ECBの政策総動員、効果が疑問視される理由とは By RICHARD BARLEY 2016 年 3 月 11 日 11:42 JST 欧州中央銀行(ECB)が10日に発表した追加緩和はまさに政策総動員の積極的なものだった。だが、一連の政策が投資家の予想を上回る内容だったにもかかわらず、市場の反応はいまひとつだった。金融政策だけではあまり効果はなさそうとの見方は消えないだろう。 ECBがこれほど大胆な追加緩和に至るまでの道のりは長かった。とはいえ、問題の奥深さと幅広さの両方を考えるにつけても、ECBはいまや巨大な重荷を背負うこととなった。 ECBは10日、政策金利のリフィナンス金利を0.5%から0%に、預金金利をマイナス0.3%からマイナス0.4%に引き下げた。債券買い入れ政策については、月間購入額を600億ユーロから800億ユーロ(約10兆円)に増やし、金融機関以外の域内企業が発行するユーロ建て投資適格社債を買い入れ対象に追加した。これでECBの買い入れは欧州債券市場の広範に及ぶこととなる。さらに、4年物のTLTRO(ターゲットLTRO=対象を絞った長期資金供給オペ)を新たに開始する。 一連の政策の中で特に目を引くのは、実体経済への銀行融資拡大を図る社債の買い入れと新規TLTROだ。経済成長とインフレの押し上げを図りたいECBは今回、正面から信用経路に狙いを定めている。従来はユーロ圏にインフレを呼び込むために金利差や為替レートを強調していたが、ここに来て政策手段の軸足を移したしたかたちだ。 だが、これらの政策は欧州の問題を解決する特効薬ではないかもしれない。米企業は自社株買いなどの資金を調達するために欧州市場で積極的に債券を発行してきたが、ECBがユーロ圏の社債を買い始めれば、米企業のユーロ建て債の発行が増える可能性がある。一部には、ECBの買い入れで社債の流動性が悪化しかねないとの懸念もある。一方、新たなTLTROは一段と魅力的だが、成否は銀行の融資意欲や域内企業の借入需要にかかっている。 市場は当初、ECBの緩和拡充を好感し、ユーロ安と株高が進む中、信用スプレッドは縮小し、欧州南部諸国の国債利回りは大幅に低下(債券価格は急騰)した。ところが、ドラギ総裁の記者会見中にこれらの市場の動きはほぼ全て反転した。総裁が追加利下げの必要性を否定し、政策余地の限界を示唆したことが一因だ。結局、欧州主要企業600社で構成するStoxx600指数の10日の終値は前日比1.66%安だった。ユーロは日本時間11日午前11時20分現在、1.1182ドル近辺で取引されている。 ドラギ総裁は、ECBの政策が限界に達したという投資家のこれまでの懸念を少しでもぬぐい去ろうとした。ECBが提示した政策の幅広さは、当局にまだ選択肢があることを証明している。そして、総裁はさまざまな政策を一斉に発動することで一層の効果が期待できるとして、今回の緩和策の「相乗効果」を強調した。 とはいうものの、ECBの拙い対話力に加え、政策が一段と複雑になったことが難点だ。その上、欧州には政治リスクや経済成長の構造的な問題が残る。ECBにできることはあまりない。 関連記事 3月のECB理事会、5つの注目点 ECB、追加緩和で6つの措置−政策金利0% http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NA151_ECBHER_M_20160310122632.jpg
ECBの力強い追加緩和、3月FOMCの政策見通しに影響も (1) 2016/03/11 10:49 JST
(ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)による劇的な行動を受け、米連邦準備制度が他の金融当局と方向の異なる政策をどこまで進められるのか疑問が浮上している。 来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げの確率はほぼゼロと見込まれているものの、米当局が次の行動への見通しをどう形作るかは3月16日の委員会終了時に大きな問題となりそうだ。 年内の追加利上げに制限なく傾けばドルは主要通貨に対して上昇し、米大統領選でも注目を集める輸出や製造業に打撃を与え、輸入物価下落によるディスインフレを一部招く恐れがある。 ライトソンICAPのチーフエコノミスト、ルー・クランドール氏は「持続的な為替レートの動きは長期にわたって生産の勢力図に影響を及ぼす」と述べ、それが「米国の製造業に不相応な影響」をもたらしかねないと指摘する。 ECBが10日発表した予想外に強力な景気刺激策に加え、日本銀行も7月までに追加緩和に踏み切るとの見通しもあるものの、15日の金融政策決定会合での動きを見込むエコノミストは少数にとどまる。 ブレイナード米連邦準備制度理事会(FRB)理事は米国と他の主要国の間で金融政策の隔たりが拡大することに警戒感を強めている。2月26日のニューヨークでの講演では、「当局者にとって今は、世界的に需要を強化するという共通の目標に向かって取り組む決意を今一度確かめる良い機会と言えよう」と述べた。 ドラギECB総裁が10日に一段の利下げの可能性は低いと発言したのを受けてユーロは対ドルでニューヨーク時間午後0時11分(日本時間11日午前2時11分)現在、1.6%上昇した。 米金融当局は来週のFOMCでの行動と説明を検討するに当たって内心では、ドルの対主要通貨に対する一時的な変動を重視していない。米政策金利が依然としてゼロに極めて近い水準にあることの方がより大きな問題だ。米国の雇用とインフレが上向くことを当局は歓迎しており、複数回の追加利上げを示唆すれば、持続的なドル上昇の引き金を引いて雇用とインフレ面の前進をリスクにさらす可能性がある。 UBSセキュリティーズの米国担当副チーフエコノミスト、ドルー・マタス氏は、「通貨を押し下げて他にそれを負担させることは誰にでもできるわけではない」と述べ、「世界の機能の仕組みをリセットすることになるため」FOMCは3月に利上げしなければ、6月も見送る公算が大きいと予想した。 イエレンFRB議長には来週、見通しを操縦する幾つかの手段がある。* 声明:1月のFOMCで当局は経済見通しへのリスクに関する判断を留保し、「世界の経済・金融情勢を注視」するスタンスを取った。その後に発表された米国の雇用や消費の指標は堅調であり、世界動向を強調したこの文言は現時点で修正の必要が少しある。この文言を踏襲すれば、世界情勢を重視し、より時間をかけて世界経済の成長を見極めることになる。一方、見通しのリスクを「ほぼ均衡している」もしくは「均衡している」との表現に変更すれば、6月利上げのより明確なシグナルになる。* 記者会見:失業率は4.9%に低下し、完全雇用と当局者が定義する水準にあるため、イエレン議長は米労働市場の着実な前進に言及する必要がある。変動の激しい食品とエネルギーを除いた個人消費支出(PCE)コア価格指数は1月に前年比で1.7%上昇しており、当局者によると2016年末までこの水準が続く見通し。