黒田日銀の「大誤算」〜マイナス金利で円高・株安が起きた真の理由=吉田繁治 2016年2月11日ニュース 1月29日、サプライズだった日銀のマイナス金利導入のあと、日本を含む世界の金融(通貨、株価、金利)は、普通では解釈ができない動きをしています。2月10日(水)の日経平均株価の終値は1万5713円、円安で株価を上げることを狙っていた日銀にとっては大きな誤算です。 日銀は、ドルの金利が2%台なので、円をマイナス金利にすれば円安になると見ていたはずですが、金融市場における「織り込み」のしくみが見えていなかったのかもしれません。 本稿では、FRBによる0.25%の利上げ(2015年12月16日)と、日本のマイナス金利(2016年1月29日)の動きをもとに、その基底でいまどんなことが起こっているのかを考えます。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治) 通貨、金利、株価で多面的に理解すべき「織り込み」のしくみ 日経平均は大きく下落:1万5713円 2月9日(火)には、日経平均株価は918円も下げ、終値は1万6085円でした。月曜日は欧米市場が休日なので、大きな動きがないことが多い日です(ほぼ12時間のタイム・ラグ)。 火曜日に大きく下げるのは、週明けのヘッジ・ファンドによる海外からの先物売りが原因です。今日2月10日(水)も売られて下げ続け、前場は1万5699円、終値は1万5713円でした。 マイナス金利が発表された直後の2月1日には、1万8000円付近に上げ戻していたので、そこから2400円(13%)も下げています。 円は6%上昇 一方、マイナス金利の発表直後には、1ドル121.1円に下がっていた円(1月29日)は、その後、金利とは逆に円高に向かい、今日は114円台に上がっています(2月10日午後13時時点)。 ほぼ7円(6%)の円高と、2400円の日経平均下落が対応しています。 一般に、金利が下がれば、受け取り金利が減る通貨は下がります。期待収益率が金利に同調して下がる株価は、上がります。 (※注)理論株価=期待純益÷期待収益率です。分母の期待収益率が小さくなると理論株価は上がります。これが、金利が下がると、PER倍率が上がる効果です ところが円のマイナス金利で実際に起こったことは、逆でした。 円は上がる 株価は下がる という動きだったのです。 ただし、金利が下がると流通価格が上がる国債価格は上昇しています。1月28日には利回りが0.22%だった10年債は、2月9日にはマイナス0.03%付近に下がり、そのぶん価格が上がったのです。 どれくらい上がったのか計算します。国債の残存期間は、総平均が7年なので、7年とします。 長期国債価格=(1+0.22%×7年)÷(1-0.03%×7年)=1.0154÷0.9979=1.0175 利回りが0.22%で100万円だった国債が、今は、101万5400円で売れるということです。 この国債を7年間もつと、買った人(金融機関)は101万5400円払って、満期の受け取りが100万円ですから、1万5400円損をします。これが、国債のマイナス金利の意味です。金利の低下で、国債価格は上がります。 金利低下で下がるべき円が上がって、上がるべき株が下がった ところが、金利が下がって普通は下がるべき円は、逆に上がっていて、上がるべき株価は下がっています。なぜこんな逆転した現象が起こるのか。答えることができますか? メディアは、「リスク資産(=株)を売って安全資産の円国債に向かった」という理由づけだけしか言いません。では、円と円国債はなぜ、ドルやユーロ国債より安全な資産なのでしょうか。そこは説明がなく、なんだかよくわからない。 以上の理由を、本稿で考えます。 Next: 先の変化を「織り込む」米ドル指数の動きから分かること 先の変化を「織り込む」米ドル指数の動きから分かること カギは、ドルの実効レート こうした奇妙な現象は、日米欧の通貨、金利、株価を同時に見ないと分かりません。 最初のカギは、FRBの0.25%利上げをめぐる米ドルの、世界の通貨に対する「実効レート」です。ドルの実効レートは、単に円やユーロとの関係ではなく、加重平均した世界の通貨とドルの関係で見たものです。米ドル指数(ドル・インデックス)とも言います。 ※米ドル指数のチャート(ローソク足)はこちら 米ドル指数の動き 15年10月15日:94 15年12月 2日:100(FRBの利上げ前にドル指数は上がっていた) 15年12月16日:99(FRBの利上げ:0.25%) 16年2月8日:96(利上げ後にドル指数は下落) 昨年の世界金融の最大のテーマは、「FRBがリーマン危機以降8年ぶりに、いつゼロ金利を脱し、利上げを決定するか」でした。金融市場は、FRBの利上げの時期をめぐって観察と推測を戦わせていたのです。 FRB委員の発言から、12月の利上げがほぼ決定したと見られたのは2015年10月末ころでした。15年8月の中国株価ショックから、日米欧が回復に向かっていたときでした。 この12月のFRBの利上げが確実になって、それをまず織り込んだのが米ドルでした(10月末から)。 外為市場に関する補足情報 外為市場での通貨の売買額は、株式市場の売買額の50倍以上も大きいため、株価より通貨の市場が先に動きます。 国際的には、ポートフォリオ(一定割合での資産分散投資)が行われているため、通貨の動きに瞬間連動するように、株価や国債金利が動きます。 重要な事実:リーマン危機以降、8年もほぼゼロ%の金利が続き、現在は、日欧がマイナス金利になっています。このため、金利は機能を失って、「金利より、通貨が金融政策」になったとも言えるでしょう。 これは、通貨の上昇・下落によって、マネー、株、債券、証券の価格が動くということです。 (※注)利回りの面でも、通貨の為替差益と差損が、1%未満の金利よりはるかに大きい。金利は、年間でほぼゼロです。通貨の変動による為替差益や差損は、1年に10%〜30%は普通にあります。円安になったときは、円の利回りが大きく下がったと見ていい。以上が、外為市場に関する補足情報であり、新しく認識しておかねばならないことです。 米ドルでの、将来の金利の「織り込み」 2015年10月15日にはドル指数は94の底でした。このドル指数は、利上げのほぼ2か月前から上がり始めて、利上げの2週前の12月2日に100というピークをつけています。 これが「利上げの織り込み」という現象です。利上げの前に、利上げがあったかのようなドル指数上昇の動きになることです。 織り込みが起こる理由 なぜ、株価や外為ではこうした織り込みが起こるのか?「将来の利上げの確定予想→まだドルは安い→安いうちに買えば利益になる」というドル買いの動きが起こるからです。 このドル買い(=他の通貨の売り)によって、ドル指数は、実際の利上げの2週間前の15年12月2日に100というピークをつけたのです。 実際の利上げが近づくと、利益確定の売りが起こる そして、その後は12月9日の97.4にまで、売られて下げています。あらかじめ買っていて、ここで利益確定のための売りが増えたからです。 FRBが実際に利上げをした12月16日には、ドル指数は99でした。ところが奇妙なのは、その利上げ決定後です。ドルが0.25%利上げされた後、ドル指数は2月9日の96にまで、3ポイント下げているのです。なぜ、利上げされたドルが下がる(=ドルの売り超になる)のか?この理由も、将来の織り込みです。 Next: 現在のドル安・円高は、FRBの3月利上げ見送りを織り込む動き FRBは2016年に4回の利上げを示唆していたが、3月利上げはなくなった 2015年12月16日にFRBが0.25%利上げしたとき、FRBは2016年に4回の利上げをすることを示唆していました。3か月に一度0.25%ずつ4回上げると1%の利上げです。この利上げが、12月の利上げのとき予定されていたのです。 ところが、FRBの12月の利上げの直後からは、米国経済の悪化と、原油価格の$30以下への下落があり(米国にとってはシェールガスのジャンク債危機になる)、16年3月に想定されていた0.25%利上げはあやしくなってきました。 加えて2016年は、年初から、(1)中国株の下落、(2)原油の下落、(3)FRBの利上げによる新興国からのドル引き揚げの3要素で、世界の株価が大きく下がりました。 このとき2016年3月のFRBの利上げは完全になくなり、3月の後の16年6月の利上げすら危うくなったのです。逆に利下げや、米国もマイナス金利かとも言われるようになったのです。 (※注)景気(=GDPの増加予想や失業率)が悪くなると、FRBが利下げするだろうという予想で、株が買われ上がることもあります。逆に、景気が良くなると、引き締めが行われるということから、株が売られて下がることがあります。これは、いずれにせよ、過剰流動性が引き起こす「変な現象」です。 2015年12月16日のFRBの0.25%利上げのときには、2016年の追加での1%利上げが見込まれていました。このため、外為市場では、まだ行われていない1%の利上げを織り込んだドル買いが起こっていて、それが99から100というドル指数に織り込まれていたのです。 (注)繰り返しになりますが、通貨の売買で利益を出すには、安いとき(つまり利上げ前)に買わねばならない。このため、まだ上がっていないときに買いが増えるのです。 この買いの増加により、通貨は、利上げの前に、利上げがあったかのような価格に上がります。これが「織り込み」です。 株価では、次期企業純益の増加が予想されたときか、予想がないときは発表された直後に、その純益の実現を織り込んで上がります。 ところが、2015年12月の米国の景気の悪化と、16年の年初からの株価下落で、想定されていた16年3月のFRBの利上げはなくなったのです。 このため、利上げを織り込んでいたドル価格指数(99〜100)は、96に下がり、利上げを見込まないものに下がっています。 以上が、米ドル指数から見えることです。(再掲) 15年10月15日:94 15年12月 2日:100(FRBの利上げ前にドル指数は上がっていた) 15年12月16日:99(FRBの利上げ:0.25%) 16年2月8日:96(利上げ後にドル指数は下落) こうした動きから、相場の原則を導くことができます。 相場の原則 通貨・株価では、近い将来(2か月から3か月)の市場が予想するイベントや利益、及び金利変化を想定して、現在の価格に織り込む現象が観察される。 このため実際にその時に至ると、織り込みが剥がれて、次の将来に予想されることの、異なる条件の織り込みに向かう。 現在のドル指数(上表の96)は、2016年3月にはFRBは利上げをしないという予想を織り込んだものである。