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韓国・慶州で、地震により損壊した自宅を調べる男性(2016年9月13日撮影)。(c)AFP/YONHAP〔AFPBB News〕
韓国が学びたい「地震先進国」日本のお寒い現状 今こそ必要なこれまでの発想にとらわれない学説
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47946
2016.9.22 藤 和彦 JBpress
韓国で9月19日午後8時33分に、マグニチュード4.5の地震が発生した。震源の位置は韓国南東部の慶州市の南南西11キロメートルである。
慶州地域では1週間前の9月12日午後8時32分に、マグニチュード5.8の地震が発生している。この地震は1978年に韓国が地震観測を始めて以降最大の規模であった。それ以来、300回以上の余震が続き、余震の回数も過去最高記録を更新している。度重なる余震のせいで被害は急速に拡大しており、地域住民の不安は高まる一方である。
韓国の気象庁は群発地震の経験が少ないことから、余震発生回数の把握漏れをするなどの失態を演じている。政府の対応も台風に伴う風雨の影響もあいまって正確な被害状況をいまだに集計できていない。このため復旧作業は長期化する見通しだ。
今回の地震発生の原因について、韓国の専門家は、「慶州地域を通る梁山断層が動いたのが直接の原因だ。その大元の原因は朝鮮半島西側のユーラシアプレートと東側の太平洋プレートが衝突していることにある」としている。
だが、果たしてそれは本当だろうか。
「プレートテクトニクス理論」(プレート説)に代わる「熱移送説」という理論に基づき地震発生のメカニズムを解明しようとする角田史雄 埼玉大学名誉教授に、韓国の地震の原因を尋ねてみた。
■熱エネルギーの移送が地震と噴火をひき起こす
角田氏のコメントを紹介する前に、熱移送説について簡単に説明しておこう。
熱移送説の中で主役を務めるのは熱エネルギーの伝達である。その熱エネルギーは、地球の地核(特に外核)からスーパープリューム(高温の熱の通り道)を通って地球表層に運ばれ、その先々で火山・地震活動を起こす。
火山の場合、熱エネルギーが伝わると熱のたまり場が高温化し、そこにある岩石が溶けてマグマと火山ガスが生まれると、そのガス圧で噴火が起きる(マグマとは約1000度に溶けた地下の岩石のこと。この高温溶融物が地表へ噴出したのが溶岩である)。
地震の場合は、硬いが脆い岩層の地下岩盤が熱エネルギーによる膨張で割れることにより発生する。つまり熱エネルギーが通ることにより断層が活断層になるのである。
角田氏によれば、南太平洋(ニュージーランドからソロモン諸島にかけての海域)と東アフリカの2カ所から、地震や火山の噴火を引き起こす大本の熱エネルギーが地球表層に出てくるという。日本の地震や火山噴火に関係があるのは南太平洋のほうである。
南太平洋から出てきた熱エネルギーは、西側に移動しインドネシアに到達すると3つのルートに分かれて北上する。3つのルートとは、(1)スマトラ島から中国につながるルート(SCルート)、(2)マリアナ諸島から日本につながるルート(MJルート)、(3)フィリピンから台湾を経由して日本につながるルート(PJルート)、である。
角田氏はさらに「噴火と地震の発生場所はほぼ変わらない」と指摘する。地球の内部構造は環太平洋火山・地震帯が約10億年も不変であることが示すとおり、高温化する場所や岩盤が割れやすい箇所はほとんど変わらない。そのため、熱エネルギーが移送されることによって生じる火山の噴火地点や地震が起こる場所は不動だという。
角田氏は「熱エネルギーは1年に100キロメートル以上の速さで移動する」ので、インドネシアやフィリピンで地震や火山の噴火が起きた場合、その何年後に日本で地震や火山の噴火が起きるかがある程度予測できるとしている。
■熱移送説で読み解く韓国の地震の原因
韓国の地震について、角田氏は「九州の鹿児島県から長崎県を通って韓国の済州島に至る断層帯がある。これに沿って熱エネルギーが伝わり、朝鮮半島南部の地震を起こしたと考えている」とコメントしている。
済州島は韓国本土南岸から130キロメートルにある火山島である。標高1950メートルの休火山は韓国最高峰であり、最後の噴火は約800年前に生じている。
済州島では、4月21日に付近の海域でマグニチュード2.7の地震が発生するなど、今年に入り9回の地震が起きている。角田氏は「当分の間、済州島の火山が噴火する心配はない」としているが、熱エネルギーは現時点で済州島まで到達している。問題は、その後、韓国国内で熱エネルギーがどのように伝わっているかである。
韓国は地震対策への意識が低かったことから、OECD諸国の中で国レベルの断層地図がない唯一の国である(ソン・ムン釜山大教授)。
しかしその韓国で今回の群発地震を契機に安全対策を抜本的に強化する機運が盛り上がり、官民挙げて「地震先進国の日本に学べ」のムードになっているという(9月17日付産経新聞)。
