http://www.asyura2.com/15/nature6/msg/348.html
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対談が掲載された「婦人公論」6月14日号。瀬戸内氏は京都市に開いた「寂庵」に小保方氏を招き、「あなたは小説を書きなさい」とすすめた(撮影/写真部・大野洋介)
小保方さんが寂聴対談で語らなかったこと〈AERA〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20160607-00000134-sasahi-life
AERA 2016年6月13日号
STAP騒動から約2年。渦中にいた小保方晴子氏が、「婦人公論」で作家の瀬戸内寂聴氏と対談した。注目が集まったそのやり取りを読むと……。
小保方:『あの日』(注・小保方氏の手記)は失恋の物語です。何より愛していたものを失った、失恋の話として私は書きました。
瀬戸内:(中略)失恋は必ずするんですよ、みんな。また恋愛は生まれます。
7ページにわたる「婦人公論」での小保方晴子氏と瀬戸内寂聴氏の対談では、やり取りのほとんどが2人のこれまでの人生の思い出話など。「研究不正」疑惑を覆すようなことは1行も書かれていない。
数少ない言及から拾うと、瀬戸内氏は当初、『あの日』を読むまでは「報道を信じて、すべてあなたが企てたことだと思っていた」という。だが、小保方氏の手記を読んで、「この本を読まなければ、真実を知りえなかった」と考えを変えたらしい。
しかし──ある人物の語る「真実」が、科学的・歴史的事実であるとは限らない。
この対談は、気になるトーンに満ちている。
「あなたたちの説を、引き継ぐ人はいるの?」と尋ねる瀬戸内氏に、小保方氏はこう答えた。
「最近、私たちが発表したSTAPという名がついた論文が発表されました。まるですべて握りつぶされたわけではなく、バトンは繋がっていたのだなと思いました」
「STAPという名がついた論文」と小保方氏が言った論文は、5月半ばにインターネット上で話題になったものと思われる。
●題名にSTAP含む論文に注目
その論文は、独ハイデルベルク大学の大学院生ジー・ヤン・キム氏らが専門誌「生化学・生物物理学研究コミュニケーション」電子版に3月10日付で発表したものだ。題名は「修正STAP条件はジャーカットTリンパ球において多能性か細胞死、どちらかの運命に決まることを促進する」。確かに題名には「STAP」が含まれている。
また、この対談が行われたことを報じた「週刊現代」6月4日号も、
「ドイツの名門、ハイデルベルク大学が、小保方さんたちが行った実験とは異なる方法ではあるが、免疫細胞の一種に刺激を与えるとSTAP現象が確認されたと発表した」
と書いている。しかしキム氏らの関心は、小保方氏らの論文の検証や応用ではなく、がん細胞と酸との関係だ。
「ジャーカットTリンパ球」というのは免疫細胞の一種で、白血病の研究などに使われる細胞株のこと。キム氏らがこの細胞を弱い酸にさらしたところ、8時間以内に細胞死が見られた、と論文は記す。細胞を弱い酸にさらす手法は、小保方氏らがSTAP細胞を生成させたと主張したやり方そのものだが、その手法では、あらゆる細胞になる能力(多能性)を示す目印(マーカー)とされる「OCT4(オクトフォー)」の発現は見られなかった。
キム氏らは本文ではっきりとこう書いている。
「STAPの手順によって見られると私たちが期待したこととは対照的に、OCT4タンパク質があるという、確実なシグナルは観察できなかった」
また、冒頭の「要約」でもこうまとめている。
「一般的に、酸処理はジャーカットTリンパ球に対して細胞死を起こす状況をもたらす。このことはOCT4発現とは関係なく起こる」
ちなみに、OCT4というタンパク質があったことは、その細胞が多能性を持っていることの「必要条件」にすぎず、多能性を証明したことにはならない。多能性を持つことの「十分条件」を満たすためにはテラトーマ法やキメラ法と呼ばれる実験が不可欠だが、キム氏らの研究ではそもそも実施されていない。
しかしこの論文は、STAP細胞が実在する可能性を示唆するものという「流言」を呼んだ。
