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「地球防衛は可能か 小惑星に体当たりへ」(みみより!くらし解説)【取材後記あり】/水野倫之・nhk
2021年12月07日 (火)
水野 倫之 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/458219.html
先月アメリカが打ち上げた探査機。
その任務はSF映画さながらの「地球防衛」の可能性を探ること。NASAなどが行う今回のミッション、なんと探査機ごと小惑星に体当たり。
水野倫之解説委員の解説。
今回は体当たりし衝撃を与えること自体が目的。
それによって小惑星の軌道を変えられるか確認。
ターゲットは地球から1100万キロにある直径160mの小惑星「ディモフォス」。
探査機DARTは来年9月すえに小惑星に到着し、重さ500キロの機体ごと時速2万4000キロで体当たり。
探査機は小さいので、一部がえぐりとられるくらい。
それでも小惑星の速度が毎秒1ミリメートル遅くなり、軌道もわずかに変わると見られている。
NASA会見「小惑星を少しつつく程度でも将来的には軌道が変わり、衝突を避けられます」
衝突といってもディモフォス自身に衝突の危険はない。
地球から行きやすいことからターゲットとして選ばれたもので、将来衝突しそうな小惑星が見つかった場合に備え、防衛策として体当たりが有効かどうか確かめようというもの。
というのも、過去には地球に何度も小惑星が衝突し、大きな被害をもたらしているから。
8年前ロシアに小惑星落下。
直径17m、重量1万tの小惑星が音速を超える速度で大気圏に突入し、数回にわたって爆発。強烈な衝撃波が発生して建物のガラスが割れるなどして1000人を超えるけが人。
もっと規模が大きいものとしては1908年、シベリアのツングースカの森で起きた大爆発。2000平方キロの森林が倒されたことから、直径60mの巨大な小惑星が衝突したと考えられている。
これ以外にも地球上には170以上のクレーターが確認。
メキシコのユカタン半島に残るクレーターは、6500万年前に直径10キロの桁違いに大きな小惑星が衝突し、大量の塵で太陽が遮られて地球が寒冷化し、恐竜絶滅につながったと考えられている。
こうした小惑星は、46億年前、太陽系ができたときに地球のような惑星になりきれなかった岩石。
このうち地球近くを通るものがこれまでにおよそ2万7000個確認。
これらがすぐに地球に衝突することはないとみられるが、小惑星は暗くて小さいため、まだ見つかっていないものはもっと多いとみられ、将来地球の脅威となり得るおそれも。
その衝突確率は、生物の絶滅につながるような10キロサイズの衝突は数千万年に1回。
都市に大きな被害をもたらす50mサイズとなると1,000年に1回程度。
その地球防衛策としてこれまで様々な方法が考えられてきた。
映画アルマゲドンでは、衝突しそうな小惑星に宇宙飛行士が乗り込んで核爆弾を仕込み爆発。
ただこの方法だと、大量の破片が地球に降り注ぐことになりかねないと見る専門家も。
ほかにもアメリカの科学アカデミーの報告書の中には、探査機で小惑星をつかみエンジンを噴射して軌道を変える方法も候補に挙がる。
ただ相当強力なエンジンが必要になる。
これに対して、今回のDARTは探査機をぶつけるだけと方法がシンプルで効率がいいと考えられる。
ただ軌道はごくわずかしか変えられないので、小惑星が近くまで来ていて数年後に地球にぶつかるというタイミングでの回避は難しいかも。
その意味でも、まだ見つかっていない危険な小惑星をなるべく早く見つけることが地球防衛にとっては極めて重要。
今、世界中の観測機関が小惑星の観測に力を入れていて、日本でも画期的な観測システムがつくられ、観測を行っているということで、取材した。
新しい観測システムは御嶽山をのぞむ長野県木曽町の東京大学木曽観測所の大型のドームの中に設置されている。中に入ると目につくのは白いボディーの望遠鏡。これに観測システムがつけられ、平家物語に出てくる地元の女武将にちなんで、トモエゴゼンと命名。
昭和49年に設置された古い望遠鏡でお役御免となりかけていたところ、口径1mながら一度に星座1個分の広い範囲を撮影できるのが特徴で、東大のチームが新天体探索のためによみがえらせた。
その観測システムの中枢となるのが、あらたに取り付けられた天体の光を捉える84枚の高性能センサー。
望遠鏡全体が6秒ごとに少しずつ向きを変えることで広い視野を生かして、世界最速、2時間で夜空全体を動画撮影できる。
未知の小惑星はいつ、どこに現れるかわからないので効率よく見つけるためには広い範囲を頻繁に観測するしかなく、全天を短時間で撮影できるシステムを考案したわけ。
ただ全天の動画には1億個もの星が映っていてそのデータ量は映画1万本に相当する量。
そこで切り札となるのがAI。
普通の星は極めて遠くにあるため見かけ上位置は変わらない。
これに対して近くにある小惑星は動いて見える。
ただ動きと言っても人工衛星や大気のゆらぎなど紛らわしいデータも少なくなく、チームではAIにこうした紛らわしいデータをあらかじめ学習させることで自動的に除去して、動く天体を見つけて点数をつける。
1点以上の高いスコアだと未知の小惑星の可能性が高く、ここでようやく人の目が入り、小惑星かどうかを確定。
チームは1年半で34個あらたな小惑星を見つけ、国際的な天文学の機関に報告。
こうして小惑星の最新のデータベースが作られ、NASAはこれをもとに危険な小惑星があればアラートを発する。
日本も地球防衛の一翼を担っているというわけ。
東京大学天文学教育研究センター 酒向重行 准教授は「空のどこかに高速で移動する地球に接近する小惑星がいたとすると、私たちはそれを確実に捉えることができる」と話す。
天体衝突を防いで地球を防衛にするには、一国だけでは不可能で、世界が技術を持ち寄って協力していく必要。日本ははやぶさ2など小惑星の探査で世界をリードしてきたが、今後探索でも力を発揮し、地球防衛にさらに貢献することを期待したい。
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