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熊本地震 ひずみ蓄積、未知の断層も
2度の震度7・震源域拡大 解明へ分析報告相次ぐ
熊本県を中心に続く地震で、震源域が連鎖するように広がった異例の展開を説明する専門家の分析が相次いでいる。全地球測位システム(GPS)の解析では、九州地方でひずみが蓄積しやすい帯状の地域と今回の震源域が一致。被害が大きい建物の周辺には、未知の活断層が見つかった。過去の内陸直下型地震とは違い、観測史上初めて震度7が連発するなど想定外の現象の解明を急ぐ。
■年最大1センチ押し合う地殻
京都大学の西村卓也准教授らは全国約1300カ所のGPSデータをもとに、九州地方を横断する震源域にひずみが蓄積しやすい状態だったとする解析結果をまとめた。京都大学で22日開いた研究会で発表した。
地震前のデータからは大分県を含む地域は西に、熊本県を中心とする地域は南に移動していた。詳しく解析すると、九州を横切るように地殻が2つに分かれて押し合っているように見えるという。
この2つのブロックがぶつかり合う境界は年間最大約1センチメートル動いてひずみが蓄積しており、今回の震源域と重なるという。西村准教授は「地震がいつ起こるかは答えられないが、今回の震源域付近はリスクが高かったといえる」と説明した。
ただちに北海道大学や鹿児島大学などと協力し、阿蘇地方に臨時のGPS観測点を設置した。今回の地震は震源域が3カ所に分かれ、地震が起きていない地域を間にはさむ。新たな観測点で地震後の地殻の動きを詳しく調べれば「空白域が生じる理由にも答えられるのでは」と話す。
防災科学技術研究所は24日の緊急報告会で、大分県で発生した地震について、16日に熊本県で起きたマグニチュード(M)7.3の本震で別の地震が誘発され、強い揺れになったとの分析結果を発表した。
大分県内の地震計が観測した地震波を解析したところ、本震による揺れではなく、別の地点で起きた地震である可能性が高いことが分かった。
立て続けに地震波が届いており、短時間に連続して地震が起きていたとみられる。
青井真・地震津波火山ネットワークセンター長は「熊本の地震に誘発されたローカルな地震だと考えられる」と話す。さらにほかのデータで裏付けられれば、連鎖のメカニズムが分かるかもしれない。
■想定より断層長く
京都大学の林愛明教授らは16日未明の地震の震源となった布田川断層帯が従来の認識よりも北東に7〜8キロ長いことを突き止めた。阿蘇神社(熊本県阿蘇市)の大きな被害など、広い範囲で強い揺れを起こした原因とみている。林教授は「今後の防災上、大事な情報になる」という。
同じ調査で布田川断層帯の数キロメートル南に、阿蘇山のカルデラ内に続く新たな断層を発見した。一般に火山の地下は液体のマグマがあり断層が途切れるが、林教授は「地表数キロメートルの浅い部分は硬いため割れが続く可能性がある」と指摘する。
国土地理院は16日の震度7が発生した後、航空写真から布田川断層帯周辺の地表に現れた亀裂の分布を調べた。一続きの亀裂は布田川断層帯とほぼ重なっていたが、熊本県益城町付近では断層帯から延びる別の亀裂があった。地表にできたひび割れの可能性も残るが、直線上に延びる様子からは新たな活断層の恐れもある。
■火山の軽石で土砂崩れ拡大
京大の松四雄騎准教授らは阿蘇カルデラ西側の緩やかな斜面で起きた地滑りが、阿蘇山の火山活動で降り積もった軽石層の破壊が原因とする調査結果をまとめた。
空撮動画やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の情報などを集計。南阿蘇村周辺で300カ所以上の斜面崩壊が見つかり、そのほとんどが16日未明の本震によるもので、特に阿蘇カルデラの西側に集中していた。
掘削調査や過去の土砂災害などのデータをもとに分析したところ、水を含んだ軽石層が地震の揺れで壊れ、液状化によって緩斜面で地滑りが起きたと推定できた。松四准教授は「(地滑りの原因となる)軽石層がどう分布しているか把握すべきだ。今後も地震や雨などで崩れてくる可能性がある」と警戒を呼びかけている。
[日経新聞4月25日朝刊P.11]
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