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格差拡大、成長に悪影響?:IMFやOECDも「格差是正は経済成長を阻害」説の見直しへ
http://www.asyura2.com/16/hasan106/msg/147.html
投稿者 あっしら 日時 2016 年 2 月 29 日 05:11:44: Mo7ApAlflbQ6s gqCCwYK1guc
 


※本文投稿先

「格差拡大、成長に悪影響?:「格差是正は経済成長を阻害」説の見直し、安倍政権も民主党的所得再分配強化へと舵取り」
http://www.asyura2.com/16/senkyo202/msg/102.html


 

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1. 2016年2月29日 16:57:16 : OO6Zlan35k : ScYwLWGZkzE[324]

2016年2月29日 山田 久 [日本総合研究所・調査部長・チーフエコノミスト]
今春闘で賃金抑制なら日本の成長はない
正念場となる「官製春闘」3年目
経済環境は厳しいが賃上げ余力はある
賃金上昇の実現が今後の日本経済の鍵を握る
 日本経済の先行きに暗雲が立ち込めている。年初来、世界的な株安が進み、日銀のマイナス金利導入を含めて主要国中央銀行が対応に乗り出したにもかかわらず、不安定な動きが続く。円相場も想定外の1ドル=110円台前半での推移となり、企業業績への悪化懸念が高まっている。
 そうしたなか、今年はいわゆる「官製春闘」の3年目となるが、これまでの賃上げの流れが続くかどうかの正念場の年となる。
 春闘の在り方をめぐっては、昨年、一昨年と、政府から賃上げ要請があったことに対して、「労使自治が大原則である賃金決定に政府が介入するのはいかがなものか」との批判の声は多い。原則論としては全くその通りである。
 だが、平成バブル崩壊以降、景気低迷の長期化で労使共に防衛姿勢が染みついており、元来雇用維持を優先する労使関係のもとで、粗利益の増加を賃上げに還元しようという力が極めて弱くなっている。このところ見られる企業の手元流動性の積み上がりはその表れだ。とりわけ、足元の円高進行で収益下振れの可能性が高まるなか、経営サイドの慎重スタンスの強まりは必至である。
 一方、労働組合も今年の賃上げ要求は控えめである。連合の要求水準はベースアップについて昨年は「2%以上」としていたものを今年は「2%程度」とし、そもそも要求水準が昨年よりも低い業界もある。こうした状況で完全に労使自治に任せれば、ようやく生まれ始めた賃上げの流れが頓挫する可能性を排除できない。
 ならば、最終的には個別労使が決めるのは言うまでもないが、合成の誤謬を回避するために、政府が賃上げに向けて背中を押すことは「必要悪」といえないか。
 これに対しては、企業業績を無視した賃上げは収益を悪化させてかえって景気の腰を折るとの反論がありうる。しかし、労働分配率の水準を見れば、大手に関しては1980年代平均水準よりも相当低く、中小では90年代半ば以降で最も低い水準まで低下している(図表1)。損益分岐点比率の大幅低下に示されるように(図表2)、リストラクチャリングの継続で企業体質は大幅に改善している。景気減速で利益が小幅減益になっても収益水準は高く、十分支払い能力のある企業が少なくないと考えられる。
◆図表1:企業規模別労働分配率の推移
(資料)財務省「法人企業統計」
(注)後方4四半期移動平均値。
◆図表2:企業規模別損益分岐点比率の推移
(資料)財務省「法人企業統計」
(注)後方4四半期移動平均値。
2016年春闘の賃上げ率が
日本の行く末を左右する
 中長期的な展望に立ったとき、アベノミクスの成否、ひいては日本の行く末を大きく左右するという点で、2016年の春闘賃上げ率は極めて重要である。
 昨年秋、アベノミクスが第2ステージに移行したのは、拡張的な金融・財政政策による景気浮揚を主眼とした第1ステージの限界が、露呈してきたからであった。2013年度こそ景気が予想外の回復傾向を示したが、これは円安・株高でマインドが好転し、それまでの先送り・抑制されていた需要が顕在化した面が大きかった。2014年度入り後は景気の停滞感が漂うが、それは消費増税の影響が長引いているからではなく、そもそも潜在成長率が低下していたことが明らかになってきたためである。
 その意味で、より成長戦略に焦点を当てた「強い経済」、人口減少への歯止めを意識した「子育て支援」、さらには国民生活の安心の基礎である「社会保障」を、新たな3つの柱とする第2ステージに移行したことは適切な判断であったといえる。
 そして、このアベノミクスの新3本の矢の鍵を握るのは、賃金が持続的な上昇トレンドに乗るか否かである。外需主導成長が限界に突き当たるなか、内需主導成長の柱となる個人消費の拡大は賃金増加無しには達成できない。また、子育て支援、社会保障に必要な財源の主な原資も賃金に求めざるを得ないからである。
 90年代末以降、ベア・ゼロが常態化し、主要企業の春闘賃上げ率(定昇+ベア)は1%台が定着していた。これが「官製春闘」によってベアが復活し、2年連続で賃上げ率2%台を回復しており、望ましい流れが生まれつつある。この文脈では、賃上げで経済好循環を進める流れを継続させる最低ラインとして、主要企業の2016年春闘賃上げ率は、小幅でもベアの継続を象徴する2%は確保する必要があろう。
 さらに、内需主導の経済好循環の形成の観点からすれば、本来的には、賃上げ率は小幅でも前年を上回る結果が望ましい。加えて、中小企業従業員や非正規労働者にも賃上げの動きが昨年以上に広がることが望まれる。
 とはいえ、先行き不透明感が極めて強い状況下、とりわけベースアップを決断するのは容易なことではない。それは経営サイドのみの発想ではなく、労働サイドにも、企業体力が落ちれば将来的にかえって雇用が失われるリスクを勘案して慎重になる傾向もあろう。
 しかし、そうした発想のみが強まれば縮小均衡をもたらす結果になりかねない。それは、2000年代半ばの局面からの教訓でもある。
戦略なきコスト抑制ではジリ貧となる
賃上げこそが事業改革・生産性向上を促す
 2000年代半ば、米国を主とする海外景気の好調と円安により、上場企業は史上最高益を記録し、労働分配率も大幅に低下した。しかし、賃金はほとんど伸びなかった。結果、内需のバッファーがなかったために、その後のリーマンショック後、欧米と異なり金融セクターが健全であったにもかかわらず、先進国の中でも特に急激な景気後退を余儀なくされた。その後、大幅な円高の進行もあって海外生産シフトが進み、日本の成長力の大幅低下につながり、デフレはいっそう深刻化したのである。
 現状では過去のリストラクチャリングの成果が顕在化するもと、原油安の恩恵も加わって、企業の収益水準は高い。世界情勢の不安定化の底流には中国が構造調整過程に入ったことがあり、海外景気の低迷や不安定な市場環境は長期化すると予想される。そうした状況で、当面の利益確保を優先して戦略なきコスト抑制を続ければ、個別企業はジリ貧を余儀なくされ、マクロ的にも持続的な景気後退を招くことになろう。
 今が踏ん張りどころである。客観的に見れば日本経済の国内環境はさほど悪くない。すでに指摘したとおり、原油安が企業収益を底上げしているほか、円安を契機に爆発的に増えたインバウンド消費が、新たなビジネスチャンスを生んでいる。日本製品の良さを生で知った外国人はその後も買い続け、インバウンド関連商品の輸出が増えてきている。考えてみれば、観光は外国人に生の日本を体験してもらい、日本の製品・サービスを売り込む絶好のチャンスといえる。
 また、総人口は減少しても高齢者数はしばらく増え続け、ヘルスケア関連のニーズは拡大し、介護ロボットやICTを使った見守りシステムなど、新たな商品・サービスが次々に生まれている。フィンテックに代表されるように、サイバー技術の飛躍的発展が新規ビジネスの機会を生み出している。目を凝らしてみれば、これまでになく、様々なビジネスチャンスが生まれてきているのである。
 一方、人手不足がジリジリと深刻化しており、限られた人員の有効活用が経営の重要課題になっていることに目を向けるべきである。とりわけリーマンショック以降、付加価値生産性が低下しており、収益事業への事業ポートフォリオの組み替えが求められている状況である。不採算事業・衰退事業を整理し、収益事業・新規事業に人員をシフトさせることを検討すべき局面といえよう。
 このように考えれば、単に再び賃金抑制モードに戻るのではなく、事業構造転換への取り組みを宣言し、賃上げスタンスを維持することで従業員のモチベーションを喚起しつつ、不採算事業を整理して働き手を収益事業にシフトさせていくべきであろう。外部環境が悪化して危機感の高まる状況こそ、量より質の経営への転換を行うチャンスだと捉えるべきではないか。
提言1:縮小均衡から脱出するため
ベア1%の数年内達成を目標に妥結せよ
 以上の認識に立って、2016年春季労使交渉の課題として、3点を提言したい。
 第1は、ベアの1%程度の数年以内達成を目標に妥結を目指すことだ。縮小均衡からの脱出には、「生産性向上の後にそれに見合った賃上げを行う」という発想ではなく、「拡大均衡が実現している経済状況に整合的な賃上げを行い、それをきっかけに持続的賃上げを可能とする事業構造の構築につなげる」という発想が必要になる。差し当たり名目成長率2%の安定的な達成を目指すとすれば、理屈の上では、経済全体の平均で見てベア相当分を1%程度で妥結することが望ましい(注)。
 もっとも、昨年実績は主要企業ベースで0.6%程度であり、業績悪化懸念の強い今年に1%実現は現実には難しいだろう。しかし、「数年以内の1%達成」で労使が国民経済レベルで合意し、その実現に向けて主要企業が率先して取り組む姿勢を示すことが望まれる。
 なお、ここでいう賃上げ率(ベア相当分)は、非正規も含めた全従業員の基本給の平均増加率であり、正確には「ファンドアップ」とでもいうべきものである。1%のファンドアップを確保したうえで、必ずしも労働者に一律に配分するのではなく、(1)就業形態間の賃金格差是正、(2)物価上昇による賃金目減り分の底上げ、(3)賃金カーブのゆがみの是正、といった要素につき、個別労使が交渉して配分を決めるべきである。
(注)労働分配率を一定とすれば、名目成長率2%と整合的な雇用者報酬(人件費総額)の伸び率は同じ2%。一人当たり平均賃金伸び率を、雇用者報酬伸び率から雇用者数伸び率を控除して計算すると、2%−0.25%=1.75%。ここで、近年、パート比率の上昇によって平均賃金が押し下げられていることを踏まえ、今後もその状況が続くとすれば、(定昇を除く)労働者個人ベースで見た賃金伸び率(正社員・非正社員問わず)は、パート比率上昇の下押し作用分を上乗せして、1.75%+0.51%=2.3%。さらに、近年、現金給与総額は所定内給与の2.14倍程度伸びている(所定外手当や一時金の影響)ことからすれば、名目成長率2%達成に整合的なベア相当分は、2.3%÷2.14%=1.1%。
提言2:生き残りのために労使が
未来志向で成長戦略を共有せよ
 第2は、未来志向で労使間で成長戦略を共有することだ。既に見た通り、人手不足で人材の有効活用が必要になるなか、新たなビジネスチャンスも生まれつつある。特に不確実な環境下、企業が生き残るには新たな成長戦略を描き、不採算事業・衰退事業を整理し、収益事業・新規事業に人員をシフトしていくことが不可欠になる。それには従業員が新たな能力の習得やスキル転換が求められ、働き手サイドの主体的な取り組みが前提になる。
 その意味で、労使間で成長戦略のビジョンを共有することが、数年以内のベア1%達成目標の設定と表裏一体で進めなければならない。
提言3:労働市場改革を労使間で
自主的に議論し政府に要請せよ
 第3に、労使間で労働市場改革を自主的に議論し、政府に要請を行うことである。労働人口減少時代に生産性向上を実現するには、限られた人的資源の効率的活用に向けて、既存事業から新規事業への労働力の移動が従来以上に必要になる。
 それにはまず一企業内での労働移動が優先されるべきであるが、かつてのように新規事業拡大を既存事業の縮小に優先する余裕がなくなるなか、企業を跨ぐ労働移動を増やす必要性が高まっている。その円滑化のためには、企業を跨ぐ形での、基本スキルの共有化や人的ネットワークの形成が必要であり、ジョブマッチング機能の強化が求められる。
 まずは労使間での自主的な取り組みが始まり、その実現に向けて政府に要請を行う形で、政労使会議を再開することが望まれる。

