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[グローバル オピニオン]イラン経済に大きな課題 ロンドン大学中東研究所所長 ハッサン・ハキミアン氏
先月のイラン国会選挙で改革派が躍進したことは、任期半ばのロウハニ大統領にとって嬉しい後押しとなった。しかし大きな経済的課題が残っている。
イランが核開発問題で米欧など6カ国と歴史的な合意を結んだ昨年7月以降、国民の間で経済状況の改善への期待が大いに高まった。ロウハニ大統領を2013年に当選に導いたのもこうした期待だった。
ロウハニ氏の就任直前にインフレ率は40%を上回り、国内総生産(GDP)は6%減少した。包括的金融制裁によってイランは国際銀行システムから完全に締め出され、経済が不安定化してしまった。ところが核合意によってイランへの経済制裁が解除され、今や国際通貨基金(IMF)はイランの来年の経済成長率を約5%と予想している。そうなればイランは中東で最も成長率の高い国になる。
しかしいくつか障害が立ちはだかる。まず14年半ば以降70%下落した原油価格だ。ハタミ元大統領が独自の改革を試みた1999年にも同じような不幸に見舞われ、原油価格は1バレル10ドルを割り込んだ。当時も現在と同様に、改革派政権の最初の2年間は、国際原油市場が足かせとなった。
さらに重要なのは国内問題だ。それは、迷宮のように多くの意思決定機関が存在し、イスラム教の教義が順守されているかどうか確認するため設立された多くの機関や部局が絡み合う、イラン革命後の複雑な制度構造に起因する。権力の迷路の中でロウハニ大統領は対立する保守強硬派と激しい戦いを繰り広げている。この戦いはまだまだ終わりそうにない。
制裁解除を受けて経済を貿易と外国からの投資に開放し、民間部門を育成するため経済改革を断行しようとするロウハニ氏の経済政策は、保守強硬派のビジョンとは相いれない。自給自足と国内資源への依存を特徴とし長年の緊縮財政に基づいた「抵抗の経済」を提唱する「原則主義派」にとって、ロウハニ大統領の計画は、核合意と同じくらい警戒を呼び起こすものだ。
次期国会における原則主義派の後退が、イランの若い有権者からの力強いメッセージであることは疑いようがない。しかし原則主義派の勢力は退潮したかもしれないが、まだ健在だ。
これはロウハニ大統領にとって最大の難題である。選挙の勝利によって国民の期待に応えるようにとの圧力が高まり、希望が膨らむかもしれない。しかし、05年の大統領選でハタミ氏が原則主義派のアハマディネジャド氏に敗れて認識したように、平等と社会正義を求める国民の声を犠牲にしてまで、成長と景気回復を追求することはできない。
((C)Project Syndicate)
Hassan Hakimian イラン生まれ。英サセックス大博士。専門はイラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)を中心とする中東経済、開発経済学。
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「内なる敵」妨げも
厳しい経済制裁の足かせが外れたイランは「失われた成長」を取り戻そうとフランスやイタリア、日本からの外資誘致に懸命だ。原油価格が安定しない中、成長率を高めるには民間資本導入が鍵となるが、複雑な内政が妨げとなることも考えられる。今回の国会選挙でロウハニ大統領の欧米融和路線は信認を得た。だが中東では1970年代末のエジプトのように急な経済開放が混乱を呼ぶ。反欧米の保守強硬派による批判、格差拡大など、指導層は内なる敵への対策に追われそうだ。
(編集委員 中西俊裕)
[日経新聞3月21日朝刊P.4]
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