも誤った政策とは言えない。 問題は、世界経済の回復が足踏みしてきたことから、賃金の原資となる企業業績の回復が滞ってきたことだ。15年度下期の製造業の業績は、海外需要が弱いことや円高の進展によって減益となる。つまり、好業績が設備投資増や賃上げの好循環につながるどころか、業績悪化による設備投資の先送りや賃上げの抑制という負の循環が懸念される。 そうした懸念が出てきたからこそ、1月29日に日銀がマイナス金利を導入したのである。ただ、単に業績が悪化しただけでなく、新興国バブル、資源バブルの崩壊で、グローバル企業の成長期待は大きく低下しつつあり、低下した成長期待を元に戻すのは難しい。 近年、国際資本市場の強いプレッシャーから、資本収益率の改善が優先され、支出性向の低い企業や資本の出し手の取り分が増え、一方で支出性向の高い一般労働者の取り分が抑制されている。支出性向の高い経済主体の所得が増えず、支出性向の低い経済主体の所得ばかりが増えていたのでは、総需要の回復は滞る。 また、経済が完全雇用に達し、労働需給が逼迫(ひっぱく)傾向にあるにもかかわらず、日米で賃金回復が遅れているのも、こうした金融資本主義の下での分配構造の変容が影響している可能性がある。 問題は、今後、世界経済が一段と減速に向かえば、再び賃金を抑制するプレッシャーが強まる可能性が高いことである。その後、循環的な回復が始まっても、国際資本市場からの強いプレッシャーで賃上げが始まるには相当の時間を要する。それゆえ、総需要の回復も遅れ、インフレも高まらない状況が今後も永続するのかもしれない。 「協調の失敗」による縮小均衡とも言うべき事態だが、相当に大きなショックが社会に訪れなければ、分配構造は簡単には変化しない。あるいはヘリコプターマネーが追求され、人々のインフレ期待が大きく変化するのだろうか。 *河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。 http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-ryutaro-kono-idJPKCN0WH0UP?sp=true ベアは低水準の回答相次ぐ、経済好循環に向け不透明感−自動車春闘 2016/03/16 12:28 JST
(ブルームバーグ):主要自動車メーカーは16日、春闘の賃上げ要求について、労働組合に回答した。トヨタ自動車などでは3年連続のベースアップ(ベア)だが、労組要求を大幅に下回る回答が相次いでいる。安倍晋三政権が経済の好循環を目指して賃上げを重視する中、景気浮揚につながるのかは不透明だ。 自動車メーカーでは円安などによる収益拡大が鈍化しつつある中、主要労組はいずれもベアで月額3000円を要求していたのに対し、トヨタやグループの日野自動車とダイハツも1500円の回答となった。ホンダは1100円の回答。トヨタは昨年、ベアで2002年以来最大となる月額4000円を引き上げていた。 今年の春闘では主要自動車労組の要求段階で、ベアが昨年の6000円に対して半額にとどまっていた。回答額はさらに、要求水準の半額以下が相次いでいる。自動車労組の上部団体である自動車総連は今年の春闘について、企業収益がばらつくなどの状況下で、格差是正を念頭に置いていた。 トヨタの16日の発表資料によると、賃金制度維持分7300円を含む平均賃上げ1万300円の要求に対して、8800円を回答した。年間賞与は257万円の回答で、トヨタの上田達郎常務は記者団に、7.1カ月分の労組要求に対して満額と説明した。この結果、トヨタ組合員平均の実年収は3.2%増の864万円となり、伸び率で前年の2.3%は上回った。 日野とダイハツのベア回答額については、トヨタの上田氏が報告を受けていると明らかにした。ホンダはベア月額1100円、ボーナス要求5.8カ月分に対して満額を回答すると、広報担当の中村勉氏が電子メールで明らかにした。三菱自動車はベアで1100円、ボーナスで満額の5.5カ月の回答と、広報担当の村田裕希氏が電話取材に話した。 一方、日産自動車は労組に満額回答した。ベアで3000円を含む平均賃金改定原資9000円、ボーナスで5.9カ月分の要求をいすれも全額受け入れたと発表した。 東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは、円安進行が止まったことや新興国の成長鈍化などが輸出産業に影響し、企業の利益上昇はピークを越えたと指摘。企業としても積極的に賃金を上げられない状況にあると述べた。 官製春闘 安倍政権は経済の好循環実現に向けて賃金上昇が欠かせないとし、政府・経営者・労働者が意見交換をする政労使会議を開き、賃上げを働き掛けてきた。こうした流れを受け日本労働組合総連合会(連合)は昨年、「デフレから脱却し、好循環をつくっていく分岐点」と位置づけ、全ての組合が月例賃金にこだわり、2%以上の引き上げを求める方針を打ち出した。 