http://www.asyura2.com/15/kokusai12/msg/577.html
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チュニジアで11年に始まった「アラブの春」は、西側世界で、“近代化”(=近代欧米もどき化)が遅れているアラブ世界が大きく変わる契機になるものと期待され“称揚”もされた。
しかし、5年経った現在を見れば、「アラブの春」で倒された支配者を支えていた権力層のなかから別名の支配者が“復活”した国々(エジプト・チュニジア)はましなほうで、シリア・リビア・イエメンなどは、対立構図さえ明確には描けない内戦が続き国民の多くの命が日々失われている状況にある。
そう考える根拠の簡単な説明は関連参照投稿をお読みいただきたいが、ロシア保安庁ボルトニコフ長官が語った「ISプロジェクトは「アラブの春」から成長し、「世界ならびに地域の複数の大国の二重政策によって力を得た」と述べ、これらの国々は、このような方法で自分たちの独自の問題を解決しようとした」という見解は、現在及び近未来のイスラム世界を見るとき重要なポイントだと思っている。
※ 関連参照投稿
「チュニス銃撃事件:本来の標的は観光客ではなく政権関係者:犠牲者を貫いた銃弾が過激派のものか治安部隊のものか要検証」
http://www.asyura2.com/15/kokusai10/msg/291.html
「エジプトの裁判所、同胞団メンバー529人に死刑判決=弁護人:シシ派はムバラク派と同胞団の追落としに“アラブの春”を利用」
http://www.asyura2.com/14/kokusai8/msg/333.html
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2016年02月06日 (土) 午前0:00〜
時論公論 「政変5年のアラブ諸国 安定への道は」
出川 展恒 解説委員
■「アラブの春」と呼ばれたアラブ諸国の政変から5年が経ちました。
長期独裁政権が倒れた国々は、今、どうなっているでしょうか。
民主的な国づくりに成功したと言える国はありません。
むしろ、内戦や混乱に陥り、それに乗じて、
IS・イスラミックステートのような過激派組織が勢力を広げ、
世界にテロの脅威を拡散させているのが現実です。
5年前の政変が残したものは、いったい何だったのか、
そして、アラブ世界に平和と安定を取り戻すことはできるのかを考えます。
■一連の政変は、北アフリカのチュニジアで、
失業中の若者が焼身自殺したことをきっかけに始まり、
アラブ世界各地に広がりました。
チュニジア、エジプト、イエメン、リビアでは、
民衆の大規模なデモで、長期独裁政権が倒れました。
一方、シリアでは、外国から武装勢力が侵入し、激しい内戦に陥りました。
その中で、ISが生まれ、隣のイラクとの国境をまたいで、
「イスラム国家」の樹立を一方的に宣言しました。
ISは、リビアやエジプトのシナイ半島にも拠点を広げています。
イエメンも内戦に陥り、中東で覇権争いを繰り広げる
サウジアラビアとイランの代理戦争の様相を呈しています。
■「アラブの春」と言いますのは、5年前、主に欧米のメディアが、
アラブ諸国に欧米流の民主主義が広がることへの期待を込めて、
そう呼んだわけですが、見込み違いでした。
民主主義を定着させるための条件が整っていなかったのです。
たとえば、民主主義の意味やルールを理解させるための教育は
全く行われていません。
イスラム主義を掲げる政党が選挙で勝利すると、
権力を独占しようとして、国内の対立が深まりました。
異なる立場や意見があることを認め、
話し合いと妥協によって解決できるようになるには、長い年月がかかります。
一方、内戦に陥った国では、
政府の統治が行き届かない「権力の空白地帯」が生まれ、
ISのような過激派組織の台頭を招くことになりました。
■私は、先月、エジプトを取材して参りました。
およそ9000万の人口を擁し、「アラブの盟主」とも呼ばれるエジプト。
こちらは、首都カイロ中心部の「タハリール広場」です。
5年前の今ごろ、ここは、ムバラク政権の汚職や強権支配に抗議し、
民主化を求める大勢の群衆で埋め尽くされました。
ところが、「革命5年」を祝う雰囲気は、全く感じられませんでした。
市民や専門家へのインタビューで気づかされたのは、
エジプト国民の大多数が、今、求めているのは、
「民主化」よりも「安定」だということです。
ムバラク政権の崩壊後、民主的な選挙で、
「ムスリム同胞団」の政権が誕生しました。
ところが、イスラム化を進めようとして国民の強い反発を招き、
民衆のデモと軍の介入で、1年後に政権から追われました。
その後就任した軍出身のシシ大統領は、今なお絶大な人気を維持しています。
信頼できる強い大統領の手で、治安を回復し、経済を立て直してもらいたい、
そういう声が支配的でした。
その一方で、ある有力なジャーナリストは、