http://diamond.jp/articles/-/87025


 

Business | 2016年 02月 29日 16:25 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
アングル:政府内に財政拡大の声、G20追い風 子育て支援など焦点
[東京 29日 ロイター] - 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の声明文に「政策総動員」が盛り込まれ、余力のある国の財政出動が望ましいとのメッセージが出た。G20と歩調を合わせるかのように、日本政府内にはG20など国際的な動向を背景に、財政拡大を進めるべきとの声が広がっている。

具体的には今春をめどに公表予定である税収増を活用した子育て支援を中心に、増税対策も含めた相当規模の経済対策を打ち出す準備を進めている。

<G20声明利用の思惑>

G20声明に「あらゆる政策動員」が明記された。すでに政府部内では経済官庁を中心に「国際協調」への貢献を旗印に早期に実現可能な政策を実行するべきとの方向で動き始めていた。

複数の関係筋によると、安倍晋三首相の周辺では、今回のG20における討議の流れを活用して、抵抗の強い政策の追い風にしようと布石を打っていたという。

実際、安倍首相は2月18日の経済財政諮問会議で「G7諸国等との国際連携を深め、世界経済のさらなる成長と市場の安定を図っていく」と発言。その後の講演などにおいても同様の発言を繰り返すようになっていた。

このテーマに関連し、諮問会議では伊藤元重・東京大学教授など民間議員が、中国などの新興国が世界経済をけん引する構造が変化したため先進国が連携する必要性を指摘した。

高橋進・日本総研理事長も諮問会議で、G20だけでなく、G7などで日本として必要ならば機動的に対応するというメッセージを出すことや成長戦略強化、内需体質強じん化への発信を首相に迫った。

<歳出目安撤廃の声>

政府内に財政拡張を指示する声が広がり出した背景には、2つの要因がある。1つは年初来の円高・株安進展だ。足元で日経平均.N225は1万6000円台を回復したものの、ドル/円JPY=EBSは企業の想定レートの115円を下回って推移。企業や個人のマインドを冷やしている。

また、昨年来の原油安や円安で膨らんだ企業収益が、賃上げから個人消費の拡大に波及し外需が弱くなっても着実に成長を果たす好循環に入らず、一部の政府関係者は懸念を深めている。

