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9月30日、中国指導者として再任されるかが決まる共産党大会まであと1年、習近平国家主席(写真)はライバル派閥の力を削ぐための策略をめぐらせる一方、自身の派閥メンバーを国内の最高指導部に送り込もうとしている。写真は5日、杭州G20サミットで語る同主席(2016年 ロイター/Damir Sagolj)
中国の習近平主席、党内ライバル派閥「抑え込み」で権力確立狙う
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/10/post-5991.php
2016年10月8日(土)18時14分 ニューズウィーク
中国指導者として再任されるかが決まる共産党大会まであと1年、習近平国家主席はライバル派閥の力を削ぐための策略をめぐらせる一方、自身の派閥メンバーを国内の最高指導部に送り込もうとしている。
指導部に詳しい3人の関係筋がロイターに語った。
習主席は、来年秋の第19回全国代表大会(党大会)で選出される党中央政治局常務委員会の7名のメンバーのうち、中国共産主義青年団(共青団)派に過半数を占めさせないことを目指しているという。
「習主席が、共青団系に常務委員会の過半数を許すことはありえない」と関係筋の1人はロイターに語った。
共青団閥はかつて強大だった時期もあるが、今は生き残りに必死である。年間予算は今年2分の1も削減され、国営メディアでは「過剰なエリート主義で非効率」と叩かれている。上述の情報提供者や外交筋によれば、こうした共青団に対する攻撃の背後には、習氏の差し金があると広く信じられている。
この派閥は、共産党の青年組織で14─28歳のメンバー8800万人を擁する共青団の現・旧メンバーで構成されている。主として党や政府の官僚で構成されており、特定の政治的系譜に連なるものではないが、数十年にわたり、将来の指導者候補として育てられてきた人々だ。
共青団は、かつてはトップをめざすための登竜門であり、習氏の前任者として国家主席、党総書記、中央軍事委員会主席を務めた胡錦濤氏は、この共青団を政治的地盤としていた。
共青団と、内閣に相当する国務院の広報担当局であるのと同時に党を代表して発言する国務院新聞弁公室にコメントを求めたが、回答はなかった。習主席個人の事務所、あるいは他の政権幹部の事務所への外国メディアの接触は認められていない。
後継者選び
来年の党大会の時点で常務委員としての定年に達していないのは、習主席(63歳)と李克強首相(61歳、共青団派)の2人だけである。情報提供者と外交筋によれば、この2人が常務委員会でナンバー1、ナンバー2の地位を維持するものと広く信じられている。
過去の党大会での経緯に準じるならば、残りの5名が引退することはほぼ確実である。
有力候補のうち共青団派の3人、つまり李源潮副主席(李克強首相との血縁はない)、汪洋副首相、広東省党委員会書記である胡春華氏(胡錦濤前主席との血縁はない)が党大会で常務委員に選出されれば、常務委員会において同派が過半数を占めることになるが、関係筋によれば、これは習氏にとって容認できない事態だろう。
この3人は皆、現在、党中央政治局のメンバーである。
関係筋は、習氏が共青団派に対してさらに何か別の攻撃を計画しているかどうかは、ただちに明らかではないと話しており、習氏がどれほど努力しようと、これら3人の候補のうち1人は常務委員に選出されると予想されているという。
習氏は、減速した経済を浮揚させる改革を遂行し、自分の遺産をしっかりと受け継ぐ後継者を選ぶため、自分に最も忠実な者たちを登用したいと考えているという。
習氏のグループは、同氏が省長・党委員会書記を務めていた2002─2007年に支持基盤を築いた浙江省にちなんで、「浙江閥」と呼ばれている。また習氏は、彼自身と同じように党・政府・軍の上級幹部を親に持つ、いわゆる「太子党」(または「赤い貴族」)からの支持も得ている。
