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異常なコストダウン競争で「底が抜け始めた」日本社会…手抜き・騙しが常態化
http://biz-journal.jp/2016/02/post_13625.html
2016.02.04 文=武田哲男/武田マネジメントシステムス代表取締役 Business Journal
2008年のリーマンショックまでのアメリカでは、3カ月単位の決算で業績が振るわなかった際に株主が「社長ならびに役員は首!」と目をむいて怒っていたが、今の日本では証券取引所が「毎月決算報告」としたため3カ月どころか1カ月単位の業績評価が当たり前となった。
ビジネスの性格にもよるが、食品スーパーなどでは時間帯ごとの評価設定がなされており、売り上げと利益に対する厳しさを表している実態といえよう。
とはいえ、上場企業と取引のある中小企業であれば、短時間内の成果を迫られる可能性があるが、大部分の中小企業はこの実態に気づいていない。
では、なぜ企業がこのような短期間で業績評価を迫られる事態に直面しているのかといえば、少子高齢化や企業の海外進出による国内企業に対する発注減少、つまり国内市場の縮小だ。欲しいものはひととおり手に入れ、体験したいサービスを体験した消費者は「どうしても欲しいモノ」が減った。
また、全企業の99.7%を占める中小企業従事者の収入減少、支出増加、消費税をはじめとする諸税アップ、生活物価上昇などの負の影響をもろに受ける高齢者の貧困など、数え上げたらきりがないほど生活にマイナス要素が及んでいる。
加えてICT(情報通信技術)・インターネット・IoT・機械化・ロボット化などの進展は、人間の業務をどんどん吸い込み、人々の仕事が減る方向にある。昔から「金持ちからカネを取ることは容易ではない。それができればプロ」「貧乏人からカネを取るのが楽」という言い伝えがあるが、まさにその通りの風情である。
マーケットサイズはさまざまな視点から見るとさらに縮小する方向にあるが、思ったように顧客が製品・サービスを購入しない。それによって生じる現象が「低価格競争」である。この場合、「知恵」と「工夫」と「技術力」によるコストダウンは、企業力を増すが、今までどおりの状態でコストを下げるやり方は「値引き合戦」に拍車をかけ、利益率をさらに低下させ企業の疲弊に及ぶ。
値引き合戦は資金力のない企業にとっては自殺行為であり、すぐに行き詰まる。一方、資金力のある企業は結果として勝つが、同様にダメージは受ける。かつて「HY戦争」と呼ばれたホンダとヤマハの二輪車の値引き合戦は、ホンダが勝ったというものの相互のダメージは大きかった。
■顧客不満足度調査の重要性
ともあれ、現実には「短期成果主義」のために組織を挙げて「全社一律○○%のコストダウン」を実施する例は増えている。よって、本来コストダウンをしてはならない分野までも情け容赦なく一刀両断にコストダウンを実施する。結果として、次第に各所に問題が発生し始める。
たとえば、教育費の削減などはただちに問題が発生することはないが、5年後・10年後には人が育っていないから企業衰退の原因となる。
機械製品を例に挙げると、素材を減らす(薄くする・小さくするなど)、別の素材に変える(今まで時間をかけて精度を高めてきたのにバランスが崩れる)、部品点数を減らす(メンテナンスに却って手間がかかる)、顧客の目に触れない箇所の手を抜く(耐用年数が短くなる)など、挙げればきりがないほどである。
近年、連続して浮上してきた数々の事件・事故・トラブルの背後にある原因のほとんどが、こうしたコストダウン・コストカットに集約される。加えて「嘘をつく」「誤魔化す」「隠す」「手を抜く」「騙す」「脅す」「法律違反をする」など、倫理観すらコストダウンに飲み込まれている。
いずれも「顧客不満足度調査」によりすでに浮上している問題であり、筆者が警鐘を鳴らしてきた課題である。それゆえ、この調査を導入している企業が問題を引き起こした例を筆者は知らない。
(文=武田哲男/武田マネジメントシステムス代表取締役)
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