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周期表の113番元素のところに「Nh」の文字が! (想像図)
長い挑戦の末にたどり着いた元素「ニホニウム」 合成・発見された初の日本発元素
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47068
2016.6.13 小谷 太郎 JBpress
2016年6月9日、113番元素の名称候補として「ニホニウム」、元素記号「Nh」が発表されました。
113番元素は、理化学研究所(理研)の森田浩介さんの研究チームが合成・発見した元素です。日本を中心とする研究グループが元素の発見者として認められたのは、史上初めてです。
国際的なルールにより、新元素の発見者には名前を提案する権利が認められます。発見者が提案した名前は、国際純正・応用化学連合(IUPAC)によって、他の物質とかぶってないか、当たり障りのない妥当な命名かどうか、審査され、公開レビューを経て決定されます。ニホニウムはこれから5カ月の公開レビューを受け、問題がなければ正式な元素名となります。
■ニホニウムの由来
IUPACの公式発表によりますと、理研・仁科加速器研究センターは113番元素に名前「ニホニウム」と元素記号「Nh」を提案しました。「ニホン」はJapanの二通りの日本語表現の一つで、「日出(い)ずる国」を意味します。
ニホニウムとは耳慣れない名ですが、これまで存在しなかった元素の名前なのだから、耳慣れないのは当然です。やがて馴染むことでしょう。
(周期表の中には、「臭素(Br)」などというひどい元素名や、舌を噛みそうな「フレロビウム(Fl)」や、「アクチニウム(Ac)の元」を意味する「プロトアクチニウム(Pa)」という投げやりな命名など、おかしな名前がいくつもあります。それに比べれば全然ましではないかと思われます)
なお、「ニッポニウム」という命名は、次に説明するように、かつて別の元素に提案されたことがあり、そのため今回は使えなかった事情があります。一度提案された元素名は別の元素に使えないというルールがあるのです。
「ニホニウム」にはまた、2011年の福島の核災害(Fukushima nuclear disaster)によって被災し、科学に失望した人々に、科学への誇りと信頼を取り戻したいという希望が込められているということです。
■小川正孝とテクネチウム
小川正孝(1865-1930)
森田浩介さんのチームは提案の中で、小川正孝の仕事に触れ、43番元素に関する先駆的な仕事に敬意を表しています。
元素発見の歴史において、43番元素は際立って特殊な元素です。
化学者小川正孝は、1908年に43番元素を発見したと報告し、「ニッポニウム」と命名しました。
しかしその報告は誤りでした。小川が新元素だと思い込んだ元素は、実際にはレニウム(Re)だったと推定されています。日本人による新元素発見は実現しませんでした。
43番元素発見の報告はいくつもなされましたが、いずれも間違いと判明しました。冶金学者や化学者がいくら鉱石を砕いて分析しても、43番元素は見つかりませんでした。周期表の43番目の欄は、長らく空欄として残されていました。
1937年、物理学者はとんでもないことをやってのけます。天然に見つからない43番元素を合成したのです。
サイクロトロンという装置を使って重水素(D)を加速し、モリブデン(Mo)の標的に当て、見事43番元素の原子核を創りだしました。
43番元素は「人工」を意味する「テクネチウム(Tc)」と命名されました。
合成して分かったのは、テクネチウムの原子核が不安定だということです。比較的安定な核種も半減期約400万年で崩壊していきます。
これが、自然界にテクネチウムが見つからない理由でした。もし原始地球にテクネチウムが存在しても、半減期約400万年で崩壊してしまい、人類が元素を探し求める頃にはなくなっていたのです。
こうして、人類は元素を入手するための新しい手段を開発しました。自然界に存在しない不安定な元素は合成すればいいのです。
天然の元素が全て探し尽くされた現在、新元素は合成して「発見」するのが普通です。ニホニウムも合成・発見された新元素です。
ニッポニウムは幻でしたが、43番元素は人類が新しい扉を開く鍵となりました。
■並んだ4元素
118番元素まで埋まった周期表(本記事に出てくる元素記号のみを記載)
6月9日には、ニホニウムを含めて4元素の名前候補が発表されました。以下に示します。(和名は正式なものではありません)
113番元素:「ニホニウム(Nihonium; Nh)」
115番元素:「モスコビウム(Moscovium; Mc)」
117番元素:「テネシン(Tennessine; Ts)」
118番元素:「オガネソン(Oganesson; Og)」
モスコビウムとテネシンは、ドゥブナ合同原子核研究所(ロシア)、オーク・リッジ国立研究所(アメリカ)、ヴァンダービルト大学(アメリカ)、ローレンス・リバモア国立研究所(アメリカ)の合同チームによって発見・提案されました。
モスコビウムは、ロシアのモスクワ地方に由来します。モスコビウムとテネシンの合成実験は、ロシアの重イオン加速器で行なわれました。
テネシンは、オーク・リッジ国立研究所とヴァンダービルト大学の位置するテネシー地方に由来します。
オガネソンは、ドゥブナ合同原子核研究所とローレンス・リバモア国立研究所の合同チームによって発見・提案されました。超アクチノイド元素の研究を開拓した、ユーリ・オガネシアン教授にちなみます。
ニホニウムとモスコビウムの語尾の「ウム」は、元々は金属を表わす語尾でしたが、現在では広く元素に付けられています。
テネシンの語尾は「シン」ですが、これはテネシンが周期表の右から2列目に並ぶ「ハロゲン族」の末裔だからです。ハロゲン族の元素は「フロリン(フッ素、F)」、「クロリン(塩素、Cl)」、「ブロミン(臭素、Br)」という具合に、「イン」を最後につける慣習があります。
オガネソンの語尾は「オン」で、これは周期表の右の列「不活性ガス」あるいは「希ガス」の元素につける語尾です。この仲間には「ネオン(Ne)」、「アルゴン(Ar)」、「クリプトン(Kr)」や「ヘリウム(He)」などの名前がついてます。
ただし「ヘリウム(He)」は金属の語尾「ウム」が付いちゃってますが、これはガスだと知らずに命名されたからです。訂正しようにも、もう手遅れです。
■どこまで伸びる周期表
118番元素まで発見されたことにより、周期表の第7周期までがすべてきれいに埋まりました。
しかし、周期表はこれで終わりではありません。119番以降の元素の発見競争はもう始まっています。
もし1種でも見つかれば、周期表は第8周期まで伸びます。教科書に載せるにも、さらにスペースが必要になるでしょう。
けれども、原子番号が大きくなるほど原子核は不安定になる傾向があります。ということは、合成実験はこれからますます難しくなると予想されます。
より大型の加速器を用いる大規模な実験が必要となるでしょう。元素発見競争の敷居は高くなります。
そういう難易度の高い競争に、今回日本は初めて「勝ち」、新元素を発見することができました。
ニホニウムを、日本の名前がつく最後の元素にすることもないでしょう。
世間の関心が高まっている今が予算投入のチャンスです。
元素合成実験を行なって、周期表の第8周期を、日本各地の地名で埋めていくのはどうでしょうか。
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