当局が本当にデータ次第の姿勢なら、経済指標は緩やかな利上げ継続を差し示している。こうした指標のメッセージから離れる場合は、イエレン議長は国際的リスクを強調しなければならないだろう。* 金利予測のドット(点)分布:バークレイズ・キャピタルの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・ゲーペン氏は、FOMCが四半期予測のフェデラルファンド(FF)金利予想分布図で利上げペース鈍化を示唆すれば、他中銀との政策の違いに関する懸念に対処できると分析する。昨年12月公表の予測では、16年の利上げ回数はFOMC参加者の予想中央値で4回だった。政策の違いとそれに伴うインフレや雇用への影響をめぐる懸念で見通しは低下する可能性もあることから、ゲーペン氏は「予想中央値が3回に低下する」と予想する。四半期予測は米東部時間16日午後2時(日本時間17日午前3時)にFOMC声明とともに公表される。 原題:Fed’s March Policy Message May Be Crimped by Muscular ECB Move(抜粋) http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3UDYD6JTSEJ01.html FRB、金融状況改善でも追加利上げはまだ先か ワシントンのFRB本部 By JON HILSENRATH 2016 年 3 月 11 日 09:54 JST 米連邦準備制度理事会(FRB)が1月末の連邦公開市場委員会(FOMC)で、市場の混乱は経済見通しを悪化させかねないと懸念を示して以来、金融状況は大幅に改善している。 1月末以降、S&P500種指数は6%上昇し、投資適格社債のリスクプレミアム(上乗せ利回り、スプレッド)は0.09%縮小した。ドルは主要通貨のバスケットに対して3%下落した。これらを全て織り込んだゴールドマン・サックスの金融環境指数は、FRBが利上げした昨年12月時点の水準近くまで回復した。これが意味するのは、FRBが金融状況に不安要素はないと宣言し、12月に定めた利上げ軌道に戻ることは可能ということだろうか。 まだ早い、というのがその答えだ。 金融状況が上向いた理由の一つは、FRBが経済に対する脅威に対応してくれるはずだという投資家の確信度合いを市場が評価し直したからだ。 FRBが12月に利上げした時点で、フェデラルファンド(FF)金利先物市場のトレーダーらはFRBがFF金利を2016年末までに0.84%へ押し上げると予想していた。つまり16年中に利上げが2回あると織り込んでいた。現在はこれが0.63%へ低下し、年内の予想利上げ回数は1回だけとなった。17年末の予想水準も1.37%から0.86%に低下し、当初の見通しよりも利上げ回数が2回減った。 このようにFRBの利上げ計画を再評価する動きが1月と2月にみられたことで、結果的にドル安や株高、社債スプレッド縮小が後押しされ、金融状況全体の回復につながったようだ。 FRBと市場は、お互いの行動が相互に影響し合う複雑なゲームに興じている。FRBが16年中に3、4回利上げするという12月時点の計画にこだわるなら、この数週間に見られた金融市場の改善がいくらか帳消しになるのは間違いなさそうだ。投資家は来週のFOMCでFRBは信用できるという確証をいくらか得たいと考えている。年初の時点で市場の混乱が米経済を脅かす可能性を警戒していたため、FRB当局者らは、市場の期待に応えられなければ市場を再び混乱に陥れる可能性があるということに留意するだろう。 関連記事 FRB利上げ、6月まで先送りの予想増加=WSJ調査 米長短金利差が縮小の一途、景気見通し予断許さず http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-ML828_0205fe_M_20160205083524.jpg
長期金利がプラス圏に上昇、3週間ぶり−ドラギ発言受けた米債安で 2016/03/11 10:50 JST (ブルームバーグ):債券相場は下落。長期金利は3週間ぶりにプラス圏に上昇している。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の発言を受けて米国債相場が下落した流れを引き継ぎ、売りが優勢となっている。 11日の現物債市場で長期金利の指標となる新発10年物国債の342回債利回りは、日本相互証券が公表した前日午後3時時点の参照値より2.5ベーシスポイント(bp)高い0.00%と、マイナス圏を脱出して開始。一時は0.015%と2月18日以来の高水準を付けた。その後は0.005%前後で推移している。新発5年物の127回債利回りは3bp高いマイナス0.125%。新発20年物の155回債利回りは4bp高い0.53%を付けている。 長期国債先物市場で中心限月3月物は前日比21銭安の151円45銭で開始。一時65銭安の151円01銭と2月15日以来の安値を付け、その後は下げ幅を縮めている。 JPモルガン証券の山脇貴史チーフ債券ストラテジストは、「10年債利回りは一時プラス圏に浮上したところでかなりの出合いがあり、プラス金利であれば買いたい投資家が多い」と話した。「短期ゾーンは弱めだが、2年債利回りや5年債利回りは無担保コールレートやレポ金利が徐々に低下していく中で、今の水準であれば割安に見える。大きな流れは日銀の買い入れが続く中で、徐々に需給逼迫(ひっぱく)が効いて、徐々に相場が落ち着いていくだろう」と述べた。 日銀買い入れオペ 日銀は今日午前10時10分の金融調節で、今月4回目となる長期国債買い入れオペ実施を通知した。残存期間1年超3年以下、3年超5年以下、5年超10年以下が対象で、総額は1兆2700億円程度となる。 10日の米国債相場は下落。米10年債利回りは前日比6bp上昇の1.93%で引けた。ECBのドラギ総裁が追加緩和を決めた会合後の記者会見で「一段の利下げが必要だとは考えていない」と述べたことをきっかけに債券売りが強まった。 ECBは10日、中銀預金金利を0.1ポイント下げマイナス0.4%とした。主要政策金利のリファイナンスオペの最低応札金利を0.00%と0.05%から引き下げ、限界貸出金利も0.25%(従来0.3%)に下げた。量的緩和の月間購入額は4月から800億ユーロに増額し、社債も対象に含める。新たな一連の条件付き長期リファイナンスオペも開始する。 野村証券の松沢中チーフ金利ストラテジストは、「ECBの政策決定がマイナス金利政策の限界を意識させる内容で、日銀についても利下げ期待が後退する可能性がある」と指摘した。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3TFH96KLVR701.html 日本株は下落、ドラギ総裁発言後の円高嫌気−年金買いや政策期待支え 2016/03/11 10:46 JST (ブルームバーグ):11日午前の東京株式相場は下落している。