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アルコールに「適量」なし−崩れる健康神話
業界は独自の研究で対抗
米国、英国、ロシアなどの保健当局はアルコールが健康に有害だとして消費量を減らす動きに出ており、業界にとっては圧力となっている。一方、独自の研究に資金を拠出する大手醸造会社もある(英語音声、英語字幕あり)
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JUSTIN SCHECK AND TRIPP MICKLE
2016 年 8 月 26 日 10:59 JST
今年4月に行われた酒造業界のカンファレンスで、業界のロビイストがある警告を発した。「アルコールはがんの原因になると(保健当局者は)言いたいらしい」――。
米飲料協会でマネジングディレクターを務めるサラ・ロングウエル氏は聴衆に向けて、酒造業界はアルコールが「健康に良いという後光」を失う危険にさらされていると訴えた。
アルコールと健康を巡る議論は今、多額の費用をかけた世界的な論戦に発展している。
ビールやワイン、蒸留酒などのアルコール業界は数十年間にわたって、ある見解に助けられてきた。適量のアルコールであれば、心臓疾患やほかの健康面にいくらか利点があるという説だ。それは当局の食事に関する数多くの指針にも記載されている。
急速に変わる当局の見解
だが、アルコールが持つ発がん性リスクを指摘する研究が出てきたのを受け、世界中の保健当局は従来の見解を見直しており、飲酒に関するアドバイスの中身が急速に変化しつつある。
こうした変化は、米国や英国、ロシアなど世界最大級のアルコール消費国の一部で業界への圧力となっている。それに対してアルコール業界側は、広範囲かつ多額の費用をかけて対応。反飲酒活動家の研究を非難したり、政策立案で政府に働きかけたりしている。また業界独自の研究にも多額の資金を投じており、酒類メーカー4社が綿密な研究のために数千万ドルを投じる計画もある。
米ワシントンDCにあるビール研究所のジム・マグリービー所長は4月の会議で、アルコールに批判的な研究者らに言及し、「彼らに主導権を渡すわけにはいかない」と述べた。
主要国が推奨する飲酒量(青:男性、紫:女性)
https://si.wsj.net/public/resources/images/P1-BY351A_ALCOH_16U_20160822130307.jpg
英当局は今年1月、適量のアルコール摂取は心臓に良い可能性があるとしてきた20年来の指針をトーンダウンさせた。健康面への利点は従来考えられていたものより少なく、むしろ特定のがんの発症リスクを高めるとする新たなガイドラインを発表した。
英政府の主席医務官サリー・デイビス氏はテレビのインタビューで、「飲酒に安全な量というものはない」と述べた。
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英政府の主席医務官サリー・デイビス氏 PHOTO:JUSTIN NG/UPPA/ZUMA WIRE
同じ1月には米保健福祉省(HHS)が、少量の飲酒で心臓疾患リスクが軽減される人もいるとしたガイドラインの一部を取り消した。その理由を問われた同省の広報官は「少量のアルコール摂取が健康面に影響する可能性があるかないかについて理解を深めるため」、より多くの検証が必要だと述べた。
一方、韓国は今年、発がんリスクの可能性を指摘したうえで、オーストラリアと同様にアルコール摂取量の推奨上限を引き下げた。数年前にはロシアがアルコールの販売を規制し、ビールとウオツカの税率を引き上げた。これは世界保健機関(WHO)が飲酒によるさまざまな健康被害についての研究を発表したことを受けたものだ(「適量」と定義されるアルコールの量は国によって異なる)。
消費者の姿勢に変化も
アルコール業界への脅威はたばこ業界が直面したものほど厳しくはない。たばこの場合は喫煙が肺がんや心臓疾患などの原因になると特定されて以降、一般大衆の受け止め方や政府の方針が急速に変化し、市場が縮小した。