国際通貨基金(IMF)は3月14日付リポートで、トヨタ労組が昨年の半分の賃上げしか要求していないことに言及。今年の日本全体の賃上げ要求の約0.5%は、「日銀のインフレ目標をはるかに下回る上昇率で、生産性の向上を無視している」と指摘した。リポートは日本がデフレから決別するには賃金上昇が必要であるとしている。 日本銀行の黒田東彦総裁は15日、金融政策を維持する決定をした会合後の会見で、賃金が上昇していく環境は整っていると述べた。トヨタは今期(16年3月期)、過去最高となる2兆2700億円の純利益を見込んでいる。 http://www.bloomberg.co.jp/article/2016-03-16/atRoFnrJu3wI.html
日本株は続落、原油安と米消費低調−輸出や鉄鋼安い、銀行は下落1位 2016/03/16 11:58 JST (ブルームバーグ):16日午前の東京株式相場は続落。原油価格の下落や米国個人消費の低調が嫌気され、自動車や機械など輸出株の一角が軟調、アナリストの投資判断引き下げを受けたJFEホールディングスなど鉄鋼株も安い。マイナス金利への根強い警戒で金融株も下げ、銀行は業種別下落率1位。 TOPIXの午前終値は前日比5ポイント(0.4%)安の1367.08、日経平均株価は65円70銭(0.4%)安の1万7051円37銭。 大和住銀投信投資顧問の岩間星二シニア・ファンドマネジャーは、「目先は米金融当局の動き以外、材料があまりない。今回は利上げ見送りで、データ次第という話になりそうだ」と指摘。その上で、「日本株は戻してきたので、上値の重い展開が続きそう」との見方を示した。 15日のニューヨーク原油先物は2.3%安の1バレル=36.34ドルと続落し、終値で4日以来の安値。制裁解除に伴いイランの先月の原油生産が約20年ぶりの大幅増となったほか、生産水準維持の協定にイランが参加しない可能性をロシアが示唆したことを材料視した。 15日に発表された2月の米小売売上高は前月比0.1%減少、1月は速報値のプラスからマイナスに下方修正された。米国では16日まで連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。今回は利上げなしが大勢で、6月の利上げ確率は現在約54%。米金融当局者らは利上げペースが緩やかなものになり、決定はデータ次第と強調している。 きょうの日本株は海外景気敏感業種を中心に売りが先行する中、マイナス金利による収益への悪影響が懸念され、銀行や保険株の下げがじりじりと大きくなった。日本銀行の黒田東彦総裁は16日の衆院財務金融委員会で、現在0.1%のマイナス金利政策の0.5%近辺への引き下げについて「理論的な可能性としては余地ある」と発言した。 下げ渋り、国際金融経済分析会合 もっとも、日経平均は朝方に166円安まで売られた後は下げ渋り。TOPIXは一時プラス圏に浮上した。岩井コスモ証券の林卓郎投資情報センター長は、「日銀の緩和見送りで短期筋が売った後は、G20会議後の国際協調の危機回避合意の流れから巻き戻しの流れが維持されている」と指摘。政府の国際金融経済分析会合も、「今の相場状況では好影響を受ける」とみる。 政府は16日、国際金融経済分析会合を初めて開催。コロンビア大学のスティグリッツ教授は、安倍晋三首相に今は消費増税に不適切な時期と語ったほか、金融政策は限界に達し、今は財政刺激策の時期などと述べた。林氏は、「意外感はないが、今の景気の状態ではアベノミクスのためにやらなければならない話」とし、「日銀の4月緩和の可能性もある」と言う。 東証1部の業種別33指数は銀行、鉄鋼、保険、証券・商品先物取引、金属製品、海運、電気・ガス、医薬品、機械、輸送用機器など26業種が下落。空運や食料品、陸運、その他金融など7業種は上昇。東証1部の午前売買高は9億2049万株、売買代金は9273億円。値上がり銘柄数は738、値下がりは1039。 売買代金上位では三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、ソフトバンクグループが安い。サーベラスが保有株を売却した西武ホールディングス、提携先の株価急落を嫌気した科研製薬、JPモルガン証券が投資判断を下げたJFEホールディングスも売られた。半面、「プレイステーションVR」を10月に発売するソニー、野村証券が投資判断を上げたアイフルは買われ、アルプス電気、大成建設、ニコンも高い。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O43QMB6KLVRD01.html 債券は中期ゾーンが安い、反動売りが継続−20年入札控え超長期も軟調 2016/03/16 11:24 JST (ブルームバーグ):債券市場では中期債相場が下落。日本銀行が前日に金融政策の据え置きを決めたことを受けて、追加緩和を見越して買われてきた同ゾーンへの売りが継続している。