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が一段の利下げを想定しないと発言した後、為替が対ドルで円高方向に振れており、電機や機械、ゴム製品など輸出関連株が売られ、原油反落を受けた鉱業株、保険や食料品など内需株の一部も安い。 午前10時44分時点のTOPIXは前日比11.28ポイント(0.8%)安の1340.89、日経平均株価は187円56銭(1.1%)安の1万6664円79銭。 東海東京調査センターの中井裕幸専務は、ECBによる追加緩和策の「中身は申し分ない。やっていることは間違いないが、市場の反応は今の世界経済を大きく好転させるには金融政策のみでは限界がある、ということを警告している」と言う。日本株については、為替が1ドル=115円を超えてこないと「企業収益への不安感は消えず、上昇しない」とみている。 ECBは10日の理事会で、中銀預金金利を0.1ポイント引き下げマイナス0.4%とした。量的緩和(QE)の月間購入額は4月から800億ユーロ(約9兆9000億円)とこれまでの600億ユーロから増額し、社債も対象に含める。新たな一連の条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)も6月に開始する。会見でドラギ総裁は、「政策金利が長期にわたり現行またはそれ以下の水準にとどまると予想している。資産購入の終了から相当後まで低金利を維持するだろう」とした上で、「一段の利下げが必要だとは考えていない」と述べた。 総裁発言を受けユーロは下落から上昇へ急反転。ドル・円はニューヨーク時間帯に1ドル=114円台から112円60銭台までドル安・円高方向に振れた。午前の東京市場では113円付近、前日の日本株終値時点113円74銭から円高水準で取引されている。10日の欧米株は、ECBの刺激策をめぐる見方が交錯し、乱高下。ストックス欧州600指数は一時2.5%高と急伸後、1.7%安と2週ぶりの大幅反落で終えた。米国株は高安まちまち。 取引開始時の先物・オプションの特別清算値(SQ)算出に絡む売買の影響もあり、日経平均は開始早々に一時276円安の1万6575円まで売られたが、その後はやや下げ渋っている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は、「需給面では信託銀行が大きく買い越しており、寄り付きが安いと年金などの長期資金が入ってくる可能性がある」と指摘した。東証が10日夕に公表した3月1週の投資部門別売買動向によると、年金基金の動きを映す信託銀行は15週連続で買い越し、信託銀の連続買い越しは2008年12月の記録に並んだ。 また、政府内に景気失速懸念があり、10兆円景気対策の声もあるとロイター通信が11日午前に報道。丸三証券の服部誠エクイティ本部長は、「10兆円という数字は市場にはインパクトがある。財政政策が具体化していくことが市場の方向性を示すきっかけになる」との認識を示した。 東証1部33業種は鉱業、保険、機械、ゴム、倉庫・運輸、非鉄金属、電機、サービス、食料品、輸送用機器などが下落。銀行、水産・農林、鉄鋼、不動産は上昇。鉱業は、10日のニューヨーク原油先物が1.2%安の1バレル=37.84ドルと反落したことを受けた。 売買代金上位ではファナックやJT、ホンダ、セコム、ダイキン工業、ブリヂストン、電通、東京海上ホールディングス、クボタ、関西電力が安い半面、そーせいグループや塩野義製薬、ペプチドリーム、積水ハウスは高い。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3UHV56S972L01.html ユーロが対円で3週ぶり高値、利下げ打ち止め観測で−ドル・円113円台 2016/03/11 11:50 JST (ブルームバーグ):11日の東京外国為替市場では、ユーロが対円で約3週間ぶりの高値を更新。欧州中央銀行(ECB)の利下げ打ち止め観測を背景にユーロ買いが優勢で、ユーロは対ドルでも1カ月ぶり高値圏で推移している。 ユーロ・円相場は一時1ユーロ=126円82銭と2月18日以来の水準までユーロ買い・売りが進み、午前11時45分現在は126円54銭前後。ユーロ・ドル相場も一時1ユーロ=1.1210ドルと、前日の海外市場で付けた同15日以来のユーロ高値(1.1218ドル)付近まで値を切り上げ、同時刻現在は1.1182ドル前後で取引されている。 ECBのドラギ総裁は10日、一段の利下げは可能だがその公算は小さいと述べた。ECBは同日、3つの政策金利全てを過去最低に引き下げ、資産購入を拡大した。ユーロは追加緩和発表後、いったん売られたが、ドラギ総裁の会見を受けて急反発し、この日の東京市場でも買いが優勢となっている。 みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストは、当初は多岐にわたる追加緩和が評価されたが、「利下げに関しては、もうやらないかもしれないといういう感じになったのが非常に残念な点」だと指摘。「目先はユーロを売りにくくなってしまったという感じがある」と語る。 ドル・円相場は前日の海外市場でユーロ・ドルの下落に伴い、一時1ドル=114円45銭と今月2日以来の水準までドル高に振れたが、その後112円61銭まで反落。この日の東京市場では再び112円台後半までドル安・円高に振れた後、113円台前半まで値を戻している。同時刻現在は113円15銭前後。 山本氏は、ユーロ・円が上がったのは幸いだったが、ECBの追加緩和からくるリスクオンは機能しなかったとし、目先は日本銀行の金融緩和にも限界があるとの見方から「どんどん円を売る動きにはなりにくくなった」と指摘。その上で、来週は米連邦公開市場委員会(FOMC)があり、「どちらかというと113円辺りで底固めの展開」を予想しているが、一部で日本銀行による追加緩和の期待もあり、緩和見送りが「一時的な円高リスクになり得る」とみている。 ECB政策委員会は10日、中銀預金金利を0.1ポイント引き下げマイナス0.4%とした。主要政策金利であるリファイナンスオペの最低応札金利は0.00%と従来の0.05%から引き下げた。限界貸出金利も0.25%(従来0.3%)に引き下げ。量的緩和(QE)の月間購入額は4月から800億ユーロ(約9兆9000億円)と、これまでの600億ユーロから増額し、社債も対象に含める。新たな一連の条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO)も6月に開始する。 ドラギ総裁は記者会見で「政策委員会は政策金利が長期にわたり現行またはそれ以下の水準にとどまると予想している。