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【第46回】 2016年7月16日 吉田克己 [5時から作家塾(R) 代表/World Business Trend Tracker 主宰]
長寿県と短命県でこんなに違う!食事と生活習慣【男性編】
長寿県の人々の生活習慣を学びましょう
今回のテーマは「男性の平均寿命(都道府県別)」。男性が相対的に長寿な県と短命な県とでは、各種食材の消費量や生活習慣・環境などがどの程度違っているのか、整理・確認してみようという主旨である。
方法としては、男性の平均寿命ベスト3県(長野県・滋賀県・福井県)とワースト3県(青森県・秋田県・岩手県)のそれぞれで、県民の食習慣や生活習慣が他県と比べてどんな点で際立っているかを洗い出し、その結果を手掛かりにする。ただし、本稿で明らかにするのはあくまでも相関関係であり、因果関係ではない点には注意されたい。
なお、都道府県別の平均寿命は、厚生労働省による平成22年(2010年)の都道府県別生命表を元にしている(※東日本大震災は平成23年)。
まず、これら6県の平均寿命とその偏差値は以下のようになっている。
平均寿命 偏差値
1位 長野県 80.88 72.0
2位 滋賀県 80.58 67.2
3位 福井県 80.47 65.4
: :
45位 岩手県 78.53 34.3
46位 秋田県 78.22 29.3
47位 青森県 77.28 14.2
全国(単純)平均 79.59 −
さらに、各県の年齢構成の違いから生じる影響を取り除くという意味で、「年齢調整死亡率(年齢構成調整後の10万人あたりの死亡者数)」も見ておこう。
年齢調整死亡率 偏差値
47位 長野県 477.3 27.7
46位 滋賀県 496.4 33.8
45位 福井県 499.9 35.0
: :
3位 岩手県 590.1 63.9
2位 秋田県 613.5 71.4
1位 青森県 662.4 87.1
結果的に、上位グループと下位グループの顔ぶれ・順位は同じであった。
短命県には相対的に
がん患者や糖尿病患者、自殺者が多い
上位3県の特徴よりも下位3県の特徴のほうが分かりやすいため、先に平均寿命を短くしていそうな理由を探ってみたい。
これら3県の順位が共通して高くなっている(低くなっている)ものには、表1、表2に挙げた項目がある(ただし今回は、収入や進学率など経済・教育面に関する項目は、説明不足から誤解を生むおそれがあるため除外している)。また、表には単純に「〜数」と表記しているが、すべて「人口あたり」に基づいた順位である。
◆表1:直接的な要因と考えられる事象
※数字は都道府県別順位(以下同様)
◆表2:間接的な要因になっているかもしれない食材消費量・生活習慣など
表1には、それこそ平均寿命を下げそうな病名・原因が並んでいるが、これらの直接要因の多くが食・生活習慣に起因していると考えることは、今や常識の範囲としてよいだろう。となると、表2に並んでいる食・生活習慣(の一部)と表1に並んでいる死亡原因(の一部)、そして平均寿命とのあいだに、以下のような関係を仮定することはできるだろう。
「喫煙率が高い、アルコール摂取量が多い、食塩摂取量が多い、運動量が少ない」⇒「がん・糖尿病・高血圧などの生活習慣病の発症率が高まる」⇒「自殺者数※も増える」⇒「平均寿命が短くなる」
※自殺の理由には「病を苦にして」が最も多い。
なお、「がん死亡者数」と「がん死亡率」の違いであるが、「がん死亡者数」は厚生労働省による人口動態調査の各都道府県別の死因データにより、「がん死亡率」は国立がん研究センターがん対策情報センターのがん情報サービスによる「75歳未満の年齢調整死亡率」である。つまり、年齢を考慮していないのが「がん死亡者数」であり、75歳以下の「がん死亡率」(がんで早死にする割合)となっている。つまり、年齢構成として高齢者の比率が高くなればなるほど、「がん死亡者数」も高くなるのは当たり前であるため、食・生活習慣との関係がより直接的なのは「がん死亡率」のほうと考えてよいだろう。
また、表2に挙がっている項目に関しても、いくつか補足しておく。
・炭酸飲料は糖分の多い飲み物の代表格である。
・インスタントかどうかにかかわらず、麺そのものには塩分が少なくても、スープを飲む量によっては、麺類は高塩分になる。
・魚介類の内訳として、これら3県では、サケ・サンマ・イカの消費量が多いが、サケが基本的に塩鮭であると考えると、これも塩分要因になる。
・ソーセージ、ハム、ベーコンは高塩分食材の代表格である。
長寿県はがんと糖尿病・肥満が相対的に少ない
それではいよいよ、長寿県では「喫煙率、アルコール摂取量、食塩摂取量、運動量」などの順位はどうなっているのか、上位3県について同様の項目の都道府県別順位を見てみよう。
◆表3:直接的な要因と考えられる事象
◆表4:間接的な要因になっているかもしれない食材消費量・生活習慣など
塩分に対しては野菜と運動(発汗)が有効か!?