そこで、政府内では年明けから財政出動に向けた水面下での検討が始まった。まず、見直しのターゲットになったのが、「一般歳出水準の目安」だ。

昨年6月に決まった「経済・財政再生計画」で「これまで3年間の実質的な総額の増加が1.6兆円程度となっていること、経済物価動向等を踏まえて、その基調を18年度まで継続させていく」ことが記された。

複数の政府関係者は「歳出目安に縛られていては何の対策も打てない」とし、新たな政策展開のため、最低限守るべき財政の目安として、歳出増加枠ではなく20年度基礎的財政収支の黒字化に絞る方針が浮上した。

歳出の足かせをはずせば、経済官庁を中心にGDP600兆円経済に向けた消費喚起策や賃金・所得増加対策、「一億総活躍社会実現」のための少子化対策・介護離職ゼロを目指した政策に集中し、財政支出を拡大する方策が議論しやすくなる。

必要な財源は税収増などで賄い、その際に年度1.6兆円の歳出目安は取り払うシナリオが水面下で議論されている。

<16年度補正、早くても秋>

ただ、こうした意見が政権内で広く受け入れられているわけではない。財務省のほか諮問会議の中からも「既存の歳出枠組みを崩してはならない」との意見も根強く、5月連休明けまでに財源をきちんと決めるべきとの意見も出ている。

また、与党内からは日程的に通常国会での16年度補正予算案の審議はあり得ないとの声も出ている。もしその見通し通りに展開するなら、日本政府の財政拡張の具体案は、夏の参院選後の臨時国会まで持ち越されることになる。

このシナリオでは、それまでに世界的な経済危機が発生すれば、金融政策で対応する以外に手段はないことになる。

世界経済の動向をにらみながら、政府・与党内で財政拡大の具体策検討が、春の到来とともに進みそうだ。

(中川泉 取材協力:梅川崇 編集:田巻一彦)
 
http://jp.reuters.com/article/g20-a-idJPKCN0W20NB


 

Business | 2016年 02月 29日 16:15 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
来年の消費増税、現段階で凍結・延期の考えない=安倍首相 [東京 29日 ロイター] - 安倍晋三首相は29日午後の衆院予算委員会で、来年4月に予定されている消費税率10%への引き上げについて「リーマンショック級、あるいは東日本大震災級の出来事がなければ、予定通り引き上げる」とし、「現在のところ、凍結あるいは延期する考えはない」と語った。また、衆院解散・総選挙についても「全く考えていない」と述べた。江田憲司委員(維新)への答弁。

(伊藤純夫)
http://jp.reuters.com/article/abe-t-idJPKCN0W20N5


 
Business | 2016年 02月 29日 16:13 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
G20は政策総動員を明記、その方向で各国が努力=日銀総裁

[東京 29日 ロイター] - 黒田東彦日銀総裁は29日午後の衆院予算委員会で、先週末に中国・上海で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の声明において、成長持続や市場安定に向けてすべての政策手段を用いると明記されたことを受け、「そうした方向で各国とも努力していくと思う」と語った。

年明け以降の市場混乱を踏まえ、G20ではその対応策が議論されたが、総裁は「すべての政策手段、金融・財政・構造政策、これを個別または総合的に用いるという明確なコミュニケ出した」と指摘。世界経済の成長維持・強化と市場の安定化に向け、各国が声明に沿った努力を行うとの見解を示した。

また、日本経済の持続成長には、物価2%目標の早期達成に加え、「民間の経済主体の前向きな動きを引き出し、日本経済の成長力を強化することが極めて重要」と強調。そのためには「構造改革、規制緩和が極めて重要」とし、政府による成長戦略の「着実な実行に期待している」と語った。

(伊藤純夫)
http://jp.reuters.com/article/g20-kuroda-idJPKCN0W20MX


 

 


 

2016年2月29日 丸山 俊(BNPパリバ証券日本株チーフストラテジスト)
国際協調に失敗すれば世界の金融市場に悪夢再来か
 年初から、地政学リスクの高まり、人民元ショックと原油安、先進国の物価低下懸念と米国景気減速懸念、日本銀行のマイナス金利政策導入、国内景気・企業業績下振れ、欧州金融機関の信用不安などで大荒れした相場は、短期的には下げ過ぎとの見方もあり、売り方の買い戻しによってひとまず落ち着きつつあるようだ。
 とはいえ、日経平均株価2万円を当然視していた市場の目線は大幅に切り下がり、日本株に対する買い意欲はかつてなく低下しているように思われる。
拡大する
 世界の金融市場が平静を取り戻し、リスクマネーが回帰するか否かは、日米欧中の4極が“政策協調”で一致団結できるかどうかにかかっている。
 中国経済の苦境は、過剰設備・過剰債務も一因だが、円安・ユーロ安・ドル独歩高によって、緩やかなドル・ペッグとなっている人民元が大幅に割高となり、国際競争力が失われたことが大きい。
 まず、中国は規制を強化して資本流出を回避すること。米国は拙速な2度目の利上げを回避すること、日欧は通貨安競争の火に油を注ぎかねないマイナス金利の一段の引き下げを封印することが求められている。
 国際協調態勢下で1985年のプラザ合意のように、協議によって大幅かつ1回限りの人民元切り下げで合意するべきであろう。
 現時点では「絵に描いた餅」のように見える国際協調だが、世界景気後退・信用収縮(懸念)が深刻化してくれば、政策手段が枯渇しつつある政策当局の間で、協調機運が高まってくるだろう。
 もっともそのためには、一段の資産価格下落といった大きな負のショックがないと、利害が交錯する国際政治の場で協調機運が生まれる可能性は低いとみてよい。
 国内経済に目を転じてみると、2015年10〜12月期に続いて、16年1〜3月期もマイナス成長となった場合、技術上、景気後退と判断される。
 さらに16年3月期本決算発表では、円高や消費低迷に伴う業績下振れ懸念や会社が発表する17年3月期の減益予想が、株価に一層の重しとなるだろう。
 5月に開催される伊勢志摩サミットは、主要国が政策協調で一致団結できるかが問われる場となるのではないか。
 アベノミクス(日銀)に対する信認が失われつつある日本は、マイナス金利の一段の引き下げ封印、大型補正予算等の財政出動、消費増税の先送りが選択肢となりそうだ。国際協調態勢を演出できれば、株式市場は安定に向かうと思われるが、国際協調に失敗した場合はさらなる悪夢が待っているように思われる。
(BNPパリバ証券日本株チーフストラテジスト 丸山 俊)

http://diamond.jp/articles/-/87046 

 
Business | 2016年 02月 29日 11:55 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
マイナス金利は双方合意、法的問題なし=黒田日銀総裁

[東京 29日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は29日午前の衆院予算委員会に出席し、マイナス金利政策が法的に問題はないと強調した。また個人向けの預金金利がマイナスになる可能性について「まったく考えていない」との見解を繰り返した。民主党の階猛委員への答弁。

階委員は、日銀法で日銀は金融機関の当座預金からマイナス金利の利息を取ることができるとは定めてないのでは、と質問。これに対して黒田総裁は「これまでの日銀と金融機関の取引でも、国債保管供給などは双方合意の上でマイナス金利で行われているものも存在している」と反論した。「当座預金へのマイナス金利適用についても、金融機関との契約上、利息の計算方法などについて明示の定めをおいた上で実施をしており、契約自由の原則に照らして法的に何ら問題ない」と説明した。