万一、16年3月に利上げがあるような状況(米国の景気の急拡大)になれば、米ドルは100に向かって上がるだろう。ただし、この可能性はない。 Next: 米国、日本、ユーロの織り込み現象と日銀の「誤算」 米国、日本、ユーロの織り込み現象と日銀の「誤算」 (1)米国の3大指標をチェックする ここからは、この「織り込み」という現象を意識して、米国、日本、ユーロの通貨・金利・株価の動きを並べて解釈してみます。面白い発見があるかもしれません。 米国 15年12月末 16年2月1日 2月10日 米ドル指数 100 99 96 長期金利 2.23% 1.75% NYダウ $1万7720 $1万6027 ドル指数は、16年3月の利上げを織り込んだ100(15年12月)を頂点に、16年1月は下がりました。 16年の2月1日には、海外(とりわけ中国の民間による元売り/ドル買い:推計$1000億)からのドル買いで、99に戻りました。しかしその後、16年3月の利上げが消えたことを織り込み、96に下がっています。 その下の行の長期金利を見ると、この織り込みが、一層はっきりします。FRBによる利上げ(12月16日)の後、普通なら、ドル国債の流通価格は下がり、長期金利は上げねばならない。 ところが、FRBの利上げのあと、長期金利は逆に0.48ポイントも下がって、2016年2月10日には、1.75%に下げています。 (※注)利上げ幅が0.25%です。このため、少なくとも、0.48%+0.25%=0.73%も下がったことになります。金利が1%や2%台と低いので、0.73%の意味が分かりにくいのですが、現在の金利1.75%に対しては、42%という大きさになります。0.73%は、金利の大きさでは4割でありとても大きい。 米国FRBの利上げに反した、この米国の長期金利の低下は「16年3月の利上げの予想の消滅」を意味しています。 むしろFRBに対し「利下げを期待する」ように変わったのです。 (※注)金利が下がり、価格が上がった国債を買う行動は、その後の、利下げを期待したものです。 米国の長期金利の低下は、米国債の流通価格の上昇です。内外から米国債が買われていることを示します。大きな買い手は、 1. 中国の民間(華人資本家) 2. マイナス金利になっている日本の金融機関 3. 新興国から投資を引き揚げたヘッジ・ファンド です。 米国人が米国債を買っているから、米国債が上がって、米国の長期金利が下がっているのではないのです。 メディアでは、最近の国債価格の値上がりを、「リスク資産(株)を売って、安全資産国債である国債を買う」リスク・オフと安易に言っています。これは、記事内でいつも頻発される「不透明」と同じの、いい加減なまとめです。 未来が不透明なのは、今にはじまったことではない。未来は、人間にとっては、良くなるにせよ悪くなるにせよ、その程度は常に見えず、いつも不透明なものです。 通貨や金利の奇妙な動きは、「織り込みという予想行動」を入れれば、合理的に解釈できるものになります。 ここから、金融の投機で利益を上げる原則も、導くことができます。金融投機で利益を上げるコツは、「安いときに買い、高いときに売る」ことしかないからです。 1. 現在の価格(通貨、金利、株価)が、近い将来の何を予想して織り込んだものか、見極める 2. その予想が、上方に変化するとき、もっとも早く(安いうちに)買う 3. 予想が下方に変化するときは、もっとも早く(高いうちに)売る 経済を観察していれば、「予想の変化」の時期が、見えるようになってきます。 (※注)2016年の後半から、もっとも大きく肝心なものになるのは、香港で先駆けて下がり始めた、中国の不動産価格でしょう。 中国本土や台湾の華人投資家が買って、NYやロンドンをはるかに超える世界最高の価格に上げていた香港不動産の価格下落が、波及するかどうかの見極めです。 香港では、現在、住宅(平均的な高層マンション)の1sqフィートの単価は$1416です(ウォールストリートジャーナル:2015年12月)。11倍するとほぼ1平方メートルですから、$1万5000(180万円)です。100平米の広さでは1億8000万円という異常な高さになります。東京の約2倍です。 同じ広さではロンドンが1億3000万円、NYが1億円、パリが1億円、東京が8600万円です。イメージできるでしょうか。この世界1高い香港不動産に、2015年から下がり始める兆候が見えるのです。 Next: (2)日本の3大指標をチェックする〜日銀は誤算を犯した (2)日本の3大指標をチェックする〜日銀は誤算を犯した 日本 15年12月末 16年2月1日 2月10日 ドル/円 120.5円 121.1円 114.5円 長期金利 0.25% 0.22% -0.03% 日経平均 1万8982円 1万8000円 1万5700円 まず円相場です。日銀が利下げをすれば、円の金利が減るので、普通は円安になります。 日銀は16年1月29日に、日銀当座預金の増加分に対して、-0.1%というマイナス金利を敷きました。普通の時期で、他の条件が変わらないなら、円は暴落と言っていいような下げかたをするはずです。 マイナス金利は、円の当座預金を持って入れば、円預金は減って行きますということだからです。 円売り(=ドル買い)の超過になって、円は下がるはずです。ところが、実際にマイナス金利の後に起こったのは、「ドル売り/円買い」の超過です。つまりドルを売って円を買う動きが多かった。 日銀は誤算を犯した このため、マイナス金利への利下げにもかかわらず、逆に円高になったのです。これは、円安で株価を上げることを狙っていた日銀にとっては、大きな誤算でした。日銀は、ドルの金利が2%台なので、円をマイナス金利にすれば円安になると見ていたからです。日銀には、金融市場での「織り込み」という行動が見えていなかったのかもしれません。 マイナス金利の後に、円高になった理由 理由は、円の長期金利の下がりかた(0.22%→-0.03%=0.25%)よりも、16年3月の利上げが消えたことを予想したドルの長期金利の下がりかた(2.23%→1.75%=0.48%)が、約2倍大きかったからです。 FRBが利上げした後のドル金利の下げ方が大きいため、「円買い/ドル売り」が増えた結果が、$1=114.5円という6円(5%)の円高です。マイナス金利に下がったのに、円が買われドルが売られて円高になるという奇妙なことが起こりました。 円相場と株価が連動する理由 日本の株価は、円がドルに対して1円上がると、日経平均で300円〜500くらい下げるという性格をもっています。 ドルに対する円高(1円)→日経平均下落(300円〜500円) ドルに対する円安(1円)→日経平均上昇(300円〜500円) という動きで、ほぼ例外がない。通貨の動きが先で、株価は通貨に連れて動きます。この原因は2つです。 (1)海外ファンド、ヘッジ・ファンドからの売買が、わが国株式市場の60〜70%を占めていること。この外人が3000億円くらい買い越す週は株価が上がり、3000億円くらい売る週は下げること (2)ヘッジ・ファンドの多くが、「円高→日本株売り」「円安→日本株買い」にプログラムされたHFT(高頻度取引)を使っていること 15年12月末からの、$1=120.5円から114.5円への円高(6円)に対して、日経平均は1万8982円から1万5700円へと3282円の下落です。今回、1円の円高に対し、日経平均の下落幅では547円が対応していますね。大きな対応です。 長期金利は、日銀の誘導通りの動き 長期金利は、日銀の誘導通りに、0.25%(15年12月末)から-0.03%へと0.28%下がっています。このため100万円の10年もの国債(残存期間7年)が、101万5400円に上がっていることを示しました。マイナス金利という、普通はない異常なことです。 なぜ、日銀は金利をマイナスにしたのか。 それは、原油と資源価格の下落で、物価の上昇が消えたためです。本当は、原油と資源を輸入する日本にとって、輸入価格の下落は所得の海外流出が減るので、国民経済にとってプラスです。しかし2%のインフレ目標の達成を掲げている政府・日銀にとっては不都合だからです。 (※注)本当は、インフレ目標はもう国民にとって意味がなくなっています。しかし、政府・日銀は、是が非でも行うという。遅れた政策を行っても意味はないのですが…。 Next: (3)ユーロの3大指標をチェックする〜ドイツ銀ショックの影響は (3)ユーロの3大指標をチェックする〜ドイツ銀行ショックの影響は? ユーロ 15年12月末 16年2月1日 2月10日 ユーロ/ドル 1.09 1.13 長期金利 0.6% 0.2% ドイツDAX 1万700 8939 ユーロは、下がったドルに対し、さらに下がっています。 現在は1ユーロ=$1.13=129.3円です。リーマン危機の直前(2008年6月)は、1ユーロ=$1.60というユーロ高でした。現在はその30%安になっています。根本的なところで、ユーロの経済状態が良くないことが効いているからです。 ユーロが下がっているので、ユーロからは、「円国債の買い」が見られます。これをメディアは「安全資産」への避難と言っているのでしょう。下がるユーロより、ドルに対しても上がっている円が「安全」だからです。 DAXはドイツの株価指数です。1万700から8939へと16%も下げています。日本の株価の17%下落とほぼ同じです。2つの理由があります。 (1)年間1000万台を生産するフォルクスワーゲンの、排気ガス偽装問題の処理費用と賠償金 (2)保有している南欧債と、中国株によるドイツ銀行の巨大損失。2015年12月期は、68億ユーロ(8800億円)の赤字 です。 ドイツ銀行の株価は、2016年の年初から40%も下落しています。今、2016年4月の3億5000万ユーロ(4300億円)の利払いが不安視されています。ドイツ政府かECBに頼ることになるかもしれません。ドイツ銀行は、デリバティブの保有高(エクスポジャー)が大きく、経営が危ぶまれていました。 【関連】市場の反応冷ややか。黒田日銀「恥の上塗り緩和」はどこまで効くか=近藤駿介 http://www.mag2.com/p/money/7378?utm_medium=email&utm_source=mag_W000000115_sat&utm_campaign=mag_9999_0213 市場の反応冷ややか。黒田日銀「恥の上塗り緩和」はどこまで効くか=近藤駿介 2016年2月7日FX・先物