筆者なりに気になった数字に網掛けをしてみたのだが、表1から表4までを眺めてみて、皆さんはどんなことに気づかれただろうか?
おそらく最初に気づかれたであろうことは、がん、糖尿病、高血圧の患者数が平均寿命を“直接”左右していそうだ、という点だろう。たしかに、男性のがん死亡率については、上位3県と下位3県とでは、順位が真逆である。糖尿病や高血圧の患者数、肥満率にも、ほぼ同様の傾向が見て取れる。
一方、表には入れていないが、脳梗塞や心筋梗塞といった虚血性脳・心疾患の数字も確認してみたところ、こちらは両グループ間に大きな差は見られなかった。
よって、ひとつめの結論としては、「平均寿命を“結果的に”左右しているのは、がんを筆頭に、糖尿病や高血圧の患者数の多寡であると考えてよさそうだ」ということだ。
喫煙や過度の飲酒、過剰な塩分などが、それらの患者数を左右する要因であることに異論はないだろう。しかしながら、これらの影響度(相関の強さ)については、相当に厳密な議論を要するため、今回は深入りしない。
※睡眠時間については、最長で約7時間40分、最短で約7時間5分となっており、今回の議論にはほとんど影響しないと考えた。
塩分摂取量が多い長野と秋田で
明暗が分かれるワケとは?
逆に、今回筆者が注目したいのは、「長野県と青森・秋田県とでは、ともに塩分(食塩や味噌)の摂取量が有数であるにもかかわらず、なぜ、がん・糖尿病・高血圧の患者数にこれほどの差があるのか」という点である。
ここからは推測の域に入ってしまうが、「野菜摂取量」と「活動量」が大いに関係しているのではないか。別の言い方をすると、塩分(ナトリウム)を多めに摂ってしまっても、日々の代謝(排泄)が上手くできていれば、その悪影響は最小限に抑えられるのではないか、ということだ。
まず、野菜の摂取量が多いということは、カリウムの摂取量も多いと考えられる。漬け物を除けば「ナトリウムの多い野菜(果物)」は聞いたことがないが、「カリウムの多い野菜(果物)」は数多く存在する。そして、体内のナトリウムイオンとカリウムイオンの濃度バランスが崩れると(ナトリウム側に傾くと)血圧が上がったり、神経伝達に支障を来たして痙攣を起こしたりすることは周知である。つまり、ナトリウムの摂取量が多すぎるにもかかわらず、野菜(果物)の摂取量が足りなかったり、加工食品(ナトリウムが多い)を摂りすぎたりすると、当然、身体の機能に悪影響を及ぼすことになる。
加えて、日々の活動量が多ければ(気候にも左右されるが)発汗量も自然と増えるというものだ。そして、汗をかけばその分だけナトリウム+カリウム(=電解質)が失われる(この場合、排出される)ことになる。つまり、身体を動かして汗をかくということは、余分な塩分(ナトリウム)の排出に寄与することにもなれば、電解質(ナトリウム+カリウム)不足に陥る原因にもなるということだ。
詰まるところ、日常的に身体を動かし汗をかく機会があれば(カリウム不足を起こさない範囲、状況で)、体内の塩分(ナトリウム)過剰を緩和できる可能性が高まることになる。
「健康には、食事、睡眠、運動、ストレス緩和」が常識であるが、運動は何もカロリー消費だけがその効果ではないということだ。「日頃の塩分摂取量が多めだな」というなら、食の面だけでなく、「汗をかく」ことも合わせて実践すると、よりよい結果を得られるかもしれない(詳細は医師にご相談を。特に、すでに糖尿病の方、腎機能の弱い方は、カリウムの単独摂取には危険が伴います)。
(吉田 克己)
参考図書:『統計から読み解く 都道府県ランキング』
http://diamond.jp/articles/-/95834
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