個人預金がマイナスになる可能性について「欧州諸国の例をみても金融機関の個人向け預金の金利がマイナスになるということには考えていない」と明言。金融機関が顧客との長期的な取引関係を考慮する点や、マイナス金利適用ならば「現金を保有する方が有利なため、個人向け預金をマイナスにすることの制約になる」との見解を示した。

金融実務に詳しい弁護士や学者でつくる日銀の私的組織である金融法委員会が「現在の合理的解釈によれば、金融機関が受け入れた預金にマイナス金利を適用することはできない」と判断していることも引用した。

(竹本能文)

http://jp.reuters.com/article/kuroda-b-idJPKCN0W2086


 

ECB、刺激策の意向伝達で綱渡り−2月のインフレ失速の公算
2016/02/29 15:37 JST

    (ブルームバーグ):欧州中央銀行(ECB)要人は向こう3日間、市場への意思伝達で危うい綱渡りを迫られそうだ。
29日発表のインフレ指標は物価が再び停滞もしくは下落を示す可能性が大きい中で、ECBが3月10日の政策委員会での追加刺激策を決める意向を公の場で伝える機会は、3日からのブラックアウト期間を前に残りわずかとなっている。そうした中、ユーロ圏の量的緩和の立役者であるクーレECB理事は2日にフランクフルトとブリュッセルで講演する予定で、ラウテンシュレーガー理事や各国中銀総裁からも行動を示唆する発言が出る可能性がある。
昨年12月の政策変更は投資家の期待を裏切る微調整にとどまり、債券相場やユーロの大幅下落を招いた。当局はその二の舞いを避けたい考えで、消費者物価押し上げの手段とそれを行使する意欲があるという見解を強調しながらも、当局が実行しない行動を市場に準備させないようにする必要がある。
RBCヨーロッパの欧州エコノミスト、ティモ・デルカルピオ氏は、「政策委メンバーは今年の最も重要になる可能性のある会合を前に、自らの発言が市場にどう解釈されるかについてこれまで以上に気を配るだろう」と予想。同時にECBは「手を縛られている」という印象を阻止することに懸命に取り組んでいると付け加えた。
ECBは長引く低インフレへの対応策として、マイナス金利策や1兆5000億ユーロ(約185兆円)規模の債券購入計画を打ち出しているが、目に見える進展はほとんどない。ブルームバーグの集計した予想中央値によれば、2月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は前年比横ばいと、前月の0.3%上昇を下回る見込み。統計はルクセンブルク時間午前11時(日本時間同午後7時)に発表される予定。26日発表の統計では、ドイツとフランス、スペインの物価下落が示されている。  
クレディ・アグリコルCIBのインフレストラテジスト、ジャンフランソワ・ペリン氏は、ECBが物価安定の責務に関しては「オレンジゾーンもしくはレッドゾーンにある」と述べ、「さらなる行動が必要になろう」と語った。
スワップトレーダーの間では、今回の政策委でECBが中銀預金金利を現行のマイナス0.3%から少なくとも10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)引き下げるとの見方が大勢。
原題:ECB Window for Stimulus Message Closing as Inflation Stalls(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:フランクフルト Jeanna Smialek jsmialek1@bloomberg.net
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3AONW6K50YT01.html


 

 
Business | 2016年 02月 29日 13:54 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス

 
原油価格下落の影響長期化ならECBは紙幣増刷も=仏中銀総裁

[フランクフルト 28日 ロイター] - フランス銀行(中央銀行)のフランソワ・ビルロワドガロー総裁は、原油価格下落による影響が長期化してユーロ圏経済を圧迫する可能性があるとして、欧州中銀(ECB)が紙幣を増刷することがあり得ると述べた。 ドイツのフランクフルター・アルゲマイネ紙に語った。

来月初めに行われるECB理事会では、金利調整を行うかどうかと、量的緩和拡大の是非が検討される。決定は、インフレ率がさらに低下するかどうかに左右されるとみられている。

総裁は、原油価格の下落による影響が長期化する可能性があると示唆。「一時的な原油価格下落だけでは十分な理由にならないが、エネルギー価格の下落による影響が長期化した場合、行動しなければならない」と述べた。

ただ、まず「経済指標を見る必要がある」としている。

 
http://jp.reuters.com/article/ecb-france-idJPKCN0W20DY

 

 
World | 2016年 02月 29日 16:29 JST 関連トピックス: トップニュース
メルケル独首相の与党、支持率37%に上昇=世論調査

[ベルリン 26日 ロイター] - 最新の世論調査によると、ドイツのメルケル首相率いる与党キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)の支持率が2%ポイント上昇し、37%となった。一方で、反移民の立場を表明している「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持率は2%ポイント低下の10%だった。政党全体ではAfDは4位となった。

ドイツ3州の選挙が近づく中、最も権威ある世論調査とされるドイツの公共放送ARD向けの「ドイチェランド・トレンド」が、1028人の有権者を対象に23─24日実施された。

与党の支持率はここ数カ月、低下傾向にあった。中東からの難民受け入れに積極的なメルケル首相の姿勢に対し、有権者の反発が高まったためだ。昨年は110万人がドイツに流入していた。

ドイツ連邦議会は25日、犯罪者を強制送還しやくするなど、難民受け入れのルールを厳格化する法案を可決した。移民制限を強化する措置は昨年10月に続いて2度目となる。

移民問題への民意が初めて問われる選挙は3月13日、西部のバーデン・ビュルテンベルク州とラインラント・プファルツ州、東部のザクセン・アンハルト州で実施される。
http://jp.reuters.com/article/cdu-idJPKCN0W20O5


World | 2016年 02月 29日 08:11 JST 関連トピックス: トップニュース

 焦点:欧州難民危機、統計なき砂漠の死者たち

[カタ―ニア(イタリア) 24日 ロイター] - 2012年8月の暑い午後、ラッキー・イズ君が友人のゴドフリー君とともにサハラ砂漠の横断に乗り出したとき、彼は15歳になったばかりだった。欧州に向かう旅の途中で何が起きたのか、彼はまだ友人家族に語っていない。

ラッキー君の話によると、ニジェール人の彼ら少年2人は、違法移民斡旋業者の指示通り、水とビスケット、牛乳と栄養ドリンクを持ってサハラ砂漠の端に到着した。他の36人とともに、彼らはトヨタ製ピックアップトラックの荷台に乗り込んだ。トラックはニジェール北部の都市アガデスを出発した。

山と積まれた補給品の上に座り、足をぶらぶらさせながら柱にしがみついていたという。誰かが転落しても運転手は車を停めないだろうと分かっていたからだ。喉が渇き、空腹だった。トラックのタイヤが巻き上げる砂埃が彼の目を痛めた。トラックは3日間走り続け、給油や給水のためにときおり停まるだけだった。

4日目、運転手は道に迷った。方位磁針が壊れてしまったのだ。グループの何人かは、ついに砂漠から生還することができなかった。

複数の国際団体が、地中海を横断して欧州に向かう途中で溺死した移民の数を調査している。そうした死者数は昨年で3800人と推計されている。

だが、サハラ砂漠での死亡者数は誰もカウントしていない。そのため、政治家はこの地で失われた人命を無視しがちであると人道支援活動関係者は訴える。

国連難民支援機構の北アフリカ支部でも、サハラ砂漠で亡くなった人数のデータを持っていないという。国際赤十字社は、移民・難民が家族と連絡を回復できるよう支援しているが、死亡者の情報は集めていない。ボランティアや研究者、非政府組織(NGO)が運営している少数の非公式データベースが集計を試みているものの、主としてメディアの報道に頼っており、彼らの資金も滞りがちだ。