■40年ぶりに見直される「大震法」
日本に対していつも批判的な韓国で「日本に学べ」コールが起きていることに悪い気はしないが、日本国内の地震学界の現状を鑑みると素直には喜べないのが筆者の偽らざる心境である。
目下の日本で、地震対策に関する最も大きな動きは、東海地震に備えた「大規模地震対策特別措置法」(大震法)の約40年ぶりの見直しである。9月9日、政府の中央防災会議で正式に議論が開始された。
この見直しでは、「確実な予知はありえない」との前提に立ち、大規模地震発生の予測が難しい中でどのように減災するかなどを議論する。さらに東南海・南海地震と連動した南海トラフ巨大地震への対応も含め、年度内に報告書をまとめるという。
大震法が制定されたのは、1976年当時、東京大学の助手だった石橋克彦氏(現在は神戸大学名誉教授)が「ユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界域である南海トラフの北東端にあたる駿河トラフで近々大地震が起きる」という論文を発表し、東海地震の危険性を訴えたのがきっかけだった。
石橋氏は「100〜150年周期の東海地震が、江戸時代末期の1854年以来発生していないことから発生時期は切迫している」と訴えた。関東大震災を経験していた当時の山本静岡県知事はこの訴えに動かされ、国を巻き込んで東海地震対策のための専門の法律を作ることに邁進した。
こうして1978年に制定された大震法は、石橋氏の「東海地震は予知できる」という考え方をもとにしていた。予知が可能だという根拠は、1944年の東南海地震(マグニチュード7.9)の直前に静岡県掛川で異常隆起が起きたことだとされている。石橋氏はプレート説をベースとした地震発生の理論モデルから「大地震の前には前兆となるすべり現象が観測できるはずだ」と主張していた。しかしその後の大地震(1995年の阪神淡路大震災(マグニチュード7.3)や2003年の十勝沖地震(マグニチュード8.0))では、前兆となる現象は実測されなかった。東海地域で警報が発せられることもなかった。
■米国発のプレート説が一気にスタンダードに
日本で地震予知研究の機運が高まったのは1960年代前半である。坪井・和達・萩原尊礼氏といった地震研究者たちの主導で作られた「地震予知ー現状とその推進計画」(いわゆる「ブループリント」)を基に1965年に国レベルの「地震予知研究計画」がスタートした。
当時の研究メンバーたちは「有望そうな観測はなんでもやろう」と極めてプラティカルだった。短期予知のために従来の地殻変動観測のみならず、地下水、ラドンなどのガス放出、地磁気・地電流の異常変化などの「非地震観測」も行うという柔軟な姿勢をとったという。
ここで忘れてならないのはブループリントが策定された当時の地震発生メカニズムの標準的学説はプレート説ではなかったことである。
実は、当時の地震学者の間では、角田氏の熱移送説に近い理論が大勢を占めていた。ところが、1969年に米国からプレート説が導入されると日本の学界はプレート説一色になってしまう。さらに地殻変動観測以外の非地震観測に対しても次第に消極的となり、プレート説以外に基づく予知研究を「トンデモ科学」扱いするようになったようだ。
このような学界のあり方について批判的なのは上田誠也東京大学名誉教授である。
上田氏は東京大学地震研究所で長年教授を務め、プレート説研究の第一人者とされる。日本国内にプレート説を広めた最大の功労者の1人であるとも言われている。だが、1990年に定年退官した後、「マントルはプレートを引っ張れるほどの粘着力はない」としてプレート説に関して否定的になっているという。
なんとも驚くべき話だが、 師匠である上田氏がプレート説から“転向”したにもかかわらず、現在の地震学者たちは相変わらずプレート説に固執したままである。
9月13日、NHKはメガクライシス特集として最新の地震予知の研究成果を紹介した。番組のコメンテーターを務めた山岡耕春 名古屋大学教授(日本地震学会会長)は、最前線の研究者たちがこれまでの発想にとらわれずに地震予知に取り組む姿勢を評価していた。
角田氏の熱移送説は、まさに「これまでの発想にとらわれない」学説であろう。角田氏は、「来年後半から再来年にかけて伊豆・相模地域でマグニチュード6クラスの地震が発生する」と予測している。8月28日、静岡県下田市から南東36キロメートルの位置にある新島近海でマグニチュード3.6の地震が発生した。幸いにもこの地震は単発で終わっているが、この海域で地震活動が活発になれば、伊豆・相模地域での地震発生時期が近づくと角田氏は考えている。
日本がこれまでの発想や学説のしがらみを断ち切り、ブループリントを執筆した先輩たちの姿勢を取り戻さない限り、「地震先進国」の名声が露と消える日は近いのではないだろうか。
(参考)「どうする! 日本の地震予知」(上田誠也、「中央公論」2011年4月号)
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