資産購入の終了から相当後まで低金利を維持するだろう」とした上で、現時点の見通しに基づくと「一段の利下げが必要だとは考えていない」と述べた。中銀預金金利に階層構造を導入することについては、「しばらく前から協議してきた」が「最終的には採用しないことを決めた。いくらでも下げられるという印象を与えたくなかったためだ」と説明した。 ECBの利下げ打ち止め観測から前日の欧州株式相場は反落。11日の東京株式相場も下落している。 ノムラ・インターナショナルの後藤祐二郎シニアFXストラテジスト(ロンドン在勤)は、先行きの利下げに対してかなり期待感が薄れてしまったとし、「ポジショニングでもそれなりに傷ついている人も多いと思うので、その意味では短期的にはまたすぐにユーロ売りというのは難しくなっているのではないか」と指摘。もっとも、ユーロ高や株安が続けば、ECBも追加緩和を考慮せざるを得なくなるため、「中期的にはやはりユーロは下方向」とみている。 http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3UII66JIJUR01.html
深まるマイナス利回り、債券レポで過去最低−国債償還控え最低更新も 2016/03/11 08:01 JST (ブルームバーグ):東京レポ市場では、債券との交換を条件にした現金の借り入れ金利が過去最低水準に達している。日本銀行によるマイナス金利政策導入で、従来からの量的・質的緩和を背景にした国債需給の逼迫(ひっぱく)に加え、日銀当座預金の一部に適用されるマイナス金利の影響を回避しようとする資金の貸し手側の動きが反映された格好だ。 日本証券業協会が公表するレポ金利の指標によると、翌日受け渡しとなるトムネクスト物は10日、マイナス0.086%とデータでさかのぼれる2007年10月以来の最低を付けた。日銀による初のマイナス金利の適用分が決まる準備預金の積み立て最終日を15日に控えている上、22日には利付国債などの大量償還を迎えるため、市場では資金の余剰感が強まっている。翌日物はマイナス0.024%と、約8カ月半ぶりの水準に下げた。 レポ金利は、現金を債券と一定期間交換する際に資金の貸し手が得る金利から債券の貸借料を差し引いた料率。債券を保有する証券会社などが銘柄を特定しないGCレポを中心に短期資金の調達に利用している。日銀の国債買い入れで市場での品薄感が強まって貸借料が上昇する一方、当座預金へのマイナス金利適用を避けたい銀行などの資金の貸し出し意欲は高まっており、レポ金利には低下圧力がかかりやすくなっている。 セントラル短資総合企画部の佐藤健司係長は、証券会社は「日銀の頻繁なオペで国債の在庫が減っているため、資金調達の需要も減退し、深いマイナスでないと取らないようになってきた」と指摘。「資金の出し手はマイナス金利の適用を避けたい事情が新たに加わった。需給バランスが崩れ、出し手はマイナス0.1%より浅いレートなら仕方がないと変わってきた」と説明する。 日銀は1月末、金融機関の当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を適用すると決めた。イールドカーブの起点を押し下げ、巨額の国債購入とともに、より強い金利低下圧力を加えるとしている。償還まで10年以下の国債利回りは2月からゼロ%を割り込み、プラス圏にある超長期債の利回りも大幅に低下している。財務省が3月に入って実施した10年債入札でも、落札利回りが初めてゼロ%を下回った。 金融機関にとってはマイナス金利適用の回避・抑制が焦点だ。日銀は金融機関の収益圧迫が仲介機能の低下を招かないよう、当座預金を3つの階層に分割。約220兆円にはプラス0.1%の付利を続け、所要準備や貸出支援オペなど約40兆円にはゼロ%を適用する。マイナス金利の対象は当初、約10兆円となる見通しだ。 財務省が予定している今月の利付国債の償還額は19兆円8519億円。割引短期国庫債券を含めると23兆8029億円に上る。セントラル短資の佐藤氏は国債が大量に償還される今月はレポレートのマイナス幅が「もう少し深くなっても不思議ではない」と言う。 記事に関する記者への問い合わせ先:東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net;東京 Kevin Buckland kbuckland1@bloomberg.net;シンガポール Masaki Kondo mkondo3@bloomberg.net http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3TQIP6JTSFN01.html
2016年 03月 11日 11:35 JST 関連トピックス: トップニュース ECBが追加緩和、一段の利下げ否定:識者はこうみる
[東京 11日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は10日、主要3金利の一斉引き下げや月額の資産買い入れ枠拡大を含む一連の追加緩和策を発表した。 市場関係者のコメントは以下の通り。 <UBS証券・デスクストラテジスト 井川雄亮氏> 朝方の円債相場で、国債先物が急落し、10年債利回りは一時プラス水準に戻した。ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が一段の金利引き下げが必要になるとは思わないと発言したことで、利下げ打ち止め感が浮上。日本でも、日銀が一部当座預金に適用しているマイナス金利をさらに引き下げることは難しいとの思惑が広がったためだ。少なくとも、日銀は3月金融政策決定会合でマイナス金利の引き下げをできる環境ではなくなった。 ECB理事会で追加緩和が決定されたが、ドラギ総裁の発言は銀行収益に対する懸念を和らげる狙いがあったのだろう。 しかし、ECBは新たに開始するTLTROプログラムでレートがマイナスになる可能性がある。日銀としては、貸出支援制度のレートをマイナスに引き下げるといった政策微調整を行う可能性がある。 <BNPパリバ証券 日本株チーフストラテジスト 丸山俊氏> 今回、欧州中央銀行(ECB)が発表した主要3金利の一斉引き下げや月額の資産買い入れ枠拡大を含む一連の追加緩和策の内容自体は評価されるべきだ。市場に失望感を与えた昨年12月に比べて100点満点の内容とみている。 ただ、ECBの追加緩和が事前に予想されていたこともあり、いったん利益確定売りが優勢となっているのだろう。また政策の効果に対する疑問もある。市場は今回の政策でも欧州金融機関のバランスシートの縮小に歯止めをかけることはできないと判断しているのではないか。効果が表れるまで時間がかかる金融政策よりも、財政出動など直接的な景気押し上げ策を望んでいる面も見受けられる。 <みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏> 欧州中央銀行(ECB)の追加緩和策をひとつひとつ吟味すれば、市場予想の上限を超えているか、上限に近いものだった。