オックスフォード国際移民研究所の研究員であるジュリアン・ブラチェット氏は、「データが何もない」と嘆く。彼は10年以上にわたってニジェール北部を含むサハラ砂漠で現地調査を行っている。

「地中海と同じくらい多くの人がこの砂漠で亡くなっている可能性があるだけに、データの不足は問題だ」と彼は言う。「しかし、証明できないから、何も言えない。だから誰も介入しようとしない」

<道に迷えば悲劇に>

アガデスは昔から砂漠の玄関口だった。国際移民機関(IOM)によれば、北アフリカや欧州に向かう途上でこの都市を経由した移民は、2015年に12万人と、前年から倍増している。以前は自由にこの都市を離れることができた。毎週出発する軍の護送車団によって、ある程度の保護が提供されていた。

だが、砂漠を通過しようとした移民92名が渇きのために死亡した2013年の悲劇以来、ニジェール政府がこのルートを封鎖する措置を取ったため、こっそりと隠れて通行する例が増えている。

ラッキー君が乗ったトラックの運転手は砂漠のなかで道に迷ったのち、目印を見つけて正しい道に戻れることを願いつつ、さらに5日間走り続けた。その時点で食料・飲料水は底をついたという。疲労困憊した乗客が夜間にトラックから転落した。運転手は彼らのためにトラックを停めようとはしなかった。

「翌日、明るくなってから人数を数えたら、何人かいなくなっているのが分かった」とラッキー君は語る。現在18歳になった彼は、欧州にたどり着いた後、イタリアのカタニアにある若年者向け難民キャンプで1年間暮らしている。

さらに1日後、トラックの燃料がなくなった。万策尽きた難民たちはあたりを彷徨した。その日の午後、砂嵐が彼らを襲った。

「皆ただ茫然と立ちすくんでた。進むべき方向さえ分からなかった」とラッキー君は言う。「どうすれば砂漠から脱出できるかも分からなかった。そして、多くの人がその場所で亡くなった。友人も倒れ、死んでしまった」

「次に誰が死ぬのか、誰が力尽きるのかも分からなかった。どうすればいいのか。あたりは一面の砂で、われわれは手で砂を掘って、友人を埋めなければならなかった」

「そして、また歩き出した」

<移民斡旋は闇の世界へ>

ニジェール北部のサハラ砂漠と隣国マリは、麻薬・武器の密輸業者、違法移民斡旋業者、誘拐専門業者、イスラム主義武装グループ(一部はアルカイダと連携)などの巣窟である。

欧州連合はニジェールその他の国に対して、密輸・違法移民を取り締まるよう圧力をかけている。2014年、EUは「不法移民の防止を支援するため」治安部隊の訓練を行うミッションをニジェールで開始。昨年には、ニジェールが移民斡旋を禁止する法案を可決し、斡旋業者は最高30年の懲役を受けることになった。

だが前出のブラチェット氏によれば、取引が地下に潜るだけで逆効果になる可能性があるという。

「以前は、砂漠の真ん中で難民を放り出すことは、不可能とは言わないまでも非常に難しかった」とブラチェット氏は言う。「闇のビジネス化してしまった今では、乗客を降ろす予定の場所に本当に到着したのかどうか、それとも砂漠に置き去りにしたのか、誰にも分からない」

あるEU当局者によれば、立場の弱い移民の生命を危険にさらしている違法移民斡旋業者などへの対処が優先課題であるという。EUは国境での検問や砂漠での巡視は行っていないものの、訓練や提言といった形で各国当局を支援している。

ニジェール北部にスタッフを置いているIOMは、何人がこの地域を通過しているのか、また彼らがどのような状況に置かれているのかなど、より詳細な情報を集めようと努めている。IOMの推定では、毎週約2300人がアガデスを通過しているという。だが、2015年にサハラ砂漠での死亡が記録されたのは、わずか37人だ。

昨年3月、IOMのスタッフがリビア国境に近いニジェールの小さな村を訪れた。ニジェールにおけるIOMのミッション担当者によれば、1日に85名の難民が斡旋業者に置き去りにされ、木々の下で途方に暮れているのを確認したという。

「旅は非常に困難だ」と同担当者は言う。「彼らの話によれば、途中で多くの人々が亡くなったという」

ニジェール政府にコメントを求めたが、回答はなかった。

ラッキー君を含む生き残り組は、約10時間歩いた末に、アガデスに戻る途中のピックアップトラックに偶然遭遇したという。彼らは目的地までの残りの道を乗せていってくれと運転手に頼み込んだ。

運転手は彼らをリビアのセブハまで運び、武装グループに売り飛ばした。武装グループは自由になりたければ働けと強要したという。ラッキー君が脱走してイタリアにたどり着くまでに、それから数ヶ月を要することになる。

彼らが砂漠に残してきたのは男性4人と女性2人である。決して記録されない死が、また6件増えた。

(Selam Gebrekidan記者、Allison Martell記者)(翻訳:エァクレーレン)
http://jp.reuters.com/article/europe-migrants-sahara-idJPKCN0VZ19S

 


FX Forum | 2016年 02月 29日 14:49 JST 関連トピックス: トップニュース
コラム:英国離脱なら欧州で何が起こるか=唐鎌大輔氏
唐鎌大輔
唐鎌大輔みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト
[東京 29日] - 為替市場では、にわかに「Brexit(ブレグジット)」、すなわち英国の欧州連合(EU)離脱懸念の高まりを受け、英ポンドが急落している。「ブレグジットはEUの政治的求心力低下」との思惑からユーロを手放す動きも強まっており、英国発の政治問題が欧州通貨取引の一大テーマとして浮上してきた感がある。

恐らくこのテーマが為替市場で支配的になるであろう4―6月期を前に、英国のEU離脱をめぐる簡単な論点整理と市場予測を行っておきたい。

<目立つメリット、見えにくいデメリット>

2月19日のEU首脳会議は英国からの要請に応じたEU改革案を全会一致で採択した。キャメロン英首相は同案を叩き台として6月23日の国民投票でEU残留・離脱の意思を問うことを表明しており、同内閣は残留支持を呼び掛けている。事前調査では拮抗が伝えられながら、ふたを開ければ大差で残留支持派が勝利した2014年9月のスコットランドのケースとの比較を今後多く目にすることになろう。

だが、今回のケースは2つの点で事情が異なる。まず、離脱派が翻意する可能性はスコットランドのケースを下回りそうだ。

スコットランドが英国から独立した場合、自治権を得る代償として英ポンドが使えなくなるなど、明確かつ致命的なデメリットがあった。だが、英国がEUから離脱する場合、委譲していた権限は戻り、通貨は据え置き、何より移民流入を制限できるという目に見えるメリットが大きい。残留派が離脱派を説得するのは難儀しそうである。

また、直前の政治的な懐柔が難しそうだという面もある。スコットランドのケースでは投票直前に英国が権限移譲を示唆するなど「餌(えさ)」を提示したことも影響したと言われる。だが、欧州委員会のモスコビシ委員は、仮に国民投票で離脱が支持された場合でも、プラン「B」はないと断言している。

すでにEUが「飲まされた」改革案は相当な譲歩を含み、これ以上の妥協はないというのが欧州委員会の公式見解だ。直前まで世論を見ながら妥協案で手を打つという展開は今のところ期待できない。逆に今後、テロなど社会不安をあおる出来事があれば離脱派が勢いづくだろう。