「マイナス金利」に踏み込む1週間前に「重要なことは中央銀行の物価目標への強いコミットメント、何でもやるということだ」と豪語した黒田日銀総裁。しかし、目標達成に対して間違った方向に向かって「何でもやる」のでは意味がない。 プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ) ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝えるメルマガ『近藤駿介〜金融市場を通して見える世界』がまぐまぐ大賞2015メディア賞を受賞。 バズーカは空砲と気づいた市場の「黒田売り」が始まる 「補完措置」「マイナス金利」は市場から大きなしっぺ返し このような「政策当局が救ってくれる」という甘ったれた考えを持つ市場参加者が増えてきていることが、現在の金融市場が抱える大きな問題点。 これまで幾度も大規模な追加緩和で円高・株安を食い止めてきた黒田総裁も、かつてのグリーンスパン議長のように金融市場を支えてくれるのではないか──。こんな期待が市場で広がっているという。 出典:円高で広がる「黒田プット」への期待 – 5日付日経電子版 「これまで幾度も大規模な追加緩和で円高・株安を食い止めてきた」とあるが、実際には2014年10月31日の追加緩和時の1回に過ぎない。 今年になって打ち出した「補完措置」も「マイナス金利」も、空振りどころか市場から大きなしっぺ返しを喰らっているのは周知の事実。 オプション市場では円高進行と追加緩和を組み合わせた取引も広がっているようだ。例えば115円を超える円高が進んだ場合に日銀が追加緩和に踏み切り、その後は一気に120円まで円安が進むというシナリオを考えた場合、115円を超えた場合にだけ117円台で円買いできる権利が発生する条件を組み込んだオプションをあらかじめ大量に仕込んでおく。実際にその通りに相場が動けば、差額分がもうけになる。 出典:円高で広がる「黒田プット」への期待 – 5日付日経電子版 黒田総裁が「中央銀行の歴史の中でおそらく最も強力な枠組み」だと称する、伝家の宝刀「マイナス金利」による円安効果が2〜3日しかもたないことを知ってしまった市場が、黒田総裁による「恥の上塗り追加緩和」を好感すると考える方が無理がある。 「マイナス金利」に踏み込んだ1週間前に、「重要なことは中央銀行の物価目標への強いコミットメント、何でもやるということだ」と豪語した黒田日銀総裁。 しかし、目標達成に対して間違った方向に向かって「何でもやる」のでは意味がない。 大阪に行きたいのであれば東海道を下って行けば歩いてでも到達することができる。しかし、東北方面に向かって新幹線に乗っても目的地の大阪に着くことはできないのと同じ。 八戸まで来てしまった黒田丸が、「大阪に行くために何でもやる」といってスピードを上げたところで何の意味もない。 「115円を超えた場合にだけ117円台で円買いできる権利が発生する条件を組み込んだオプション」というのは、円高・ドル安に賭けたポジションを持っている投資家が、自律反発による損失を防ぐためのヘッジポジションを作る際に使う一つのテクニックでしかない。 その裏にあるのは「黒田バズーカ」は空砲であるという認識に基づいた「円高ポジション」であることを忘れてはならない。 「黒田プット」の意味は「これまで幾度も大規模な追加緩和で円高・株安を食い止めてきた黒田総裁」に期待したものから、純粋に「黒田売り」になって来たと解釈した方が賢明だ。 【関連】日銀「マイナス金利」6つのポイント〜円安を招くがデフレには効果なし=吉田繁治 【関連】異次元緩和は失敗だった。クルーグマンの『Rethinking Japan』を読む=吉田繁治 『近藤駿介〜金融市場を通して見える世界』(2016年2月5日号)より
● 「2016年2月19日、米ドルは完全崩壊する」元連邦議会議員ロン・ポールの予言 (編)なぜ今?大統領選に出馬のドナルド・トランプ氏もドル崩壊を強く警告 ● NYダウは6000ドルに?実現しつつある市場アナリスト・ポルニーの予測=高島康司 (編)時期は2ヶ月ほどズレたものの、ここまでほぼ予測どおりの相場展開に ● 英国大手銀行RBSが異例の警告「極めて深刻な事態、投資家は全てを売るべきだ」 (編)日本メディアが報じない「世界市場の衝撃的崩壊」を世界はこう伝えた ● どうなる米追加利上げ〜FOMCメンバーの心証は再度タカ派に傾く可能性も (編)各FOMCメンバーのスタンスから、米利上げ幅とペースを詳しく予想する ● 異次元緩和は失敗だった。クルーグマンの『Rethinking Japan』を読む=吉田繁治 (編)ノーベル経済学者は日本の何を読み違えたのか?翻訳と解説 ● デフレの国・日本における「マイナス金利政策」の盲点=三橋貴明 (編)日銀のインフレ目標2%が達成される日は、永遠に訪れないかもしれない ● 安倍政権ブレーンの竹中平蔵氏が認めた「トリクルダウン」の嘘=三橋貴明 (編)旗振り役の竹中氏が「「滴り落ちてくるなんてあり得ない」と手の平返し ● 高橋洋一氏「日本の借金1000兆円はやっぱりウソでした」論は本当か?=吉田繁治 (編)両極端になりやすい「国の借金」の捉え方。あなたはどちらに賛成? ● 「北朝鮮の水爆」は安倍首相のシナリオ通り?隠された日韓合意の真実=高島康司 (編)すべてはアメリカの「北朝鮮崩壊」作戦のためか。日韓合意のウラ事情 ● 放射能汚染と糖尿病の激増〜相次ぐ「突然死」の裏で何が起こっているか (編)ストロンチウム90からできるイットリウム90はすい臓に集中する http://www.mag2.com/o/kinyukeizai_journal/2016/0213.html?l=tnz04c614d
米FRB、まさかの「マイナス金利導入」で終わる市場〜国際決済銀行(BIS)の罠 2016年2月9日ニュース
イエレンは、今のところ、景気の様子を慎重に見ながら、2016年内に、あと3回程度の追加利上げを行う、としています。しかし、投資家たちはイエレンの言葉に疑心暗鬼になっています。連邦準備制度理事会(FRB)がマイナス金利を導入する可能性について、マネー運用のマネージャーとして30年以上の経験を持つベテラン、ビル・フレッケンシュタイン(Bill Fleckenstein)が明解な回答を与えてくれています。(『カレイドスコープのメルマガ』) マイナス金利導入の裏に隠されている国際決済銀行の罠 日銀「マイナス金利導入」は出来レース? 2014年6月5日、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が中央銀行としては初めてのマイナス金利導入を発表した時、日本の経営者の間で、静かなざわめきが起こりました。 その後も、ECBはさらに念押しするように、去年10月22日の理事会後の会見で、量的金融緩和の規模拡大やマイナス金利をさらに進める意向を表明したのです。 しかし、具体的に「量」として示されることはなく、代わりにマイナス金利政策が発表されたのです。 そうです、マイナス金利にすることが本当の狙いなのです。 そして、日銀も、今年1月29日の金融政策決定会合で、民間銀行から預かる当座預金に「マイナス金利」の導入を決定すると、日本の経営者たちの静かなざわめきは、大きなどよめきに変わったのです。 それは、彼らが、マイナス金利の本質を知っていたからではなく、「世界の金融市場で根本的な変化」が起こったことを悟ったからです。 マイナス金利は、すでに、スイス(-0.75%)、スウェーデン(-1.1%)、デンマーク(-0.65%)などで先行しており、すでに実態チェックが行われているのにしても、その効果が分かっているのは、「自国通貨の為替レートを下げる」ということだけです。各国の中央銀行は、まさしく未知の領域に足を踏み入れたのです。 確かに、日銀がマイナス金利導入を発表したとたん、いったんは円安に振れたため、日経平均株価は大きくリバウンドしましたが、すぐに息切れして、昨日、今日と、再び反落しています。 この主原因は、中国人民元の引き下げ懸念が再燃したことです。 去年、中国上海市場の暴落を受けて、中国金融当局が8月に、3日連続で人民元の引き下げを行ったことによって、世界市場は大暴落しました。 この1月、「中国人民元レートの引き下げ、ようやく停止」と報じたブルームバーグの記事を鵜呑みにしてしまった世界の多くの投資家たちは、「まんまとしてやられた」と臍を噛む思いでしょう。 なぜなら、ロイターが「(日銀の)マイナス金利決定の舞台裏」を仔細に報じているとおり、スイスのダボスで、マイナス金利を先行して導入したスイス、スウェーデン、デンマークなどの欧州各国と意見交換する用意が、すでにできていた可能性があるからです。 上の太字の部分を記憶しておいてください。 日銀の黒田東彦総裁は1月22日、スイス・ダボスで開催されている世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」に参加するため、あわただしく東京・日本橋本石町の日銀本店をあとにした。 複数の関係筋によると、黒田総裁はその直前、現行の量的・質的金融緩和(QQE)の継続を前提に「追加緩和の案を用意するように」と事務方に指示した。 26日に帰国した黒田総裁に提示されたのは、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」だった。 総裁は、これによって追加緩和の障害となっていた政策打ち止め感も払しょくできると判断。28、29日の金融政策決定会合で提案することが固まったもようだ。 出典:焦点:日銀が得た多彩な緩和手段、マイナス金利決定の舞台裏 – ロイター(2016年2月3日付) 2014年6月5日、欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁がマイナス金利の導入を宣言した後、スイス、スウェーデン、デンマークは、金融の実験国家として次々とマイナス金利の導入を決め、さらに日銀が、こうした国々の中央銀行と会合を開くというのですから、日銀もマイナス金利を導入する蓋然性が高まっていたことを中国は重々承知していたはずです。 言うまでもなく、これらの会合をお膳立てしたのは、1月22日のスイス・ダボスで開催された「ダボス会議」です。 ダボス会議とは、世界経済フォーラム(WEF:本部ジュネーブ)の年次総会で、グローバリストの億万長者、“屠殺人”の国際銀行家、経済的独裁者、その走狗である政治家・学者などが年に一度、親交を深めるための魅惑的な夜会です。 また、参加国の内部に配置されている共産主義者や社会主義者らグローバル勢のカウンターパートたちの集いでもあります。 