ドラギ総裁が会見で先行きの緩和可能性や、必要に応じて躊躇(ちゅうちょ)なく動くという姿勢を示せばユーロは売られただろう。ただ、これ以上、マイナス金利を広げていくと思われたくない意思が伝わってきたことで、結局、買われた。政策の限界を示したといえる。 ECBのマイナス金利政策の深堀りは、終わりが近い。日銀のように階層化すればもう少し掘り下げられるだろうが、階層化はユーロ圏では無理という結論に達しているようだ。 ユーロの方向性をめぐっては、英国のEU離脱の問題もある。これがリスク要因として強く意識されれば、ECBが追加で手を打たなくてもユーロは1.10ドルを割れた水準を謳歌(おうか)できる可能性もある。英国がEU残留となれば、ユーロは1.15ドルを超えていくだろう。 <SMBC信託銀行プレスティア シニアFXマーケットアナリスト 尾河眞樹氏> 欧州中央銀行(ECB)の追加緩和は、市場の期待を上回るメニューをそろえた。これによってユーロはいったん下げたが、会見でのドラギ総裁の発言からマイナス金利幅拡大に対する消極姿勢との受け止めが出て、ユーロは上昇に転じた。短期的には、先行きへの失望感からユーロは1.10─1.12ドルと、高値圏での推移になる可能性がある。 日銀がマイナス金利を導入した後に円高が進んだこともあって、中銀のマイナス金利が機能していないとの見方が、いったんは広がり得る。足元では日銀による追加緩和への思惑も後退し、ドル/円は短期的に円高圧力がかかりやすい。 ただ、イベント後のユーロ急騰は、総裁発言に対する過剰反応だとみている。ドラギ総裁は、現行の見通しに基づけば一段の利下げは必要だとは今は考えていない、と述べたが、これまでにも同様の発言をしてきている。 マイナス金利などECBの政策によって、銀行貸し出しが増えたり、貸し出し態度が改善するなど、実体経済での効果は出てきている。今回の施策も、時間をかけて効力を発揮していくだろう。この中で、ユーロへの過剰反応も徐々に和らいでいくとみている。 投機筋のユーロショートは縮小しており、英国のEU離脱問題など、ユーロ圏にマイナスの材料にはユーロ安に反応しやすい。米経済も底堅さが見られる。いずれユーロ安/ドル高の方向に再び向かうだろう。ユーロは年央で1.08ドル、年末に1.05ドルと予想している。 <JPモルガン・チェース銀行 チーフFX/EMストラテジスト 棚瀬順哉氏> 前日の欧州中央銀行(ECB)の追加緩和策は、マイナス金利の限界をあらためて示すものとなった。 マイナス金利は、イールドカーブの押し下げを通じて、マクロ経済に効果を及ぼすかもしれないが、効果が顕現化するには時間がかかるため、結果が出ていない。さらに、短期的に通貨を押し下げて、インフレ期待を高める効果についても、実証できていない。 ユーロは前日、追加緩和策にも関わらず、主要通貨の中で最強の通貨となっている。 他方、マイナス金利が金融機関の収益を圧迫し、市場のボラティリティを高める副作用は懸念されており、これがドラギ総裁が利上げ打ち止めを示唆した背景であろう。 来週には日銀金融政策決定会合を控えるが、金融市場が比較的に落ち着いていることや、マイナス金利のマクロ経済への影響が確認できない状況下では、金融政策を据え置く蓋然性が高いとみている。 マイナス金利の為替相場への波及効果については、当該国の通貨が資金調達通貨であるか否かや、経常収支が左右するとみている。 ユーロ圏、スウェーデン、スイス、日本など、マイナス金利導入国は全て経常収支黒字国であり、もともと通貨のファンダメンタルズが強い国々。マイナス金利の副作用としての株安が進行する局面では、黒字国の通貨が買われやすいというジレンマがつきものだ。 日本において、ポートフォリオリバランス効果が円安をもたらすためには、主要な日本国債(JGB)保有者が、JGBを売って外債に乗り換えることが必要となる。 財務省統計では、2月に本邦勢が対外証券投資を拡大したことが認められるが、金融機関や生命保険会社などの投資はヘッジ付きであり、為替相場への影響は限定的なものに留まる。 個人投資家の外債シフトによる円安経路も考えうるが、個人はJGBを大量に保有しているわけではなく、預金金利もマイナスになっていないため、「外もの」投資を拡充するインセンティブは高くないとみられる。 http://jp.reuters.com/article/ecb-comment-idJPKCN0WD04X 2016年 03月 11日 10:11 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 焦点:ECBの社債市場への進出、インフレ率引き上げ効果は期待薄
[フランクフルト 10日 ロイター] - 社債を資産買い入れの対象に含めるとの欧州中央銀行(ECB)の決定は、投資家に恩恵をもたらすだろうが、市場規模の小ささや実体経済とのつながりが希薄であることを考えると、インフレに及ぼす影響は目立たないものにとどまるだろう。 ECBはこれまでに国債や他の政府機関債を購入しているが、10日には民間企業の社債を購入する方針を明らかにした。ユーロ圏内で発行され、投資適格級が付与された銀行以外の社債であることが条件だ。 ECBのドラギ総裁は、この動きによって実体経済における資金調達条件が緩和され、恐らくは社債の利回りが低下し、企業が市場からお金を借りる際のコストを実質的に引き下げるとの見方を示した。 実際、この日はユーロ圏の金融を除く企業の社債の利回りITEXO5Y=が大幅に低下した。 しかし、こうした社債市場は規模が小さく、しかも発行体は低い資金調達コストのメリットを享受してきた大手企業が中心であり、その一部は巨額の手元資金を貯め込んでいる企業だ。 ECBはどの程度の社債を購入するかや、推定される市場規模については言及しなかった。 パイオニア・インベストメンツの欧州債券部門の責任者、タンギ・ルソー氏は「月額50億ユーロ(55億9000万ドル)近辺になるとの観測が出ている」と話した。 この額は、ECBが同日に増額を発表した月額資産購入量の800億ユーロからみると、ごく一部でしかない。 とはいいながらも、こうした市場のごく一部の債券が重要な意味を持つかもしれない。 バークレイズのアナリストチームは今年出したノートの中で、金融機関を除く企業の社債のうちECBの基準に適合するものは4800億ユーロに達すると指摘した上で、ECBがこの市場に購入対象を広げた場合、信用状況に与える影響は無視できないものになるとの見方を示した。 ECBは買い入れ資産の拡大を達成することで、ふさわしい購入対象が枯渇するとの懸念を和らげることもできるだろう。 さらに現在、社債を保有している投資家を株式など高利回りの資産に誘導できる可能性もある。 