20年債入札を明日に控えて超長期債も軟調推移となっている。 16日の現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の342回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より2ベーシスポイント(bp)高いマイナス0.005%で開始し、マイナス0.015%で推移している。新発2年物の362回債利回りは1.5bp高いマイナス0.14%と、2月2日以来の高水準で開始し、マイナス0.15%。新発5年物の127回債利回りは2bp高いマイナス0.125%で開始後、マイナス0.14%。新発20年物の155回債利回りは1.5bp高い0.47%、新発30年物の50回債利回りは3bp高い0.725%でそれぞれ推移している。 ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジストは、「利回り曲線はフラット化気味に推移してきたが、20年入札を控えて超長期ゾーンも多少は調整圧力がかかっている」と指摘。「昨日の日銀会合を受けてマイナス金利幅が早々に拡大されるとの見方は後退しており、中期ゾーンにも多少影響している。2年債や5年債が恒常的に売られるほどの内容ではないが、マイナス0.2%や0.3%まで利回り低下の可能性があるという見方は若干減った感じだ」と話した。 長期国債先物市場で中心限月6月物は、前日比22銭安の150円67銭で開始。いったん150円62銭と日中取引の中心限月ベースで2週間ぶり水準まで下落した。その後は持ち直し、午前終値は2銭高の150円91銭だった。 前日の国内債市場では、日銀の金融政策決定会合で政策の現状維持が決まったことを受けて中期ゾーンが売られた。2月上旬には新発2年債利回りが一時マイナス0.25%、新発5年債利回りがマイナス0.265%まで低下し、ともに過去最低を更新。その後も政策金利のマイナス0.10%を下回って推移していた反動が出た。 ドイツ証の山下氏は、「日銀の変更はゼロ%適用のマクロ加算残高が増えやすい内容だった。MRF(マネー・リザーブ・ファンド)のマイナス適用除外や貸出増加支援オペの新規増加分の倍額をマクロ加算残高に加えること。今まで思っていたよりマクロ加算残高が増えやすい状況になるので、無担保コール翌日物でそこまで大幅なマイナス金利が付かない可能性は市場でも意識される」とみる。 日銀国債買い入れ 日銀はこの日午前10時10分の金融調節で、今月5回目となる長期国債買い入れオペの実施を通知した。残存期間1年超3年以下、3年超5年以下、5年超10年以下が対象で、総額は1兆2700億円程度となる。 財務省は17日午前、20年利付国債の価格競争入札を実施する。発行予定額は前回債と同額の1兆2000億円程度。償還日が前回の155回債より3カ月延び、回号が新しくなる。表面利率は前回債の1.0%から0.5%と2003年6月の過去最低の0.8%を下回る見込み。 メリルリンチ日本証券の大崎秀一チーフ金利ストラテジストは、」超長期債については年度末から年度初に向けた益出しの動きも出始めているほか、明日の20年債入札に向けた調整もあり、やや売りが優勢となっている」と指摘。20年債入札については、「0.5%台で迎えられれば、何とか需要はありそうだが、タイミング的には年度末を控えたタイミングでもあり、テールが流れるリスクも意識しておきたいところ」と言う。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O43QNW6KLVRU01.html
円が反落、財政刺激策期待で日本株下げ渋り−対ドル113円台半ば 2016/03/16 11:09 JST (ブルームバーグ):16日の東京外国為替市場では円が反落。消費増税延期や財政刺激策への期待から日本株が下げ幅を縮小しており、リスク回避の後退に伴い円売りが優勢となっている。 午前11時7分現在のドル・円相場は1ドル=113円42銭前後。朝方には日本株の下落を背景に113円02銭までドル売り・円買いが進む場面が見られたが、日本株が下げ渋るのに伴い一時113円56銭まで値を切り上げている。 三菱UFJ信託銀行資金為替部為替市場課の市河伸夫課長は、「ドル・円は株安もあり上値の重い動きで始まったが、スティグリッツ教授の発言で消費増税延期や財政政策が意識され、反発している」と説明。「消費増税の延期そのものは景気や株に追い風となり、その面で円売り材料である。さらに財政の悪化懸念が加わると、その面からの円売り材料になりやすい」と指摘する。 一方、この日は海外時間に米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策発表があり、追加利上げの見通しを探る手掛かりとして、声明やドット・プロット(金利予測分布図)に注目が集まっている。 