●繰り返し現れるネット上の流言
STAP細胞を巡る根拠なき流言がネット上で広がったことは、これが初めてではない。
昨年12月と今年3月には「アメリカの研究者がSTAP現象を証明した」という情報が流れた。しかしその根拠とされた論文は、実験対象も方法も、そして結果も、小保方氏らのネイチャー論文とはまったく異なるものだった。
また今年4月には、「STAP現象が理化学研究所で再現されていた」という情報がネット上に流れた。その元になったのは2014年12月に公表された「STAP現象の検証結果」。論文不正疑惑を受けて、理研が半年以上かけて行ったものだ。
「検証結果」には、ネイチャーに発表されたSTAP論文の方法とは別に、肝臓の細胞を「ATP(アデノシン3リン酸)」で処理すると「STAP様細胞塊」が出現し、OCT4の発現がわずかに見られたとあった。しかし、そもそも対象と方法が論文と異なるうえ、その発現量もES細胞に比べればわずか。さらに、前述のキメラ法で、多能性の証明は得られなかった。つまりこの情報も、理研の報告を誤読した「流言」にすぎない。
これまで紹介した「流言」の数々は、小保方氏らの方法でSTAP細胞が本当に生成できるのかという「再現性」の有無を巡る誤解から生じたものだ。しかし、再現性を巡る問題とはまったく別次元の問題が当初からあったはずだ。小保方氏らがネイチャー論文の根拠にした研究に不正があったのではないか、という疑惑だ。
●問題の本質は研究不正の有無
ネイチャー論文では、発表直後から多くの「研究不正」(写真やグラフなどの捏造・改ざん・盗用)がある可能性が指摘された。14年3月には理研の調査委員会が、STAP論文には2点のみ研究不正があると認定したが、科学者を含む世間はそれに納得しなかった。
最終的には理研が、14年12月に公表した「検証結果」で、小保方氏らの方法では「STAP現象」なるものは観察されなかったと報告。その直後、理研の「第二次調査委員会」が、STAP細胞とされたものは、既存のES細胞と遺伝学的に同じであると確認した。また、ネイチャー論文にはさらに2点の研究不正があると認定したが、合計4点の研究不正は「氷山の一角」にすぎず、ほかにも不正がありうることも示唆した。
ただ、検証期間中にネイチャー論文の共著者が自殺。論文は撤回された。ES細胞の混入が意図的なのか、意図的だとしたら誰が何のためにやったのかなど、現在も多くの謎が残る。
そんな中、理研を退職した小保方氏が手記『あの日』を出版したのが今年1月。3月には「STAP HOPE PAGE」というウェブサイトを開設し、理研での「検証」におけるものと称するグラフや写真を公表し、少しずつ「反論」に転じてきた。
とはいえ、これらにも疑惑が残る。例えば、サイトに掲載されたグラフの一つについて、筆者が理研に元のデータがあるか問い合わせたところ、理研広報室は4月5日、「一致するものはありません」と回答した。写真の中にも、疑いを指摘する人もいる。
小保方氏がネイチャー論文で最低4点の図表を捏造・改ざんしたことは、前述のように理研も認めている。これまでの流言が「根拠」に挙げた論文や報告書には、捏造・改ざんを覆す要素はない。したがって小保方氏や共同研究者、理研の名誉回復にはまったくつながらない。
小保方氏は『あの日』の中で、理研に指摘された研究不正2点については反論しているものの、「知らなかった」「不注意」などの内容にとどまっている。さらに、残る2点については何も述べていない。今回の対談でもその姿勢は変わっていない。
STAP細胞問題はそもそも、研究不正の問題だったはずだ。しかし、14年4月の小保方氏の会見では、「STAP細胞はあります」と答えた氏の姿ばかりがクローズアップされ、問題が再現性の有無にすり替わった。その混乱は今も続いている。
この問題を、小保方氏個人の問題にしてはならない。メディアに今、求められるのは、科学に詳しくない普通の読者をミスリードしかねない記事ではなく、問題の本質を追究しつづける態度ではないか。(サイエンスライター・粥川準二)
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