セントラルバンカーたちが「ポートフォリオ・リバランス」と呼ぶこのプロセスは、世界中で行われている量的緩和策の最も目に見える成果であり、2012─2015年の主要市場の反発を増幅させた原因だ。 この流れで企業の投資に向けた資金調達が進む想定だったが、実体経済へのインパクトは小さなものにとどまっている。多くの企業は、成長見通しが乏しい環境下で、金儲けに走るというよりはむしろ自社株買いの方を好むか、資金を手元にため込む道を選んだ。 バークレイズのエコノミスト、フィリップ・グディン氏は「インフレを加速させるのにこれで十分だろうか。私は確信が持てない。これは特効薬ではない。物価上昇率は依然として低水準にとどまっており、これは外部要因や景気回復が緩やかなためだ」と話している。 ECBの内部スタッフの推計も、今後2年間の物価上昇率は目標の2%弱に到達せず、経済成長の伸びも緩やかになるとの見通しを示している。 一方で社債投資家は、ECBの寛大な政策の真の受益者になるかもしれない。 ルソー氏は「この需要は現行のスプレッドの水準の強いサポート要因として作用し、社債が国債などの商品をアウトパフォームする状況が生まれるだろう」と予想している。 (Francesco Canepa記者) http://jp.reuters.com/article/ecb-idJPKCN0WD03D VW、ドイツで数千人の事務職削減を計画=関係筋 ドイツ中央部ブラウンシュワイクのフォルクスワーゲン工場 By WILLIAM BOSTON 2016 年 3 月 11 日 08:05 JST 【ベルリン】排ガス不正問題に揺れるドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は、ドイツで数千人の事務職を削減して経費を抑制する計画だ。新たな採用はソフトウエアプログラマーや技術職といった戦略的な職種に絞る。事情に詳しい2人の関係者が明らかにした。 関係者は3000人の削減が予定されているとの報道については肯定しなかったが、人員削減にレイオフは含まれず、労働組合の加入者にはほとんど影響しないと述べた。削減方法は自然減や早期退職、派遣契約の更新見送りのほか、事務職員を他の欠員に異動させる形をとる。 同社はディーゼル車の排ガス不正をめぐるスキャンダルで数十億ドル規模の制裁金を科される可能性が懸念されている。だが同社はそれ以前から「効率化プログラム」を掲げ、「フォルクスワーゲン」ブランドで50億ユーロ(約6300億円)の経費削減を目指していた。排ガス不正問題が明るみに出て以降、同社は経費削減目標をさらに10億ユーロ引き上げた。 VWの広報担当者は「フォルクスワーゲンは効率化プログラムを開始しており、これが人件費を含めあらゆる分野に影響している」としたが、詳細な説明は控えた。 VWの議決権株式の過半数を握るポルシェ家のウォルフガング・ポルシェ氏は今週、フォルクスワーゲンは排ガス不正問題で危機に直面しており、人員を削減しなければならないかもしれないと述べていた。 関連記事 VW米国トップのホーン氏が辞任 米司法省、VW排ガス不正で税法違反も視野に VW排ガス不正、品質担当幹部が前CEOに警告 VW、延期した決算発表で何を明らかにするか http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NA307_0310vw_M_20160310141151.jpg スイス中銀、ECB緩和で為替介入強化か 利下げないとの見方
[チューリヒ 10日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)が予想以上の追加緩和に踏み切ったことで、スイス中銀の対応が注目されている。エコノミストらは、スイス中銀がフラン高を抑制するための介入を強化する可能性があると指摘しているが、17日の政策会合で利下げに動く可能性は低いとの見方が大勢だ。 クレディ・スイスのエコノミスト、マクシム・ボトロン氏は「スイス中銀は来週、中銀預金金利をマイナス0.75%に据え置くだろう」と話す。ただ、外為市場での介入を強化する可能性はあると見ている。 スイス中銀は10日のECBの決定についてコメントしていない。 UBSのエコノミスト、アレッサンドロ・ビー氏は「結局、スイス中銀にとって重要なのはフランの動きだ」と指摘。「フランが上昇すれば、スイス中銀に圧力がかかる。介入でフラン高を抑制できれば、現在のLIBOR誘導目標(主要政策金利)を据え置くはずだ」と述べた。 実際、スイス中銀は10日、すでに介入を実施した、との指摘もある。ユーロはECBの緩和発表直後こそ、対スイスフランで急落したが、その後は値を戻し、1時間もすると緩和前の水準よりも上昇した。 http://jp.reuters.com/article/swiss-snb-idJPKCN0WD02H Column | 2016年 03月 11日 08:06 JST 関連トピックス: トップニュース コラム:「ドラギ・マジック」復活でも見逃せない懸念
Swaha Pattanaik and Neil Unmack [ロンドン 10日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の「マジック」が復活した。昨年12月の政策措置は投資家の期待に届かなかったかもしれないが、今回は思い切った追加緩和のパッケージを打ち出した。問題は、これによってもなお物価を押し上げられない一方、過剰なリスクテークを助長してしまう恐れが出てきたことだ。 ECBが毎月の債券買い入れの規模を800億ユーロに増額し、買い入れ対象に銀行以外の事業会社の投資適格級ユーロ建て債券を加えると発表すると、株式や債券の価格が上昇し、社債インデックスはタイト化する場面があった。6月からは期間4年の貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO2)も実施され、一部の銀行には今回マイナス0.4%まで下げられた中銀預金金利が適用される可能性がある。 ECBにとって社債の買い入れは、他の中央銀行よりずっと保守的だった先の金融危機時の姿勢からきっぱりと決別することを意味する。だがこれ以外にもいくつかの「裏ワザ」が施されている。 1つ目は、銀行債はなお買い入れ対象になっていないものの、ドラギ総裁は間接的に銀行の借り入れコストを下げる援護射撃を繰り出していることだ。つまりECBの買い入れで社債利回りが低下すれば、投資家は相対的に利回りが高くなる銀行債や銀行の劣後債に向かう。 2つ目として、長期資金供給オペにマイナス金利を適用すれば、事実上はECBがお金を借りる側の銀行に手数料を支払うことになる点が挙げられる。それによってマイナス金利拡大に伴う利ざや縮小で銀行が受ける打撃が軽減されるだろう。 株式市場でユーロストックス銀行株指数が全般をアウトパフォームしたり、iトラックスシニア金融債指数がタイト化したのもうなずける。 