市河氏は、FOMCについては「景気認識がハト派化するかもしれないが、利上げ路線は維持するとみられ、影響は限定的」と予想。もっとも、「ドル・円は米利上げがクリアになって、それでもリスクセンチメントが崩れないという条件が伴わない限り、115円を超えるのは難しい」とみている。 コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授は16日午前、政府の国際金融経済分析会合の初会合で、2016年の世界経済は15年より弱くなるだろうと発言した。同教授は終了後記者団に対し、安倍首相に今は消費増税の時期でないと伝えたとし、金融政策は限界に達しており、今は財政刺激策の時期だと述べた。 前日の海外市場では原油価格の下落や米小売売上高の前月分の下方修正などを背景に円が全面高となり、ドル・円は一時112円63銭まで下落していた。ユーロ・円相場も1ユーロ=125円10銭までユーロ売り・円買いが進行。その後は下げ渋り、この日の東京市場では一時126円01銭まで値を戻している。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O43Z8C6TTDS701.html Business | 2016年 03月 16日 08:13 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 18年度めどにビッグデータ活用した新消費統計作成=政府関係者
[東京 16日 ロイター] - 政府は、民間が保有するビッグデータを活用した新しい消費統計を作成する。複数の政府関係者が明らかにした。個人消費は国内総生産(GDP)の60%超を占めながら、重要指標の家計調査の精度が問題視され、経済政策の判断をゆがめるリスクがあると指摘されてきた。 政府は早ければ2018年度をめどに準備を整える予定。スタートすれば、主要7カ国(G7)で初めての画期的な消費統計となる。 22日の統計委員会で、西村清彦委員長(東京大学教授)が公的統計にもビッグデータを活用し、民間と連携しながら新しい統計情報と既存の政府統計を連結していくプランを石原伸晃・経済再生相に強く働きかける。 活用するビッグデータの候補としては、スーパーなどの販売時点情報管理(POS)データ、クレジット会社の保有データ、旅行会社のビッグデータ、携帯電話の位置情報などが検討対象。18年度をメドに準備作業を終了させる予定。その後、直ちに稼働させる。 ビッグデータと経済統計について国内の第一人者である東大大学院経済学研究科の渡辺努教授は「現状でビッグデータを活用した消費データの作成を他国で準備、作業しているという話を聞いたことがない。日本の取り組みは先行していると思う」と述べている。 ただ、こうした民間企業がビッグデータを政府に提供するかどうか、政府内ではこの点を課題として挙げる声もある。 大手流通企業の中には、現時点で積極的に公開している企業もある一方、あくまで自社のビジネス展開に絞ってビッグデータを作成し、外部に非公開としている企業もあるためだ。 家計調査の精度改善を政府で最初に提案したのは、麻生太郎財務相だ。昨年10月16日の経済財政諮問会議で「販売側の統計、小売業販売と異なった動きをしている。また、高齢者の消費動向が色濃く反映された結果が出ているという言い方もされている」と改善を要望。 翌月11月の経済財政諮問会議では、当時の甘利明・経済財政担当相が内閣府の統計委員会に精度などについて検討を求めた。 家計調査でみた消費の弱さが実体より弱めに出ているとの見方があり、実態よりも弱いデータに基づいて経済対策を策定した場合、過大な財政出動につながりかねないという懸念も、政府部内の一部にあったもようだ。 政府だけでなく、日銀の金融政策決定会合でも、消費が弱い局面で複数の政策委員が、家計調査について調査対象となっている世帯の収入の伸びが実勢より低く、消費の伸びにも下方バイアスがある可能性を指摘した(14年9月3─4日の会合の議事要旨)。 これを受けて、政府の公的統計整備の司令塔である統計委員会は、国の基幹統計は政策立案にも影響するとの認識から、政府統計間の整合性や各統計の精度向上について、各省庁に統計改善への取り組みを促す方針を決めた。 家計調査は約9000世帯を対象に、毎回その一部を順次入れ替えながら繰り返し調査し、全国的に偏りなく家計情報を収集し、平均的な家計動向の把握を目指してきた。 ただ、調査内容の記入が煩雑で、回答世帯が高齢者に偏っているのではないかといった指摘も相次ぎ、個人消費把握の精度が問われていた。 家計調査はGDPの60%を占める個人消費の実態にも反映され、政府の景気認識やマクロ経済政策を判断する上で重要な位置づけを持った統計であるだけに、精度向上は喫緊の課題となっていた。 複数の政府関係者によると、政府内では家計調査のデータを収集するための調査自体は残しつつ、民間のビッグデータを取り入れ、旅行やレジャーなどサービスも含め幅広い消費動向を把握することが望ましいと判断している。 (中川泉 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/indicator-economy-japan-idJPKCN0WH2Y1 Business | 2016年 03月 16日 07:29 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 円上昇、日銀緩和見送りや原油安などで=NY市場 [ニューヨーク 15日 ロイター] - 終盤のニューヨーク外為市場では、ドルが対円で下落した。日銀の追加緩和見送りが影響した上に、米小売売上高がさえない結果となったことや原油安を受け、リスク回避の円買いが広がった。また英紙による最新世論調査結果で欧州連合(EU)離脱派が残留派をわずかに上回ったため、ポンド安も目立った。 ドル/円JPY=は終盤の取引で0.6%安の113.12円。 朝方に2月の米小売売上高が発表されると、ドル/円の下落率が一時1%を超える場面があった。2月の売上高は前月比0.1%減で市場予想ほど減少しなかったが、1月分が0.2%増から0.4%減に大きく下方修正された。 日銀の黒田東彦総裁は会見で、マイナス金利の実体経済への効果見極めにはある程度の時間がかかると発言した一方、必要なら効果が十分に表れる前に追加緩和に踏み切る可能性を示した。それでも円買いの流れは変わらず、日銀が1月にマイナス金利導入を発表した翌日からこれまでに円は6.5%強上昇した。 FISグループの最高経営責任者(CEO)兼最高投資責任者、ティナ・バイルス・ウィリアムズ氏は「現状は明らかに金融政策の手段が枯渇している状態にある。リスク回避局面の到来が予想される中で、円がそれに対する防御手段となっている」と指摘した。 リスク資産である株価は世界全体で過去2週間に5%近く、過去4週間では約10%も上がっている。しかしBNPパリバ(ニューヨーク)の通貨ストラテジスト、バシリ・セレブリアコフ氏は、こうした値上がりで金利見通しが上昇し始め、米連邦準備理事会(FRB)の利上げが再び織り込まれつつあるため、市場のリスク志向が幾分慎重化しているとの見方を示した。 ポンドはユーロやドルに対して約1%下落した。調査会社ORBが英紙デイリー・テレグラフ向けに実施した世論調査によると、EU離脱支持派の割合が49%となり、EU残留支持派を2%ポイント上回ったことが売り材料となった。 ユーロ/ドルEUR=はほぼ横ばいの1.1105ドルだった。 ドル/円 NY時間終値 113.14/113.15 前営業日終値 113.79 ユーロ/ドル NY時間終値 1.1108/1.1113 前営業日終値 1.1100 http://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKCN0WH2S8?sp=true News | 2016年 03月 16日 08:19 JST 関連トピックス: トップニュース 焦点:中国で高まる労働法批判、過剰な保護が改革阻害との声 [北京 12日 ロイター] - 中国の強力な労働者保護に対する批判が上層部からも浮上している。経済のリストラが進むなかで「硬直した政策が雇用創出を阻み、賃金を抑制している」との主張に対して、政策当局が社会不安を懸念しているからだ。 中国の労働契約法と最低賃金法のせいで、業績不振に苦しむ経営者が、業績の好転を図ったり、事業の売却先を探すことが困難となっているとの批判は、海外や民間の企業幹部を中心に以前からあった。 今や同じような不満が、減速経済の現代化を進め、重工業部門の過剰生産能力の削減に腐心する政策当局者からも、漏れるようになっている。 輸出部門が盛んで、市場改革の先鞭をつけることも多く、経済規模が1兆ドルに達する広東省は8日、同省における最低賃金の定期上昇を停止。2016年から2018年までは2015年の水準、つまり月1500元強(2万6000円)に据え置くと発表した。 国営新華社は同日、中国の楼継偉財政相が、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の演説で、自国の労働契約法を批判する意見を述べたことを大きく伝えている。 労働契約法の制定は2008年に遡る。当時の中国は、薄給の労働者を酷使する労働搾取工場として有名になっており、社会主義を掲げて権力を独占する共産党にとって頭痛の種となっていた。 この法律は、大半の労働者について週40時間労働と法定産休期間を定め、能力不足又は犯罪、重大な懲戒対象行為を理由として従業員を解雇する場合に、企業側に立証責任を負わせた。 実施状況はお粗末だったとはいえ、この法律が定める基準は、新興市場諸国よりも先進諸国のレベルをめざす野心的なものだった。 