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東芝解体へのカウントダウン 〜ついに東京地検特捜部が粉飾事件の捜査に動き出す!
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48083
2016年03月03日(木) 伊藤博敏「ニュースの深層」 現代ビジネス
■内部告発が相次ぎ、特捜が動いた
日本が世界に誇った電機業界が崩壊している。
東芝は、2016年3月期決算で7100億円の赤字を計上、1万人のリストラに踏み切る。シャープは、台湾の15兆円企業「鴻海精密工業」への身売りを決めた。そんな惨状に追い打ちをかけるように、東京地検特捜部と証券取引等監視委員会による東芝粉飾決算事件の捜査が始まる。
特捜部は、2月29日、東北地方の高速道路復旧工事談合に絡んだ舗装10社11人を在宅起訴。次のターゲットは東芝粉飾事件となる。
売上高6兆円の大企業だけに、当初、証券監視委は慎重な姿勢だった。2000億円の利益水増しだが、「赤字」を「黒字」とする赤黒転換の悪質さはない。従って、当初は、行政処分が適当だとして課徴金処分に踏み切り、約73億円の納付命令を出した。
本来ならこれで終結だが、東芝からの内部告発が相次ぎ、証券監視委の独自調査のなかでも、歴代経営陣が不正につながることを承知で利益のかさ上げをしていたことが判明した。
これを検察への告発を前提とした「特別調査課案件」としたのは、昨年7月、証券監視委事務局長に就任した佐々木清隆氏。特別調査課の課長時代、カネボウやライブドアの大型粉飾事件を特捜部とともに積極的に摘発。上場企業に色濃く残る「粉飾の土壌」に、改めて切り込む覚悟を固めたという。
それを後押ししたのが佐渡賢一委員長だ。年内に3期9年の任期を終える佐渡氏は、「課徴金処分でスピーディな処理」は確立したものの、その分、告発案件が減って、証券監視委は「市場の番人の迫力が薄れた」と批判されることが増えた。
佐渡氏は、“汚名”を挽回するように、東芝事件の経過を聞き、「やれる」と、自ら判断を下したという。
■個人株主も決起
東芝経営陣に対する逆風は、捜査・調査機関だけではない。身から出たさびとはいえ、後始末を求める外部からの波状攻撃が止まない。
粉飾決算で株価が下がり損害を受けたとして、関西地方の個人株主45人が東芝と歴代3社長を含む旧経営陣5人に計約1億7300万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が2月19日、大阪地裁であった。
東芝と旧経営陣は責任を否定し、請求の棄却を求めたが、同様の訴訟は東京、福岡両地裁でも個人株主計56人が計約3億3500万円の損害賠償を求めて始まっており、訴訟の長期化と泥沼化は避けられない。
500円台を維持していた東芝株は、粉飾決算発覚後に急落、昨年11月には300円台に下がり、その後も、「膿は出し切っていない」とみた投資家は、安定株と言われた同社株を売り続け、今年2月には155円まで下落。その後、174円(3月1日終値)まで持ち直したが、それでも回復にほど遠い。
捜査着手は、株価や再生に悪影響を与えよう。だが、特捜部や証券監視委が、そうした日本経済や産業界に及ぼす影響を考えず、官邸や経産省などへの根回しなしに捜査を行うとは思えない。
検察関係者が説明する。
「東芝にはエネルギー政策に深く関与する原子力部門があり、日本経済の根幹でもある半導体部門があり、これからの成長分野である医療機器部門がある。それらを、どう処理するかの道筋がついたところで着手が決まった」
東芝が、最初に処理を決めたのは医療機器部門だった。画像診断装置などを手がける100%子会社の東芝メディカルシステムズの売却を決断した。1月29日締め切りの同社の入札には、キヤノンなど複数の大手が名乗りを上げ、激しい争奪戦を繰り広げている。最終的な売却額は5千億円とも試算され、市場からの高評価がうかがえる。
東芝のアキレス腱のひとつに、子会社の原子力大手「ウエスチングハウス(WH)」の「のれん代償却」がある。
原発事故以降、WHの資産価値が急落、WH自体が1600億円の減損処理をしていたのに、親会社の東芝がそうしなかったのは、資金手当てのメドがつかなかったためだ。東芝メディカルの売却でWHの価値を見直し、東芝は柱の原子力部門を維持できる。
■本格着手は近い
捜査着手の背景に、原子力部門の見通しが立ったことがあげられており、であれば、この部門の粉飾を問う可能性は薄いだろう。
それは同時に、もうひとつの柱である半導体での立件をうかがわせる。歴代経営陣は、パソコン事業などでの不正の仕組みを認識したうえで、利益のかさ上げを求めていたのではないか。
既に、第三者委員会の報告書には、西田厚聰、佐々木則夫、田中久雄の3元社長が、「チャレンジ」の名のもと、部下に強く迫った様子が描かれている。
「3日で120億円の利益をなんとかしろ」
「事業を死守したいなら最低、100億円は(利益を)出せ」
「会社が苦しい時に、(不正会計を)ノーマルにするのは良くない」
こうした恫喝が無理な益出しにつながったとしても、問題はそれをチェックする体制がなかったことだろう。社外取締役、監査役、監査法人も同罪だ。
なかでも指摘されているのは、オリンパス事件に関与し、批判された新日本監査法人が東芝でも監査を担当していたこと。課徴金命令に加えて、新規契約停止の行政処分を受けた。だが、東芝同様、それだけでは終わらず、「粉飾の土壌」を企業とともに築いた責任を問われる。
「粉飾の土壌」が、東芝に固有のものだと思っている人はいない。商社、鉄鋼、金融、流通の著名な大企業で、「不良債権の飛ばしや益出しのための利益の水増しを行っている」と、指摘されている企業は少なくない。
その状況を、内部告発などを通じて知悉しているのが証券監視委で、東芝は、一罰百戒のまたとないケースであり、証券監視委はいま、人と時を得た。既に、任意での東芝関係者からの事情聴取は始まっており、特捜部と証券監視委が一体となった本格着手も近そうだ。
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