クリントン政権下で国際貿易担当局の要職に就き、キッシンジャー・アソシエイトの元マネージング・ディレクターであったデビィッド・ロスコフは、ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)の常連であり、政府や企業を率い、金融市場を動かし、メディアや宗教を通じて世論を誘導しながら兵力を動かすこれらの人々に、すっかり魅了されています。 ロスコフは、「スーパークラス(Superclass)」(副題のThe Global Power Elite and the World They Are Making, Library Edition/邦題では「超・階級 スーパークラス」)という本を書いて、その特権階級への自身の憧れを披歴しています。 安倍首相や甘利明経済財政再生相が、国会を放り出してでも出席しなればならない理由は、彼らが、世界支配層の一員でいつづけるために必要不可欠なことだからです。 Next: FRBのマイナス金利導入は、限りなく現実に近い仮説になってきた FRBのマイナス金利導入は、限りなく現実に近い仮説になってきた ロイターは、このことを報じた同じ2016年2月3日、「最悪のシナリオ」としながらも、「米連邦準備理事会(FRB)がマイナス金利を導入する可能性」を言い出したのです。 また、同日のブルームバーグは、「マイナス金利もシナリオに−16年の大手行ストレステスト」と題して、連邦準備制度理事会(FRB)が実際にマイナス金利を導入した場合、アメリカ銀行大手にどんな影響を及ぼすのかシミュレーションをやっていると報じたのです。 もっとも、2015年10月16日付けのロイターでは、「FRB、海外景気減速でマイナス金利も視野」と題して、利上げどころか、マイナス金利の導入を示唆する記事を掲載しているのです。 去年のこの時点では、連邦準備制度理事会(FRB)議長、ジャネット・イエレンは、「年内利上げ」の姿勢を崩しておらず、彼女が宣言したとおり、2015年12月16日、政策金利の引き上げを決定したのです。 悲観論が飛び交う中、なんとか利上げの約束を果たしたイエレンですが、同時にマイナス金利の含みを残しての利上げ第一弾でした。 イエレンは、今のところ、景気の様子を慎重に見ながら、2016年内に、あと3回程度の追加利上げを行う、としています。 しかし、投資家たちはイエレンの言葉に疑心暗鬼になっています。 連邦準備制度理事会(FRB)がマイナス金利を導入する可能性について、マネー運用のマネージャーとして30年以上の経験を持つベテラン、ビル・フレッケンシュタイン(Bill Fleckenstein)が明解な回答を与えてくれています。 (以下は、これに関して詳述しているメルマガ第128号「純粋な意味で『富』と言える金(ゴールド)によって身を守る」からの一部抜粋です。ブログのダイジェスト記事はコチラ) ……株式市場は、連邦準備制度理事会(FRB)による操作によってファウンダメンタルに関係なく上げ下げしていることから分かるように、彼らは、この市場を破綻させないことに専念している。 リセッション(景気後退)は迫っている。 その明確な何かのサインが出たときに、QE4(量的金融緩和の第4弾)、あるいは直接的なQE、あるいは、少なくともマイナス金利(NIRP)が設定されるはずだ。 ……しかし、やがて、FRBがどんな政策を打とうが、そんなことでは市場を支えることができないことを見せつけられることになるが、そんなときでも、投資家たちは、相変わらず下げたところを買い続ける。株式市場が完全に動かなくなるまで……。 QE4(量的金融緩和の第4弾)は、債務上限引き上げを米議会に諮らなければできないので、米国内で、大規模なテロなどが起こらない限り、議会は承認しないでしょう。 「米国経済は、すでにリセッション(景気後退)入りした」と宣言してしていますから、「2016年中のあと3回の利上げ」は、いったん棚上げにし、残すはマイナス金利の導入が検討される可能性が現実味を帯びてきたということなのです。 つまり、「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」という真逆のベクトルを持った金融政策を打ち出した日銀と同じように、FRBも、そう宣言せざるを得なくなるということです。 これについて、産経新聞の記事の見出しを見てください。 「米、追加利上げに不透明感 神経とがらすFRB」 日銀が「量的金融緩和」と「マイナス金利」という相対する政策をパッケージにして打ち出したことで、アメリカの景気の行方が不透明になったので、FRBが追加利上げに足踏みしている」という記事です。 日銀のマイナス金利導入のアナウンスは、確かに世界に衝撃を謳えました。 そして、わずか数日だけ、日本の民間銀行が日銀の当座預金に資金を置いたままにしておくと目減りするので、一部は国債へ、一部は株式投資に回るだろうという憶測から日経平均の爆上げとなりました。 同時に、マイナス金利を導入した国々で起こったように、自国通貨安=円安に傾斜したため、ドルが買い戻されたのです。 結果、世界中の投資家たちが懸念しているドル崩壊が遠のいたように見えたのもつかの間、再び円高基調に戻ってしまいました。 これを「日銀がFRBを救った」と見ている評論家がいるようですが、首をかしげたくなります。 FRBと日銀は、国際決済銀行(BIS)のレシピどおりにやっているだけです。それが、国際決済銀行(BIS)とつながっているダボス会議で示された、ということです。 Next: FRBの追加利上げに疑問を抱く投資家たち FRBの追加利上げに疑問を抱く投資家たち ビル・フレッケンシュタインが言うように、もしFRBもマイナス金利を導入した場合、世界はガラリと反転します。 まさしく、大きな経済災害を正確に予測することで知られている“経済予測士”、マーチン・アームストロング(Martin Armstrong)が言っていたように、「(2015年の)10月、世界的なパラダイムの転換が起こった」のです。 (※メルマガ第118号「天才相場師が『この10月、世界的なパラダイムの転換が起こる』と警告している」に詳述) この意味は、「マイナス金利は個人の預金には影響しない」と言っている日銀の黒田総裁の嘘と論破しながら、この記事の最後に書きたいと思います。それが結論です。 その前に、ウォール・ストリート・ジャーナルの記事の抜粋を見てください。 FRBのフィッシャー副議長は「金利をマイナスにすることはできないと(長い間)考えていた」とし、そうすればお金を持っている人は銀行預金口座から現金を引き出し、借り入れコストの変動による影響を避けるだけだからだと説明した。 だが、FRBに追加利上げが可能なのか、投資家は疑問を抱き始めている。 その一方、世界的な景気悪化を背景に、米国の景気拡大は続かないとの懸念が高まっている。 一部では、政策金利が0.25%〜0.50%に設定されている現在、FRBは再び景気悪化に直面した場合どうするのか疑問が浮上している。 出典:マイナス金利には一定の効果=FRB副議長(2月2日) – WSJ 「FRBのマイナス金利が現実味」と報じるロイターやブルームバーグに対して、ウォール・ストリート・ジャーナルだけは慎重です。同じシオニストのユダヤ資本が入っている米英の“ロスチャイルド新聞”は、二つの可能性を示して投資家たちを混乱させているのです。 一方、日本のメディアは、ロイターのこの記事をなぞっているだけで、さして参考にはなりません。 対照的に、週刊誌は、はっきり分かれています。 グローバリストとは、どんな人々なのか ヨーロッパも、日本も、そしてアメリカも…日米欧三極委員会で世界は動かされている、ということです。 これらの日本側のカウンターパートは、外務省、経済産業省、財務省の「日米事務方同盟」と、ワシントン周辺のシンクタンクです。こちらの記事を読んでください。これが霞が関と永田町を本当に動かしている影の構造です。 アメリカの「利上げ芝居」の本質をズバリ言い当てている驚くべき記事が去年の10月の時点でアップされていました。「イエレンの心変わりとQE4。経済崩壊を先送りするたった1つの方法」という記事です。 サブタイトルは、「最初から利上げするつもりのないFRB、次は富裕層から金を巻き上げる?」です。 つまり、昨年来からの「FRBの利上げ観測」は、米欧のロスチャイルド・メディアが仕掛けた「やらせ」であるということです。マイナス金利の本当の目的は、日米欧同時にマイナス金利にして、北半球の先進国の人々の富を収奪してしまおう、ということです。 毎度毎度、大変恐縮なのですが、読み進めていくうちに、『MONEY VOICE』が私が書いた記事を紹介してくれたものであると分かりました。書いた本人が、ほぼ忘れかけているのですが、改めて読んでみると、一貫して同じ姿勢を崩さず書いてきていることが確認できます。 これから世界で、私たちが受け入れようが拒否しようが、どんどん進められていくことが、どんなことなのか。その背景と目的を知るためには「グローバリズム」の本当の意味を根本から理解することが大切です。 「グローバリズム」が本当に理解できれば、1年後、3年後、5年後、10年後、20年後に起こることが、大方のことは予測できるようになるのです。それに、どう対処し、準備すればいいのか、それこそは個人の考え方次第ということになります。 理屈で理解するのが難しければ、まずは数十万円の元手でネット・トレードをやってみればいいのです。体でグローバリズムを理解することができます。 まず、楽天証券に口座を作り、投資ツールのマーケットスピードをダウンロードしてください。月額使用料が自動引き落としされます。楽天証券が性に合わなければ、SBI証券でもいいのです。投資ツールはHYPER SBIです。ただし、両方ともロイターからの投資情報を基にすることになります。 あなたは、その時点で、すでに、いわゆるシオニスト・ユダヤの情報コントロール下に置かれるのです。 通称「板」と言って、パソコンのモニターに表示される銘柄の値動き(ティック)を見ながら、売り買いをします。一番投資効率がいいのは、上がる直前に、その兆候を発見して買いに入り、その銘柄の株価がもっとも高くなったところで売ればいいのです。 それができるのは、10人に1人しかいません。 その10人に1人は、売り買いする銘柄の企業にどんな従業員が働いていて、どんな消費者がその会社の商品を買っているのか、まったく関心を払う必要はないのです。必要なのは、株価が上昇するシグナルを敏感にとらえることです。 もちろん、その会社が、陰で反社会的な悪業を行っていることなど斟酌することなく、いつ買って、いつ売れば儲かるのか、だけに集中すればいいのです。 その10人のうちの1人は、それに徹して大きな利益を出すことができました。