だがこうした明るい面があっても、もっと大きな暗雲から目をそらすことはできない。ユーロ圏の物価上昇率が過去の金融緩和に大きな反応を示さなかった点を考えれば、今回の措置が物価を上向かせる力があるかどうかは分からない。それだけでなくドラギ総裁は投資家に対して、社債を買う際には市場や個別銘柄を取り巻く基礎的な条件を無視しても良いという新たなお墨付きを与えてしまった。 ECBの緩和局面が最終的に幕を閉じた時点で、自らが後押ししている過剰なリスクテークがより大きな負の遺産となってしまいかねない。 ●背景となるニュース *ECBは10日の理事会で、毎月の債券買い入れ額を600億ユーロから800億ユーロに増やし、買い入れ対象に銀行以外の事業会社の投資適格級ユーロ建て債を含めると発表した。 *ECBは中銀預金金利を10ベーシスポイント(bp)引き下げてマイナス0.4%としたほか、主要政策金利のリファイナンス金利を0.05%からゼロに下げ、新たに期間4年のTLTRO2を実施することも明らかにした。 http://jp.reuters.com/article/ecb-policy-breakingviews-idJPKCN0WC2W3?sp=true 3月のECB理事会、5つのポイント By PAUL HANNON 2016 年 3 月 11 日 09:02 JST
欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は10日、昨年12月の政策発表に対する市場の反応が鈍かったことを踏まえ、最新の刺激策パッケージの発表では衝撃と畏怖を与える作戦に出た。ECBは従来、政策を2段階に分けて明らかにしていたが、時間をかけて不備や矛盾を探し出すことに慣れている市場参加者に最大限の影響を与えるため、今回は6つの措置を矢継ぎ早に打ち出した。ドラギ総裁は記者会見にも強気ムードで臨み、このパッケージの幅と規模をもってすれば、インフレ目標の達成に向けたECBの意志、そして中央銀行全般の政策が引き続き有効かどうかについての懸念は払しょくされるはずだと断言した。だがドラギ総裁が追加利下げの可能性は低いとの見方を示したことを受け、ユーロは会見中からすでに下げ幅を縮めた。以下に、盛りだくさんとなったこの日のECBの動きから5つの注目点をまとめる。 1.第一の矢 ドラギ総裁は、今回発表した政策パッケージは大まかに2つの種類に分けられ、双方から多大な「シナジー」効果が期待できるとした。1つ目は「一般的な緩和」で預金金利のマイナス0.3%からマイナス0.4%への引き下げをはじめとする3つの政策金利の引き下げが含まれる。もう1つは債券買い入れ措置の月額600億ユーロから800億ユーロ(約10兆円)への拡大で、非金融企業の社債を買い入れ対象に加えるほか、欧州機関や開発金融機関が発行した債券の上限を引き上げることで可能にする。また、金利を「長期にわたり」低水準に維持するとのフォワードガイダンス(先行きの手掛かり)も盛り込まれた。 2.第二の矢 これには企業向け融資への波及を狙い、銀行に対して低金利の長期貸し出しを行うプログラムが含まれる。投資支出や雇用を促進するため、企業への低金利融資枠を拡大することが主な目的である。 3.空砲は放たず 12月に打ち出した措置が弱いとみられたことは、ECBにとって明らかに傷となっている。一部では理事会がインフレ目標の達成に向けて可能な限りの手段を尽くす意志がないことが裏付けられたとの見方も出ていたが、ドラギ総裁は、新政策パッケージはこうした見解を明確に否定するものだと主張した。また、中銀のインフレ押し上げ能力に関して湧き上がっている疑念にも同様に答えたとし、「われわれは弾切れに陥ってはいないことを示した」と述べた。 4.だが疑念は晴れず ECBの発表直後は株価が急騰し、ユーロが下落するなど、市場はECBが望んだ通りのポジティブな反応を示した。だがドラギ総裁がマイナス金利の限界について言及し、これ以上の利下げが難しい可能性を示唆すると、ECBは他の措置を通して刺激を与えることができると主張したにもかかわらず、ユーロは下げ幅を縮めた。 ユーロ・ドル相場 ENLARGE ユーロ・ドル相場 5.デフレの脅威 ドラギ総裁はECBが2014年半ばから連続して刺激措置を実施してこなければ、ユーロ圏は「破壊的なデフレ」に見舞われていたはずだと述べ、ECBをはじめ中銀全般をさらに擁護した。何も対応しないという選択肢に対して最も厳しい警告を発した格好となった。加えて、ユーロ圏が「驚異的ではないとはいえ成長回復」の過程にあることは、中銀政策が依然として効果を発揮している証拠だと語った。 関連記事 ECB、追加緩和で6つの措置−政策金利0% 消費者物価の下落「定着」防ぐ=ドラギECB総裁 ドラギECB総裁、市場の信頼を取り戻せるか 迷う投資家、リスク資産も安全資産も「買い」 ECB理事会、低インフレ対策で試練に直面か http://si.wsj.net/public/resources/images/BN-NA057_draghi_M_20160310092538.jpg
Business | 2016年 03月 11日 07:46 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス ユーロ全面高、ECB総裁「追加利下げ想定せず」=NY市場 [ニューヨーク 10日 ロイター] - 終盤のニューヨーク外為市場では、ユーロが対ドルで約3週間ぶり高値を付けた。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が理事会後の記者会見で、一段の利下げは予想していないと発言したことでユーロが主要通貨に対して大きく買われた。
ECBはこの日の理事会で、予想外に主要政策金利のリファイナンス金利を0.05%から0.00%へ、上限金利の限界貸出金利を0.30%から0.25%へ引き下げた。また市場の予想通り、下限金利の中銀預金金利をマイナス0.30%からマイナス0.40%へそれぞれ引き下げた。 一方、資産買い入れ額を月額600億ユーロから800億ユーロに拡大するとともに、資産買い入れ対象に社債を含めることも決定した。 これらを受けてユーロ/ドルEUR=は1.6%急落、約6週間ぶり安値となる1.0823ドルを付けた。その後ドラギ総裁の発言で、ユーロ圏債券利回りの上昇と相まって約3週間ぶり高値の1.1217ドルに大幅反発した。 ユーロ/ドルの終盤は、1.1180ドル近辺での取引となっている。 コモンウェルス・フォーリン・エクスチェンジ(ワシントン)のチーフ・マーケット・アナリスト、オマー・エシナー氏は「ドラギ総裁の、追加利下げは見込まないという発言で、市場は急いでユーロ売り持ちポジションの買い戻しを行っているところだ」と述べた。 この日のユーロ/ドルの取引レンジは4%近くあり、これは昨年12月3日に記録した4.4%以来の大きさとなった。