とはいえ、アルコール摂取に関する政府のアドバイスは重要だ。それを参考にする酒好きな人が実際には少ないとしてもだ。なぜなら政府の方針は酒類の税率や販売時間帯、広告制限といったものに反映されるためだ。消費者の飲酒に対する姿勢に変化が出る可能性もある。ビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)は現在、WHOが健康に有害な影響が出るとされるアルコール摂取量を10%引き下げる方針であることについて、同社のリスクとして正式に認めている。
オーストラリアでは政府が2009年に飲酒量を減らすよう国民に勧告して以降、消費量が一人当たり年間で10.6リットルから9.7リットルに減少した。米メリーランド州では2011年に酒税が引き上げられると、蒸留酒やワインとビールの売り上げが落ちた。ロシアでのアルコール販売はここ数年の間に20%余り落ち込んだ。
流れ作った40年前の研究
少量の飲酒は健康をいくらか向上させるという「ほぼ一致した見解」は、40年前に発表された研究が発端だ。カリフォルニア州の心臓専門医、アーサー・クラツキー氏が、どんな生活習慣が心臓疾患に影響するのか調べた研究だ。その研究論文でクラツキー氏が述べていたことは驚くべきことだった。軽い飲酒の習慣がある人は、そうでない人よりも心臓発作のリスクが少ないことを発見したというのだ。冠動脈疾患の死亡リスクについても同様だった。
アルコール飲料医学研究基金は、それが「飲酒の影響に関する研究の枠組みを変えた」と指摘する。同基金の前身だった組織は当時、クラツキー氏の研究に資金を提供していた。
1995年には米HHSが飲酒に関するガイダンスを修正。飲酒には「健康面への利点がない」ため「推奨しない」とする文言を削除した。その代わり、少量の飲酒によって心臓疾患のリスクが軽減される人もいるとの文言を加えた。翌年の酒造業界カンファレンスでは、ビール会社のある幹部が「科学が味方している」と言い放った。
そして今、新たな研究が再び潮流を変えつつあるのだ。
どの年齢層にとっても有害
WHOは2010年の報告書の中で、飲酒はどの年齢層にとっても有害だと指摘。「40歳以上の場合は少量のアルコールであれば特に冠動脈性心臓疾患を防ぐ効果があるという点を考慮に入れたとしてもだ」と述べた。
保健当局者たちが最近注目しているのは、特定の種類のがん発症リスクとアルコールに関連性があるとする研究だ。
英国は今年、飲酒に関するガイドラインを見直した。そのなかで当局は「(口腔・咽頭・喉頭のがんや乳がんを含む)さまざまな疾病を発症するリスク」は摂取量に関係なく飲酒の習慣により高まる、と結論づけている。
英国の新たなガイドラインは心臓疾患に対する飲酒のプラス面を否定していないものの、「従来考えられていたほどの利点はないうえ、年齢層もより小さなグループにしか当てはまらない」としている。飲酒により死亡リスクが低減されるのは55歳超の女性だけである可能性が高いという。
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英スコットランドのスターリング大学のリンダ・ボールド教授 PHOTO: DANIELLA ZALCMAN FOR THE WALL STREET JOURNAL
英スコットランドのスターリング大学の保健政策学教授で、ガイドラインの変更にも関わったリンダ・ボールド氏は「アルコールと(疾病発症リスク)を結びつけることは180度の転換だ」と話す。
ABインベブと英蒸留酒大手ディアジオは、ライバル会社である蘭ハイネケンと仏ペルノ・リカールとともに、飲酒による健康への影響を調べるランダム化比較試験の費用として総計5540万ドルを拠出する。この調査は米国のアルコール依存症研究所が監督する。
被験者となるのは50歳超の心臓疾患リスクを抱える8000人の予定。無作為に抽出された対象者は飲酒を控えるよう指示され、もう一方の対象者は毎日1杯飲酒する。約6年間追跡調査を行い、心臓発作や脳卒中、2型糖尿病の発症について両グループを比較する。ただし、がんのリスクを調べることは研究には含まれないという。
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