「今、政権を批判する記事を書くことは、ほとんどできない。
牢屋に入れられる恐れもある」
と打ち明けました。
国民が最も関心を寄せる経済も、一向に改善しません。
失業率は15%前後に高止まりし、
とくに多くの若者が、大学を卒業しても仕事につけない状況が続いています。
インフレ率は10%を超え、家計を直撃しています。
経済の柱とも言える観光産業は、きわめて深刻な状態です。
世界遺産として有名なピラミッドでは、
観光シーズンにもかかわらず、訪れる客もまばらでした。
ガイドや土産物を売る業者たちは、
国内で起きた爆弾テロなどの影響で、
外国人観光客がほとんど来ないと嘆いていました。
国民の間で、いつまで待っても暮らしが良くならないという認識が広がれば、
いずれ、批判の矛先は、政権に向けられるでしょう。
もし、エジプトが政情不安に陥れば、
アラブ世界全体に悪影響が広がるだけに、
エジプトの動向から目を離すことはできません。
■次に、チュニジアです。
一連の政変の先駆けとなったチュニジアだけは、
民主化が、比較的うまく進んでいると言われます。
イスラム勢力と世俗派勢力が、話し合いと妥協によって、民主的な憲法をつくり、
議会と大統領の選挙を行って、新しい政権を発足させました。
この取り組みが高く評価され、去年、ノーベル平和賞を受賞しました。
ところが、この国でも、若者の失業問題は一向に改善されず、
先月、各地で大規模なデモが起きました。
これまでに、数千人の若者が国を出て、ISに参加しています。
安定した国づくりの道のりは遠く、課題は多いのです。
■次に、最も深刻な状況に陥ったシリアの現状を見ます。
シリアの内戦は、「アサド政権」、「反政府勢力」、「IS」の三つ巴の戦いとなって、
泥沼化しています。
これまでに25万人以上が犠牲になり、
国民の2人に1人が、難民、あるいは、国内避難民となっています。
去年11月、フランスのパリでISによる同時テロが起き、
国際社会の危機感が一気に高まりました。
先週、シリアの内戦終結をめざす和平協議が、国連の主催で、
スイスのジュネーブで始まりました。
アサド政権と反政府勢力との間で、
まず、停戦を実現させることが目標です。
ところが、和平協議は、双方が同じテーブルに着くという
入口のところでつまずき、早くも中断してしまいました。
大小100くらいの組織がある「反政府勢力」のうち、
どの組織を協議に参加させるかをめぐって、
サウジアラビアやロシアなど関係国の間で激しい対立が起きたためです。
そもそも、シリアの内戦が長らく放置されてきた背景には、
アサド大統領の処遇をめぐる関係国の深刻な対立があります。
▼アメリカ、ヨーロッパ諸国、サウジアラビア、トルコなどは、
大勢の国民を殺したアサド大統領に、もはや正統性はなく、
退陣すべきだと主張してきました。
▼これに対し、ロシアとイランは、
アサド大統領の退陣を前提にした協議には応じられないと主張しています。
ロシアとイランは、長年にわたってアサド政権と緊密な関係を維持してきたことから、
アサド政権と自らの権益を守りたいと考えているのです。
和平協議が始まってからも、アサド政権軍とロシア軍による
市街地への空爆や包囲が続き、反政府勢力側は支配地域を失っています。
そのことが、協議が中断に追い込まれた原因ともなっています。
シリア内外のさまざまなプレーヤーが、それぞれの思惑で動いており、
もはや、シリアをもとの形に戻すのは不可能と見られます。
テロの拡散と難民の発生をくい止めるには、内戦を終わらせることが不可欠ですが、
突破口は見えません。
■アラブ諸国をどう安定させるかについて、この5年間の教訓をまとめると、
次のようになります。
▼ISなど過激派組織は、政府の統治が及ばず、秩序が失われた場所、
すなわち「権力の空白地帯」に拠点を拡げます。
このため、当面は、「民主化」よりも、「秩序の回復」を優先せざるを得ない状況です。
ただし、基本的人権は守られなければなりません。
▼国民の暮らしを向上させ、実感させること、
とくに若者の失業対策は、
ISに参加する戦闘員の流れを断ち切るうえでも極めて重要です。
■国によって事情は異なり、個別の対策が必要ですが、
シリアの内戦終結やエジプトの安定は、
アラブ世界全体に影響を与えるだけに、
国際社会が一致協力して進めてゆかなければなりません。
今年、サミットのホスト国となる日本としても、
こうした取り組みにどう貢献してゆくのか、
長期的な戦略を立てる必要があると思います。
(出川展恒 解説委員)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/237247.html
- 中東地域安定への課題 若年・女性・農家の底上げを 中小企業の育成急務:不安定の最大の要因は↑だが... あっしら 2016/2/15 04:59:12
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