そして、その1人が儲けたことを知った他の投資家たちも、その銘柄を「お気に入り」に加えます。その人は、反社会的な会社の時価総額を上げることに貢献したのです。 そして、その反社会的な会社は、一部の自社株を市場で売却して得た資金で、さらに悪業を働くための子会社を設立したのです。 その10人のうちの1人は、何の痛痒も感じることがありません。そこに存在するのは「市場」と「利益」「投資効率」だけなのです。これが「グローバリズム」の正体です。 なんとなくイメージできたでしょうか。 「グローバリズム」とは、ヒューマンな要素をすべて排除してしまうのです。まさしく、山下達郎のBOMBERの歌詞の内容そのものです。 そして、現在のデイトレードは、人工知能によって行われています。相場というバーチャルな仮想空間で行われているのは、人工知能と人工知能とのバトルです。取引されているのは、これもバーチャルな虚しい実体のないペーパーマネーなのです。 最近は、これを規制しようという動きが出ていますが、なんと人工知能の投資プログラムが、果たして適正な売買をやっているのかジャッジするのも人工知能ということになれば、もうブラックジョークです。 だから、モンサントに投資したり、自分を盗聴しているFacebookやツイッター社の株式を売買したり、子宮頸がんワクチンをつくっているグラクソ・スミスクライン社の株式を将来の「有望銘柄」と推奨したり、パレスチナの子供を狙い撃ちするロケット弾や、広島、長崎に投下された核爆弾の製造メーカーにさえ、平気で投資できるのです。 これが「グローバリスト」と言われる人々です。そうした世界に身をやつす人々に共通しているのは「人間らしい感情が欠如している」ということです。それが、世界中に増殖してしまったのです。 Next: グローバリズムとはイデオロギーであり、共産主義のこと グローバリズムとはイデオロギーであり、共産主義のこと 「グローバリズム」の正確な意味は、「国際主義」「世界政府主義」です。そう、「グローバリズム」とはイデオロギーであって、「貿易を促進して世界中の人々が必要なものを安く手に入れることができるグローバルな商業主義のこと」ではありません。それどころか、その真逆な結果をもたらします。 それを端的に言い表しているのが、竹中平蔵氏の「正規雇用が非正規雇用を搾取する構造になっている。正規と非正規の壁をなくさなければいけない」という発言。だから、「正規雇用をなくして、全員、非正規雇用にするべきだ」と言っているのです。 賃金格差や身分格差に囚われてしまうと本質が見えなくなってしまいます。 全員、非正規雇用にすれば、愛社精神や自分が作っている製品に対する愛着や責任感さえも喪失し、単なる「モノ」と「市場」だけの世界になります。投資のたとえ話で取り上げた「無味乾燥で色のない世界」です。 そうした世界での勝者は、人の痛みをまったく感じることのできない不感症のようなロボットなのです。 最終的には、「1%」と「99%」の酷薄な社会が訪れ、両者の間で革命が起こるか、あるいは「99%」すべてが淘汰され、残りの「1%」が、さらなる無色透明の世界を目指して分裂していきます。そして、再び、「1%」と「99%」に分かれ、最終的には自己淘汰するのです。 こうした世界のことを、なんと言いましょうか。「共産主義」です。 マルクスの虚構理論では、こうした格差のよって生み出される階級闘争は「共産主義」によって終焉することになっています。しかし、よく考えて見ると、ヘーゲルの弁証法とは矛盾するのです。「正・反・合」のスパイラルは、対立があるところでは永遠に続くのです。「共産主義」世界は、新たな闘争の始まりに過ぎないのです。 これが本当の意味の「グローバリズム」です。つまり、「共産主義の次の世界」を目指すイデオロギーのことです。 それは、誰も想像もできない世界…そう、最後に残った「グローバリズムの神様」である悪魔を信奉する者たちが死闘を繰り広げるという、これ以上ないほどの悍ましい世界のことなのです。 Next: グローバルなマイナス金利の狙いは、富裕層の徹底的な破壊 黒田・日銀総裁は、4日午後の衆院予算委員会で野党議員の質問に「個人の預金金利がマイナスになる可能性はないとの見解」を示しました。 日銀総裁ともあろうものが、これほど大嘘を吐いたことは、歴史に刻まれるでしょう。 まず、日銀が量的金融緩和を続けてきたことによって、銀行預金の口座に預けてあるあなたの顔値の価値は、絶対的価値(たとえば金が本来持っている不変の価値)は、相当減価されてしまっています。 このことは、メルマガ第139号パート1「景気後退が加速する2016年からは金に主役が交代か!? 」の中で、金に対する各国の相対価値の変化を追うことによって証明しました。 これは、中央銀行が札束を印刷し続けてきたことによってもたらせされたものです。 そう、「中央銀行が札束を印刷する」…これは、政府が発行した国債を民間銀行が引き受け、さらに民間銀行から国債を中央銀行が買い取り、その代金として信用創造の下で印刷しまくった札束で支払っているのです。 それは民間銀行の紙幣ですが、法的に一定額を中央銀行の当座預金に預けておかなければならない仕組みになっています。その時点で、紙幣は増えているので、あなたの預金口座のお金の価値は希釈されてしまったのです。つまり、モノやサービスを購入する際の購買力がその分、減ってしまったのです。 金本位制度から切り離された通貨システムでは、銀行に預けたままにておくと、お金の価値が減ってしまうのです。 そうであれば、預金者は銀行になど自分のお金を預けなくなってしまうので、銀行は貸出資金を確保できなくなります。それを防ぐために、民間銀行は、運用して得た利息(運用益)の一部を、預金者に還元するのです。 人口が増え続け、経済が拡大しているプロセスにおいては、活発な資金需要が見込まれるので、銀行の運用益も増えます。預金者への還元も順調に行われ(金利の支払い)、中央銀行が札束を刷って市中にばら撒き、多少、お金の価値が希釈されても、預金者はもとが取れる程度にはお金の購買力を維持できていました。 しかし、先進国では、世界的な少子高齢化に突入しています。これ以上の経済の拡大は見込まれなくなってきました。 したがって、市場を人口増加の著しい発展途上国の市場拡大に求めるほかなく、ODAなどによって新しい市場開拓のために資金を投入してきたのです。それを欧米列強の「新植民地主義」と言い換えることもできます。 結論を先に言うと、すでに、ぱんぱんに膨らんでしまった金融市場は、これから世界のほうぼうで、パチンパチンと音を鳴らしてはじけていくのです。これを止めることは誰にもできません。 アメリカ、欧州、日本の巨大市場は、それを必死になって食い止めようとしているのです。それが、最後の肉の策「マイナス金利政策」なのです。 しかし、この3つの巨大市場が破裂するのは時間の問題です。 それでも、少しでも史上最大の金融市場の崩壊を引きのばそうと、ばんぱんに膨らんでいる株式市場、債券市場を流動化(売買が一定以上行われる状態)されせため、さらにこれらの市場に資金を入れようとしているのです。 日銀は、民間銀行の資金を預かる当座預金を3段階に分ける階層構造方式を導入すると発表しました。いきなり、当座預金残高の全てにマイナス0.1%の利率を適用すると、金融機関の経営に負担がかかるため、すでに預けてある分については、今後もプラス0.1%の金利をつけることを約束しています。 それでも、民間銀行は、発表と同時に国債購入に殺到したのです。これは、日銀の目論見と逆の現象です。 つまり、この3階層構造も、いつまで続くか分からないと、民間銀行は日銀の当座預金から資金を引き出して、それで国債を買い漁っているのです。国債ならほんのわずかでも金利がつくからです。 国債の価格と利回りとの関係は逆相関の関係があります。 国債の需要が増えたことによって国債の金利は低下します。そのことによって、政府は国債の利払いが減るので、政府の資金調達コストが低減されます。金利が低く抑えられているので、政府はさらに赤字国債を増発しようとします。 そして、民間銀行は、その国債をがぶ飲みするように、再び買い入れるのです。 これは、さらなる国債バブルを生みだし、日銀が「マイナス金利幅を引き上げることもありうる」と言っている以上は、民間銀行は日銀の国債の買いオペ(応札)をしぶり、民間銀行に国債が溜まったままにになってしまう危険があります。 これは、国債の流動化を阻害することにつながり、いずり国債バブルは破裂します。そのときの規模は、私たちの想像を絶するものになるはずです。 日銀のマイナス金利導入は、結局、民間銀行を自滅させる政策以外の何者でもなく、ひいては日本の金融システムを根底から破壊することになるでしょう。 そして、もし、連邦準備制度理事会(FRB)も、欧州中央銀行(ECB)、そして、日銀に続いて、マイナス金利を採用することになれば、その規模は地球規模の大崩壊を招くでしょう。世界の中央銀行をコントロールしている国際決済銀行(BIS)の隠された狙いが、そこにあるのです。人々の銀行口座は、そのとき、すっからかんになるはずです。 【関連】「2016年2月19日、米ドルは完全崩壊する」元連邦議会議員ロン・ポールの予言 http://www.mag2.com/p/money/7340 アメリカの「時限爆弾」〜膨らみ続ける財政赤字の臨界点が近づいている 2016年2月9日ニュース