たとえば、EUでは週労働時間を48時間に制限しているが、中国では、月最大36時間認められている超過勤務を計算に入れても、最長労働時間はほぼ同じとなっている。 最低賃金の規定は当該地域の平均の40─60%(実際には通常30─40%)とされているが、米国では約30%、イギリスでは50%だ。解雇に対する保護は日本の基準と同等となっている。 「中国政府は、可能な限り最善かつ最も洗練された労働法制を追求し、経済の方はそれに対応できないにもかかわらず、簡単に適用してしまった」と語るのは、労働者の権利を擁護する監視団体「中国労工通報」で広報担当ディレクターを務めるジェフリー・クロソール氏だ。 中国の賃金は2008年の法律制定以来、2桁の伸びを見せており、工場労働者の賃金は、バングラデシュ、ベトナム、カンボジアの賃金を大幅に上回っている。労働者保護のせいで、長期的に見れば労働者にとっても利益となる経済改革が妨げられていると考える人もいる。 「企業と従業員にとって、労働契約法が与える保護の範囲がアンバランスになっている」と楼財政相は述べ、企業が中国から他国に雇用をシフトさせる誘因になっていると付け加えた。 「最終的にそのコストを負担するのは誰か。この法律が守ろうとしている、当の労働階級なのだ」と財政相は言う。 労働運動家は、労働者保護は引き続き必要であり、企業が労働契約法に違反しても、特に地方政府とのコネがある場合には罰せられていないと指摘する。 新華社の報道は中国語と英語の双方で配信されており、規制当局者から肯定的なコメントが寄せられていることから、法改正の動きが進んでいるのではないかという憶測が浮上している。 いくつかの産業において生産能力過剰を解消し、その過程で国営企業において推定600万人規模の一時解雇を行おうとしている中国政府にとっては、ちょうどいいタイミングかもしれない。 中国政府は、失業率の急上昇や国内需要の圧迫を招くことなく、こうした改革を進めたいと思っているが、強力な労働者保護のせいで、企業は、新たな雇用創出や、創出した雇用に高い賃金を支払うことに対して消極的になっている。 <当局の干渉> 広東省東莞市に工場を保有するダニー・ロー氏は、政府が近日中に労働契約法を「統合・整理」して、製造業者にとってのコストを引き下げてくれると期待しているという。 これは、事業運営に対する当局の干渉に苛立っている企業にとっては朗報となるだろう。 東莞市にオフィスを構えるGMMノンスティックコーティング社を経営するラビィン・ガンディー氏は、「政府の官僚は、我が社を訪れては、給与明細を見せて下さいと言うんだ」と話す。「そして『御社の労働者の30%は昇給が必要。この人たちには15%の昇給を』などと言ってくる。収益性なんか何一つ気にかけてくれない」 その結果、同社は次の生産施設をインドに建設することになった。ガンディー氏によれば、インフラの点では中国に劣るものの、コストは40%も安かったという。 「もちろん、今後(中国では)あまり力を入れないつもりだ。その分の投資をインドに回す」とガンディー氏は言う。 ロイターが1月、重慶市にある印刷工場を訪れ、工場長へのインタビューを行っていた最中に、地元官僚の邪魔が入った。春節(旧正月)休暇前に給料を支払ったかどうか確認に来たのだという。 「(昨年には)我々を会議に呼びつけて、従業員の解雇は許されないと言われた」と彼は付け加えた。 多くのエコノミストは、中国のビジネス活動や投資が振るわない原因は(ただし公式統計では失業率は5%以下に留まっている)、まさしく、企業にとって高い賃金と低い利益率が負担となり、債務の削減や投資に踏み切れないからだという。 「赤字企業を支援するよりは労働者を保護する方がマシだ」と、北京大学の経済学者、肢ネ寧教授は6日、全人代会議の合間に語った。 とはいえ、地方官僚には、労働者保護の後退を危ぶむべき理由がある。自分が担当する地域で労働者の抗議行動が盛んになれば、物理的な危険も伴うし、キャリアにも響くからだ。 経済調査会社ガベカル・ドラゴノミクスの労働アナリスト、Cui Ernan氏は、特に石炭・鉄鋼部門での大規模な一時解雇が見られた地域では、扇動された労働者をなだめるために、政府が労働給付の積み増しさえ行うかもしれないと語る。 「このところ、2015年末から2016年初めにかけて、労働者のストライキが過去最多水準になっている」と同氏は指摘する。 (Pete Sweeney記者)(翻訳:エァクレーレン) http://jp.reuters.com/article/china-economy-labour-idJPKCN0WH100 中国の検閲に高まる抵抗 有力者も我慢の限界か 中国が1958年から62年に経験した大飢饉は歴史から葬り去られている(写真は1961年の上海郊外の村)