現状、電話調査に基づく世論調査などでは残留派が優勢であり、筆者もそれをメインシナリオに置くが、今後離脱派が盛り返してくる芽はある。

<影響度はギリシャより「マシ」か>

過去のギリシャ危機がそうだったように、英国のEU離脱の悪影響に関し、今後、様々なシミュレーションが出てこよう。だが、直感的に今回のケースはさほど不透明感を伴わないように思われる。

例えば、ギリシャ危機の際、最も懸念されたのが通貨の切り替え問題だが、すでに述べたように英国にはポンドというユーロよりも歴史ある自国通貨がある。この点はギリシャ危機との最大の違いだ。

また、英国はEU域内の自由移動を認めるシェンゲン協定を締結しておらず、パスポートコントロールは撤廃されていない。ヒトの往来に関しては、もともと欧州統合に参加していないのである。通貨ユーロとシェンゲン協定は「欧州統合の象徴」として双璧をなす存在だが、英国はどちらにも参加してこなかった。英国離脱によって統合プロセスに大きな支障があるとは思えない。

また、EUから離脱しても欧州経済領域(EEA)や欧州自由貿易連合(EFTA)に加盟し、域内での関税メリットなどを享受できる道は残る。例えば、EEAやEFTAに残留できれば、関税メリットを享受した上で欧州単一市場のルールも引き続き適用される。関税も市場のルールも(通貨も)変わらないなら、影響は限定的なものになるかもしれない。

だが、EEAに残り、ヒト・モノ・カネ・サービスの移動の自由を確保するということは、引き続きEU規制の管理下に置かれることも意味する。現実的にはEFTAによる自由貿易連合への加盟を狙う可能性が高いのかもしれない(例えばスイスはEEAには非加盟だが、EFTAに加盟している)。

いずれにせよ、ギリシャやスコットランドのケースと比べれば、通貨変更を伴わないという点で「マシ」な印象はある。英国内のEU離脱派も恐らく同様の思いを抱いているのだろう。

<懸念される企業流出やスコットランドの再反乱>

もちろん、だから離脱しても問題ないという話にはならない。EUから離脱して、EEAやEFTAからも距離を置くシナリオも考えられる。その場合、英国は現在享受している共通関税や単一市場ルールに絡んだメリットなどを失うことになる。

この場合、税制面でメリットを感じていた民間企業には英国から流出する誘因が出てくるだろうし、域内金融機関にとってはそれまで認められてきた単一ルールが適用除外になることが大きな影響を持ち得る。具体的には、1993年以降、域内金融機関に認められてきたユニバーサルバンキング・ルールやシングルパスポート・ルールなどは適用されないことになる。

そもそも国際金融センターとしての地力を備えたシティを有する英国で銀行免許を取得すれば、自動的にEU全域で業務が可能になるという状況があり、それが金融機関の英国進出を促していた側面は無視できない。かかる状況を踏まえれば、英国のEU離脱は金融機関が他のEU加盟国に業務を移管する理由になり得るだろう。ブレグジットは同時に企業の英国離脱という意味も含みそうだ。

なお、14年のスコットランド住民投票は、英国残留が繁栄の道ということで辛うじて決着したという経緯がある。それゆえ、スタージョン・スコットランド首相は、企業の流出を招きかねない英国のEU離脱が決まった場合、再び独立を賭けた住民投票を行う方針を明らかにしている。英国にとっては「泣きっ面に蜂」の展開と言えよう。

それ以外にも悪影響はある。すでに大手格付け会社が方針を示しているように、EUから離脱すれば、双子の赤字を抱える英国の資金調達をめぐり不安が高まる可能性は高い。こうした動きは英国の金融機関の資金調達コスト上昇に直結するはずであり、それを起点とした「国際金融ショック」というシナリオも浮上してくる。

<ユーロ相場の急落シナリオは杞憂か>

注目される為替相場への影響はどうなるか。冒頭述べたように、英国のEU離脱が決まれば、ユーロは急落を免れないだろう。こうした相場の動きはある程度うなずけるものだ。

EU政策当局からすれば、離脱する国が英国であるという事実以上に、離脱の「前例」を作ること自体が深刻な問題となる。リスボン条約50条に離脱規定が記されている以上、英国が「蟻の一穴」となり、ギリシャを筆頭としてドミノ倒し的に離脱機運が高まるケースがないとは言えない。そこまで想定するならば、ユーロ相場が継続的に下落するのはうなずける。

だが、そうした極端な崩壊ケースを除けば、ユーロ下落が長引くとは考え難い。かねて指摘しているように、ユーロ圏としての経常黒字は今や世界最大であり、昨今のディスインフレ状況を踏まえれば実質金利も思うように下がらない状況にある。

ギリシャ危機をめぐる緊張がピークを迎えた昨年3月から8月にユーロドル相場が騰勢を強めたのは、それまで投機的に進められてきたユーロ売りがリスク回避ムードの高まりに応じて巻き戻され、ファンダメンタルズの強さが意識されたからだ。通貨圏崩壊への確信がよほど無い限り、ユーロ相場の急落シナリオに賭け続けるのは得策ではない。

*唐鎌大輔氏は、みずほ銀行国際為替部のチーフマーケット・エコノミスト。日本貿易振興機構(ジェトロ)入構後、日本経済研究センター、ベルギーの欧州委員会経済金融総局への出向を経て、2008年10月より、みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。欧州委員会出向時には、日本人唯一のエコノミストとしてEU経済見通しの作成などに携わった。2012年J-money第22回東京外国為替市場調査ファンダメンタルズ分析部門では1位、13年は2位。著書に「欧州リスク:日本化・円化・日銀化」(東洋経済新報社、2014年7月)

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです
http://jp.reuters.com/article/column-forexforum-daisuke-karakama-idJPKCN0W20EM

 


 
Business | 2016年 02月 29日 11:08 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
鉱工業生産速報1月上昇は一時的、外需弱く1─3月減産の可能性

[東京 29日 ロイター] - 経済産業省が29日発表した1月鉱工業生産指数速報は前月比3.7%上昇と事前予測を上回ったものの、生産の基調は弱いようだ。春節前にしては勢いが弱いと指摘されており、先行きの生産計画も弱め。下支えしてきた電子部品の減産や、一般機械や化学・鉄鋼など素材も中国経済減速の影響で振るわない。経産省試算によれば1─3月は減産となる見通し。

1月の生産は正月休みが短かったことや春節前の駆け込み出荷もあり、半導体製造装置やメモリーなどのほか、乗用車や自動車部品などを中心に多くの業種で前月比増産となった。全体では3カ月ぶりの増産。もっとも、生産水準は前年同期を4%弱下回っており、低め。生産計画と比べても3%近く下回る結果となり、経産省では、生産計画を立てた後に世界経済不安が強まったことも影響しているとみている。

先行きの生産予測指数は2月が前月比5.2%の大幅低下、3月が同3.1%の上昇と引き続き一進一退となった。1月の増産は「一時的なものとなる可能性」(SMBCフレンド証券チーフマーケットエコノミスト・岩下真理氏)との見方も目立つ。

予測指数をそのまま当てはめた場合の1─3月見通しは前期比0.3%の減産となる。経産省では、2月予測指数の誤差などを調整すると、実際には前月比6.4%前後の落ち込みになると試算している。そうなれば、1─3月期は見通しよりも減産幅が拡大することになりそうだ。

