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[大震災から5年]原発、膨らむ安全対策費
震災前から3.3兆円増 安心確保、課題残す
東京電力福島第1原子力発電所事故から5年を経て、原発の安全対策費用が膨らんでいる。東日本大震災後、電力11社が防潮堤の建設などにかけた追加的な投資額は3.3兆円に達する。原子力規制委員会の厳しい審査に対応するためだが、再稼働に反対する国民はなお多い。安心の確保は道半ばだ。
約1.6キロにわたって浜岡原発の敷地を囲う防潮堤(静岡県御前崎市)
下から見上げると、首が痛くなるほどの巨大な灰色の壁が視界のはるか先まで続く。昨年12月に、中部電力浜岡原子力発電所(静岡県)にできた巨大防潮堤だ。津波を防ぐため、約1.6キロメートルにわたって敷地を囲う威容は、さながら「現代の万里の長城」だ。
19メートルの津波備え
中部電が防潮堤の建設に着手したのは大震災後の2011年11月。福島第1原発が津波で全電源を喪失した事態を踏まえ、東南海地震の発生に備えてつくられた。海抜6〜8メートルの土地に高さ14〜16メートルの壁を設けた。鉄筋コンクリートを地下約30メートルの岩盤まで打ち込み、強度を高めた。東南海地震では最大震度7の揺れによって高さ19メートルの津波が発生するとの予測があり、こうした事態が起きても原発を守る狙いだ。
中部電は菅直人首相(当時)の要請で11年5月に全面停止した浜岡原発3、4号機の再稼働を目指し、規制委に安全審査を申請している。防潮堤に加え、原子炉格納容器の破損を防ぐフィルター付きベントの設置などに必要な投資額は3500億円超に上る。
中部電だけではない。日本経済新聞が原発の再稼働を申請する大手電力9社や日本原子力発電、Jパワーに、大震災後の追加対策費用を聞いたところ、総額は3.3兆円に達した。関西電力は高浜原発3、4号機(福井県)の地震の揺れや津波の高さの想定値を引き上げた影響で、配管などの耐震補強が生じた。高浜原発以外の原発の費用も含めた総額は約5300億円に膨らんでいる。
伊方原発3号機(愛媛県)の今夏の再稼働を目指す四国電力も、現時点の追加工事費用を1700億円と見込み、約1年前の試算よりも500億円上振れしている。
各社が巨額の対策費用を投じるのは、原発1基の再稼働で年1000億円程度の収支改善が見込めるからだ。天候や資源価格に左右されずに安定的に電力を供給できる利点も大きい。既に再稼働した九州電力の川内原発(鹿児島県)以外の審査も進み、今後動き出す原発は増える見通しだ。
国も原発を基幹電源と位置づけ、30年度に全電力の20〜22%程度を原子力で賄う計画だ。防潮堤の設置費用などを織り込んだ大震災後の試算でも再生エネルギーなどに比べ発電コストは安く、温暖化ガスも出さないため「原発は不可欠な電力」との立場を堅持する。
さらに費用増も
原発事故への不安から再稼働に反対する国民はなお多い。これまでの原発運転でたまった使用済み核燃料の再処理の位置づけや、その後に残る放射能の強い廃棄物の最終処分場を造れずに「トイレのないマンション」と呼ばれる問題にも道筋をつける必要がある。
司法の目も厳しい。今月9日に高浜原発3、4号機の運転差し止めを命じた大津地裁の山本善彦裁判長は原発の新規制基準を「公共の安寧の基礎と考えるのはためらわざるをえない」と批判した。司法の判断を受け、各社が規制委が求める以上の安全対策に踏みきれば、対策費用はさらに増える。関西電力の大飯3、4号機(福井県)と美浜3号機(同)など、今後必要な工事費用の一部を現時点で見積もりに反映していない例もある。
国は震災後、原発の更新(リプレース)を凍結した。原発の発電比率を計画通り高めるには稼働から40年を過ぎた老朽原発も動かす必要がある。古い原発を動かすより最新技術で原発を造った方が安全性は高まるとの意見もある。安全な原発とは何かを正面から議論することが欠かせない。
[日経新聞3月12日朝刊P.5]
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