当時、ECBは預金金利引き下げを行ったが、引き下げ幅は10ベーシスポイント(bp)で、市場予想に届かなかった。 ユーロはその他主要通貨に対しても買われた。ユーロ/円EURJPY=は約3週間ぶり高値に上昇後、終盤は1.5%高の126.59円。ユーロ/ポンドEURGBP=、ユーロ/スイスフランEURCHF=もそれぞれ上昇した。 市場はユーロ全面高で取引を終えたが、前出のエシナー氏は「市場のほとぼりが冷めれば、ユーロ安は続くだろう。なぜならECBが打ち出した一連の政策は市場予想を上回っており、きょうの理事会に向けた市場のユーロ売り持ち高は以前のいくつかの理事会前のそれよりはずっと少なかったからだ」との見方を示した。 ドラギ総裁は追加利下げを示唆しなかったものの、金利は長期間にわたって低い水準に留まるだろうと述べている。 バンク・オブ・アメリカ・メリル・リンチ(ニューヨーク)でG10FXストラテジストを務めるイアン・ゴードン氏は「きょうユーロが最初下落してその後反発したのは、市場がドラギ発言に飛びついただけだということを示している」と語った。 同氏は、市場のECB当局者への政策期待が高いことを踏まえながら、「きょうの決定とその後の動きは、リスク選好地合いの支援要因ではあるが、中銀の政策への限界も示している」と指摘した。 ドル/円 NY時間終値 113.11/113.14 前営業日終値 113.35 ユーロ/ドル NY時間終値 1.1179/1.1184 前営業日終値 1.1003 http://jp.reuters.com/article/ny-forex-idJPKCN0WC2TK?sp=true Business | 2016年 03月 11日 10:39 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 株価乱高下や為替、企業マインドに影響=石原経済再生相 [東京 11日 ロイター] - 石原伸晃経済再生担当相は11日午前の閣議後記者会見で、同日発表の法人企業景気予測調査で大企業の景況感が悪化したことについて「株価の乱高下や為替などが企業マインドに影響している」との見解を示した。 欧州中央銀行(ECB)が決めた追加金融緩和については「世界経済の影響を受けて不確実性が高まり、物価に対する押し下げリスクが存在するため、巷間の予想を上回る追加的な金融政策を取ったと認識している」と評価した。 経済財政諮問会議では、消費喚起策として「2月や8月など商業活動が悪くなる時期の消費拡大イベントの提案が民間議員からあった。経団連の榊原定征会長からはブラックフライデーを実施してはとの、かなり踏み込んだ発言があった」と紹介し、政府として支援する姿勢を示した。 (竹本能文) http://jp.reuters.com/article/ishihara-idJPKCN0WD05E
Business | 2016年 03月 11日 09:39 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス 焦点:政府内に景気失速懸念、10兆円景気対策の声も 財務省は慎重 [東京 11日 ロイター] - 年明け以降の世界的な市場変動や国内経済における消費低迷に対し、政府部内で景気失速への懸念が急速に強まっている。一部の経済官庁関係者や安倍晋三首相の周辺では、10兆円規模の経済対策が必要との声が出てきた。 ただ、財務省を中心に安易な財政出動は、財政への信認失墜につながると反対する意見も少なくなく、安倍首相の判断が注目される。 <増税延期と景気対策の組み合わせ案も浮上> 複数の政府関係者によると、「大規模な経済対策が必要」との認識が広がりをみせている。2015年末から懸念され出した消費の低迷は、16年1月以降も明確な回復の兆しがみえず、世界的な需要減退を背景に、企業収益の先行きも不透明感が濃くなっている。 2月26、27日に上海で開催された20カ国・地域(G20)財務相・中銀総裁会議では「政策総動員」が打ち出され、余力のある国による財政出動に道が開かれた。 政府部内では、5月の伊勢志摩サミット(主要7カ国首脳会議)でも世界経済動向がメーンテーマになり、財政出動の可能性をめぐって活発な議論が展開されそうだとの見通しが浮上している。 一方、日銀のマイナス金利政策導入後、10年最長期国債(長期金利)JP10YTN=JBTCがマイナス圏まで低下。先行きの国債利払い費用が大幅に低減出来ると試算できるようになり、安倍首相の周辺では、この環境を利用して、積極的な財政出動を可能にする仕組みを作るべきだとの声も出ている。 こうした中で政府関係者の1人は「景気対策の規模は、5兆円では意味がない。10兆円ぐらいあったほうがいい」と述べている。 別の政府関係者は「10兆円規模の大規模な景気対策が必要との私案が、安倍首相の周辺や経済官庁の官僚からも複数から浮上している」と語る。 具体的には、何らかの給付措置や公共事業、所得税減税のほか、現行8%の消費税を引き下げる案なども効果的だとする意見が、安倍首相周辺から浮上している。 また、最も強硬な財政出動論者からは、消費増税延期と大型の経済対策をセットにするべきだとの意見も出ている。しかし、このケースでは、最大15兆円規模の財政出動になるため、実現可能性は低いとの声が多い。 こうした対策の中身と密接に関連するのが、財源問題だ。これまでのところ、1)自然増収だけを財源にする、2)赤字国債も発行する、3)外為特別会計など一部の特別会計から一時的に資金を融通する──などがアイデアとして挙がっている。 一方、財務省だけでなく、他の経済官庁でも財政再建の基本方針を放棄したかのような政策スタンスは、日本国債の格下げリスクを増大させ、企業や金融機関のドル調達コストを上昇させ、企業部門の負担を増やしてしまい、景気拡大の障害にもなりかねないという批判が出ている。 また、安倍首相が繰り返している消費増税の延期条件であるリーマンショック並みの経済危機や、大規模な自然災害の発生との関連では「今はリーマンショック時や大震災のような非常時とは言い難い。しかも消費喚起策といっても効果的な策はない」(さらに別の政府関係者)という指摘も出ている。 3月中は16年度予算案を審議中で、景気対策や消費増税をめぐる議論を表だってしにくい局面。 だが、予算案成立後は、このような「制約要因」が消滅する。5月中旬には2016年1─3月期国内総生産(GDP)が発表され、マイナス成長なら2期連続となって「景気後退」ではないかとの懸念が噴出しかねない。安倍首相は経済成長と財政再建という難しい政策判断を迫れそうだ。 (中川泉 竹本能文 編集:田巻一彦) http://jp.reuters.com/article/focus-economic-package-idJPKCN0WD019
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