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[真相深層]スリランカ「新古車」の楽園
日本製中古車輸出先で首位に 車歴3年内以外は輸入認めず
日本の中古車輸出に異変が起きている。2015年、金額でみて最大の輸出先にスリランカが躍り出た。25年以上続いた内戦の終結から約6年。経済復興が進むスリランカでは目新しいハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)が幅をきかせ、日本製中古エコカーの「楽園」になっている。
英国領時代の面影が残る最大都市コロンボの街角では、トヨタ自動車のHV「プリウス」や日産自動車のEV「リーフ」がしきりに行き交う。環境規制が厳しい日本や米西海岸を除くと世界中でも特異な光景だ。1人当たり国内総生産(GDP)が約3800ドル(約43万円)の新興国とは思えない。
ホテルの運転手として働くスシル・ウィジャヤビーラ氏の愛車はトヨタの小型セダン「アクシオHV」。「故障しなくて財布に優しいよ」。日本の中古車を2014年8月に買った。購入時の累計走行距離はわずか108キロメートルとほぼ新品だった。
エコカー9割
価格は500万スリランカルピー(約400万円)だった。車種によっては100%を超える高率の物品税のせいで現地の車価格は驚くほど高い。それでも富裕層や上位中間層が成功の証しにと競って買う。品質が評判の日本車は人気の的だ。
現地大手のJB証券によると、スリランカの15年の中古車市場は約5万6000台と前の年から倍増した。ほぼすべてが日本車だ。
コロンボ近郊で中古車を売るワサナ・トレーディング・ランカの店頭には数十台の日本車が並ぶ。アシリ・メレンチゲ取締役は「装備が充実した車ほど人気だ。機能を自慢できるからね」と話す。スイッチ類の表記が日本語で読めなくてもお構いなし。日本製の証しなのだ。
15年の貿易統計で中古乗用車のスリランカ向け輸出額は898億円と前年比54%増え、2位マレーシアの546億円を圧倒した。もっとも輸出台数は5万台強で6位。1台当たり価格が174万円と高いからだ。14年まで5年連続で金額が首位だったロシア向け中古車の単価52万円の3倍以上だ。
背景にあるのはスリランカ政府の規制だ。輸入を認めているのは車歴3年以内の中古車のみ。さらにHV・EVと一般車との間で物品税率に最大2倍近い差をつけ、エコカーを推奨してきた。
結果として独特の市場が生まれた。中古車貿易大手エスビーティー(横浜市)の現地法人の野武祐樹ゼネラル・マネジャーは「ケニアやミャンマーには走行距離10万〜20万キロの車が行くが、スリランカ向けは1000キロ未満の新しい中古車が多い」と話す。9割近くがHVやEVだという。
だが、それほど新しい中古車の供給が途絶えないのはなぜか。
奇妙な依存関係
答えは日本国内の車業界の厳しい販売環境がある。15年の新車販売台数(軽含む)は505万台。ピークだった1990年の3分の2に縮んだ市場で各社は競争している。その中で日々発生しているのが「新古車」だ。
販売会社が新車をさばききれない場合、自社で買った形にして新車登録する。統計上はプラスだ。だがいずれ中古車競売で手放す。輸出事業者はこれら新古車を競り落とす。トヨタの「アクア」、ホンダの「フィット」「ヴェゼル」、スズキ「ワゴンR」などもスリランカになだれ込んだ。
スリランカの中古車市場と日本の新車市場の間には奇妙な依存関係が生まれた。スリランカの中古車需要が増えると日本の中古車相場が上がる。車の下取り価格も上がり日本の消費者は新車に買い替えやすくなる。
スリランカで新車を売る日本メーカーにとっても中古車ブームは悪いことばかりではない。中古車でブランドを確立すれば将来の新車需要の獲得に役立つ。
だが15年末、蜜月の仕組みが逆回転し始めた。スリランカ政府が物品税率を突然引き上げ、中古車販売が鈍ったのだ。税収確保が狙いだった。日本のある中古車競売の関係者は、12月のプリウスの平均落札価格が100万円強と、9月から約1割下がったと明かす。スリランカ向け中古車の需給悪化が一因とみている。中古エコカーの楽園はどこへ向かうのか、日本の自動車業界は気をもんでいる。
(コロンボで、小谷洋司)
[日経新聞2月19日朝刊P.2]
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