By ANDREW BROWNE 2016 年 3 月 16 日 12:40 JST 更新 【上海】中国の改革派作家、楊継縄氏(75)は検閲の何たるかを熟知している。毛沢東時代の大飢饉について著した作品「墓碑」は中国で出版が禁止されている。 ハーバード大学から賞を贈られたものの、楊氏は同大学で先週行われた授賞式には出席できなかった。以前勤めていた新華社通信が許さなかったからだ。だが、元ジャーナリストの楊氏はスピーチを書いた。その中で同氏は、当局による発禁措置にもかかわらず、中国の最も辺鄙(へんぴ)な地域でさえ、「墓碑」の海賊版が読まれていることを誇らしげに指摘した。 楊氏がそのことを知ったのは、熱烈な読者が手紙を送ってくるからだ。同氏はこれを「政府が建設した銅の壁と鉄の城壁を貫く力を真実が持っている」証しだとしている。 広告 これは反逆のメッセージだ。その威圧的な姿勢にもかかわらず、検閲当局はしてやられているというわけだ。 習近平政権は外国のコンテンツを締め出すネット検閲システム「グレートファイアウォール」を強化しつつ、国内の出版物や放送、デジタルコンテンツに対する検閲の厳格化に取り組んでいるが、最近はこれに対する抵抗が強まっている。 こうした抵抗は楊氏の隠れ読者のような受け身な人たちを超えて広がり、今やその多くが活発に、かつ公に活動している。 元不動産王で、ソーシャルメディアで数千万人のフォロワーを持つ任志強氏が習氏を正面切って非難した(英語音声、英語字幕あり) 先月は元不動産王で、ソーシャルメディアで数千万人のフォロワーを持つ任志強氏が習氏を正面切って非難した。習氏が新華社通信、人民日報、中国中央テレビを訪問し、共産党の規則に従う必要があると説き、これらの報道機関は「『党』という名字を持っている」と宣言したためだ。 これは「大砲」の異名を持つ任氏にとって耐え難いものだった。中国のメディアは党ではなく、税金を通じて給料を出している国民を代表しているはずだと、任氏はソーシャルメディア上で手厳しく批判。検閲当局はただちに任氏のアカウントを削除した。 影響力のあるビジネス誌「財新」も当局にかみついた。同誌が中国語のウェブサイトに、政府の顧問を務めている上海の教授が言論の自由を擁護する発言をしたことを伝える記事を掲載したところ、当局が当該記事の削除を強要したためだ。これを受けて同誌は英語版サイトに検閲があった旨を伝える記事を掲載した。挿し絵はテープでふさがれた口のイラストだ。この記事もサイトから消えた。 ソーシャルメディアで「大砲」の異名を持つ任志強氏(2012年) こうした出来事の影響がどれほどのものかは、まだ明らかでない。地底奥深くで政治システムへの圧力が強まっていることを示すのかもしれない。現在の政治システムは、官僚機構に向けられた習氏の反汚職キャンペーンと、軍隊の大々的な再編に揺れている。軍隊の再編は幹部の怒りと将校の不満を買うことにもなった。 任氏は共産党のインサイダーだ。いわゆる「赤い貴族」と呼ばれる富裕層の一員であり、その発言には影響力がある。また、財新の編集長である胡舒立氏は経済改革を担う政府の一翼と緊密な関係にある。経済改革は人民銀行(中央銀行)の周小川総裁が音頭を取っている。 少なくとも、これらのエピソードは、全土に浸透した習氏の支配が社会のさまざまな層を我慢の限界に押しやっていることを示唆しているのかもしれない。 習氏がどれだけ毛沢東時代の言葉や政治的慣行をよみがえらせたいと望んだところで、今は毛沢東の時代ではない。あの時代、政府の批判者は公の場での自白や、共産党の会議の場での「自己批判」を迫られた。だが今日の国民はそう簡単に脅しには乗らないうえ、抗議を意思表示する手段がかつてより多い。 政策批判をさとられないよう巧みな言葉遊びを利用したり、指導者の名前をもじって検索に引っかかりにくくしたりするなど、ネット上で検閲当局と戦っている人もいる。例えば、習氏は「?太大」や「吸精瓶」になったりする。発音が似ているからだ。これらの言葉は現在、使用が禁止されている。 「足」で意思表示する人たちもいる。富裕層は大挙してパスポートを申請している。このエクソダス(集団逃避)は主に経済的な不安感が背景になっているものの、政治的な抑圧の雰囲気が漂っていることも一因だ。検閲だけでなく、人権問題を扱う弁護士や労働問題の活動家、少数民族出身の人やフェミニストなどの拘束や失踪がそれだ。 毛沢東時代の大飢饉を描いた楊継縄氏の「墓碑」は中国で出版が禁止されている 自由な高等教育を求めて、大勢の中国人学生が欧米で学んでいる。オーストラリアの新聞に先週寄稿したジャスミン・インさんは「同床異夢」という言葉を用いて中国の若い世代と、習氏やその共産党の仲間との間に広がる大きな溝を表現した。インさんは毛沢東のお気に入りだった将校の孫娘だという。現在はニューヨークのコロンビア大学で学んでいる。インさんと同じミレニアル世代の望みは「私たちの生活への政治的な介入を減らすこと、外の世界に対して国をもっと開くこと、忌まわしいグレートファイアウォールを取り壊すこと」だ。