SMBC日興証券チーフエコミスト・牧野潤一氏は「春節増産の反動減が出るほか、輸送機械では鋼材メーカーの事故に伴うトヨタ自動車 (7203.T)の全生産ラインの停止が響く。また、3月の生産計画も慎重」だとみている。

生産の状況からみて、岩下氏は「1─3月期のけん引役が見当たらない状況下、2四半期連続のマイナス成長の可能性が語られてもやむなし」としている。個人消費も今朝発表の商業動態統計で1月の小売業販売額の滑り出しは前月比1%以上の減少となり、「閏年効果もあるとはいえ、過度に期待できない。実質輸出も1月分は弱い状況」(同氏)となっているためだ。

*内容を追加します。

(中川泉)
http://jp.reuters.com/article/jp-jan-output-idJPKCN0W2006



Business | 2016年 02月 29日 09:16 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
1月の小売業販売額は前年比‐0.1%、3カ月連続減少

[東京 29日 ロイター] - 経済産業省が29日に発表した1月の商業動態統計速報によると、小売業販売額(全店ベース)は前年比0.1%減の11兆4790億円となり、3カ月連続の減少となった。

ロイターの事前予測調査同0.5%増を下回った。

業種別にみると、燃料小売業、各種商品小売業が減少、自動車小売業、機械器具小売業、衣服・身の回り品小売業、飲食料品小売業、医薬品・化粧品小売業、その他小売業で増加した。

季節調整済み前月比は1.1%減となった。
http://jp.reuters.com/article/jp-jan-retail-idJPKCN0W200O

 

Business | 2016年 02月 29日 10:41 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
焦点:G20後も金融政策頼みの世界経済、副作用には懸念の声

[フランクフルト/東京 28日 ロイター] - 上海で開かれていた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は予想通り、大胆な政策を打ち出すことで合意できなかった。これにより、世界経済の活性化に向けて主要中央銀行が大きな責任を背負うことになるのは間違いないが、当局者や銀行関係者の間からは、金融政策の手段はもう出尽くし、これ以上の刺激策は有害にさえなりかねないとの声が出ている。

ドイツのショイブレ財務相は「金融政策は極端に緩和的になり、銀行や各種政策、経済成長への悪影響をもたらすという面で逆効果を生む地点にまで達している。財政・金融政策は限界に達した。実体経済の成長を望むなら、改革を避けて通れるような近道は存在しない」と断言した。

先進国の中銀は金融危機の後遺症と低成長が普通になった事態に対応し、政策金利をゼロもしくはマイナスまで引き下げ、政府が改革に取り組むのを待った。しかし今のところ中銀の期待通りの状況にはなっていない。

マイナス金利の先鞭をつけたのはスイスやスウェーデン、デンマークなどの中銀で、欧州中央銀行(ECB)と日銀が追随したものの、足元ではさまざまな副作用も生じている。

<リスク増大>

日銀の木内登英審議委員は「技術的に追加策が可能かということと、実際に妥当な緩和策があるかは別の話だ。コストを十分に上回るだけのメリットがある政策を打ち出すのは難しくなってきている」と語り、日銀は1月下旬にマイナス金利を導入した時点でもはや次に打つ手がなくなってきたのではないかとの考えをにじませた。

こうした日銀の利下げで国債利回りはマイナス圏にまで低下したものの、株価は浮上せず、日本経済にとって望ましくない円高も阻止できなかった。つまり日銀は目標を達成できていないということだ。

非伝統的な金融政策の世界では、追加的な措置を打ち出すにつれて効果は減っていき、リスクを増大させてしまう。

スイス国立銀行(中銀)のジョルダン総裁は「手段は無制限というわけではない。金融政策手段の効果はデュレーションが延びて投入規模が拡大するごとに弱まっていく。金利のマイナス幅が拡大し続ければ、いつかはキャッシュへの逃避を引き起こさずにはいられない」と述べた。

<最後の手段>

低金利と、非伝統的政策の主軸になる中銀の大規模な資産購入は、住宅を中心にした資産バブルを醸成するばかりでなく、低コストによる資金調達が可能になることで本来は市場から退出すべき「ゾンビ企業」を存続させてその国の競争力をじわじわ低下させる。

銀行の利益も低金利で圧迫されて最終的に貸出能力が損なわれるし、量的緩和は市場機能を破壊し、流動性が低下する。

中国、日本、ユーロ圏、スイスの各中銀がいずれも自国通貨下落を望んで通貨安競争のリスクが台頭しており、通貨安を通じて物価を押し上げることができにくくなっている。

アリアンツのチーフエコノミスト、ミヒャエル・ハイセ氏は「中銀は自身の戦略を考え直すべきだ。中銀の力は限られている。われわれは問題解決のために中銀に過度に依存してきたが、もはや問題を中銀がコントロールできていない」と指摘する。

実際、足元の新興国経済減速や原油安に起因するショックに対応するのは難しく、ユーロ圏ではECBの大規模緩和にもかかわらず景況感関連指標から経済成長が打撃を受けていることがうかがえる。

今こそ財政政策の出番と言えるが、G20では財政を活用できる政府はごくわずかにすぎないことが鮮明になり、ドイツなど財政出動可能な国もその意思がないことをはっきり示した。

そうなるとやはり中銀が引き続き矢面に立つしかなくなる。再び世界的な金融危機が再燃するようなら、論争を巻き起こし、法的な妥当性にも疑問がつくリスクがあるが、なおいくつかの強力な措置を打ち出せないこともない。

エコノミストによると例えば、中銀が民間銀行に対してマイナス金利での貸し出しを強制して経済成長と投資を刺激し、見返りに銀行に利益を保証する手が考えられる。その代わり、中銀は大幅な損失を引き受けざるを得ない。

最後の手段としては、中銀が消費促進や物価押し上げを狙って国民に直接資金を配る「ヘリコプターマネー」もある。

もっともユーロ圏の場合は、ドイツで資産購入でさえ裁判で合法性が争われている点を考えれば、こうした過激な手段に対しては長年にわたって法的、政治的に反対する動きが続く公算が大きい。

(Balazs Korany、Leika Kihara記者)
http://jp.reuters.com/article/cenbank-policy-idJPKCN0W202Z



Business | 2016年 02月 29日 10:19 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネス
過度に経済成長に依存しているわけではない=財政再建で安倍首相

[東京 29日 ロイター] - 安倍晋三首相は、29日午前の衆院予算委員会で、財政再建に関し、「経済成長させ税収を増やしながら社会保障を維持し、財政健全化をめざす」と述べた。その上で首相は「過度に経済成長に依存しているわけではない」「経済成長だけで財政健全化できるとは思っていない」と語った。岡田克也委員(民維)への答弁。
http://jp.reuters.com/article/abe-e-idJPKCN0W202J


News | 2016年 02月 29日 09:30 JST 関連トピックス: トップニュース
上海G20、市場安定へ政策総動員:識者はこうみる

[29日 ロイター] - 上海で開いた20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)は27日、均衡の取れた成長や市場の安定に向け、財政を含めたあらゆる政策手段を動員することを明記した共同声明を採択し、2日間の討議を終えた。

声明では、世界の成長への一連のリスクとして、不安定な資本フロー、コモディティー(商品)価格の急激な下落、英国が欧州連合(EU)から離脱した場合に起こる可能性のあるショックなどを指摘した。