今回ご紹介するレポートの予測はすべて「ベース・ライン予測」です。換言すれば、楽観的視点にたった未来予測です。これまで当局は、ベース・ライン予測とは別に悲観的な予測もしていました。しかし最新のレポートでは省略されています。当然、悲観的視点の未来予測もしたはずですが、公表できない結果になったのでレポートから排除したのでしょう。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』) 「もう無理だね」米国連邦政府の最新財政状況予測 まず下記は、米国郵政公社の財政赤字がもうどうしようもない状態に陥ったとの報道です。 ※Postal Service Faces Massive Unfunded Liabilities for Retiree Benefits 報道のポイント 米国政府会計監査局の報告書によれば、米国郵政公社は持続不可能な赤字状態に陥っており、その財政状況は非常に苦しく、格付としては高リスク格付=危険な状態になってしまった。 2015財政年度にはネットで5.1B$(約6120億円)の赤字となり、此処9年間の連続赤字である。会計監査局は、2009年7月から郵政公社を高リスクと位置付けており、現在まで その状態が続いている。報告書の結論として、郵便量の減少、コストの上昇により、財政状況は更に悪化していると報告している。 郵便の代わりに電子メール、そして小切手を郵送する代わりに電子決済の普及が拡大しており、さらに郵便局員の給与、社会福祉コスト等の支出が持続不可能な増加率で増大しているからである。 監査局の報告書によれば、近い将来に退職者の健康保険給付や年金給付に充分な財源がなくなり、「2015年度末時点で78.9B$の債務超過となっており、最終的には納税者、郵便局員、退職者だけでなく、郵政公社の存立自体が危険な状態になる」と結論付けている。 郵政公社のトップは財政の健全度に関して上院委員会の公聴会で懸念を示しており、「債務は持続不可能なレベルに到達しているが、もう打つ手は限られており、もしこれ以上のコスト削減をすると、これまでのような迅速で、信頼でき、かつ効率的な郵便サービスは提供できなくなるだろう。借り入れするにも限界に来ており、手持ち現金も公社の規模と比較すると非常に不足した状態になっている」と述べた。 「どうしようもない」グラフ 実際の米国政府会計監査局の報告書をチェックし、重要なデータを抜き出してグラフ化しましたので参照下さい。 (ア)年金給付資金の不足金額(単位:B$)のデータです。 (イ)1972年から2015年の郵政公社の収入と支出のグラフ。水色点線が支出、青色実線が収入であり、今後は赤字が継続すると予想されています。 (ウ)収入に対する債務の比率の推移を表したものです。2007年度は99%でしたが、2015年度(予想値)で182%です。つまり債務が収入の1.82倍になっています。 (エ)年金給付資金の不足金額(単位:B$)をグラフ化したものです。2010年度は充分な資金があったのですが、2011年以降は原資の不足が続いており、それも拡大傾向にあります。 ということで、この連邦政府機関をどうするか?答えは簡単です。連邦政府が支援資金を注入するだけです。その結果、米国連邦政府の累積赤字は増大するばかりです。どこかで増税せざるを得ないのです。 しかし富裕層への累進課税などするはずがありません。これまで富裕層や企業に対して減税をしてきた人たちが、増税する気持ちなど持っているはずがないからです。口では言っても実行はしません。 となると庶民には債務の棒引き――つまり福祉のカット、年金給付のカット、消費税増税が待っているのです。 Next: 米国連邦政府の最新財政状況予測(超重要) 米国連邦政府の最新財政状況予測(超重要) 2016年1月19日に、米国連邦政府の財政状況予測を議会予算管理局が発表しています。 大統領府発表の予算教書よりも少しは内容が信頼できるかもしれないと思われる方もいるでしょうか、このレポートの作成根拠となる各種データも結局は政府お手盛りの基礎データから積み上げたものですから、あまり信頼はできません。 そこで実際に、過去の将来予測(2010年発表)と、現在の将来予測(2016年発表)とを比較しましょう。その誤差が小さければ信頼できるでしょうし、誤差が大きければ信頼できないことになります。 (ア)2016年最新発表の将来予測のデータです。 (イ)過去の時点、2010年発表の将来予測のデータです。 歳入 最初は政府歳入です。青色枠の数字です。このデータを自作グラフ(ウ)で表していますので見てください。2010年時点の予測では、2015年度は3,625B$入ってくるだろうと予測していたのですが、実際に入ってきたのは3,249B$で、10%減ったのです。誤差はちょうど1割でした。 さて、現在の2016年度は約5年前では3,814B$だと予測していたのですが、3,376B$と11%減の予測に変化しています。 未来に行くほど悲観的で、2020年度は、5年前予測では4,563B$と予測されていましたが、今回の予測では3,917B$と14%減に変化しています。歳入が伸びないのです。支出はなかなか抑えられるものではありませんので、赤字は増える傾向となります 財政赤字 政府財政赤字を見ましょう。黒枠の数字です。グラフは(エ)を見て下さい。 2010年の時点で2015年度の赤字は480B$と予測していましたが、実際の赤字は439B$と少なくなっています。これは無償食料配給、防衛等の支出等の削減をしたからです。しかしその効果も2016年には消えるようです。 2016年度の赤字は、2010年当時の予測では521B$でしたが、今回の予測では、544B$と増えています。その後も、5年前の予測よりも現在の予測の方が赤字幅が大きくなっています。全体で大体7%の増加です 2020年度では赤字687B$が810B$に増えると見ています。この年度の予測は過去の予測の1.18倍です。 2015年度赤字実績が439B$だったのが、2026年には予測で1,366B$(1.36T$)と3倍以上に増えると見ています。これは単年度の赤字であって、累積赤字ではありません。 対外債務 次は対外的な米国の債務です。米国債を買った人々に対する債務です。赤枠の数字です。グラフは(オ)です。 2015年度を見ますと2010年時点の予測12,055B$、即ち12T$の9%増加の13,117B$、すなわち13.1T$です。2026年度予測は23,817B$、23.8T$ですから、2015年度実績の1.8倍です。改善する見込みは皆無であり、これが一般家庭の家計であれば、とっくに破産状態で遠くへ夜逃げしているところでしょう。 Next: 悲観的シナリオはお蔵入り。これでもまだ楽観的な予測であるという事実 GDP GDP予測です。緑枠の数字です。グラフは(カ)です。2010年の時点で2015年度のGDPは18,421B$、18.4T$と予測していましたが、実際の結果は17,810B$、17.8T$と少なくなっています。約3%減です。それぞれ2010年当時の予測よりも今回の予測のほうがGDPを約4%減らしています。 しかし、すでに始まっている2016年度のGDPが本当に18,494$になるのか?現在の状況を考えると達成不可能ではないか?と思います。 (キ)GDP成長率の予測グラフです。2015年第4四半期には2%強とこの議会予算管理局は予想していたのですが、もうすでに大外れです。 (ク)GDP成長率の2015年第4四半期の実績です。実績では0.7%プラスでした。大外れですね! ということで、すべて過去の予測はあまりにも楽観的で、現実は悪化する傾向にあります。今後も常に、現実はこれらの予測より悪くなるのでしょう。 超重要な事実 さて、以上紹介した予測はすべて「ベース・ライン予測」です。換言すれば、楽観的視点にたった未来予測です。これまでは、ベース・ライン予測とは別に悲観的なシナリオ予測をしていました。 一例として下記の私の過去ログを開放していますので参照下さい。 ※米国財政赤字の現状と予測 – 2012年11月13日火曜日(一般公開) 本来ならば、今回のレポートにもこの悲観的視点にたった未来予測を出すべきなのですが、このレポートでは省略されています。当然、悲観的視点の未来予測もしたはずですが、公表できない結果になったのでレポートから排除したのでしょう。もし悲観的視点の未来予測を全くしていなかったとすれば、専門家としては怠慢であり、失格でしょう。 書けなかった事実こそが、未来を示しているのです。 【関連】黒田日銀の「大誤算」〜マイナス金利で円高・株安が起きた真の理由=吉田繁治 http://www.mag2.com/p/money/7343/2
TPPという主権喪失〜日本の国益を売り渡す「売国」のカラクリ=三橋貴明 2016年2月7日ニュース ニュージーランドでTPP署名式が行われました。TPPについて「主権侵害である」という認識のもと、反対の論陣を張ってきた者として、斬鬼の念に堪えません。特に、「関税自主権」を取り戻すために、国家を上げ取り組み、二度の戦争を戦い抜いた我が国の先人に対し、恥ずかしく、情けない気持ちでいっぱいです。(三橋貴明) 記事提供:『三橋貴明の「新」日本経済新聞』2016年2月4,5,6日号より ※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです TPPは「平成の売国」である。そう言わざるを得ない3つの理由 TPPのここが「売国」(1)〜関税自主権の喪失 TPPは「関税自主権」のみならず、医療、金融、公共調達などのサービス分野に加え、「投資」の自由化までをも含む幅広い「主権喪失」になります。TPPの批准を防ぐ努力をすると同時に、このまま国会で批准されるとしても、各種の法律で歯止めをかける必要があります。 そのための材料は国会議員に直接、提供し続けていますが、本日のエントリーでは最も分かりやすい「関税」について取り上げます。 TPP暫定合意によると、関税の撤廃については以下の通り協定が締結されることになります。 いずれの締約国も、この協定に別段の定めがある場合を除くほか、原産品について、現行の関税を引き上げ、又は新たな関税を採用してはならない。 各締約国は、この協定に別段の定めがある場合を除くほか、原産品について、附属書二−D(関税に係る約束)の自国の表に従って、漸進的に関税を撤廃する。 まさに、関税自主権の喪失以外の何ものでもありません。 ちなみに、附属書二−Aは輸出入の「内国民待遇並びに輸入及び輸出の制限」なのですが、そこに日本の「措置」はありません。カナダやアメリカ、ベトナム、メキシコなどは、様々な「措置」で例外を残しているのですが、日本の場合は全面的に内国民待遇というわけです(内国民待遇とは外国の企業・投資家を自国の企業・投資家と同等「以上」に優遇することを言います)。 附属書二−D(ちなみに、980ページあります)には、農業関連の関税について細かい「表」があり、コメなどについては関税が維持されています。コメはアメリカとオーストラリア向けに無関税の輸入枠(7.8万トン)を設置し、現行関税は維持。牛肉は、38.5%の関税を段階的に9%にまで引き下げ、などになります。 約束を破った安倍総理。日本が重要五品目を守れない理由とは? とはいえ、関税が維持された重要五品目についても、最終的には「例外なき関税撤廃」ということになりそうです。 交渉参加国による署名式を四日に控える環太平洋連携協定(TPP)をめぐり、国を相手に違憲訴訟中の弁護士らが協定案の英文を分析し、すべての農産品の関税が長期的に撤廃される恐れがあるとの結果をまとめた。 他の経済協定にある関税撤廃の除外規定が、聖域と位置付けたコメなどの「重要五項目」も含め、ないことを指摘。聖域確保に関する条文上の担保がなく、将来的に「関税撤廃に進んでいく」と懸念している。 