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債務超過が目前に迫る東芝。子会社売却の道筋は立った(撮影:尾形文繁)
東芝が手放す「虎の子」が高騰、その真の実力 海外勢は東芝メディカルをどう見るのか
http://toyokeizai.net/articles/-/108887
2016年03月11日 富田 頌子 :東洋経済 記者
高値売却のメドが立ち、経営幹部もほっとしていることだろう。東芝は3月9日、100%子会社の東芝メディカルシステムズ(東芝メディカル)の売却に関して、独占交渉権をキヤノンに与えることを発表した。
東芝は赤字事業のリストラ費用がかさみ、今期末にも株主資本比率が2.6%まで悪化する見通し。債務超過が目前に迫る中、毀損した株主資本を増強するため、2015年12月、泣く泣く売却を決めていた。
東芝メディカルの2015年3月期業績は、売上高2799億円、営業利益は177億円、利益率は6%台と高く、ここ数年100億円以上の利益を安定的に稼ぐ優良子会社だ。
■売却額は高騰、7000億円程度に
高値での売却を最優先としつつ、さらなる業績の下振れや追加のリストラ費用を考慮し、今年度中の売却を目指していた。そのため、独占禁止法に抵触するおそれがないなど、手続きが早く終わる企業を優先した。
独占交渉権は3月18日を期限としており、それまでに締結を目指す。売却額については明らかにしていないが、当初5000億円程度とみられていた額は、7000億円まで高騰しているようだ。
売却により、東芝の株主資本比率は、今期末に2.6%の見通しから10%前後に上昇する。経営危機の水準を脱したとはいえ、一般に安定的と言われる30%以上にはほど遠い。赤字が続けば悪化も考えられる。さらなる事業売却も視野に入れなければならないだろう。
キヤノンは買収によって、長年の目標だった医療機器事業に本格参入する。医療分野は参入障壁が高く、なかなか買収案件が出てこない。2015年2月の東洋経済の取材で、東芝ヘルスケア社の綱川智社長(当時)は「2000年頃は医療機器に大きな動きがあったが、今はそんなに大きな案件はない」と明かしていた。キヤノンにとってはまさに狙い目だった。
一方で、ある海外電機大手の幹部は売却発表前から「国内では東芝をライバルと見ているが、海外では販売網がなく弱い」と一蹴していた。東芝は「国内の機器売りがメインで、海外での競争力はない」という印象のようだ。
たとえば、独総合電機世界大手のシーメンスは2015年5月、医療分野の意思決定を早めるため、ヘルスケア事業を独立させた。単なる医療診断装置の機器売りからの脱却を目指し、病院のコンサルティングやITを活用したサービス事業を軸に置いている。
その点、東芝メディカルは、グループの中で着実に利益を生みだしている優良事業とはいえ、シーメンスのようなサービスやIT活用はまだ不十分で、機器売りがメインだ。
■海外市場をどう攻略するのか
シーメンスヘルスケアの森秀顕社長(日本法人)が「絶滅戦争」と表現するように、日本国内の病院数は減少傾向にあり、機器の納入先も必然的に減ってくる。需要が増える海外で拡大を目指すが、新興国では価格競争が激化している状況だ。
CTは世界でトップ3のシェアを誇る。キヤノンは医療機器事業をどう育てていくのか
東芝もCT(コンピューター断層撮影)は世界でトップ3に入る。だが、今後新興国で拡大が期待されているMRI(磁気共鳴画像)については「機器の主要部品であるマグネットが外部調達なので、競争力が厳しい」と綱川社長(2015年2月当時)も認めていた。
森社長は、東芝メディカルの売却について「関心があるかと言えばある。研究開発に投下できる費用が増え、イノベーション(新技術)を生み出し、それが評価されるようになれば、われわれも喜ばしい」と話す。東芝の厳しい財務状況の中で資金が投下できない状況よりも、外部資本を入れた成長に期待が集まる。
巨額費用を投じて東芝メディカルを買収するキヤノンにとって、単なる機器売りから脱却できるかが課題になりそうだ。基礎技術があるからこそ、今後の成長戦略をどう描くかが問われることになる。
東芝の会社概要 は「四季報オンライン」で
http://shikiho.jp/tk/stock/info/6502
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