市場関係者のコメントは以下の通り。

<みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>

20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)で均衡の取れた成長や市場の安定に向け、「個別および集団的に、金融、財政、構造上のあらゆる政策手段を活用する」ことを明記した共同声明を採択したが、個別具体的な政策協調で合意したわけではない。精神論の色彩が濃い印象を受ける。

自国通貨安につながるような政策変更の事前通知について合意した点は重要だ。日本の為替政策に関して警戒心を持って受け止められているということだろう。日銀がマイナス金利幅を拡大することに対してブレーキがかかることになり、事前通知が必要になったことで、サプライズ緩和がやり難くなった。

為替介入実施のハードルも依然として高いため、投機筋にすれば、円買いで攻めるコンディションが提供されたのではないか。円高リスクが大きく、日本の金利は低下の方向に傾きやすい。

<UBS証券 シニアエコノミスト 青木大樹氏>

20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)では、世界経済が回復するためには金融政策だけではなく財政政策や構造改革が必要であるとの認識が示された。これにより、中国のみならず、日米欧における財政政策拡大への期待感につながっている。特に日本では補正予算や消費増税の延期などが想定され、補正予算の規模に関していえば、今期分の剥落を考慮すると10兆円規模になってもおかしくないだろう。

今回のG20を受けて投資家がリスクオンになるのは難しい。リスクオンには米経済の回復が必要だからだ。もっとも年初からのグローバルリセッションに対する懸念を和らげ、一定の安心感を与える内容ではある。今後、各国でG20の声明に沿った政策が打ち出されれば、ドル/円JPY=EBSで115円、日経平均.N225で1万7000円─1万8000円程度への回復が見込まれるだろう。

<SMBC信託銀行プレスティア シニアFXマーケットアナリスト 尾河眞樹氏>

上海で開かれた20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)の結果は、各国の立場が異なる中で方向性の一致した声明が打ち出されたことは想定し得るベストの内容と言えるだろう。

市場の期待値はもともと高くなかったが、事前に警戒されたようにドル/円がどんどん売られて110円を割れるほど失望する内容ではなかった。一方、115円を超えていくほどポジティブな内容でもなく、上値は引き続き重い。

通貨安競争は避けるという基本線は予想通りだった。通貨切り下げへの警戒は、中国が念頭にあるのだろう。この面では、日本や欧州が批判の矛先になるのは避けられた印象だ。緩和競争への批判めいた内容になれば欧州中央銀行(ECB)や日銀による追加緩和への思惑が後退したかもしれないが、現行の金融政策の妨げになるような内容には踏み込まなかった。
http://jp.reuters.com/article/instantview-g-idJPKCN0W2018?sp=true


 

 

【コラム】上海G20、スプートニク・モーメントにならず−エラリアン
2016/02/29 16:02 JST

    (ブルームバーグ):世界経済の利益にとって、上海で開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、「スプートニク・モーメント」と呼ばれるショックと覚醒の機会となる必要があった。だが、成長と金融の安定性に対するリスクについての認識が深まっているにもかかわらず、参加国・地域がとりまとめた内容は基本的に過去の政策声明の焼き直しだった。
世界経済がさらなる期待外れの成長や金融の不安定性増大を回避するには、各国・地域が個別および共同で行動を取らなければならなかったが、それとはほど遠いものだ。
上海に集まった財務相や中銀総裁は、当然のこととして世界経済の成長見通しへの懸念を強め、多くの国で追求しているポリシーミックス(政策の組み合わせ)が大いにバランスを欠き、金融当局の実験に過度に依存する状況が長期化している点も認めた。
1957年に当時のソ連が世界初の人工衛星「スプートニク」の打ち上げに成功し、それに衝撃を受けた米国が宇宙開発競争に打ち勝とうと一丸となった時のように、世界経済に対する危険意識の高まりがG20各国・地域の当局者を揺さぶるのではないか、との期待ほどではないが、少なくとも希望はあった。
しかし、公に入手できる情報から判断すると、システム上最も重要な国々のポリシーミックスの改善を示唆するものは、今回のG20ではほとんどなかった。共同声明でうたわれたように「金融や財政、構造の全ての政策手段」を総動員すると言うよりも、各国・地域は今後も政治的現実に制約されて、疲弊の度が増している金融当局の政策に過度に依存する傾向が続くだろう。そして、そうした政策の効果は付帯的損害と予期せぬ結果という脅威の拡大によって、損なわれていく。
世界経済が直面するリスクを考えれば、G20が求めた連帯の責任や行動も同様に目立たないものだ。2009年4月にロンドンで開かれたG20の際には、見事な政策協調を通じて世界的な恐慌に何年も陥る事態を回避することに寄与したが、差し迫った危機的状況にはない現在、各国・地域の当局者による今回の成果は、当時とは比べものにならないほど小さい。
大掛かりな政策変更がほとんど望めない中で、世界経済の成長は伸び悩み、所得と富、機会の3つの格差は拡大して、金融のボラティリティ(変動性)は高まるだろう。4月にワシントンで開かれる国際通貨基金(IMF)と世界銀行の会合に合わせて当局者が再会する時には、こうした環境は一層懸念すべき状況をもたらすだろう
財務相や中銀総裁がスプートニク・モーメントを好機として生かすことができなければ、低成長からリセッション(景気後退)に陥り、一連の金融変動がもっと損失の大きい金融の不安定化につながり、格差拡大がわれわれだけでなく将来の世代にもマイナスとなる政治的な機能不全の悪化を招く局面に、世界が一歩近づくだろう。
(このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)
原題:G-20 Fails to Rise to Its Sputnik Moment: Mohamed A. El-Erian(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3AQJ76S972A01.html


 

 
4兆円の資産運用者がアルマゲドン無視できる理由−中銀が世界救える
2016/02/29 11:34 JST 

    (ブルームバーグ):ノルウェー最大の銀行DNBの債券投資責任者は、金融刺激策が当面は世界を救うことになると考えている。
DNBアセット・マネジメントの債券責任者サバインオーゲ・オーネス氏は、ユーロ圏の「機能不全に陥った銀行システム」を救済する介入に欧州中央銀行(ECB)が来月動く可能性があると予想する。
3150億クローネ(約4兆1170億円)相当の資産を管理・運用するオーネス氏(49)は25日のオスロでのインタビューで、「多くの人々はやや懐疑的だが、私は中央銀行には火薬が若干まだ残っていると今も考えている。ECBには多くのことを行う能力があり、これが状況を沈静化させるだろう」と語った。
投資ホライズン(期間)を6カ月から1年に設定するDNBアセット・マネジメントは、もっと多くの社債を購入したいと考えており、そのタイミングを検討している。世界的な金融危機が近く再発するとの懸念を背景に利回りが年初来急上昇している銀行債に特に関心があるという。
オーネス氏は利回りが非常に高く、劣後債を発行できない状況で、銀行セクターは救済を必要としていると分析。ECBが利下げあるいは量的緩和(QE)の拡大、特定の手段による銀行システムへの再度の介入で市場の沈静化に動くと投資家は期待しているとの見方を示した。
同氏はその一方で、「前例のない規模で行われている金融の実験」に市場が依存しているため、中銀はある時点で「このループから抜け出す」必要があると指摘し、「最終局面がどうなるか私に答えはなく、誰にも分らない。しかし、持ちこたえられなければ金融のアルマゲドン(終末)が待ち受けるリスクは明白だ」と述べた。
原題:Asset Manager With $40 Billion Can Ignore ‘Financial Armageddon’(抜粋)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-O3AAP56K512C01.html


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