75歳の楊氏は毛沢東時代の残忍な行為の横行を経験した世代だ。 それでも楊氏は毛沢東の政治的レガシー(遺産)から逃れることはできない。楊氏の作品「墓碑」は、毛沢東の破滅的な「大躍進」政策の結果生まれた、1958年から62年の大飢饉(ききん)について書かれている。楊氏は著作の中で3600万人が餓死したと結論づけている。史上最悪の飢饉だ。共産党は大飢饉のことを伏せておきたいと望んでいる。毛沢東の神のようなイメージと、共産党自体の正当性が損なわれることを恐れているためだ。 だが、もはや共産党には選択の余地はない。検閲の壁は鉄でできているかもしれないが、難攻不落とはとても言えない代物だ。 (筆者のアンドリュー・ブラウンはWSJ中国担当コラムニスト) 関連記事 中国、経済より政治優先 影ひそめる現実主義 中国悲観論が加速、指導部への失望感で 世界のサッカー選手は中国に? 欧州脅かす資金力 中国為替市場の混乱、不均衡問題を反映 http://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AH381_CWORLD_JV_20160315013454.jpg http://si.wsj.net/public/resources/images/OJ-AH380_CWORLD_M_20160315013020.jpg Business | 2016年 03月 16日 08:21 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス アングル:中国の違法オンライン融資、「住宅バブル」の温床に
[香港 14日 ロイター] - 中国の不動産市場が一部で過熱の兆候が出ていると警戒する声が全国人民代表大会(全人代)で出ており、野放し状態のオンライン融資が住宅バブルをあおるのではないかと懸念が高まっている。当局は住宅購入者に頭金を融通する違法な融資を取り締まる方針だ。 折しも上海では1月の住宅価格が前年同月比で17.5%急上昇し、市場の過熱ぶりが浮き彫りになった。深センでは上昇率が51.9%に達している。 中国人民銀行(中央銀行)の潘功勝副総裁は12日記者団に対して、金融会社や不動産会社および、ネット上で貸し手と借り手を結びつけるピア・ツー・ピア(P2P)企業の取引を取り締まり対象にすると表明。違法な頭金融資については、家計の借り入れ水準や金融リスクを押し上げるだけでなく「不動産市場のリスクを高める」ため、取り締まりが不可欠との考えを示した。 住宅購入者が銀行ではなく「影の銀行」セクターからの資金借り入れに動いていることも、不動産市場が過熱する要因となっている。こうした借り入れに関するデータはないが、アナリストは全体の10%近いと推測している。 <金融リスクの判断要請> 上海では銀行による不動産向け融資が急増している。中銀のデータによると、1月は346億3000万元(53億4000万ドル)と前月比で68%増加し、前年同月比では3倍以上に膨らんだ。 背景には不動産市場の回復がある。中国は2014年に不動産市場が崩壊して経済成長が鈍る要因となったことから、その後政府は利下げや頭金要件の緩和、不動産取引税の引き下げなどテコ入れ策を講じた。 中央銀行の周小川総裁は先週末、銀行が自らの判断で顧客の返済能力や金融リスクの点検を行う必要があると指摘した。 ただ中銀がより強い懸念を抱いているのはノンバンク、とりわけ大都市での住宅ローンで課される30%の頭金支払いが不要となるオンライン融資とみられる。こうしたローンは金額はさまざまだが、承認手続きが迅速な「簡便な」融資として広告が出ているケースが多い。しかし金利は月2%にもなり、返済は容易ではないだろう。 西側諸国の水準に比べて家計の債務が少ない中国では、これまでのところ住宅ローンの返済不履行はほとんど起きていないようだ。しかし不動産バブルがはじければ、高い金利を設定されている借り手の多くはローンの返済が不可能になる。 <モバイル融資ブーム> ノンバンク融資のブームが始まったのは14年で、オンラインやモバイル技術がこうした流れを後押ししたと話すのは、センタラインのクレメント・リュック最高経営責任者だ。 調査会社WangdaizhijiaのXu Hongwei会長の推計によると、中国の不動産融資のうちオンライン融資が占める比率は15%程度に上る。 リュック氏によると、これはバブルを膨らませるのに十分な数字で、「もし顧客が借り入れを増やすようなノンバンク融資の手段をこれほど多く持たなければ、不動産市場はこんな狂騒状態になっていない」と述べた。 ミッドランド・リアルティのサミュエル・ウオン最高執行責任者は「こうしたローンを規制するのは難しい。その多くは頭金融資という言葉ではない形で融資しているからだ」と話した。 (Clare Jim記者) http://jp.reuters.com/article/angle-china-property-bubble-idJPKCN0WH0BE
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