分析したのは「TPP交渉差し止め・違憲訴訟の会」の幹事長を務める弁護士の山田正彦元農相、内田聖子・アジア太平洋資料センター事務局長、東山寛北海道大准教授ら十人余りのチーム。 協定案の本文では農産品の関税に関し、参加国に別段の定めがある場合を除き「自国の表に従って、漸進的に関税を撤廃する」(第二・四条の二項)と明記している。日豪の経済連携協定(EPA)など他の経済協定では、同様の条文で「撤廃または引き下げ」と表現する。TPPは規定上は引き下げの選択肢を除いている。 それでも関税が維持された日本のコメや牛肉などの重要五項目の扱いは、付属文書の記載が根拠になっている。 だが付属文書でも、TPPと日豪EPAなどの経済協定には違いがある。日豪EPAなどには「除外規定」が設けられ、コメは関税撤廃の対象外。TPPには除外規定はなく、逆に発効七年後に米、豪などの求めがあれば、日本のすべての関税に関し再協議する規定がある。<後略> 出典:全農産品で関税撤廃の恐れ TPP協定案を弁護士ら分析 – 東京新聞 東京新聞の記事にもある通り、日豪EPAが、「締約国は、別段の定めがある場合を除くほか、自国の表に従って関税を撤廃し、または引き下げる」と、「または引き下げる」という文言が入っているのに対し、TPPは、「締約国は、別段の定めがある場合を除くほか、漸進的に関税を撤廃する」となっています。 また、関税撤廃の除外規定は、日豪EPAにはあるのですが、TPPにはありませんでした。 しかも、再協議に対する考え方が、日豪EPAは、「合意を先送りした品目」が対象であるのに対し、TPPは七年後に、「一度合意したものを含め全般について再協議」と、なっています。 要するに、一度「関税を残す」と判断された農産・畜産品についても、七年後に再協議し、「関税を撤廃する」を目指すという話です。しかも、この「七年後の再協議」が義務付けられたのは、我が国だけなのです。 コメや牛肉などの関税は、「七年間の猶予」で残された、という話である可能性が濃厚です。何しろ、そもそもTPPは「例外なき関税撤廃」であり、条文でも「漸進的に関税を撤廃する」になっているわけでございます。ちなみに日本の農産物関税について「別段の定め」がないか、探してみたのですが、特にありませんでした。 安倍総理は、TPP暫定合意を受け、聖域五品目の関税維持など自民党の公約に関し、「約束はしっかり守ることができた」などと語っていましたが、現実には「関税撤廃時期の先延ばし」をしたに過ぎないのです。 結局、TPPにより日本は再び関税自主権を喪失し、同時に「関税撤廃」を強いられた。という話になるわけでございます。 Next: 売国(2)〜TPPが発効したとしても、日本の対米輸出は増えない ちなみに、高鳥修一副大臣は、2011年5月11日のご自身のブログ「TPPについて(平成の売国) 」において、 私はTPPについて国家主権の放棄であり、平成の「開国」どころか平成の「売国」だと考えている。政治家の中にもいろんな考えや判断があるけれど、TPP問題は日本を守る断固とした決意のある「保守政治家」か否かのリトマス試験紙みたいなものだ。 と書いていらっしゃいます。リトマス試験紙は、高取議員を「日本を守る断固とした決意のある保守政治家」ではないと、判断したようですね。 日本やアメリカなど12か国が参加したTPP=環太平洋パートナーシップ協定の署名式がニュージーランドで行われました。各国は、早期発効に向けて議会の承認を求めるなど国内手続きを急ぐことにしています。 TPP=環太平洋パートナーシップ協定の署名式は、日本時間の4日朝、協定文書の取りまとめ役を務めたニュージーランドのオークランドで行われました。日本の高鳥内閣府副大臣をはじめ閣僚らは、ニュージーランドのキー首相の立ち会いのもと文書に署名し、12人全員の署名が終わると同席した交渉担当者らから拍手と歓声が上がりました。<後略> 出典:TPP 12か国が協定署名 各国が国内手続き急ぐ – NHKニュース TPPのここが「売国」(2)〜TPPが発効したとしても、日本の対米輸出が短期で増えることはあり得ない さて、TPPの関税問題(物品の市場アクセス)に対する他国の姿勢ですが、最も典型的な「工業製品」について書いておきます。 2015年10月20に内閣官房から公開された「TPP関税交渉の結果」によると、工業製品に関する各国の関税「即時」撤廃率は以下の通りとなっています。(単位は%) 日本 99.1 アメリカ 67.4 カナダ 68.4 ニュージーランド 98.0 オーストラリア 94.2 ブルネイ 96.4 チリ 98.9 マレーシア 77.3 メキシコ 94.6 ペルー 98.2 シンガポール 100 ベトナム 72.1 吃驚する方が多いでしょうが、実は工業製品の関税即時撤廃率が最も低いのが「アメリカ」なのです。逆に、日本の即時撤廃率はシンガポールに次いで高くなっていますが、我が国はそもそも工業製品についてほとんど関税をかけていません。即時撤廃率とはいっても、TPP発効後に日本が関税を改めて撤廃する分野は、工業用アルコールや繊維製品など、極一部に限られています。 また、同じく2015年10月に経済産業が公表した「TPP協定における工業製品関税(経済産業省関連分)に関する大筋合意結果」によると、アメリカは日本からの輸入が多い自動車分野において、乗用車(現行2.5%の関税率)は15年目に削減開始、25年目で撤廃。バス(同2%)は10年目に撤廃。トラック(同25%)は29年間、関税を維持した上で、30年目に撤廃。キャブシャシ(同4%)は15年目に削減開始、25年目に撤廃となっています。 アメリカが自国の自動車市場について、競合である日本製品から「保護する」姿勢を見せているのは明らかです。 Next: 日本が恩恵を受けるのは30年後!まさに「絵に描いた餅」のTPP ご存じ、アメリカはUAW(全米自動車労組)が大きな政治力を持っている以上、当然でしょう。特に、アメリカ政府は利幅が大きいSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)を「なぜか」含むトラックの関税について、可能な限り高く、長期間維持しようとするわけです。SUVはビッグスリーの命綱であるため、簡単に関税が撤廃されるはずがないと予想していたわけですが、やはりそうなりました。 また、自動車部品については、ギアボックス(同2.5%)などについては即時関税が撤廃されるものの、車体(同2.5〜4%)は6年目、タイヤ(同3.4〜4%)は10年目。電気自動車用リチウムイオン電池(同3.4%)については、15年目に撤廃となっています。 日本の対米輸出を財別にみると「自動車」が26%(2014年)を占め、財別シェアでトップです。そもそも、関税率25%トラックを除き、アメリカの自動車関連の関税率は総じて低いのです。「低い関税」の撤廃時期が、乗用車は15年目以降、関税率が高いトラックは30年目以降となっていることになります。 TPP参加予定国に対する日本の輸出(2014年) 図の通り、TPP参加予定国に対する日本の輸出を国別にみると、約60%がアメリカであり、圧倒的なシェアを占めています。TPPが発効したとしても、日本の対米輸出が短期で増えるなどということはあり得ません。 逆に、我が国は医療、金融、公共調達、知的財産権等の構造改革を強制され、聖域だったはずの農産品についても、七年後に「関税撤廃へ向けた再協議」という話になってしまったわけです。一体全体、何のための「TPP」なのですか。 我が国の各種安全保障の弱体化と引き換えに、アメリカを中心(日本も含みます)とするグローバル投資家、グローバル企業の「利益を最大化する」こと以外に、何か目的があるとでも言うのでしょうか。 日本にとって、最大のメリットは(無理矢理探すと)、アメリカのトラック(SUV含む)の関税撤廃ですが、30年後のことです。それまで、25%の関税はガッチリと維持されます。30年後には、日本の構造改革は完了していることでしょう。 今後、TPP「批准」に向けた国会議論が本格化するのでしょうが、この手の具体論に基づき、議論が交わされることを切に願います。 次に、最も深刻な「投資」について書きます。 Next: 売国(3)〜「投資」に関する「内国民待遇」が協定文に入っている 毎日新聞は「日本も甘利明前TPP担当相の辞任により、今後の国会審議は波乱含み」などと書いていますが、そうではないでしょ。「中身」について議論し、揉めましょうよ。 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加12カ国は4日、ニュージーランドのオークランドで協定文に署名した。これにより、関税引き下げやルールの統一化などの合意内容が確定し、今後は発効に向けた各国の国内手続きが焦点となる。ただ、米国では大統領選が本格化して審議の難航が必至の情勢。日本も甘利明前TPP担当相の辞任により、今後の国会審議は波乱含みだ。 出典:『TPP協定署名 焦点は国内手続き 日米は審議に暗雲も – 毎日新聞 最悪、批准された場合に、法的な「手当」を行う必要があります。そのためには、TPPの「中身」について議論する必要があります。人事(甘利大臣の辞任)は本質でも何でもありません。 TPPのここが「売国」(3)〜「投資」に関する「内国民待遇」が協定文に入っている というわけで、個人的に最も「危険」だと考えている「投資」について。特に、「投資」に関する「内国民待遇」が、協定文に入っているという現実を知って下さい。以下、ソースは「TPP政府対策本部 TPP協定(仮訳文)について」です。 「投資」では、最恵国待遇についても定められていますが、今回は内国民待遇に絞りますので、ご留意ください。 第九・四条 内国民待遇 1 各締約国は、自国の領域内で行われる投資財産の設立、取得、拡張、経営、管理、運営及び売却その他の処分に関し、他の締約国の投資家に対し、同様の状況において自国の投資家に与える待遇よりも不利でない待遇を与える。 2 各締約国は、投資財産の設立、取得、拡張、経営、管理、運営及び売却その他の処分に関し、対象投資財産に対し、同様の状況において自国の領域内にある自国の投資家の投資財産に与えるよりも不利でない待遇を与える。 3 1及び2の規定に従って締約国が与える待遇は、地域政府に関し、当該締約国に属する当該地域政府が同様の状況において当該締約国の投資家及び投資財産に与える最も有利な待遇よりも不利でない待遇とする。 第九・十二条 適合しない措置 1 第九・四条(内国民待遇)(略)の規定は、次のものについては、適用しない。 (a) 締約国が維持するこれらの規定に適合しない現行の措置で合って、次に掲げるもの (i) 中央政府により維持され、附属書Iの自国の表に記載する措置 (ii) 地域政府により維持され、附属書Iの自国の表に記載する措置 (iii) 地方政府により維持される措置 2 第九・四条(内国民待遇)(略)の規定は、締約国が附属書IIの自国に記載する分野、小分野又は活動に関して採用し、又は維持する措置については適用しない。 4 いずれの締約国も、この協定が自国について効力を生じる日の後に、附属書IIの自国の表の対象となる措置を採用する場合には、他の締約国の投資家に対し、その国籍を理由として、当該措置が効力を生じた時点で存在する投資財産を売却その他の方法で処分することを要求してはならない。 5 第九・四条(内国民待遇)の規定は、次の規定によって課される義務の例外又は特別の取り扱いの対象となる措置については、適用しない。 (i) 第十八・八条(内国民待遇)の規定 (ii) 貿易関連知的所有権協定第三条の規定 条文や附属書が入り乱れており、分かりにくいと思いますが、附属書I(締約国別の定義):投資の留保事項、つまりはネガティブリストです。 ※I.附属書I 投資・サービスに関する留保(現在留保)(各国共通部分:注釈)[PDF:58KB] ※I.附属書I 投資・サービスに関する留保(現在留保)(日本国の表)[PDF:261KB] 読めば分かりますが、留保事項とは各種の「規制」です。例えば情報通信業について、「NTTの外資規制」等の規制については、内国民待遇の対象とはしません。といったことが定められています。 放送事業と同じく、NTTは株主の三分の一を超える外国人株主は認められていません。当然といえば、当然ですが、この外資規制はTPP批准後も維持されます。 そういえば、「放送事業」や「NHK」に関する留保が見当たらなかったのですが、お時間がある方、調べてみてくださいませ。まさか、ないはずがないと思うのですが…。 附属書IIは、関税維持(とりあえず)に関する措置です。第十八・八条は、知的財産権に関する規定です。 さて、上記の通り、投資の内国民待遇は「ネガティブリスト」方式です。すなわち、「新たな投資分野」が生まれたとき、それがいかなる分野(安全保障の根幹であっても)であったとしても、内国民待遇が適用されます。 というわけで、TPP批准後に、全農(全国農業協同組合)が株式会社化され、その後、譲渡制限が緩和されたとき、「カーギルによる全農買収を防ぐ術はない。外資規制を(TPP締約国に対しては)かけられない」という話なのです。そして、カーギルに全農を買われたとき、我が国の食料安全保障は崩壊します。すなわち、国民の主権に基づき、食料安全保障を維持することができなくなり、「亡国」に至るのです。 さて、これでも、「TPPは別に主権喪失ではない!」と、TPP推進派は言い張るのでしょうか。無論、「別に、主権とかなくなっても構わないし」という価値観をお持ちなら、それはそれで構いませんので、議論をしましょうよ。 ことは国民の主権にかかわる話ですから、正しい情報に基づく議論を積み重ねる必要があるでしょ?特に、国会議員の皆様に申し上げます。 正しい議論をするために、本情報を拡散して下さいませ。よろしくお願いいたします。 【関連】安倍政権のトンデモ試算〜露骨な「TPPプロパガンダ」が始まった=三橋貴明 http://www.mag2.com/p/money/7326?utm_medium=email&utm_source=mag_W000000115_sat&utm_campaign=mag_9999_0213
OECD要人「現状は2007年より悪い」まもなく再来する世界経済危機シナリオ
2016年2月7日 ニュース 「景気は緩やかに回復している」から安心せよとの声が聞こえてくる一方で、極寒の寒気団が沖縄まで襲来。米国東海岸も酷寒のブリザードが襲来しているようで、大雪で自宅に閉じ込められるということで住民が食料品の買い溜めに走って、スーパーの棚は空っぽとのこと。 日頃から緊急事態に備えて食料品備蓄をしておけば慌てる必要はないのですが、それができないのが人間です。そうです。緊急事態に備える事が大事なのです。そして何も起きずに時が過ぎたら「ああ良かったなぁ!」と呟いているのが一番良いことなのです。金融危機でも同じでしょう。 1/20〜23まで開催されたダボス会議の前夜に、OECDの要人が、現在は2007年時点よりも悪い状況であると警告していました。テレグラフ報道です。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』) 「現在は2007年時点よりも悪い状況」OECDホワイト議長の警告 テレグラフ報道のポイント 現在、OECD経済開発検討委員会の議長であり、以前BIS理事会メンバーでもあったウィリアム・ホワイト氏によると、現在の世界金融システムは脆弱化し、世界的な債務不履行と破産の大雪崩に直面しつつあり、社会的・政治的安定を破壊するのではないかと懸念される。ダボス世界経済フォーラムの前夜、独占インタビューとして語った。 ホワイト議長は「現在の状況は2007年のときよりも悪い状態である。その上、これから始まる深刻な不況を防止する手段は残っていない。過去8年間、あらゆる分野で債務が積み上がり、世界中の国々でそれが火種になっている。こうなってくると、次の危機では、これらの債務が不良債権として踏み倒されるのは明白なことだ。価値があると思って資産を保有をしている多くの人々が困ることになるだろう」と語った。 「もう破産になることは間違いなく、唯一これからの課題は、到来する債務危機を直視できるのかどうか?危機が混乱を招くのか、混乱に陥るのか?である」 「5000年も以前に、シュメール人は借金特赦を考え出していた。いま全世界の政府や金融当局にとって次の任務は、借金の帳消しをどのように実行するのか?帳消しをすると、社会的勝者と敗者が再編成され政治的な大嵐が吹き荒れるが、それをどうするのか?ということである」 「そうなれば欧州の債権者が一番大きな損失を受けるだろう。すでに欧州の銀行群は1T$の不良債権を抱え込んでいるからだ。それらの不良債権は、新興国市場関連のものであり、ほとんどをロールオーバーして誤魔化しているので、顕在化していないだけなのだ」 「欧州の銀行システムには想像以上の金額の資金注入が必要であり、その救済法式も新たに決まったベイルイン(Bail-in)方式なので、10万ユーロ以上の預金者はそれに協力しなければならなくなるだろう」 このの人物、ウィリアム・ホワイト氏の警告を真剣に聞く必要がある。彼こそは2005〜2008年の間にわたって、西欧社会の金融情勢は脆弱であり凶暴な危機がやってくると声高に主張し的中させた人物だからである。 Next: 「中央銀行はすでに限界点に来ており、これ以上は何もできない」 「中央銀行はすでに限界点に来ており、これ以上は何もできない」
同氏は「主要中央銀行がリーマン危機後に量的緩和とゼロ金利でばら撒いた刺激策のコストゼロのマネーがアジアやその他の新興市場に流れて、信用バブルを膨張させてしまった。その結果どうなったかと言えば、主要中央銀行は泥沼にはまり込み、新興国でも公的債務+私的債務はGDPの185%、OECD加盟国ではGDPの265%になってしまい、2007年から見て35%(ポイントで)も増えてしまっている。リーマン危機後、新興国市場は景気回復の牽引役となったが、もう今ではその新興国経済自体が問題となっている」と語った。 同氏はG30会議のレポートの主席執筆者でもあるが、現在の金融システムにはもうアンカー役が存在せず崩壊しやすくなっているので、何が次の危機の切っ掛け、端緒となるかは全く分からないと述べている。 「人民元切り下げが切っ掛けであるかもしれないが、全世界の国々は自国通貨切り下げを否定していて、しかし実際は通貨安戦争となっている。だがこれは誰も勝者がいないゲームであり、終わりのない競争なのだ。米国やその同盟国による量的緩和マネーの垂れ流し政策を異次元緩和などと呼んでいるが、結局は将来から繰り上げたマネーの支払い効果しかない。やっている内に中毒状態となり最後は牽引力を失うものだ」 「連銀は1987年危機後、余りにも刺激策を打ちすぎた。何度も何度もやっている間は、後できちんと問題を安全に解決出来ると思い込んでいたのだ」 「1990年代、中国や東欧ロシア経済が突然世界経済に踊り込んできて安価な輸出品で全世界を溢れさせた。製品価格が下がり、資産インフレを覆い隠してしまい、政策立案者は怠惰となって何も行動をしなかったのだが、それは全部間違いだった。インフレをコントロールすれば、全ては上手くいくと信じていたのだから」 「振り返れば、このグローバリゼーションの段階で善意のデフレを起こさせるべきだった。債務を膨張させることで1930年代の債務デフレというもっと悪い状態を醸成させてしまったのだから」 「連銀は現在、量的緩和から抜け出し、船を正しい方向へ転換させようとしているが、恐ろしい板挟みの中に陥って身動きができないでいる。債務の罠だ。状況は極度に悪いので、正解はないのだ。もし利上げをすれば、その結果は好ましくない状況にするだけだ。反対に利上げしなければ、もっと状況が悪くなるだろう」 「この混乱から抜け出す容易な道などないが、政府にとっては今後、もう中央銀行に依存しない道を取る良いスタートになるだろう。インフラ整備に政府が投資をすれば良いのだ。中央銀行に依存するのは危険だ。中央銀行が対処できるのは流動性が枯渇した時だけで、取り付け騒ぎ等の混乱に対処する処方箋しか持っていない」 「中央銀行はすでに限界点に来ており、これ以上は何もできない」 以上のように語った。 メソポタミアの書記の訓練の中に、金利が何%であれば、どれだけの期間で2倍になるのか?4倍になるのか?という練習問題があった。借金が膨張すると、その負債返済に押し潰され経済成長が阻害されるということが認識されていたので、借金特赦のシステムも存在し、それが大きな祝典にもなった。 ウィリアム・ホワイト氏が回答している上記のインタビューを、私の偏見を交えて概括しますと、「リーマンショックよりも大きな雪崩が来る。量的緩和の繰り返し、そして異次元緩和で債務が膨張した結果、債務不履行の大雪崩が来る。秩序ある大雪崩などはなく、対策はもうない。頼みの綱であった牽引機関車役の中国、新興国自体が危ないからだ。となると借金棒引きしかなく、それは投資家、預金客が負担するしかない」ということになります。 【関連】黒田日銀の「大誤算」〜マイナス金利で円高・株安が起きた真の理由=吉田繁治 http://www.mag2.com/p/money/7327/2
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