政府のトップ幹部と定期的に会っているという、指導部に近いある関係筋は、「習氏は共青団派を食い止めるためにあらゆる手を打っている。自身の息のかかった人物を常務委員に据えたがっている」と話す。
習主席の支持者が何人常務委員会入りを果たすかという問いは時期尚早だが、関係筋や外交筋によれば、習氏に近く、すでに政治局員になっている候補者が少なくとも2人いるという。習主席の参謀役である栗戦書氏と、中央組織部部長の趙楽際氏である。
幹部予備軍
習主席の父親である習仲勲は、1949年の中華人民共和国建国前から共産主義革命の中心人物の1人で、毛沢東時代には副首相を務めた。習氏の派閥には、地方官僚としてさまざまな省・都市で築いてきた政治基盤からの支持者や、習氏が在籍した北京の名門・清華大学の出身者も含まれている。
共青団は、中国共産党の「支援組織で予備軍」として知られており、共産党への入党を望む者にとっての入り口に当たる。共青団は大学生を中心に、国内のエリート子女を集め、育成している。年長の幹部たちは、実際には団員ではないが、派閥の一員と見なされている。
共青団派のイメージは、2012年、当時の国家主席である胡錦濤氏の側近だった令計画氏が、高級スポーツカー運転中の事故で死亡した息子について隠蔽工作を行ったことでダメージを負った。トップ官僚の子女が裕福で特権的な生活を送っており、一般国民とは別世界に暮らしていると思われることに神経を尖らせている共産党にとっては、困惑すべき事態だった。令氏はその後、汚職を告発されて終身刑を宣告された。
共産党内の第三の主要派閥として、90歳の江沢民元国家主席が率いる、いわゆる「上海閥」がある。上海で経験を積んできた官僚たちで構成される派閥だ。しかし、この派閥の勢いも党内再編のなかで衰えていくと予想されているという。
共青団派、太子党、上海閥という3つの派閥のあいだには大きな政策的差異はなく、いずれも党による国家運営の強化を是としている。官僚のなかには複数の派閥に協力し、派閥への帰属とは別に個人的な忠義を抱いている者もいる。
共青団派が権力低下に直面しているのは、常務委員会だけではない。常務委員会と同様に重要な意志決定機関となっている政治局において、共青団派は現在、定員25人のうち14人を占めているが、その多くを失う可能性が高い。14人のほとんどは来年には定年を迎えるが、習主席に忠実なメンバーで置き換えられる可能性が高いという。
もっとも、習氏は共青団派が完全に冷遇されていると感じないよう、きわどいバランスを模索している。もしそうなれば、胡錦濤氏の反感を買って党内の和が乱れるからだ。常務委員会ではないにせよ、共青団派のメンバーの一部は新たな地位を得ることになりそうだと関係筋は予想する。
たとえば、胡錦濤氏の息子である胡海峰氏については、中国東部の重要な港湾都市である寧波の市長(副大臣格の地位)への昇格が有力視されている。胡海峰氏は現在、上海近郊の嘉興市という、寧波ほど重視されていない都市の市長を務めている。同氏からのコメントは得られなかった。
また国営新華社通信の報道によれば、29日、習氏は党内への訓示のなかで、最近刊行された胡錦濤氏の著作を「党の政治建設及び党員の理論的訓練の重要な一部」であるとして、これを学習するよう呼びかけている。
共青団派のなかで台頭著しく、中国アナリストのあいだで将来の国家主席候補として話題になっているのが、広東省の党委員会書記である胡春華氏(53歳)だ。政治局員のなかでも最も若い2人のうちの1人であり、中国研究者からは、さらに常務委員へと昇格する最有力候補と見られている。
だが、関係筋によれば、広東省南部の漁村・烏坎村における抗議デモの収拾がつかなくなれば、胡春華氏の昇進のチャンスも危うくなる可能性があるという。烏坎村では民主的に選出された村長が投獄されたことに対し80日以上にもわたって抗議デモが行われていたが、9月に入って警察当局が取締りを行っている。
(翻訳:エァクレーレン)
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